第106号
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グラフェン製宇宙船、太陽光による推進も可能

2015年 7月10日(中国総合研究交流センター編集部)

 グラフェンの宇宙空間への応用は、グラフェンの特性を存分に発揮できるものである。炭素単原子層であるグラフェンは、光エネルギーの動力への転換も可能で、燃 料を基礎動力とする宇宙船が不要となる日が来るかもしれない。

 グラフェンは、科学者が鉛筆とセロテープを使って研究をしていた際の偶然の産物だったと言われる。グラフェンは平面構造を呈し、高い強度を持ち、電気伝導性と熱伝導性も優れている。天 津の南開大学のYongsheng Chen氏らの研究チームは長期にわたって、グラフェンの特性を保った大型炭素配列の研究に携わってきた。研究者らは今年初め、「グラフェン海綿」に 関する研究成果の一部を発表した。「グラフェン海綿」は一種の軟湿材料で、シワの寄ったグラフェン酸化物を融解して作り出したものである。

 グラフェン海綿のレーダー切断の際、研究者らは、光が材料を前方に移動させることに気付いた。レーザーによる単分子の移動は知られているが、数センチメートルある海綿の移動は想定外だった。

 研究チームは海綿グラフェンを真空に置き、異なる波長と強度のレーザーガンを照射した。レーザーは、海綿の塊を上方に40センチメートル移動させた。さらにレンズを通した普通の光の照射でも、グ ラフェンの移動に成功した。

 グラフェンの移動はいかに可能となるのか。一つの解釈は、物体が太陽帆の働きを演じるというものである。光子は運動量を物体へと移転し、物体の移動を推進する。真空環境下では、微 小な作用であっても航空機の推進力となりうる。カリフォルニア州パサデナ市の惑星協会でもこのほど、小型の太陽帆の測定実験が行われた。この実験は、光子が持つ巨大なエネルギーを確かめるものとなった。

 研究チームはさらに、レーザーがグラフェンの一部を気化してグラフェンに炭素原子を排出させるというもう一つの解釈を否定した。

 研究者らは、グラフェンがレーザーのエネルギーを吸収し、価電子を形成するものと考えた。グラフェンが一定以上のエネルギーを吸収できなくなり、余った電子を放出するようになると、海 綿は逆方向へと移動した。電子の放出がなぜランダムでないのかは明らかでないが、研究チームはすでに、グラフェンがレーザーの照射を受けると電流が発生するという結論を下している。

 グラフェン海綿を利用すれば、光エネルギーを駆動力としたハイテク太陽帆宇宙船推進系統の製造も可能となる。このような宇宙船の推進力はロケットの化学的な推進力よりは小さいが、放射圧ははるかに大きい。 

 マサチューセッツ工科大学のPaulo Lozano氏はこれについて、「最良のロケットは燃料の不要なロケットだ。グラフェンをエネルギーとした宇宙船というのは興味深いアイデアだ。こ れを実現するには、宇宙船に正の電荷を形成させ、電子を中和する必要がある。さもなければ宇宙船にダメージが加わる可能性がある」とコメントしている。


※本記事は新材料在線より許可を得て翻訳・転載したものである。
原文:http://www.xincailiao.com/html/weizixun/xianjinjiegoucailiao/2015/0601/4047.html