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中国のビッグデータ発展の現状と趨勢(その3)

2015年 6月30日

程 学旗:中国科学院計算技術研究所

楊 婧:中国科学院ネットワークデータ科学・技術重点実験室

靳 小竜:中国科学院ネットワークデータ科学・技術重点実験室

三、各業界におけるビッグデータ応用の現状

 ビッグデータは能力を与え、強化する技術であり、電気と同じく、経済社会の各レベルで応用できる。いかなる技術の応用も、簡単から複雑、浅くから深くというプロセスを経る必要があるが、ビッグデータの応用も同じく、このような発展の道を歩んでいる。インターネット上では毎日数十億のユーザーが数々の痕跡を残しており、インターネット空間における画像のやり取りが日に日に増大している。これにより、ユーザーのニーズがたやすく精確に洞察できるようになった。精確なマーケティングは、ビッグデータが最も大きな産業規模を持つ分野となっている。ビッグデータを使ったマーケティングの産業チェーンをめぐり、インターネット、金融、電気通信、健康・医療などの分野では、ビッグデータ技術を使った革新的製品が相次いで誕生し、より幅広く、より深い応用が実現している。

3.1 ビッグデータとインターネット

 インターネット普及率の上昇およびモバイルインターネットの急速な発展に伴い、インターネットアプリケーションの発展趨勢も絶えず変化している。インターネットの発展の重心は「幅広く」から「深く」へと転向し、インターネットが生活にもたらす影響は点から面へと変化し、今や生活の隅々にまで浸透している。インターネットアプリケーションが進化するにつれ、膨大なビッグデータが生まれるようになった。ビッグデータはインターネットの重要資源であり、インターネット・ビジネスモデルの核心的価値でもある。ゆえに、ビッグデータ理論と技術はインターネットアプリケーションにおいて極めて重要な役割を担っている。インターネットアプリケーションは多様性を持つことから、そのビッグデータの内容も異なる特徴を呈しており、異なるニーズに基づき、それらに適したビッグデータ技術を研究・採用することで、より良いインターネットアプリケーションとサービスを実現し、ユーザーエクスペリエンスを向上し、インターネットの全体的な発展をけん引することができる。

 中国インターネット情報センターが2014年7月に発表した最新の「中国インターネット発展状況統計報告書」によると、インターネットアプリケーションは主に、商取引類、情報類、交流・コミュニケーション類、インターネット・エンタテインメント類――の4タイプに分けられる[9]。利用シーンは各タイプによってそれぞれ異なる。うち、絶対多数のインターネットアプリケーションには、ビッグデータ関連技術が関わっている。一部のインターネットアプリケーションは、固有の特徴を持つ。例えば、高い成長率を誇る決済関連の商取引類アプリケーションでは、ターゲットを絞ったビッグデータ技術の発展が求められている。また、モバイルインターネットの急速な発展は、データそのものの変化をもたらし、同時にビッグデータ技術の応用が新たなチャンスと課題に直面している。インターネットアプリケーションの特徴を深く分析し、ビッグデータ技術を絶えず改良・完備することで、インターネットアプリケーションとより密接に組合せ、データを活用してインターネットアプリケーションにより大きな付加価値をもたらすことができる。

 ビッグデータは主に、インターネットとビッグデータの相互の関わり合いから発生する。インターネットアプリケーションからは、ビッグデータが絶えず発生し、それを分析・処理することでインターネットアプリケーションにフィードバックできる。ゆえに、ビッグデータ技術はインターネット発展の原動力であり、ビッグデータ技術はインターネットアプリケーションをよりユーザーのニーズとインターネットの発展方向に合致させ、さらなる発展を実現することができる。

 ビッグデータの今後の主な発展趨勢は、モバイルインターネットとの結合である。モバイルインターネットの特徴に合わせて技術を改良し、モバイルインターネットのニーズに合わせ、モバイルインターネットとビッグデータの結合を実現し、日常生活の様々なシーンに浸透し、ビッグデータとモバイルインターネットを通じて、真の意味で人々の生活に影響と変化をもたらすという目的を達成する。短期的に見ると、ビッグデータ技術はモバイル電子商取引、インスタントメッセンジャー、SNS、モバイルインターネットゲームなどの分野で急速に発展し、飛躍を実現し、関連分野におけるコア技術となることが予想される[10]

