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中国の国土空間開発・保護局面の最適配置理論の革新と「十三五」計画の対応戦略(その1)

2016年 3月16日

樊 傑:中国科学院科学技術戦略諮問研究院、中国科学院地理科学・資源研究所、中国科学院地域持続可能発展分析・シミュレーション重点実験室

概要

 中国の空間規制と地域統治には、▽長期的なトップダウンの戦略を欠き、戦略の断片化の砕片化の兆候が見られる、▽計画や政策が地域の差別化を見落としており、照準が定まっていない、▽総合的な体系が整っていない、▽制約を課す手段が欠けている――などの核心的な問題が存在している。これらの問題を踏まえて、国土空間の最適配置理論や地域協調発展理論、都市化及び都市・農村一体化発展理論などの方面で革新を実現する必要がある。

 本稿は、「十三五」計画がこの分野で直面する重大問題と結びつけ、「革新、協調、緑色、開放、共有」という発展理念を主軸として、国土空間開発・保護の戦略局面、中国の地域発展局面に対する東西双方向開放戦略の影響、主体機能区と資源環境収容力、高精度の貧困扶助と差別化された都市化モデル、中国共産党の第18期中央委員会第5回全体会議の公告によって社会の幅広い注目を集めた「二胎政策」(第2子政策)の地域への影響などを主要内容とし、未来の空間規制と地域統治の理論革新のカギとなる命題を重点として検討したものである。国土空間の局面変化と地域発展に影響する新要素と新メカニズムのさらなる研究、国土開発保護の空間構造の組織原理の改訂と改善、地域差別化発展モデルと地域政策体系の構築、異なる類型地域間の利益均衡調整促進のメカニズムの提示などが含まれる。本稿はさらに、新理念と新思考によって「十三五」計画の対応戦略に新たな提案を試み、都市化・地域発展分野での「十三五」計画制定事業への参考の提供をはかった。

[キーワード]:国土空間、空間規制、地域統治、地域発展、「十三五」計画

 地域発展問題は、中国が第10次5カ年計画期間に入った2001年、国民経済・社会発展5カ年計画に初めて盛り込まれた[1]。だが地域発展の単独の章は設けられず、「経済構造」の章節の中だけに限られていた。また中国は、国土空間全体の戦略配置を欠いていた。

 中国はこの後、空間規制と地域統治の全体の体系から国土空間の配置を進め、生態(エコ)文明の「五位一体」の角度から地域の協調発展を理解するようになり、国土空間の開発保護の局面の最適配置と地域の協調的な持続可能発展は、政策決定層の高い関心を集め、ますます重視されるようになった[2]。中国共産党の第18回党大会の報告では、国土空間の開発局面の最適化が初めて戦略の高みに引き上げられ、国土空間の開発局面の最適化の原則は人口と資源環境の均衡と経済社会と生態効果との統一であることが明確化され、「三生空間」(生活・生産・生態空間)の科学的建設を通じて中国の都市化と農業発展、生態安全の3大戦略局面を構築するとの最適化の目標が確定された。

 地域の発展にあたっては主体機能の位置付けに照らして陸と海との統一配置を実現するとの基本的な要求が確定され、国土空間は党中央に「美しい故郷を建設するための空間的なベクター(入れ物)である」との位置付けを与えられ、国土空間の開発局面の最適化は中国のエコ文明建設の第一の任務として確定された[3]

 党第18期中央委員会第5回全体会議の公告と「十三五」計画に関する党中央の提案[4]は5大発展理念を提出し、中国の未来の発展を指導する思想的精髄と内容の枠組、目標の指針が形成された。5つの発展理念で「革新」が第一の位置に置かれ、理論の革新を体制・科学技術・文化の革新の前に置かれたことは、新発展理念体系の注目点の一つとなった。中国はモデル転換の時期にあるが、この転換と未来の発展が直面する国内外の環境と発展動力の条件、制約要素、発展目標体系はいずれも自らの特色を備えており、既存の理論や国外の発展の経験はいずれも、中国の特色ある社会主義の道の建設を正確に指導することはできない。このため我々は、理論革新を通じて発展理念を改訂し、認識の水準を高め、発展モデルを変革し、統治体系を再構築する急迫した必要に迫られている。

