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中国の大学サイエンスパークについて(その3)

2015年 9月28日  康琪(中国科学技術発展戦略研究院体制管理研究所 シニア研究員)

その2よりつづき)

2 大学サイエンスパーク発展の制度環境

 中国の大学サイエンスパークの発展は、制度による支援と切り離すことはできない。政府や大学、大学サイエンスパークは、各種のイノベーション政策の打ち出しを強化してきた。現在までに、戦略計画や税制優遇、研究成果の転化促進、科学技術向け金融など、中央から地方の多様な主体が参加し、多様な政策ツールからなる政策体系が形成されている。

2.1 戦略計画の指導作用の発揮、各種の要素の集積と流動の促進

 大学サイエンスパークの発展促進は、中国の科学技術イノベーション戦略計画の重要な内容である。一方では、大学サイエンスパークの発展指導が国家の総合的な科学技術発展計画に組み込まれ、「国家『十二五』科学・技術発展計画」において、技術革新・成果転化・イノベーション促進のための大学サイエンスパークなどの拠点の建設と配置の強化が打ち出された。もう一方では、大学サイエンスパーク発展のための5カ年計画が制定され、これが制度化された。

 科技部と教育部は2011年8月、「国家大学サイエンスパーク『十二五』発展計画綱要」を共同制定し、「十二五」期間における国家大学サイエンスパークの発展方向・発展目標・重点任務・制度保障を明確化した。発展目標はこの中で次のように定められた。「2015年までに全国の大学サイエンスパークの総数を200カ所に拡大し、国家大学サイエンスパークの総数を100カ所とする。パークの利用可能面積は1000万平方メートルにまで広げ、委託専門サービス機構の総数を1000機構、育成対象の企業を8000社に増やす。『十二五』期間中、巣立っていった企業の累計は5000社、サービス対象企業は10万社、科学技術成果の転化は1万件、革新・起業人材の育成は10万人とする。国家大学サイエンスパークの学生向け科技起業実習拠点は80カ所、科学技術分野の起業を目指す学生の育成企業は3000社とする」

 「十二五」期間に国家大学サイエンスパークの発展を加速するには、以下の4つの方面から体制・制度の改革と政策設計を強化する必要がある。第一に、大学のイノベーション分野での強みを十分に発揮させ、優勢な学科を中心として、技術の移転と研究成果の転化を促進する。大学の特色ある資源を土台に、各種の専門技術イノベーションサービスプラットフォーム(大学・企業の協力による技術開発機構、専門技術コンサルティング・サービス機構、特色教育訓練機構、情報交流・評価機構、学生起業・アルバイトサービス機構など)を設立し、産業ネットワークサービスプラットフォームを構築する。国家大学サイエンスパークによる企業のニーズと技術の供給とのドッキングや研究成果と金融資本とのドッキング、イノベーション人材と科技型企業とのマッチングを誘導し、国家大学サイエンスパークの総合的なサービス水準を向上させる。国家大学サイエンスパークによる地域の戦略連盟や業務連盟の形成を奨励し、連携と協同を強化し、地域のイノベーション要素の集積とその効果を実現する。

 第二に、イノベーション資源を統合し、大学の教員と学生の科学技術分野の起業を推進し、科技型企業の成長を促す。イノベーションサービス体系を整備し、大学の資源のパーク内企業に対する開放度を拡大し、学内の研究開発の力を統合し、研究開発や設計などの公共サービスプラットフォームを構築し、中小企業による研究開発機構の自社設立や大学との共同設立を奨励し、企業のイノベーション能力を向上させる。イノベーション環境を改善し、パーク内での起業サービス機構の新設や出先機関の設立を促し、企業の運営管理・市場開発・資格認証などの面での問題を解決し、科技型の中小企業を養成する。金融・投資機構との協力を深め、投融資サービスプラットフォームの設立を模索し、貸し付けや株式参加、担保などの方式を通じてパーク内企業の発展に優れたサービスを提供する。クリエイティブ・設計・科技サービスなどの新興分野の企業の育成を模索し、新たな競争力とイノベーションの活力を育てる。国家大学サイエンスパークによる特色ある産業クラスターの形成を支援し、科学技術サービスの新たな業態を探索し、「科技サービス業特別行動」への参加を誘導する。

