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PM2.5指標、初めて政府の「五カ年計画」に盛り込む見込み

2016年 3月24日 中国総合研究交流センター編集部

大気汚染対策は最重点

 国務院の李克強総理は3月5日、第12期全人代第4回会議において「政府活動報告」を行い、その中で「大気汚染対策と水質汚染対策に強い力を入れる」と述べ、「生態環境の全体的な改善、とりわけ大気汚染を顕著に改善し、地級市(省と県の中間にある行政単位)およびそれよりランクが上の都市の大気の質優良日数の割合を80%超にする」という向こう5年間の目標を掲げた。

 中外対話が報じるところによると、李総理が打ち出したこうした目標は、「第13次五カ年計画綱要草案」の一部として、すでに今年の全人代開幕当日に大会に提出されており、草案全文は現段階では公表されていない。綱要では、大気汚染重点改善地域の天然ガスへの移行プロジェクトを実施し、微小粒子状物質(PM2.5)の濃度を25%引き下げることを明確に打ち出している。これはPM2.5の具体的な指標が初めて中国政府の五ヵ年計画に盛り込まれることを意味する。

 李総理が同報告で打ち出した具体的な措置には、石炭燃焼と自動車排出ガスの削減や、石炭のクリーン高効率利用の強化、「石炭の代わりに電気や天然ガス」の推進、天然ガス供給の拡大、風力、太陽光、バイオといった新エネルギー発展支援政策、クリーンエネルギーの比率引き上げ、茎やわらの資源化利用の奨励、直接燃焼の削減、重点地域での大気汚染共同防止共同抑制の実施といったものが含まれる。さらに、省エネ環境産業を大きく発展させ、中国の社会発展の一大支柱産業とすることもこの報告の中で打ち出されている。

 清華大学公共管理学院の胡鞍鋼教授は、「第13次五カ年計画」はエコ発展理念の具体的な実践方法を示した綱要であり、中国政府の一連の政策措置の中心目的は中国経済の成長方式の転換を実現し、持続可能な発展の道へと歩み寄ることであると指摘。「グリーン発展を実現するには、資源エネルギー消費量を下げることで、主な汚染物質の排出総量を経済成長から徹底的に切り離し、都市化の発展とも徹底的に切り離し、全要素から見ればTFPを高めることだ」と述べた(注:TFP=Total Factor Productivity、全要素生産性、すなわち全産出量と全投入量の比率)。

時代遅れの生産設備の淘汰は必至

 李総理は政府活動報告において、「第12次五カ年計画」期間中、中国の経済構造調整には象徴的進展が見られ、サービス業が最大の産業となり、GDPあたりエネルギー消費は累計18.2%減少し、主な汚染物質排出量は12%以上減少、2020年までにGDPあたり用水量、エネルギー消費、二酸化炭素排出量をそれぞれ23%、15%、18減らすと総括している。

生態環境の質が全体的に改善

 エネルギー多消費産業は、煙霧など環境汚染の重要な汚染源となっている。李総理は、企業のM&Aを通じ、中国は生産過剰産業の解消を行い、過去3年間に、立ち遅れた鉄鋼製造産業の生産量9000万トン超、セメント2億3千万トン、板ガラス7600万重量箱超(重量箱=中国で用いられる板ガラスの計量単位。厚さ 2mm、比重2.5の板ガラス10平方メートルの重量(約50kg)に相当)、電解アルミニウム100万トン超を淘汰したと述べた。

 前出の胡氏は、「第13次五カ年計画は各級の地方政府が政府の職能転換をスムーズに促すもの。中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(三中全会)に基づくと、地方政府にはこれまで、公共サービス、社会管理、市場監督という主に3つの職能があった。ここに4つ目となる環境保護という最も中心的機能が加えられた」と指摘する。

 「第13次五カ年計画の制定とデザインの角度から見て、これまではどこも工業で県を興すや工業で市を興す、工業で省を興すとうたっていたが、これがクリーン発展へと舵を切ることとなった。中国がクリーン発展の時代に突入したことを意味し、汚染をもたらす業界が淘汰される時代へと入った。生産能力の抑制を通じエネルギー消費が高い産業、汚染の深刻な企業が淘汰されていく時代だ」と胡氏は強調する。

 「第13次五カ年計画」で打ち出される新型の発展路線に対する国際社会の期待も高まりを見せている。世界資源研究所の執行副所長兼運営責任者のManish Bapna氏は、質の高い経済成長方式はクリーンな発展を意味すると述べる。中国の「第13次五カ年計画」においてクリーンエネルギー利用の関連案や大気汚染対策、植樹造林、水質土壌汚染対策といった面で大胆な目標が打ち出され、中国の経済成長方式が着実に転換されていくことに期待を寄せている。同氏は、「中国政府がこれまでのように供給によって需要を満たす発展路線の転換に力を入れてくれることを願う。一般的に、水資源供給を増加させるためにはダムを多く建設し、エネルギー問題を解決したいなら発電所を多く建設しようとする。しかし、目下模索しなくてはならないのは、以下に需要を減らし、経済成長と資源消費を切り離すかだ」と語る。

煙霧対策に熱い議論を展開する全人代代表委員

 両会(全国人民代表大会・全国政治協商会議)開幕前日、北京市では大気の重度の汚染を示す黄色警報が発令され、小中高校、幼稚園などの屋外活動が禁止となった。政治協商委員で中国の著名な歌手の宋祖英氏は、「両会の開幕にあたって煙霧がひどくなった。他地域から来た委員は慣れないかもしれないが、普段から北京にいる委員にとってはもう当たり前のようなものですね」と冗談を放った。

 煙霧はここ数年連続で両会の話題となっており、今年も例外ではなかった。政治協商会議開幕の前夜に開かれた記者会見で、ある記者が「公式な統計によると2015年の中国の大気の質は例年より良好となっているが、多くの人が実感していない」と指摘すると、政治協商会議の王国慶報道官は北京を例に挙げ、「煙霧との戦いは持久戦だ」と答えた。

 王報道官は、2015年における北京の大気の質基準値到達日数は14年比で14日増え、重度の汚染日は1日減ったと述べるも、「汚染は一日で形成されたものではなく、対策も一朝一夕に効果が見られるものではない」とし、3つの面で共に取り組む必要があると指摘、まず政府の面では発展方式の転換を急ぎ、企業の面では生産方式の転換を急ぎ、国民はライフスタイルを積極的に転換すべきだと述べた。

 報道によると、煙霧は2016年の多くの地方の両会におけるキーワードにもなり、多くの地方政府が政府活動報告の中に具体的な対策目標を加えた。北京市は、PM2.5濃度を5%前後引き下げることを2016年の目標の一つに掲げた。吉林省は大気クリーン行動計画を始動することとなった。

 代表委員の大気汚染対策に関する提案も様々だった。経済的手段を提案する代表もいた。政治協商会議委員の許健康氏は、「煙霧費」と「渋滞費」を徴収しての自動車の排ガス規制を呼びかけた。全人代代表の李生氏は、住宅地とその他の建築物建設に際し、建設計画段階で緑化エリアの確保を強制的に要求して大気の浄化を図るよう提案した。

 また、全国政治協商会議委員、中国科学院の易建強氏は、「煙霧の発生原因ははっきりしておらず、さらなる研究が必要だ。市民が言う自動車の排ガスが主な原因という見方も正しいとは限らず、気象当局は煙霧の変化の傾向をより分かりやすい形で市民に伝えるべきだ」と述べ、煙霧の動態移動図を報じるよう提案した。


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