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中国産業クラスターの形成及び変遷(その7)

2015年10月30日
年 猛(中国科学技術発展戦略研究院 産業科学技術発展戦略研究所研究員、経済学博士)責任編集

その6よりつづき)

2.2 東北大学サイエンスパークを中心とする産業クラスター

2.2.1  東北大学サイエンスパークの歴史と発展

 東北大学サイエンスパーク(以下東大サイエンスパークと略称)は1990年に、中国内で最初に大学を基盤に設立されたサイエンスパークである。2001年に、中国最初の国家レベル大学サイエンスパークの仲間入りをした。2006年には国家レベルハイテクイノベーションサービスセンター、2009年に国家技術移転モデル機構と認定された。

 2008年末までに、東大サイエンスパークは累計面積4.54万平方メートルとなった。さらに北京、大連、南海、成都等にサイエンスパーク企業の研究開発センター及び産業基地が建設された。東大サイエンスパークでは育成した企業が112社、そこから独り立ちした企業が26社あり、それらの企業の年間売上総額は合わせて50.8億元、納税額3.58億元、年間で増設されたポストは3300余りに達した。インキュベーションサービスは設備製造、デジタル医療、情報技術、新材料、鋼鉄冶金、自動・デジタル計器、教育訓練、省エネルギー・環境保護等多くの分野に及んでいる。

 東大サイエンスパークは、東軟グループを代表とする一連のハイテク企業を育成した。企業にはソフトウェア、医療設備・健康サービス、冶金設備、新材料、CNC技術、自動化等多くの分野があり、東北大学の特色あるハイテク産業クラスターを形成している。これらの企業は、東北大学及び遼瀋地区の科学技術産業全体の発展を促した。

2.2.2 東北大学サイエンスパークを中心とした産業クラスターの発展、進化と現状

(1)産業クラスターの進展

 東北大学サイエンスパークを基点としてなすソフトウェア(情報技術)産業クラスターの変遷は、主に発芽期、成長期、加速発展期という3つの段階を経た。

 発芽期(1988年~1995年)、ソフトウェア産業クラスターは一応の形が作られた。1988年、東軟の前身である東北工学院コンピューター学部ソフトウェア・ネットワークエンジニアリング研究室が成立し、1993年、東大阿爾派ソフトウェア有限会社が設立された。1995年、東大ソフトウェアパークの建設が始まり、中国初の「国家たいまつ計画ソフトウェア産業基地」となった。

 成長期(1996年~2003年)、ソフトウェア産業クラスターの構造的特徴が顕著になり、産業クラスターの中核リーダー企業たる東軟グループは、戦略調整・配置から急成長をめざし、その力で東大ソフトウェアパークの展開を推進した。この時期、東大ソフトウェアパークは地域を超えてサブパークを作れないか探究し始めた。1996年、東軟グループは中国で初めて上場したソフトウェア会社となった。1998年、東大ソフトウェアパーク大連園区の建設が始まった。2003年、東軟グループは戦略的再構築を完了した。

 加速発展期(2004年~現在)、ソフトウェア産業クラスターは、1つの有力企業が中心となりリードするという特徴が、さらに鮮明になってきた。2008年、東大ソフトウェアパーク大連河口園区、南京研究開発基地が落成し運用された。現在、東軟グループは中国最大のITソリューション・サービス提供企業となっている。

 これらソフトウェア産業クラスターが形成発展する中で、時代背景、大学の知識・生産リソースのサポート、政策供給等の多様な要素が、産業クラスターの進化に総合的に影響した。時代背景からみると、1986年、鄧小平氏の「ハイテクノロジーを発展させ、産業化を実現する」スローガンのもと、我が国の863計画が実行に移され、市場ニーズから中国にハイテク企業が次々に生まれ、発展した。同時に、サイエンスパーク建設のブームが起きた。20世紀90年代には、「象牙の塔」から抜け出し、企業を創設する教師が後を絶たず、校弁産業は中国の改革プロセスにおける新しいチャレンジとなった。大学のサポートとしては、大学の有力学科が、産業の形成発展を、知識、人材等のリソースで支えた。ソフトウェア・情報技術関連においては、東北大学が伝統的に専門分野として強く、実力と優位性がある。このため、長年にわたり大量の科学技術関連の人的資源を蓄積しており、成熟した人材育成・成長のノウハウを形成している。これらは皆、新進企業の急速な成長や企業集積等の基礎となり有益な作用をしている。同時に、財政補助、税金優遇、インフラ整備等、多方面での政策措置が産業クラスターの形成と発展を大きく促進し、このソフトウェア産業クラスターを活性化するきわめて重要なものとなった。

(2)産業クラスター発展の基本的状況

 東大ソフトウェアパークは、基礎研究、製品開発、技術訓練、生活サービスが一体となった多機能なソフトウェア開発・生産基地であり、東軟グループが投資して、1995年6月に瀋陽市ハイテク技術開發区渾南産業区に設立された。東大ソフトウェアパークは面積50余万平方メートル、総投資額5億元で、1995年10月、国家科学技術部から「国家火炬計画ソフトウェア産業基地」と定められた。2012年末時点で、園内には合計14社の企業があり、総収入が69.6億元、純利益が4.36億元、納税実額が5.22億元、輸出外貨収入が3.72億米ドルである。また、研究開発経費支出が5.59億元、新製品開発経費支出が3.56億元あり、ソフトウェア従業員数が19,323人、このうちソフトウェア研究開発員が15,772人である。

図1

図1 東大ソフトウェアパークの発展の現状(2007年~2012年)

出典:『火炬統計年鑑』(2008年~2013年)

その8へつづく)


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