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中国の海岸帯の直面する脅威、管理の実践、「十三五」科学技術サポート活動の重点―青島市・東営市・連雲港市を例に(その2)

2015年11月18日

張 傑:国家海洋局第一海洋研究所

略歴

1963生まれ。内モンゴル自治区包頭市出身。博士、研究員。研究テーマ:海洋リモートセンシング技術・応用研究。


王 進河:東営市海洋・漁業局
崔 文連:青島市環境監視測定セントラルステーション
趙 新生:連雲港海域使用保護動態管理センター
馬 毅:国家海洋局第一海洋研究所

その1よりつづき)

1.2 人類の開発活動の激化

1.2.1 埋め立て

 埋め立ては、人類が海洋に向かって生存・発展の空間を広げる重要な手段であり、土地供給の圧力を有効に緩和し、国民経済の発展に積極的な役割を果たしている。だが同時に、沿海の海岸を喪失させ、海洋の生態系と環境に深刻な負の影響をもたらしてもいる。2011年12月、国家発展・改革委員会と国家海洋局は、「埋め立て計画管理方法」を共同で発行し、埋め立てに対する計画管理・総量制限・監督審査を始めた。国家海洋局「海域使用管理公報」によると、2002年の海域法の実施から2011年末までに、中国で使用権の確認された埋立地の面積は累計12.5万haに達し、年間平均は1.25万haとなった。

1.2.2 海岸観光

 海岸観光業は、観光業で発展が最も著しい分野として注目を高めている。観光客の時期・場所の分布が比較的集中していることから、海岸観光活動の環境への負の影響は蓄積しやすく、海岸帯や海島、海洋景観資源の深刻な破壊をもたらしている。例えば秦皇島では、観光業が急速に発展し、ホテルや交通などの施設に対する需要が高まり、沿岸の都市化プロセスが加速している。1987年から2002年までに北戴河から洋河口までの沿岸7kmでは、道路の全長が52.7kmから124.3kmに伸び、建築物の敷地面積は18.8km2から37.7km2に拡大した。この期間、南戴河海水浴場付近では、人工観光スポットやホテル、リゾートビレッジなどの建設が加速度的に進んだ。これらの建築物や道路は海岸にとって2つの不利な影響をもたらしている。第一に、人工建築物によって占められた地域はもともと、面状に侵食され、海岸に砂をもたらす源となっていた。人工的に固定化された後、海岸では沈泥の供給量が減少し、海岸侵食が激化し始めている。第二に、人工建築物が沿岸の林帯を破壊することで、やはり海岸侵食が激化している[13]

1.2.3 水産養殖

 水産養殖は、池での養殖やいかだ式養殖、潮間帯での築池養殖、底まき増養殖、ネットケージ養殖、ケージを沈める養殖、工場化養殖など多様化の特徴を示している。水産養殖は、生物の排泄物と残餌を伴うため、海洋環境に対する汚染が最も深刻であるとされる。これらの物質は、海洋の富栄養化を促し、赤潮などの災害の発生を導く。また高密度な養殖は、海水の交換・自浄能力に影響を与え、海域の生態バランスを破壊する。例えば青島では1980年代、多くの部門がエビ養殖池を建設し、大沽河口両岸のエビ養殖池の建てられる水域をすべて占有してしまった。こうして建てられたエビ養殖池がそれぞれ閉鎖系を取ったため、大沽河増水時の放水の際に障害が増えただけでなく、塩田での海水採取ができなくなり、「塩」と「エビ」との矛盾を生んだ。大量の囲い池が設置されたことから、河口付近の環流は弱まり、流速が低下し、膠州湾の汚染物が河道に入り込み、河口の海水自浄能力が低下し、深刻な汚染を生んだ。一面のエビ養殖により、水中の溶存酸素の含有量が大きく低下し、化学的酸素要求量が大きく増加し、硫化水素やアンモニア態窒素などの有毒物質が基準を大きく超える事態となった[14]