3.2 ビッグデータと金融

 データの角度から見ると、金融とは各種データの配列と組合せに他ならない。金融ビッグデータとは、データ資源に基づき融資、決済、情報中介などの業務を行う新興の金融分野の一種で、具体的には、技術面とビジネス面に分けられる。技術面は業務の完全なる電子化を重要視し、膨大な構造化・非構造化データに基づき業務を進めていく。ビジネス面は、ビッグデータ資産とビッグデータの考え方を活用して金融経営を行い、データに基づき意思決定を行う。

 金融ビッグデータとインターネットファイナンスは、切り離して見ることはできない。インターネットファイナンスは、インターネット技術とインターネットの考え方を活用し、運営面と構造面から金融業を改造することを重要視するのに対し、金融ビッグデータは、ビッグデータ資産の活用を重要視する。ビッグデータはインターネットファイナンスのコアと言うこともできる。同時に、ビッグデータとインターネットはいずれも情報技術の歴史的産物であり、両者は密接な関係性を持つ[11]

 金融ビッグデータは、従来型の金融と比べて、以下の5つの新たな特徴を持つ。

新たな技術手段:

 従来型の技術は主に、構造化データを処理するものだった。ビッグデータの時代、新たな情報技術は低コストかつ高效率で膨大な構造化・非構造化データを処理する必要がある。

新たなサービス機能:

 中国では多層的な金融サービス体系が確立されておらず、金融ビッグデータは従来型金融における市場の空白を埋め、中小企業と主要顧客の金融ニーズを満たすことができる。

新たな金融業態:

 ビッグデータ投資、ビッグデータ保険、ビッグデータ信用調査など、データ資産に基づく各種の新型金融業態が相次いで出現している。

新たな参加主体:

 政策制度のボーナスと情報技術革新の推進に伴い、様々な「新参者」が金融市場に進出している。データとユーザーを把握した企業なら全て金融サービスに進出する可能性がある。

新たな競争の核心:

 従来型金融機関にとって、ビジネスネットワークは競争の重要要素だった。金融ビッグデータでは、データ資産の価値が重要視され、データが土地、労動力、資本に続く新たな要素となる。

 中国投資有限責任公司の副総経理、謝平教授は2012年、中国において最も早くインターネットファイナンスの概念を提起した。謝教授は、商業銀行の間接融資でも、資本市場の直接融資でもない第三の融資モデルをインターネットファイナンスと呼んだ。その後2013年、インターネットファイナンスの概念は急速に注目を集めるようになり、6月17日、アリババが「余額宝」をリリースした。「余額宝」はリリースから6日間でユーザー数が100万人を突破、18日間で累計ユーザー数が251万5600人に、資金が累計66億100万元に達し、2014年7月の時点で、「余額宝」の資金規模は6000億元を突破、ユーザー数は一億を上回り、金融界を揺るがす奇跡を創造した。その後、同類の商品として「活期宝」、「現金宝」などが発表され、インターネットファイナンスの幕が開けられた。産業界、投資界、学術界、監督管理部門は相次いでインターネットファイナンス分野の取り組みを強め、P2P、クラウドファンディング、インターネットマイクロファイナンス、ビットコインなどの新興インターネットファイナンスモデルが相次いで登場した。瞬く間に、インターネットファイナンスは社会各界の議論の的となり、各企業が競って進出する分野となった。

 金融ビッグデータとインターネットファイナンスは共に、2013~2014年に高度発展期に突入した。例えば、P2P融資は2006~2007年ごろに中国に進出したが、中国で爆発的な成長を見せたのは2011年以降で、大量のP2P融資プラットフォームが登場した。2011年のP2P融資プラットフォームの数はわずか20、月取引額もわずか5億元だった。しかし2013年末には、プラットフォーム数が600に、月取引額が110億元に到達。2014年6月の時点では、プラットフォーム数は1200に達し、平均して1日に1つのプラットフォームが誕生している計算になる。投資家の規模も2012年の5万人から2014年6月には29万人に増加した。