 だが都市化と地域発展法則の研究や国土空間の局面の進化プロセスと調節メカニズムの研究は、日増しに高まりつつある国家のニーズに大きく遅れを取っており、基礎理論やデータ、方法、とりわけ空間規制と地域統治の理論には、革新とブレークスルーが待たれている。国土空間開発保護の局面や地域発展、都市化などの戦略問題から考え、5大発展理念の下での要となる内容を総合的に捉えることにより(表1)、未来の空間規制と地域統治の理論革新の発展方向は、「国土空間の局面変化と地域発展に影響する新要素と新メカニズムのさらなる研究、国土開発保護の空間構造の組織原理の改訂と改善、地域差別化発展モデルと地域政策体系の構築、異なる類型地域間の利益均衡調整促進のメカニズムの提示」であることがわかる。5大発展理念と国土空間開発保護の局面の最適配置の理論革新方向に照らして、「十三五」計画は、戦略性・制約性・照準性・系統性の4つの面の強化を重点として科学的な取り組みを進める必要がある。本稿は、5大理念の指南に照らして、理論革新という主題を基本的な内容とし、「十三五」計画の4方面の対応戦略を検討したものである。

表1 「十三五」国土空間局面の最適配置のカギとなる内容と理論革新の要点
発展理念 カギとなる内容 理論革新の要点
革新 沿海・沿河川・沿線経済軸と重点経済区の開発を国家科学技術革新体系と融合させ、未発達地区の発展を制約する科学技術革新能力の弱点という難題を打破する 国土空間局面の進化に対する地域発展駆動力と駆動メカニズムの変化の影響
協調 様々な空間的スケールの地域の新型工業化・情報化・都市化・農業近代化の融合発展を実現し、中国の地域発展一体化と都市・農村発展一体化のプロセスを加速する 異なる(機能)類型の地域空間の差別化発展における利益均衡理論
緑色 資源環境収容力の制約の役割と主体機能区の土台としての役割を際立たせる 地域発展に影響する安定性要素とその調整、国土開発保護の空間構造の形成
開放 中国の地域発展局面に対する海陸連動と東西双方向の開放局面の影響及び対応 地域発展の局面変化の外部環境の影響作用の内部化原理
共有 異なる地域の基本公共サービスの均等化を実現し、現行の基準下での農村貧困人口の貧困脱却と貧困県すべての解消、地域全体の貧困問題の解決をはかる 未発達地区の貧困の成因と発展モデルの地域分化法則

1 戦略性——目標志向と問題志向を結合した国土空間開発保護局面

 計画の戦略性は主に、時間的にはそれが長期的なものであるか、空間的にはトップダウンの計画がなされているか、部門や分野をめぐっては統一的な配置が実現されているかなどに体現される[5,6]。科学的で合理的な国土空間の開発保護の戦略方針の制定と計画政策の編制にあたっては、目標志向を主体とし、問題志向を補充とし、その相互の融合と有機的な関連を実現しなければならない。目標志向には長期性の重視という特徴、全国スケールの国土空間にはトップダウン設計という特徴、開発保護には統一配置と総合という特徴があることから、国土空間開発保護の局面から出発しこれを貫徹することは、戦略性を体現する重要な形式となる。

 中国の国土空間局面と地域発展分野においては目標志向が長期にわたって欠けており、戦略的に弱く問題志向を主体とした計画や政策の制定という現実が形成されてきた[7]。2010年に全国主体機能区計画が国務院によって発表されるまで、中国の国土には、10年以上の未来の開発保護局面に関する総体的な未来図が存在していなかった。中国の世界における競争力を増強し、人々の暮らしと仕事の快適さを高めるには、長期的に見た場合、どのような人口・経済の集合の空間的な傾向と地域の位置付けが必要となるのか。中国の持続可能で健全な発展を確保するには、食糧の安全と生態の安全を維持する拠点をいかに分布させるべきか。効率的で質の高い国土空間構造を形成するには、異なる地域とセクターの間にいかなる関係を構築すべきか。これらの戦略的な問題が回答を得られず、統治体系に組み込まれないうちは、中国の重大な地域戦略は時代を色濃く反映したものとなると同時に、変化しやすい断片的なものとならざるを得ず、戦略的な指導を欠いた下位の計画の盲目性によって規模の過大や分布の無秩序、構造の混乱がもたらされ、政策を決定してもすぐに実施した計画が無駄に終わり、大きな代価を支払うということになることは明らかである[8]

