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中国の大学サイエンスパークについて(その5)

2015年10月 6日  康琪(中国科学技術発展戦略研究院体制管理研究所 シニア研究員)

その4よりつづき)

3 中国大学サイエンスパークの発展の現状と特徴

3.1 大学サイエンスパークの全体状況

 2013年末までに、国家級大学サイエンスパークは94カ所に達し、その建設と発展は際立った成果を上げている。これら94カ所のサイエンスパークの敷地面積は776万平方メートルに達し、このうち企業インキュベーション用の建物は353万平方メートル、研究開発用の建物は94万平方メートル、生産用建物は189万平方メートルとなっている。インキュベーション基金の総額は9.4億元、管理機構の従業員は2469人。育成中の企業は8204社で、このうち2013年に新たに入居した企業は2028社、大学の教員・学生が設立した企業は2073社となっている。卒業企業は累計6515社で、そのうち37社が株式市場への上場を果たした。育成中企業の従業員は14.7万人、このうち新卒者の吸収は1.36万人だった。

 2013年、国家級大学サイエンスパーク94カ所の育成中企業が担当した各種の計画・プロジェクトは2051件で、このうち国家級プロジェクトは267件だった。育成中企業による特許の出願は1万1160件で、このうち発明特許は4761件だった。特許の取得は5598件で、このうち発明特許は1673件だった。国外の特許138件が購入された。育成中企業による研究成果の転化数は3755件で、このうち大学の研究成果の転化は1747件だった。

表

表1 中国国家大学サイエンスパークの主要経済指標(2004—2012年)

表

図2 中国国家大学サイエンスパークの発展(2004—2012年)

 現段階においては、大学サイエンスパークの数量と規模の拡張はほぼ落ち着いており、その重心は能力の構築へと徐々に移り、特色あるイノベーションサービスのブランドを打ち立てることが強調されている。大学の特色ある資源を生かして、各種の専門的技術革新サービスプラットフォーム(大学・企業の協力による技術開発機構、専門技術コンサルティング・サービス機構、特色ある教育訓練機構、情報交流・評価機構、学生の起業・アルバイトサービス機構など)を構築し、産業ネットワークサービスプラットフォームを設立することが重視されている。

3.2 大学サイエンスパークの構造的特徴

 地域分布から見ると、2011年時点で、国家級大学サイエンスパークは中国東部地区に50カ所、中部地区に9カ所、西部地区に16カ所、東北地区に10カ所ある。東部地区の内訳は、北京地区に15カ所、上海に11カ所、江蘇省に10カ所と集中し、その他の地域はいずれも5カ所未満にとどまっている。中部地区では武漢と長沙に5カ所が集中し、この地区の中心となっている。西部地区では四川と陜西、甘粛に最も多く、3省の合計は11カ所で、西部地区全体の69%を占めている。

 敷地面積から見ると、2011年時点で、国家級大学サイエンスパークの敷地面積は合計766.7万平方メートルに達している。このうち最大は西南交通大学サイエンスパークの134.96万平方メートル、最小はアモイ大学サイエンスパークの1400平方メートルだった。また国家級大学サイエンスパークの研究開発用建物の用地面積は129.73万平方メートルで、全体の16.9%だった。このうち最大は清華大学サイエンスパークの43.98万平方メートル、最小はアモイ大学サイエンスパークの800平方メートルだった。

 人材から見ると、2011年時点で、国家級大学サイエンスパークの管理人員は東部地区では1388人(全国数の57%)、中部地区では297人(同13%)、西部地区では391人(同18%)、東北地区では289人(同12%)を数えた。これらの人員の学歴構成を見ると、博士は148人、修士は513人、学士は1305人だった。人員最多は清華大学サイエンスパークの110人で、そのうち博士は10人、修士は34人、学士は48人だった。