 雑多な成長を遂げたことから、金融ビッグデータの監督管理力の向上が待たれる。現在、中国には個人情報データ、特に個人金融情報の収集、使用、公開などを規範化する法律が無く、立法が分散的・散発的な状態となっており、体系的でない。現在は主に憲法と関連の法律法規を通じて個人情報を間接的に保護している。ゆえに、監督管理の職責と権限をできるだけ早く明確にし、金融ビッグデータを合理化・規範化し、監督管理を強め、その安定的・持続的で健全な発展を保障する必要がある。

 基盤に欠けることから、データの孤島化・データの障壁といった現象が顕著化している。企業のデータは流動的であってこそ価値を持ち、静的データは一見貴重そうに見えるが、実際には人から見ればつまらない物でしかなく、最終データも時間と共に淘汰されてしまう。中国の金融機関は往々にして業務分野が相通じない、または政策・法規上の制限のため、異なる機関が異なるデータを把握しており、データの流通性に劣る。データの孤島化はデータの規模、適時性、流通性に極めて大きな影響をもたらす。データの障壁を崩し、データの効果的で速やかな流通を実現することは、金融ビッグデータ発展の基礎である。

 ビッグデータは金融業の基盤となるインフラであり、ビッグデータ時代の到来は、金融業の各方面に幅広く深い影響をもたらすだろう。取引仲介機関離れ、サービス中介機関の弱体化は、金融ビッグデータが将来ビジネスにもたらす変化の最終形態である。「金融仲介機関離れ」という言葉は20世紀から使われ始め、「金融仲介中断」とも呼ばれる。これは、資金の流通が商業銀行という仲介を経由しなくなり、企業が株券や債券などの金融ツールを使って直接融資を実現し、人々の金融資産が貯蓄から証券資産に変化していくことを指す。「技術仲介機関離れ」という言葉は、インターネットなど情報技術の台頭後に誕生したもので、新興技術の下、金融体系に「仲介機関離れ」の特徴が見られることを指す。具体的には取引仲介機関離れ、サービス中介機関の弱体化など。

 中国では現在、金融と技術の仲介機関離れが同時に進んでおり、両者が結合した化学反応が突出している。中国の資金の流通は主に取引仲介とサービス仲介という2種類の仲介機関を通して行われる。取引仲介は主に銀行、証券会社などの機関、サービス仲介は主に、会計事務所、法律事務所、投資諮問会社などの機関が行っている。取引仲介は2種類の融資を提供している。1つ目は、銀行を通じた間接的な融資、これは今の中国における主な融資の方式となっている。2つ目は、証券会社を通じた株式あるいは債券の直接的な融資。これらの融資は、経済成長と資源配置を促進する上で非常に重要な役割を持つが、同時に莫大な取引コストがかかり、直接的に銀行など金融機関の利益に体現されている。中国銀監会(中国銀行業監督管理委員会)の統計によると、2012年、中国商業銀行の純利益は1兆2400億元に達し、2011年比で約18.96%増となり、2012年のGDP増加率である7.8%を大きく上回った。

 銀行など、金融の仲介機関は、2つの前提が存在する。1つ目は取引費用の存在。金融取引は地域や時間を跨いで行われる場合、不確定要素が大きくなる。リスクと不確定性を引き下げるためにはより高額の取引費用がかかり、金融仲介機関は独自の技術を通じて規模の経済を実現できる。2つ目は、情報の非対称性の存在が、逆選択とモラルハザードをもたらす。金融仲介機関は情報の生産加工と口座の監督・コントロールなどを通じて逆選択とモラルハザードという2つの問題を緩和できる。

 検索エンジン、SNS、モノのインターネット、モバイルインターネット、クラウドコンピューティング、ビッグデータなどの新興情報技術は、従来型の情報の生産、伝達、加工・利用の方式を変え、情報の非対称性を打ち砕き、情報の取得・加工コストを引き下げた。このことは、取引仲介の仲介機関離れを加速させた。未来の金融モデルは、資金の需要と供給の双方が自由にマッチし、双方向に交流し、ソーシャル化すると見られる。しかし、金融業には情報の非対称性と同時に、知識の非対称性も存在する。金融商品はリスクを持つため、カスタマイズ化されたソリューションのコンサルティングには市場がある。しかし、ITは人類の知識を構造化し、機械学習、IT知能の発展に伴い、サービス仲介の一部の機能も徐々にIT知能に取って代わられることだろう。

