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中国の大学サイエンスパークについて(その2)

2015年 9月24日  康琪(中国科学技術発展戦略研究院体制管理研究所 シニア研究員)

その1よりつづき)

1.3 急速発展段階(2001—2010年):上から下への支援と下から上への探索

 2000年代に入ると、科技部と教育部、地方政府の強力な推進を受け、中国の大学サイエンスパークは急速発展の段階に入った。2000年11月、科技部と教育部は「国家大学サイエンスパーク管理試行法」を制定し、国家級大学サイエンスパークの申請・評価・認可・管理・審査を規範化した。2001年3月、科技部と教育部は北京で最初の「国家大学サイエンスパーク認定評価会」を開催し、各方面の専門家を招いて、清華大学サイエンスパークなど15カ所の国家大学サイエンスパーク試行地区と重慶大学サイエンスパークの評価・認定を行った。同年5月に打ち出された「国家大学サイエンスパーク『十五』(第10次5カ年計画、2001-2005)発展計画綱要」は、大学サイエンスパークの発展を規範化する国家の最初の綱領的政策文書となった。2002年5月、科技部と教育部は清華大学サイエンスパークなど22大学サイエンスパークを最初の国家級大学サイエンスパークと認定した。2006年11月、科技部と教育部は「国家大学サイエンスパーク認定・管理法」を編制し、国家大学サイエンスパークやインキュベーション企業の申請・認定のための数値標準を規定した。同年12月には「国家大学サイエンスパーク『十一五』(第11次5カ年計画、2006-2010)発展計画綱要」が打ち出された。2007年8月、財政部と国家税務総局は「国家大学サイエンスパーク関連税制政策の問題に関する通知」を発布し、国家大学サイエンスパークの優遇税制政策の具体的な基準を打ち出した。2010年10月には「国家大学サイエンスパーク評価指導意見」が打ち出され、評価と結果の発布制度が設けられ、国家大学サイエンスパークの発展実績の評価指標体系と評価方法が制定された。さらに「国家大学サイエンスパーク認定・管理法」の改訂も行われた。

 この段階の大学サイエンスパークの発展の主な特徴は次の2つに反映されている。第一は、大学サイエンスパークの発展が主にその数量と規模の拡張に表現され、総体的な実力がますます高まったことである。国家級と省級、大学級の三つの級からなる大学サイエンスパークの体系がほぼ形を整えた。2005年末の時点で、国家大学サイエンスパークは50カ所に達し、2002年と比べてその数は2倍となった。2010年末までに、全国の国家大学サイエンスパークは86カ所に達し、24省(自治区・直轄市含む)の134大学にかかわるようになった。これら86サイエンスパークの敷地面積は814.49万平方メートル、資金総額は125.71億元、管理機構の職員は2343人、企業の従業員は12.76万人に達した。地方政府や大学による大学サイエンスパークもこの段階で設立され、成長していった。

 第二に、大学サイエンスパークの発展が、自発的なものから、政府による全体的な計画・規範化と大学の自主的な試みとを同時に重視したものとなり、政府・社会・大学による共同推進がなされたことが挙げられる。まず、大学サイエンスパークの建設が国家の戦略的発展の重要な一部となり、大学サイエンスパークの建設に対する政府の規範化と誘導とが強化された。「国家大学サイエンスパーク計画綱要」の制定を通じて、大学サイエンスパークの建設の段階的な目標と建設の重点とが明確化され、その発展方向の誘導が行われた。次に、政策措置による奨励と誘導が重視され、科学技術計画プロジェクトの支援という単純な措置が、認定・管理・税制優遇・評価などにわたる多方面の政策措置へと広げられた。この時期は政策制定がより頻繁に行われるようになり、政策支援の重点もより焦点を絞ったものとなった。認定と管理をめぐっては、「国家大学サイエンスパーク認定・管理法」の整備と改訂がしばしば行われ、国家大学サイエンスパーク参入の基準と条件とが規範化され、国家級大学サイエンスパークの模範としての役割が発揮された。実績の評価をめぐっては、「国家大学サイエンスパーク評価指導意見」が打ち出され、評価と結果の公表の制度が確定され、国家大学サイエンスパークの発展の実績評価のための指標体系と評価方法とが定められた。奨励政策をめぐっては、「国家大学サイエンスパーク税制政策の問題に関する通知」が発布され、国家大学サイエンスパークの税制優遇政策の具体的な基準が打ち出された。

1.4 安定上昇段階(2011—現在):能力建設と政策設計の体系化

 現在、中国の大学サイエンスパークの発展は安定した上昇段階に入っている。2011年には、「国家大学サイエンスパーク『十二五』(第12次5カ年計画、2010-2015)発展計画綱要」が打ち出され、「十二五」の時期における国家大学サイエンスパークの建設に対する科学的な指導が行われた。2013年末までに9回にわたって94カ所の国家級大学サイエンスパークが認定された。大学サイエンスパークはすでに、国家イノベーション体系の建設を支える重要な力となっている。この段階におけるその発展には、次のいくつかの新たな変化が見られる。

 第一に、大学サイエンスパークの規模の拡張が安定に向かったこと。その建設の重心は能力の向上へと移り、特色あるイノベーションサービスのブランドの建設が目指された。またイノベーションサービスの中心は、インキュベーションや生産のための物理的な空間の提供から、専門的な研究開発サービスや技術移転・転化サービス、起業支援などへと移った。清華サイエンスパークは、高成長型のサイエンス企業に対して「ダイヤモンド計画」と名付けられた独自のインキュベーションサービスを提供した。その目的は、世界一流の技術と業界をリードする地位、中国さらには世界への影響力を誇る「ダイヤモンド企業」を育成することとされた。

 第二に、イノベーションネットワークの構築が強調されたこと。大学の特色ある資源を土台として、各種の専門技術イノベーションサービスプラットフォーム(大学・企業の協力による技術開発機構、専門技術コンサルティング・サービス機構、特色教育訓練機構、情報交流・評価機構、学生起業・アルバイトサービス機構など)を建設し、業界ネットワークサービス機構を設立し、これらのプラットフォームの役割の相互補完と統合とを促進し、蓄積された資源の効果的な組み合わせと活用を推進する方針が取られた。さらに、大学サイエンスパークの開放性が強調され、大学サイエンスパークと地方政府、地域外の企業、研究所、大学、ハイテク区などとの相互作用の強化が奨励され、生産要素の流動と資源の集積がさらに加速された。

 第三に、制度環境の建設がさらに強化されたこと。政府の政策による支援は多様化と体系化を増し、実施の重点は、税制優遇政策から産業政策・投融資政策・税制政策・財政政策・知識産権・対外貿易などの制度資源の統合へと切り替わり、より焦点の絞られた政策の制定における地方の創造性と主体性とがさらに強調されるようになった。

図1

図1 中国国家大学サイエンスパークの発展プロセス(1989—2015年)

その3へつづく)


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