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中国における産学研連携の概況(その8)

2015年 9月 1日 孫福全(中国科学技術発展戦略研究院院務委員)

その7よりつづき)

5.産学研連携と地域繁栄

5.1 広東産学研連携の方法と事例

 2005年9月、広東省と教育部は「自主革新能力を向上させ、広東の経済社会の発展を加速させるための協議」に調印した。ここから、省と部の協力による産学研連携推進の試みがスタートした。

 2006年からは、広東省の産学研連携の規模も徐々に拡大し、「3部2院1省」(教育部、科学技術部、工業・情報化部、中国科学院、中国工務院、広東省)の協力モデルが形成され、その成果も顕著であった。 

多様なイノベーションプラットホームの構築 [1]

 2006年から2013年にかけて、広東省は1600の多様なイノベーションプラットホームを構築した。その中には、広 東省の企業と省内外の重点高等教育機関*の科学技術研究所が共同で設立した東莞華中科技大学製造工程研究院、深圳清華大学研究院、深圳先進技術研究院が含まれ、そ の他にも20の地域経済の向上を目指す総合的研究院、1200の企業研究開発センターを設立した。また、中小企業の起業を支援するイノベーションプラットホームを設立、276社の起業を支援し、1 8の企業に省レベルの重点実験室を新設した。

 さらに、国レベルの実験室の支部機関の設立を積極的に推進し、80の国家重点実験室、国家工程技術センターの支部が広東に設置された。134の院士研究開発ステーション、1 01の産学研イノベーション連盟も設立され、広東省は各種リソースが集積する場となり、産学研連携による長期的に収益が得られる仕組みの構築を促進した。

専門的技術を持つ革新的人材の確保

 多様な産学研連携によるプラットホームを基盤に、2010年から2013年にかけて、57のイノベーション機関を立ち上げている。院 士研究開発ステーションには110名の院士と550以上の機関から中核技術者を招き、企業に対しては2600名ほどの科学研究に携わる人材を育成した。また、科学技術者派遣ステーションを通じ、全 国から11回にわたり、281に及ぶ高等教育機関、研究開発機関から6200名の技術者派遣を受け入れている。

 さらに、産学研連携によるプラットホームの構築は、海外及び香港、マカオ、台湾地域の23の高等教育機関の注目を集めた。こうした取り組みにより、全 国的レベルでの産学研連携のネットワーク化と人材の確保が進み、広東省の人材基礎が確立したのである。

多くの産業に共通する重大な技術課題への挑戦

 産学研連携による専門プロジェクトの実施以来、経済構造の整備や発展に向けた施策の転換、および産業競争力の向上をメインラインとして密に寄り添い、産業に共通する重大な技術革新に着目した。ハ イテク電子情報、新材料、新エネルギー、省エネ、バイオ医薬など先端技術を必要とする領域においては、産学研によるイノベーション協力モデルを構築し、産業共通の核となる技術の開発に取り組み、関 連産業の発展を推進した。

産学研連携によるイノベーション協力モデルの導入

 科学技術部の万鋼部長は、広東省は産業の技術革新を支援することから着手し、イノベーションプラットホームの構築を推進、産業の共通技術とコア技術の研究開発に注力したことで、良 好な成果を上げているとした。

 広東省の産学研連携の実践に注目した天津市、湖南省、雲南省、安徽省、青海省などの省や市の関連する責任者はグループで視察に訪れた。また、学術界でも広東省の産学研連携への関心は高まり、C NKI論文データベースには、2006年以前には10編足らずだった関連論文が、毎年70編以上収められるようになり、2011年には108編に達した。

 また、広東省は国や省のニーズに対応するため、体制の検討・改善を繰り返してきたことで、産学研連携の仕組みが徐々に形成されるようになった。

高レベル協議の需要により動き出すトップレベル設計体制の構築

 「3部2院1省」の主な責任者は毎年開催される全国会議や視察の機会を利用し、産学研連携の具体的な課題について指導を行っている。国や省の実情を把握した上で、省部の産学研連携の基盤作りに着手、地 方政府が区域を横断して協力することで、イノベーションリソースの適正配分が行えるよう適切に設計を行っている。また、省・部の産学研連携を管理指導する部門を設置し、具体的な業務にあたらせた。

多主体による連携関係の開放的な協力体制の構築

 省や市、大学や地域などによる多層的な連携、地方政府、高等教育機関、企業、研究機関、第三者機関などによる連携など、多層的、多主体の連携体制が次第に形成されていった。また、省・部には、産 学研連携を管理・指導する部門が設置され、産学研連携の関連業務遂行の責任を担った。各地の市でも、同様の部門、機関が相次ぎ設置された。

点、線、面による産学研連携を牽引するシステム体制の構築

 科学技術特派員を企業に派遣し、同時に科学技術特派員研究開発ステーション、企業院士研究開発ステーションなどの設立を奨励することを点とし、産学研連携イノベーション連盟の構築を線とし、さ らに産学研連携モデル基地を面として、点、線、面が融合した仕組みを形成することで、広東省の産学研連携を着実に推進、深化させた。

産学研連携を持続的に推進する仕組みの構築。

 産学研連携による専門プロジェクトの実施過程においては、その推進にともない、時間とともに、その時々の経済社会のニーズに合わせる必要が出てくる。そのため、当初の計画の進展や拡張も起こり得るため、適 宜、各種連携によるリソース活用方式を見直している。当初は、専門プロジェクトが企業と高等教育機関との連携を牽引していたが、技術的な課題の解決のためには、イノベーションプラットホームの構築や、高 等教育機関と研究開発機関で組織する科学研究チームをはじめとする長期的に成果を上げる仕組みの構築が必要となった。分散型、短期型の連携から、一体化、長期化へと徐々に転換していき、産 学研連携が持続的に推進できるようになった。

 また、それぞれの機関の支援の方式も変化している。技術者の派遣はプロジェクト支援から技術者派遣研究開発ステーションへと転換、イノベーション連盟の支援も、各モデル基地の建設を担うことから、各 業界の協会組織へと転換した。

その9へつづく)


[1] 「広東産学研合作:創新駆動発展的重要抓手」『科技日報』,2014年3月。


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