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中国産業クラスターの形成及び変遷(その10)

2015年10月30日
年 猛(中国科学技術発展戦略研究院 産業科学技術発展戦略研究所研究員、経済学博士)責任編集

その9よりつづき)

2.3.2 武漢東湖レーザー産業クラスターの発展が抱える主な問題及びその制約要素

(1)リーダー企業の影響力を向上させるべきである

 産業クラスターの発展とレベルアップには、リーダー企業の働きかけが必須である。武漢地区には華工科技、楚天激光、団結激光のようなリーダー企業があるが、その規模と影響力は米国のコヒレント、S pectra-Physics社、ドイツのTrumpfグループ、Rofin-Sinar社と比べ大きな差がある。武漢レーザー産業クラスターは集中度が低く、リーダー企業は国際的影響力に欠ける。規 模が最大の前出3企業の営業収入で計算すると、武漢地区レーザー産業の市場占有度はおよそ24.7%、一方深圳大族激光は1企業で現地の市場シェアの43%を占める。産 業占有度の低さは産業の規模の経済性と集積効果に影響を受けており、集積内の企業間の過度な競争もある程度関係がある。このほか、リーダー企業の中心となる技術も、さらに向上するべきである。武 漢のレーザー産業クラスターはレーザー応用加工を主としており、全体的には国際産業チェーンの底辺にいる。国際社会での影響力は、主に底辺のニーズ市場に限られている。

(2)産業クラスター内の各主体間の協力を強めるべきである

 武漢地区のレーザー企業間では、同質競争がひどく、密接な連携が足りない。強大なレーザー産業クラスターを作るため、2002年、湖北省、武漢市政府及び東湖高新区は華工科技、楚天激光、団 結激光の再編を進めた。5年間の交渉を経て、3企業は2007年1月に再編協議を締結したが、最終的には失敗に終わった。政府の意向で企業を再編するのは望ましくはないが、しかし武漢のレーザー企業に関しては、技 術研究開発、マーケティング方面での協力を強化し、国際市場での競争力を高める必要が確かにある。武漢地区には、中国レーザー産業連盟ができたものの、この連盟は協会的性質を持ち、連 盟企業は産業技術研究開発において実質的な協力が足りない。

(3)産業クラスター発展に必要なトップクラスの人材が不足している

 武漢レーザー産業クラスターは規模を拡大し、拡張し続ける市場ニーズに応えるだけでなく、それにもまして転換とアップグレードにより国際競争力を高めなければならない。この二重の任務を実現するには、人 材サポートが必要である。近年、複数の中国国内他地区のレーザー産業クラスターが著しく発展し、さらに多国籍レーザー企業も中国に続々と進出しているため、レーザー専門人材に対する巨大なニーズが生まれている。長 江デルタ、珠江デルタと比べ、武漢地区は地理的な強みが足りず、給与待遇、政策環境等の面での魅力もあまりないため、現地のレーザー専門人材は収入が伴わない。ト ップクラス人材の不足は専門技術においてのみではなく、優秀な管理及びマーケティングの人材も同様に不足している。武漢地区のレーザー産業クラスターがこのボトルネックを解消するには、よ り強大なプロの企業家チームの支援が必要である。

2.3.3 武漢レーザー産業クラスター発展を加速するための対策提案

(1)国際的影響力のあるリーダー企業を育成し、産業集中度を高める

  レーザー産業クラスターを発展に導くために、政府主導で、レーザー産業特別プロジェクトや技術イノベーションプラットフォーム作りを進める等で、レーザー産業の技術革新を進める。武 漢の主要なレーザー企業に中長期発展戦略計画を持たせ、技術を向上させることで国内外市場を拡大する。さらに積極的に地域内の他のレーザー企業と適切な協力関係を築き、長所を補いあい、共同発展を模索する。企 業が合併・買収等により、核心的技術を獲得するよう促し、規模の拡大とめざましい発展を実現する。企業が海外に研究センター、加工基地を設立し、国際化と発展を遂げるのを奨励する。

(2)産業・学校・研究・ユーザーのつながりを強め、中核となる主要技術を達成する

 産業・学校・研究・ユーザーの共同イノベーションを強化し、ユーザーニーズの方向付けをしっかりし、ユーザーをイノベーションに参加させ、イノベーション速度を速める。地 域内で有力な大学或いは研究機関が先頭に立って、レーザー産業共同イノベーションセンターを設立した上で、基礎研究と先端技術研究に力を入れて、本来のイノベーション能力を高めるよう提案する。先 に結成したレーザー産業技術革新連盟は主に産業汎用技術と主要技術の研究開発を行い、技術のボトルネックとなる制約を脱する。国家・地 方政府は特別プロジェクトを設立する方式で産業共同イノベーションセンターをサポートし、本来のイノベーション能力を高める。そして、産業技術革新連盟を支持し、チップ、高 出力レーザー機器等の中核主要技術を習得して、先進国との技術レベルの差を縮め、さらには追い越し、レーザー産業クラスターのハイエンド化への発展を促進する。

(3)完備した政策サポートシステムを構築し、レーザー産業の発展を加速する

 国と地方の技術革新資源を統合し、レーザーの基礎研究と主要汎用技術研究を促進し、公共技術プラットフォーム構築を重点的にサポートする。レーザーハイテク企業、中小零細企業ともに、よ り優遇された税収政策を受けられる。科学技術銀行を設立する方式で、中小型レーザー企業の発展をサポートする。企業の技術革新と規模拡大のニーズを埋めるべく、条件にかなうレーザー企業がA株市場、GEM市場、新 三板市場で間接的に融資するよう奨励する。政府の購買システムを利用し、革新レーザー製品を優先的に購入する。より多くのニーズ面についての政策を制定し、レーザー産業の発展を導く。

(4)レーザー産業の発展に必要な各種人材を育成及び投入する

 地域の大学や研究機関の人材育成の強みを発揮し、企業とともに共同イノベーションセンターを設立し、大学、研究機関と企業が連携して研究生を育成する制度を設ける。産業・学校・研 究間の双方向兼業制度を制定し、人材と知識技術の交流を促進する。管理者やマーケティングスタッフへの訓練を強化し、専門経営者を育成する。人材導入のための特別資金を設立し、国 内外のハイエンドレーザー人材を導入し、より市場競争力のある報酬を与え、仕事と生活の条件を良くする。

(おわり)

主要参考文献:

  1. 劉強「同済周辺設計産業群の形成メカニズムと価値をめぐる研究」同済大学学報(社会科学版)、2007年
  2. 陳強、王力銘「環同済現代設計産業群を例とする、知識型サービス業イノベーション群育成システムの構築」中国科学技術フォーラム、2010年

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