1.2.4 海岸工事

 海岸工事には、海の囲い込み工事や港湾工事、海岸防護工事などが含まれる。これらの工事は主に、陸域の空間の開拓や海岸の保護などを目的としたもので、人類に多くの利益をもたらすと同時に、海岸帯の資源環境に多くの影響をもたらしもする。例えば、元来の沿岸の土砂運搬バランスや泥砂移動法則を崩したり、海岸の湿地を破壊したりといった不利益がある。海岸への施設の建設は、動力場のバランスを崩し、工事現場の上流の海岸では泥砂が流れをせきとめられて堆積し、下流では十分な泥砂の補充がないために侵食が起こるといった現象が発生する。例えば、北戴河老虎石海岸の西側では、1950年代にT字型埠頭が建造されたために、西から東への沿岸の泥砂の移動が妨げられ、海岸の砂源の減少が起き、東部で深刻な侵食が発生した。東部の砂浜では砂の平均直径は0.42mmだったが、埠頭の西側の砂浜は平坦で砂粒がより細かく、平均直径は0.22mmだった[15]

2 中国海岸帯の管理の実践――青島市・東営市・連雲港市を例に

 山東省青島市の海岸線の全長は816.98kmで、そのうち大陸の海岸線は710.9km、島の海岸線は106.08kmである[16]。全国初の沿岸開放都市・計画単列市(指定都市)の一つであり、国際港湾の青島港を擁し、山東半島の藍色(海洋)経済区の核心エリアであり、先導的都市でもある。さらに中国の海洋産業発展の先行エリアでもあり、海岸観光リゾートの名所でもある。山東省東営市の海岸線の全長は413kmで[17]、黄河デルタの中心都市である。黄河デルタの高効率生態経済区と山東半島の藍色経済区の交差地帯に位置する。中国で最も若い海岸湿地を持ち、中国第二の石油工業基地である勝利油田もここにある。江蘇省連雲港市の海岸線の全長は162kmで[18]、全国初の沿岸開放都市の一つでもあり、新ユーラシアランドブリッジの東端に位置し、海水養殖業が発達している。本稿は、中国海岸帯の典型となる以上の3都市を例に、「多様な手段による海域監督管理」「海洋環境観測予報システムの建設」「重点港湾環境の監視測定」の3つの面から、ここ数年の3都市の海岸帯管理の主な実践活動を総括する。

2.1 多様な手段による海域監督管理

2.1.1 重点海域の映像監視・コントロール

 東営市はすでに、重点海域の映像監視システムを構築し、石油・ガスや埠頭、漁港、堤防などの重点となる海利用区域に対して映像による監視を行っており、監視の半径は15kmに達する。ネットワークを通じて、各級管理部門は、管轄海域の現状をリアルタイムでチェックすることができる。回線を引くことのできない沿岸地区(東営市の城東堤防や広饒堤防など)では、無線方式を通じて映像の伝送を行っている。

2.1.2 無人機による海域監督管理

 連雲港海域使用保護動態管理センターは、国家海洋局の無人機遠隔監視測定の試行団体として、測量型固定翼無人機と監視型無人ヘリコプターを率先して導入し、海域の使用動態の監督管理に用いている。2013年には連雲港市の海岸帯エリアで空間解像度0.09~0.25mの無人機による映像取得を成功させ、現在、江蘇省の海岸帯とその他のエリアの無人機によるデータ取得が始まっている。

2.1.3 海域立体監視指揮車

 連雲港海域使用保護動態管理センターは、全国初の国家海域監視指揮車を設計・実現した。同車には、衛星データ伝送システムと図像処理システム、後方保障システム、無人機飛行制御システム、映像会議システムが装備されている。

2.1.4 海岸配備Xバンドレーダー監視測定システム

 東営市海洋・漁業局は、購入によって1基、国家海洋局北海監視測定センターとの共有で1基、東営市国境守備隊との共有で6基の合計8基の海岸レーダー施設を運用している。また海岸配備Xバンドレーダー監視測定システムも共同構築し、海上石油流出の測定や船舶の識別などに活用している。