1.1 「4大局面」の戦略配置

 中国の戦略計画と政策方針の制定の考え方は現在、モデル転換と科学化の過程にある。「都市化局面」「農業発展局面」「生態安全局面」「自然岸線局面」によって国土空間開発保護の戦略局面を描き出し、戦略性の欠陥を埋めることは、有効な方式の一つと言える(図1)。

図1 中国国土空間開発保護戦略局面

図1-1

「両横三縦」を主体とした都市化戦略局面

図1-2

「七区二十三帯」を主体とした農業発展戦略局面

図1-3

「両屏三帯」を主体とした生態安全戦略局面

 「両横三縦」の都市化戦略局面と「七区二十三帯」の農業発展戦略局面、「両屏三帯」の生態安全戦略局面についてはすでに多くの文章の中で検討が加えられている[9,10]。とりわけ鄧小平の「2つの大局」論における2つ目の大局の戦略要求に基づいて都市化局面を改善し、沿岸の発達した都市群を先頭とした中西部地区を横に貫く国土開発軸帯を加えることは重要な戦略的意義を持つ[11]

 自然岸線(水際線)は新たに打ち出された局面の一つで、主に海岸帯の水際線の局面を指す。遼寧海岸帯研究の実例は、この戦略局面を確定することの重要性を明らかにしている。2005年に遼寧が海岸帯の開発加速を確定した際、5つの工業パークを支えとした成長ポイントが設けられた。2012年までにこの成長ポイントは42個に増やされ、開発区総用地のニーズは4000平方キロメートル余りに拡大した。各種の政府計画を合わせてみると、遼寧の海岸帯においては、都市・工業・港湾の建設に今後用いられる高強度開発の対象となる建設用地が、海岸帯の土地の総面積の3分の2程度に達することがはっきりとわかる。これは、平均で3分の1に満たない先進国の海岸帯開発強度をはるかに超えている。

 各級政府はいずれも超大規模の建設プランを取っており、港湾などのインフラの重複建設や都市間と都市内部の用地機能の深刻な衝突、土地と海洋の利用の不調和といった矛盾が、海岸帯に幅広く見られる現象となっている。統計分析によると、陸域が高強度開発建設用地となっている一方で、すぐ隣の海域が生態保護や漁業資源保護地域となっている衝突が見受けられる海岸線は315キロメートルに達し、遼寧の海岸線の総延長の15%に達している。このため水際線の局面を厳しく制御することは国土空間の秩序ある開発が直面する焦眉の問題となっている。

 将来の自然水際線の局面は、第一に、総目標や開発保護の総体戦略、開発強度などのカギとなる制御パラメーターの確定方法を上から下へと検討・制定する必要がある。第二に、海岸帯の資源環境収容力と土台となる現状、開発見通しの総合的な分析を踏まえて、海岸帯開発・保護の機能区分、とりわけ「生態安全区」「農漁業発展区」「レジャー観光区」「工業集中区」「港湾物流区」「都市発展区」を識別する指標体系、空間位置と制御範囲を決める技術経路をいかに確定するかを探究しなければならない。第三に、海陸の統一的な手配と陸域開発空間構造の合理的な構築が結合した方式を取り、海岸帯とりわけ海岸線の開発・保護局面に対する調整・最適化の方法を打ち立てる必要がある。

