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スマート・ウェアラブル端末、北斗関連産業にとっては「未開の金鉱」

2015年 6月24日(陳衛紅 北京空間科技信息研究所)

 国家政策の後押しを受けて、中国の北斗衛星測位システムは徐々に完備され、北斗システム対応端末のコストも下がりつつある。将来、位置サービスとクラウドコンピューティング、モノのインターネット、モバイルインターネット、ビッグデータなどのハイテクとの融合を経て、北斗衛星の応用は中国の国民経済の新たな成長ポイントとなり、大衆消費の分野で60%以上のシェアを占めるようになると予想される。特に、スマート・ウェアラブル端末市場は、開発が待たれる未開の金鉱と言える。

 現在、様々な形態のウェアラブル端末が様々な分野で人々の生活に入り込んでいる。現在市販されている主なウェアラブル端末には、スマートグラス、スマートウォッチ、スマートリストバンド、スマートシューズ、スマートリング、スマートブレスレット、スマートベルト、スマートヘルメット、スマートボタンなどがある。常に世話や介護が必要な幼児や高齢者、ペット向けのウェアラブル端末の使用率は、ホワイトカラー向けデバイスの使用率を大きく上回るため、これらの分野は真の意味で硬直的需要(実需)を持つグループと言える。

 硬直的需要を持つグループ向けのウェアラブル端末の機能には、以下の数種類がある。

 (1)測位:高齢者や児童、ペットが外出時に迷子・行方不明にならないようにする。児童の安全と高齢者の管理。位置情報サービスを通じて、現在の位置をすばやく確定・検索し、位置情報を関係者や関連機関に伝送する。

 (2)健康管理:乳幼児の睡眠の質や寝返り運動、体温、脈拍などの健康データを記録・モニタリング。乳幼児が食事やオムツの取替え、診察を必要している場合、通知を出す。高齢者の脈拍や呼吸などの健康データを記録。高齢者の位置をリアルタイムで管理、転倒の有無や健康状態をモニタリング。ペットの栄養過多を防止。脈拍や運動状況など、ペットの毎日の運動量と健康データを記録。利用者は、上述の通知や情報を直ちに受け取り、素早く対処できる。

 (3)情報交換とプッシュ通知:高齢者の活動範囲に合わせ、位置範囲内の生活情報(スーパーの特売情報、エンタメ情報、コミュニティのイベント情報)をプッシュ通知。保護者と子供のリアルタイム・コミュニケーションをサポート、必要な情報の伝達。

 (4)警報・通報や緊急通報:高齢者、児童、ペットが通常の活動範囲を離れ、迷子・行方不明になったり、問題が生じた場合、緊急通報あるいは警報を発する。乳幼児がベッドから落ちた場合、ショートメッセージが保護者に発送される。ガス漏れや窃盗、火災などの通報。第三者機関と必要な位置情報を共有し、緊急時の対応に役立てる。

 中国は人口大国である。民生部のデータによると、2020年までに、中国の高齢者人口は2億5500万人に達すると見込まれる。2021年〜2035年に中国の高齢者人口は最初のピークを迎え、その数は4億1800万人に達する。高齢者問題は世界共通の難題である。高齢者にみられる代表的な病気であるアルツハイマー病の患者は現在、世界で3千万人以上に達するが、そのうち4分の1が中国人である。アルツハイマー病の症状として、迷子になりやすい点が挙げられる。家から少し離れただけで迷子になり、自立生活能力を失う患者もいる。このほか、中国では計画出産政策により一人っ子家庭が多く、保護者は往々にして子供の成長と安全に最大の関心を払う。中国の未成年者保護法も、保護者は未成年者の健康と安全を保障するために効果的な措置を講じなければならないと規定している。このため、乳幼児の成長とケアに関する製品は、保護者にとって必需品と言える。さらに、ペット愛好家は国の内外を問わず、ペットを家族の一員として扱い、ペットへの支出を惜しまない。このため、高齢者、乳幼児、ペットなど向けのウェアラブル市場には大きなニーズが存在し、消費者はこの分野により多くの資金を投じたいと考えている。

 著名な研究機関の予測では、今後2〜3年の間に、世界のウェアラブル端末市場規模が300億〜500億ドルに達するという。また、別の機関は、ウェアラブル端末の出荷台数が5年後には3億台に達すると予測している。

 今後、ウェアラブル端末は集約化・快適化、ファッション化、実用化といった方向に発展し、体内埋め込み型端末、紙のように薄い端末、絹のようにしなやかな端末、湾曲したり折りたためる端末、ポケットに入る50グラムの名刺大の端末、ペットの首輪につける鈴の形の端末など、革新的なデザインの端末が相次いで誕生すると見られる。これに伴い、ウェアラブル端末のアプリケーション・プロセッサ・チップも大きな発展のチャンスを迎えることとなる。

 ある専門家は、中国のウェアラブル端末の市場規模が今年中に100億元を突破し、2016年には、世界のウェアラブル端末市場規模が100億ドルを突破すると予測している。現在、世界の各大手企業は率先して同分野の製品開発に取り組んでおり、多くの外国企業が中国の衛星・ナビゲーションアプリ市場に進出し始めている。中国の上場企業も積極的に北斗関連産業に進出しようとしている。ウェアラブル端末は将来、半導体産業、アプリケーション開発企業、端末メーカー、電気通信キャリアなどに新たなビジネスチャンスをもたらすだろう。同時に、ウェアラブル端末の産業チェーンに含まれる、ハードウェア、アプリ、SNSプラットフォーム、運営サービス、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、ウェアラブル端末に含まれるソフト(ユーザーデータの収集、位置情報収集、リアルタイムデータ収集、データ共有による付加価値サービス)などは全て、衛星・ナビゲーション産業のもたらす利益を享受することになる。

 ウェアラブル端末は従来の考え方を覆すものであり、新たな革命が起きようとしている。将来を見据える企業は、実需市場のチャンスを把握し、北斗システムの発展の中でチャンスをつかみ取り、より一層の急成長を実現すべきである。


本記事は『衛星応用』より許可を得て翻訳・転載したものである。
原文:http://www.spacemagazines.org/h-index.html


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