2.2 海洋環境観測予報システムの建設

 東営市はすでに、海洋環境観測予報システムを構築しており、東営港の検潮井やウェーブメーターなどの設備が監視測定した各項の水文気象データを専用ラインで収集している。同時に、国家海洋局北海予報センターへの伝送ネットワーク特別ラインも開通され、情報共有が実現された。さらに海洋環境監視測定予報と海域監視制御との連動も実現され、防災や減災の支援も可能となっている。2012年の青島市海洋環境公報によると、青島市は、膠州湾の高潮・洪水モデルを研究開発し、高潮警戒潮位の査定業務を展開し、市南区と黄島区の2カ所の重点海岸区間の警戒潮位値を4つに色分けし、青島市の高潮災害の警戒予報の精度を高め、高潮災害の予防に向けた重要な措置としている。さらに海洋警報発布プラットフォームと携帯電話ショートメッセージプラットフォームを通じて、海洋予報・警報情報を社会各界に発布することとし、海洋予報情報と海洋災害警報情報の発布範囲を拡大した。

2.3 重点港湾の環境監視測定

2.3.1 環膠州湾陸海統一環境監視測定

 青島市環境監視測定セントラルステーションは、環膠州湾陸海統一環境監視測定評価体系を構築し、水質や海洋生物、陸源汚染物、海岸帯土地利用の監視測定評価などを進めている。

2.3.2 膠州湾水質遠隔監視測定システムの研究開発

 青島市環境監視測定セントラルステーションは、国家海洋局第一海洋研究所と協力し、衛星遠隔データと海上実測データを利用し、膠州湾のクロロフィルa濃度の遠隔推定モデルを構築し、膠州湾水質遠隔監視測定システムを研究開発した。

2.3.3 膠州湾水質自動監視測定ブイステーションの建設

 2013年、青島市環境監視測定セントラルステーションは膠州湾に、青島市初の海洋水質自動監視測定ブイステーションを設立した。気温や風速など5項目の気象変数、水温とpH、電導率、塩分濃度、総溶解固形分、溶存酸素、濁度、クロロフィル、水中油分、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、アンモニア態窒素など13項目の水質指標に対し、リアルタイムの監視測定を行い、膠州湾を囲むエリアの監視測定能力を高め、水質変化法則の分析や赤潮の警報などにデータ支援を提供している。

 上述のように、沿岸3地級市は近年の努力を通じて、海域使用の監督管理や海洋環境の監視測定・予報の面で一定の進歩と発展を実現し、海岸帯及び近隣海域の映像や無人機、立体監視車、Xバンドレーダーなどによる多くの手段での監督管理を成功させ、地域の海洋環境監視測定と予報の実践を展開してきた。だが依然として次のような問題点も存在している。

(1)新技術装備の応用が深まっていない。無人機は個別の都市で海岸帯の監視測定業務に応用されているにすぎず、無人船や水中監視測定などの新型技術装備のデモンストレーションや業務への応用もまだ展開されていない。

(2)監視測定体系が整っていない。海岸帯の監視測定は、陸地・海洋・大気にかかわる立体的なものであり、整った総合的な体系である必要がある。現在、各地で行われているのはそのうち一つまたはいくつかの要素に対する監視測定にすぎず、得られた結果は所在地域の海岸帯の発展と変化の過程と法則を十分に反映したものとはなっていない。

(3)予報機器の時空的な解像度が足りない。地域単位の精確な予報には高い時空解像度が必要となるが、完全な監視測定体系に基づく予報体系はまだ構築されておらず、監視測定結果の空間的な網目が比較的大きく、サンプル採取の間隔も比較的長く、地域単位の予報機器の精度の不十分につながっている。

その3へつづく)


※本稿は中国科学院海洋研究所より許可を得て翻訳・転載したものである。
【原文】http://www.marinejournal.cn/hykx/ch/reader/create_pdf.aspx?file_no=20150203&flag=1&journal_id=hykx&year_id=2015

参考文献:

[13] 陳吉余, 夏東興, 虞志英ら『中国海岸侵食概要』 [M]. 北京: 海洋出版社, 2010.

[14] 夏東興, 林金祥, 楊樹珍ら『中国の海域使用に存在する問題100例』[M]. 北京: 国家海洋局海域管理司, 1999.

[15] 馮金良「秦皇島の海岸の侵食と堆積に対する人為工事活動の影響」[J].『海岸工程』, 1997, 19(6): 41-46.

[16] 青島政務網http: //www.qingdao.gov.cn/n172/n25664338/ index.html.

[17] 東営市人民政府網http: //www.dongying.gov.cn/html/zrhj/index.html.

[18] 連雲港市人民政府網http: //www.lyg.gov.cn/col/col1 961/index.html.


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