3.3 ビッグデータと電気通信

 100年あまりの歴史を持つ電気通信業界は今、ビッグデータがもたらす新たなチャンスと挑戦に直面している。たとえば中国移動では、每日トランザクションシステムから生み出される構造化データだけでも8TBに上る。圧縮後のインターネットログデータは400TBに達し、オリジナルのシグナリング量に至っては数PBから数十PBに達する。もしこれらのデータをコストと見なせば、通信キャリアは大きな投資圧力に直面することになるが、角度を変えて、これらのデータは収益を生み、価値の増殖・維持ができる資産と見なせば、新たな分野を開拓することができる。

 通信キャリアは質の高いインターネット通信とフレキシブルな料金計算方式を提供するために一連のITシステムを開発した。これにはインターネット管理システム、ディープ・パケット・インスペクション(DPI)、シグナリング解析システム、料金計算システム、顧客関係管理システム、経営情報システム(MIS)[12]などが含まれる。これらのシステムの設計の目的はもともと、企業の内部管理だった。しかし、気づかぬうちに蓄積された膨大なデータが、通信キャリアのビジネスモデルの強化や、他業界・企業のビジネスモデルの競争力強化など、他の分野に活用できることが分かった。これこそが、ビッグデータの持つ典型的な「データ外部化」の特徴である。すなわち、ITシステムの設計者が思ってもみない場所でデータの価値が発揮される可能性がある。ゆえにいかなる企業・ITシステムも、データをできるだけ保存しておくべきである。

 通信キャリアはこのほか、固定電話、モバイル通信、ブロードバンドなど基礎電気通信サービスを提供すると同時に、音楽、書籍、ダウンロード、アニメ・漫画・決済など一連の付加価値サービスを提供している。これらのインターネットとモバイルインターネットのアプリケーションは、顧客にサービスを提供すると同時に、大量の情報を蓄積している。

 通信キャリアは本質的に情報・コミュニケーションのルートと架け橋を提供するものであるため、はじめから生産・経営におけるデータの指導的役割を重視してきた。ビッグデータの台頭により、通信キャリアは新たな分野を開拓した。電気通信・メディアの市場調査会社Informa Telecoms & Mediaの2013年の調査結果[7]によると、世界の通信キャリア120社のうち、48%が現在ビッグデータに取り組んでおり、ビッグデータに取り組んでいないキャリアの60%が、2年以内に取り組む計画という。詳細は図1を参照のこと。

図1

図1 調査結果

 このほか、同調査によると、ビッグデータのコストがキャリアのIT予算に占める割合は平均10%で、今後5年以内に23%前後まで上昇する見通しであることがわかった。モバイルキャリアもビッグデータに積極的に取り組んでいるが、総合通信キャリアの投資のスピードには及ばない。詳細は図2を参照のこと。

図2

図2 調査結果

 電気通信キャリアによるビッグデータの活用は、対内的と対外的の2つに分けられる。対内的なビッグデータの活用によるビジネスモデルの強化は、具体的にはビッグデータを使ったインターネットの管理と最適化、市場によって細分化された商品の研究開発、精確なマーケティング、顧客維持、企業の詳細な管理などが含まれる。

 対外的な活用を見ると、国内外の通信キャリアは現在データの収益化に取り組んでおり、ビッグデータを使って新たなビジネスモデルを発掘したり、社外におけるデータの社会的・経済的価値を発揮させている。

 全体的に見て、電気通信業界のビッグデータ活用は依然として模索の段階にあり、今後数年間は、対内的な活用であれ、対外的なビッグデータの商業化であれ、大きな成長の余地がある。しかし、電気通信業界のビッグデータの最大の障害として、データの孤島化が深刻であることが挙げられる。国内の通信キャリアは地域化運営を行っているため、電気通信企業のデータはそれぞれ各地区の支社に保存されており、支社内の異なる業務のデータすらも、共有されていない場合がある。インターネットとビッグデータには境界がない。3大通信キャリアのビッグデータの発展方針はそれぞれ異なるが、総じて取り組みを加速させている。