 イノベーションの実績から見ると、2011年時点で、企業の累計育成数が100社以上に達した国家級大学サイエンスパークは20カ所あった。このうち累計育成数が200社以上だったのは、浙江大学サイエンスパーク(257社)と清華大学サイエンスパーク(233社)の2カ所だった。地域分布を見ると、育成企業数100社以上の20パークのうち、16カ所は東部地区、3カ所は中部地区、1カ所は西部地区に位置していた。工業総生産額を見ると、2011までに、国家級大学サイエンスパークの卒業企業の工業総生産額は合計763.01億元に達した。このうち総生産額100億元以上のパークは、浙江大学国家大学サイエンスパーク(152.71億元)の1カ所だった。年間工業総生産額が10億元を超えたパークは20カ所で、そのうち東部地区は12カ所、中部地区は3カ所、西部地区は1カ所、東北地区は3カ所だった。納税額を見ると、2011年、国家級大学サイエンスパークの納税額は12.28億元だった。このうち納税額が1000万元を超えたパークは29カ所あった。納税額が最高だったのは中国石油大学サイエンスパークで、同年の納税額は1.11億元に達した。地域別に見ると、納税額1000万元以上の29パークのうち東部地区は19カ所、中部地区は5カ所、西部地区は3カ所、東北部地区は2カ所だった。

図

図3 2008—2011年中国国家級大学サイエンスパークの育成中企業の状況

3.3 大学サイエンスパークの組織運営の特徴

 中国の大学サイエンスパークは多様化発展の傾向を示している。組織の運営と管理の面では主に、次のいくつかの特徴が見られる。

 第一に、設立主体の多元化。1大学が1パークを設立するというモデルのほか、複数大学が1パークを設立する、1大学が複数パークを設立するなどのモデルがある。大学が単独で設立する場合もあれば、地方政府またはハイテク開発区と共同設立する場合もある。例えば雲南省大学サイエンスパークは、多大学による1パークの設立というモデルを切り開き、「連携、開放、ネットワーク、バーチャル」などの特徴を持つパーク運営モデルを取っている。雲南大学や昆明理工大学、雲南農業大学など8大学と、パークの共同設立のメカニズムを形成し、各大学にサイエンスパークの分機構を設立し、大学の研究成果の実施と転化を共同で推進している。

 第二に、パーク建設モデルの多様化。キャンパスの使われていない土地を使った学校周辺パークもあれば、ハイテク区内に作られた「区内パーク」、さらには大学所在地以外の場所に設けられた分パークやバーチャルパーク、地域の特色に基づいて建設された大学サイエンスパーク群落などがある。例えば上海楊浦区は、大学サイエンスパークと国家ハイテク区、地域コミュニティとの共同発展を模索し、地域の経済・科学技術・文化との融合の道を求めた。

 第三に、投資主体の多元化。大学サイエンスパークは自らの強みを利用し、民間資本と連携して、独立法人資格を持つ大学サイエンスパーク企業を組織し、大学校営企業という発展の考え方を改めた。企業基金や民間資本、ベンチャー投資などが、大学サイエンスパークの革新・起業資金の源となり、国内外の株式市場や財産権取引市場も、大学サイエンスパークに入った企業の投融資のルートとなった。

 第四に、大学と企業による深いレベルでの産学研協力。パーク内企業は、技術開発センターや国家重点実験室の大学との共同設立を通じて産学研協力を推進した。例えば「川大智勝」と四川大学が共同設立した「視覚合成国防重点学科実験室」と「現代交通管理系統教育部工学研究センター」はいずれも世界をリードする水準に達している。また国家級大学サイエンスパークは、2006年度から2009年度の「たいまつ計画」の産業化環境プロジェクト403件のうち20項目の研究任務を担当し、研究開発と産業化の推進に努めた。

3.4 大学サイエンスパークによる連盟設立を通じたイノベーションネットワークの構築

 大学サイエンスパークのイノベーション能力の向上に伴い、経済発達地域や革新資源の集中した地域の一部では、多くの大学サイエンスパークが「大学サイエンスパーク連盟」を共同で設立した。北京や上海、東北、四川、江蘇などでは、6つの地域大学サイエンスパーク連盟が相次ぎ設立された。こうした連盟は、各大学の優れた知的資源を集積・統合し、加盟した各大学サイエンスパーク間、大学サイエンスパークと地域のほかの大学との間の産学研協力の方式とルートとを拡張し、大学サイエンスパークのインキュベーション体系をさらに充実させ、科学技術成果の転化を加速し、上・中・下流の産業チェーンの連結を促進し、大学サイエンスパークのブランドの追求とイノベーションとを推進した。この連盟方式を通じて、連盟メンバーの間には、長期的かつ互恵的な協力体制や地域内の大学サイエンスパークの資源共有の体制が構築されると同時に、各大学サイエンスパークの連携の形成も推進され、地域のイノベーションや地域経済の転換・アップグレードを支えて広げる大学サイエンスパークの働きがさらに強化された。

その6へつづく)


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