 第三に、人材育成を強化し、起業・就業を促進する。イノベーション・起業人材の養成という機能を強化し、パーク内のイノベーションカルチャーや豊富なイノベーション資源、良好なイノベーション環境などの長所を活用し、大学生の科技起業実習拠点を建設する。「学生科技起業基金」の設立を検討し、パーク内の企業による学生の実習や就業の受け入れを支援し、学生のパーク内でのイノベーションや起業を支援し、イノベーションによって雇用を促進する。大学生によるパーク内での起業やイノベーションの実践を誘導・奨励し、大学生向けの起業支援基金の設立などの形式を通じて、学生の興した科技型企業に資金援助を提供する。すでにイノベーション・起業に従事している大学卒業生に対しては、人事代理などのサービスを提供し、より多くのイノベーション人材がパーク内で起業するようにする。「国家大学サイエンスパーク『十二五』発展計画綱要」は、大学生科技イノベーション実習拠点150カ所を建設し、国家大学サイエンスパークを土台とした大学生の科技起業実習拠点80カ所を認定する方針を打ち出している。

 第四に、サービス資源を集積させる。地域の経済発展に向けた重点産業へのイノベーション要素のドッキングや両者の相互作用を強化し、産業クラスターやイノベーションクラスター、戦略的新興産業の育成を促進する。地域の産業発展をめぐる重点分野については、ハイテク区やハイテク産業化基地、特色産業基地などの産業クラスターとの協力を強化する。大学を土台とした研究面での強みを発揮し、企業と大学による技術協力の展開を推進し、まとまった数の産業技術イノベーション戦略連盟を形成する。「国家大学サイエンスパーク『十二五』発展計画綱要」は、国家大学サイエンスパークによる「大学の科学技術成果の転化」「イノベーション・企業人材の養成」「地域経済発展」の3つを促進する特別行動(「三促進行動」)を実施し、模範となるサイエンスパークを重点建設することを打ち出している。

2.2 税制優遇政策の継続性の強化、イノベーション・起業の活力の刺激

 中国は、税制優遇政策の実施の安定性を重視し、政策の効果を継続させる措置を取った。2013年には「国家大学サイエンスパーク税制政策に関する通知」を発表し、国家大学サイエンスパークの受ける税制優遇政策の期間を延長した。2013年1月1日から2015年12月31日まで、▽条件にかなったインキュベーターは自ら利用する、または無償・有償で育成企業にリースする不動産・土地について、不動産税と都市使用税を免除する、▽育成企業への敷地や不動産のリース、インキュベーションサービスの提供で得られた収入については営業税を免除する、▽非営利組織の条件にかなったインキュベーターの収入については、企業所 得税法とその実施条例、関連税制政策の規定に照らして、企業所得税の優遇政策の対象とする――ことなどが規定された。

参考:地域レベルの大学サイエンスパーク税制優遇政策

 「江蘇省大学サイエンスパーク認定・管理法」(2007年)は、江蘇省大学サイエンスパークに対して、その認定の日から、営業税・所得税・不動産税・都市土地使用税を一時免除する政策が打ち出された。

 「イノベーション駆動発展戦略の全面的実施とイノベーション駆動発展戦略型省の建設加速に関する中共浙江省委員会の決定」(2013年)は、認定された省級以上の国家大学サイエンスパークの育成中企業が納めた付加価値税・営業税・企業所得税の地方保留分について、5年間は全額を企業に奨励金として返還することを定めた。

 四川大学サイエンスパークについては、各級政府が一連の税制優遇政策を設けた。大学サイエンスパークのハイテクプロジェクトの用地は割り当ての方式で提供することができ、土地譲渡の手続の必要のあるものについては、土地の譲渡金は最低限度を基準として徴収できるものとされた。大学サイエンスパークの建設プロジェクトについては、都市インフラ建設費が減免の対象となった。パーク内企業の納めた税収の地区所得分については、財政の別枠で取り扱い、大学サイエンスパークに返還されるものとされた。パーク内の新設企業については、利益を上げ始めた年から2年間は所得税が免除され、その後は15%減の税率で所得税を課税することとなった。パーク内企業の輸出製品の生産額が当該年度の40%以上に達するものは、10%減の税率で徴収するものとされた。パーク内企業で技術譲渡・技術コンサルティング・技術サービス・技術訓練などに従事するものについては、年間純収入の30万元以下の分については所得税を免税し、30万元を超える部分については法規通りに所得税を支払うものとした。

出典:各地区の大学サイエンスパークの資料を整理

その4へつづく)


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