 中国移動は「モバイル通信の専門家」から「モバイル情報の専門家」へと戦略を転換させた。これはモバイルインターネット時代の流れに合わせた変化だ。この戦略の基礎となるのは、中国移動がビッグデータとクラウドコンピューティングの研究で得た発展方向である。中国移動は大雲2.5プラットフォーム上で分析型のPaaSを活用し、BC-Hadoopを利用してビッグデータ処理プラットフォームおよび膨大な構造化データ保存システム(BC-Hugetable)を構築、同時に並列データマイニングシステム(BC-PDM&ETL)およびビジネスインテリジェンスプラットフォーム(BI-PAAS)などのビッグデータ応用プラットフォームを建設し、将来のビッグデータ応用とサービスに向け準備を整えた。

 中国聯通(チャイナ・ユニコム)は2010年のデータ大集中戦略でビッグデータへの取り組みを発表した。2009年、中国聯通の3G商用サービスが正式に始まり、「統一のブランド、統一の業務、統一のパッケージ、統一料金、統一の端末政策、統一サービス標準」という「6つの統一」戦略を打ち出した。これは、中国聯通がデータ大集中の路線を歩むことを意味する。2012年末、中国聯通はすでにビッグデータとHadoop技術をモバイル通信ユーザーのインターネット記録の集中照会・分析サポートシステムに導入することに成功した。現在、中国聯通は新たに100億元を重慶ビッグデータ計画に投資しており、そのビッグデータ発展・業務モデルチェンジに向けた決意の程が伺える。

 中国電信(チャイナ・テレコム)は早くからモバイルインターネット時代の到来を意識しており、2005年に戦略モデルチェンジ構想を打ち出した。その主な目的は、モバイルインターネット時代の課題に対応することだ。中国電信はすでに「スマート都市」発展戦略を発表しており、モノのインターネットとビッグデータはその重用な技術だ。これらの戦略に基づき、中国電信の位置づけはスマートパイプの主導者、総合プラットフォームの提供者、コンテンツ・アプリケーションの参与者となった。「トラフィック・マネジメント」の面では、中国電信は「通話トラフィックのマネジメント」から「通信トラフィックのマネジメント」へとモデルチェンジを遂げた。中国電信もビッグデータ技術を駆使し、IDCサービスおよびスマート都市建設に取り組んでいるほか、モバイルインターネットとの組合せによるビジネスチャンスを発掘し、モデルチェンジの道を再構築している。

 全体的に見て、ビッグデータの活用による通信キャリアの業務モデルチェンジは、将来の電気通信市場の重要な方向性となるだろう。通信キャリアが技術を進歩させ、膨大なデータの潜在力を常に発揮できるようになれば、未来のモバイルインターネット時代に最大の勝者になる。このため、電気通信業も必然的に大部分の投資をビッグデータ応用市場に向けることになる。CCIDコンサルティングは、中国電気通信業のビッグデータ市場は今後急速な発展を遂げ、その成長率はビッグデータ全体の成長率を上回り、2015年には、電気通信業のビッグデータ市場規模が25億3千万元に達すると予測している。

3.4 ビッグデータと健康・医療

 コンピュータ・インターネット、情報技術の発展および現代医学技術の進歩に伴い、医療・健康関連データも急速に増加しつつある。膨大な量の医療・健康関連のビッグデータをいかに効果的に収集、処理、保存、交換、マイニング・分析し、これらを医療従事者の速やかで正確な診断、個人の健康モニタリング・ケア、診察アドバイスに役立てるか、あるいは医療関連機関の管理と意思決定に向け、ビッグデータによる分析とシステムサポートをいかに提供するかは、医学とコンピュータ科学分野をまたぐ重要な研究内容であり、産業発展の方向性となっている。国家関連部門は健康・医療ビッグデータをめぐる一連の関連プロジェクトと課題を立ち上げている。これには、科学技術部の863計画と国家科学技術サポート計画の一連の関連プロジェクト、中国科学院重点プロジェクト・医用画像情報のビッグデータ関連研究および地方から資金提供を受けたプロジェクト(山東省が支援する医療ビッグデータ管理および分析応用システムプロジェクトなど)が含まれる。これらのプロジェクトは、ビッグデータ技術に基づき、医療・健康・生物など関連産業の発展を推進することを目的とする。

 健康・医療業界は医療衛生機関、医療機器メーカー、医療管理部門、個人という4タイプの機関・グループに関わる。健康・医療の情報化とサービス水準は、個人の生活の質に関わる。健康・医療業界の情報化の現状は以下の通り。[13]

 まず、情報化技術の飛躍的な発展に伴い、医療業界の情報化も絶えず加速している。世界的には、医療の浪費削減、医療效果の改善に向けたビッグデータマイニングと分析がすでに始まっている。国内の医療業界も長年の建設と発展を経て、病院では現在、病院情報システム(HIS)、電子カルテ(EMR)、病院実験室情報システム(LIS)、医用画像管理システム(PACS)および放射線情報管理システム(RIS)を中心とする総合的な情報システムが確立されており、各レベルの病院の医療サービス水準が大きく高まった。医療データの規模と種類が急速に増加する中、従来型の病院内各システム間のデータ交換、保存、処理、サービスモデルは、新たな情勢における医療・健康ビッグデータサービスのニーズへの適応で、大きな課題に直面している。具体的には、種類が多く(非構造化、半構造化、構造化データ)、規模が大きい(TB~PBクラス、あるいはそれ以上)医療・健康ビッグデータを、いかに効率的かつ経済的に保存・処理し、病院の日常業務に役立てるか。いかにして医療・健康ビッグデータの共有と交換を実現し、医療・健康データ資源の使用率を高め、患者の診察をより便利にし、診察時間とコストを引き下げるかなど。

 次に、個人向けの健康サービスはまだ模索の段階にあり、医療・健康サービスの水準を高めるためには健康サービス面で新たな試み・模索が必要である。すでに、様々なヘルスケア機器や医療サービスがコミュニティや家庭に普及し、人々の健康消費モデルは従来のような単一的な基本医療消費から、医療、ヘルスケア、体質向上など、様々な形式が共存する医療・健康消費モデルに転換した。しかし、一人ひとりが享受できる医療衛生資源は少なく、限りある医療資源では絶えず増加する医療ニーズを満たすことができない。高効率・低コストの医療・健康サービスを提供するためには新たな情報技術を通じて健康サービスのレベルを向上する必要がある。現在世界では、クラウドコンピューティング技術を駆使した健康・医療ソリューションが登場している。これには、医療分野のモノのインターネット、医療ポータルサイト、スマートフォンアプリおよび健康モニタリングソフト、データ管理、IP・無線通信モジュール、端末の組み込みソフト、および短距離無線ゲートウェイのハードウェア製品といった一連のソフト・ハードが含まれ、クラウドコンピューティングセンターモデルに基づき、モバイル医療・健康モニタリングと医療サービスを提供している。

 さらに、医療管理部門および医療関連企業・機関の管理と科学的な意思決定に向けて、より多くの健康・医療ビッグデータマイニングと分析技術のサポートが期待される。ビッグデータ分析を十分に活用することで、関連政策の制定の指導、流行性疾患の予防、医療サービス関連企業の商品計画と意思決定などに役立てることができる。

 健康・医療の分野におけるビッグデータの課題は、健康と医療に関するデータが非常に膨大かつ複雑であるため、従来型のソフトウェア・ツール・方法ではこれらのデータの管理・処理が難しいことである。健康・医療分野のビッグデータには、診断データ、臨床的意思決定に関するデータ(医師の書いたカルテ、処方箋、医用画像、その他検査、薬品、保険関連のデータなど)、患者の電子健康記録データ、各種医療センサーのデータ(モバイルセンサーによる心電図データなど)、ソーシャルメディアの健康・医療関連データ(Twitter、微博、ブログ、ウェブサイト上の健康と医療関連データなど)などが含まれる。健康・医療ビッグデータの分析と利用は重要な価値を持つ。例えば、データ間の関係性を発見し、データモデルと変化の趨勢を理解することで、医療效果を改善し、患者の命を救い、医療コストを削減できる。また、ビッグデータに基づき疾患の早期発見、人口・健康の管理、ヘルスケア詐欺の発見が可能だ。さらに、過去のデータを参照することで、どの患者に外科手術が必要か、必要でないか、あるいは患者の治療結果・発症リスクなどを予測することができる 。

 情報技術の急速な発展に伴い、医学と健康関連のビッグデータの効果的な保存と処理が可能となった。膨大な数の医療・健康関連ビッグデータをいかに効果的に収集、処理、保存、交換、マイニング・分析し、これらを医療従事者の速やかで正確な診断、個人の健康モニタリング・ケア、診察アドバイスに役立てるか、あるいは医療関連機関の管理と意思決定に向け、ビッグデータによる分析とシステムサポートをいかに提供するかは、医学とコンピュータ科学分野をまたぐ重要な研究内容であり、産業発展の方向性となっている。

 予測される医療・健康ビッグデータの今後の発展趨勢は、以下のとおり。

  • 1)医療・衛生機関は引き続きビッグデータの枠組みと技術を駆使し、既存の医療情報化水準を引き上げ、異種医療・健康ビッグデータの効率的な処理とサービスを実現する。医療・健康データは種類が多く(非構造化、半構造化、構造化)、規模が大きい(TB~PBクラス、あるいはそれ以上)ため、ビッグデータ技術は病院の日常業務をサポートし、医療情報化のコストパフォーマンスと信頼性を高めることができる。同時に、医療改革の深化に伴い、病院の情報資源の処理・活用に対する病院と社会のニーズも高まっており、医療データの規模と種類も急増している。従来型の病院内各システム間のデータ交換、保存、処理、サービスモデルでは、新たな情勢下の医療・健康ビッグデータサービスのニーズを満たせないという問題を、ビッグデータ技術によって解決することができる。今後は、医療・健康ビッグデータのマイニング・分析を基礎に、疾患の診断、治療・予後のプロセスで補助的なサポートを提供し、より良い治療サービスを提供することになる。
  • 2)社会経済の発展に伴い、質の高い個人向け医療・健康サービスのニーズが高まっている。一方、医療・健康資源には限りがあるため、ビッグデータ技術を駆使したより良い個人向け健康サービスや、カスタマイズ化された医療サービスには発展の余地がある。クラウドコンピューティング技術に基づくヘルスケアサービスは将来、個人向けのモバイル医療・健康モニタリングサービスや診察アドバイスを提供することになる。
  • 3)地域性の医療衛生管理機関、全国衛生管理機関を含む医療管理機関が、ビッグデータ技術をより良く活用して管理・意思決定、資源の手配、流行性疾患の予防、合理的で科学的な緊急処置を実現するようになる。
  • 4)医療・健康ビッグデータと個人は密接な関連を持つため、その安全とプライバシー保護問題は、管理制度と保障技術の2つの面にとって非常に重要と言える。クラウドコンピューティングプラットフォームに基づく開発と応用により、多くのデータがクラウド上に保存され、処理、検索が行われている。ゆえに、医療ビッグデータ検索のスケーラビリティ、信頼性、効率性を解決する一方で、データ検索・利用の安全性とプライバシー問題を考慮する必要がある。

その4へつづく)

参考文献:

[9]王元卓、 靳小竜、 程学旗. インターネットビッグデータ: 現状と展望 [J]. コンピュータ学報、 2013、 36(6): 1125−1138.

[10]Grobelnik M. Big data computing: Creating revolutionary breakthroughs in commerce、 science、 and society [EB/OL]. http://videolectures.net/eswc2012_grobelnik_big_data/、 2012.

[11]Big Data [J]. Nature、 2008、 (7209): 1-136.

[12]Manyika J、 Chui M、 Brown B. Big data: The next frontier for innovation、 competition、 and productivity [M]. McKinsey Global Institute、 2011.1-137.

[13]Yu H、 Wang D. Research and implementation of massive health care data management and analysis based on hadoop[R]. IEEE、 2012. 514−517.


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