1.2 中国の地域発展局面に対する双方向開放局面の影響

 一般的に言って、長期的な国土空間開発保護の戦略局面は主に、「開放システム下の外部環境の影響即ち開放局面の作用」「異なる機能地域の間の相互作用によって形成される空間構造全体の制約」「地域発展条件の差異によってもたらされる優勢地区の方向付け」の3大要素の影響を受ける[12]。「十三五」時期の変化はこの3大要素のうち開放局面が最も際立っている。「十三五」時期においては、陸海における国内外の連動と東西双方向の開放という全面的開放の新局面が構築されることとなる。

 応用レベルから言えば、中国の東向きの開放という条件下で形成された「両横三縦」の都市化局面を再構築し、中国の中西部とりわけ西部の辺境省区の発展局面に対する「一帯一路」(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)建設の影響を体現し、現在存在する通行能力の不足やネットワーク化レベルの低さ、通過式の活動の比率の過度の高さなどの問題を目標志向で解決することが必要となる[13]。理論革新のレベルから言えば、局面形成における「機能」の重要性の役割をいかに理解し、体現させるかが重要となる。

 例えば、新彊で人口と経済の集積規模が最大の地帯は天山北斜面地区であり、全国の都市化戦略の局面においても一定の位置を占めている。一方、新彊辺境地帯の人口・経済の集積規模は限られ、天山北斜面地区とは比べ物にならない。だが「一帯一路」の西への開放という局面においては戦略の前線となり、カギとなる地帯となる。こうした機能の重要性から、新彊辺境地帯も、全国の国土空間開発保護局面において天山北斜面と同等の地位を占めることとなる。長期にわたって規模やボリュームに関心が偏り、機能や質が軽視されてきたことは、中国の不健全な都市化や各種のパークの産業建設に極めて有害な結果をもたらしている。

1.3 地域政策の二重志向設計

 目標志向と問題志向という二つの次元から国家レベルの地域政策体系を構築する(図2)。このうち目標志向下の地域政策設計は長期的な視点に立ったもので、それぞれの政策は比較的安定したものとなる[14]。資源環境収容力や未来の発展潜在力などの相対的に安定した影響の要素に照らして確定した主体機能区類型は、目標志向政策区の設計の土台とすることができる。未来の50年から100年の地域機能の建設と国土空間局面の最適化という目標を実現する。

図2

図2 地域政策体系枠組図

 一方、問題志向の地域政策設計は主に、現実問題をターゲットとしたもので、各政策には随時の調整が可能となる[15]。時代の特徴を明らかに備えた地域問題の性質に照らして政策対象地域を区分し、10年から15年の地域発展における際立った問題を重点的に開発し、発展経路を最適化し、問題のない地区との発展の差を縮める。このためには、主体機能区建設の積極的な推進を土台として、主要類型毎に問題地域を科学的に区分しなければならない。目標志向と問題志向の相互融合を実現して初めて、合理的な地域政策体系を構築することができる。

その2へつづく)

参考文献:

1 全国人大財政経済委員会弁公室, 国家発展和改革委員会発展規劃司編. 中国建国以来国民経済和社会発展五年計劃重要文件匯編. 北京: 中国民主法制出版社, 2008.

2 馬凱. 大力推進生態文明建設. 国家行政学院学報, 2013, (2) : 4-10.

3 胡錦濤. 堅定不移沿着中国特色社会主義道路前進為全面建成小康社会而奮斗——在中国共産党第十八次全国代表大会上的報告. 江淮, 2012, (12) : 22-34.

4 中共中央関于制定国民経済和社会発展第十三箇五年規劃的建議. 北京: 人民出版社, 2015.

5 楊偉民. 規劃体制改革的理論探索. 北京:中国物価出版社, 2003.

6 樊傑. 主体功能区戦略与優化国土空間開発格局. 中国科学院 院刊, 2012, (2) : 54-67.

7 徐冠華, 葛全勝, 宮鵬, 等. 全球変化和人類可持続発展: 挑戦与対策. 科学通報, 2013, (21) : 2100-2106.

8 陸大道, 樊傑, 劉衛東, 等. 中国地域空間、功能及其発展. 北京: 中国大地出版社, 2011.

9 樊傑, 王亜飛, 陳東, 等. 長江経済帯国土空間開発結構解析. 地理科学進展, 2015, (11) : 1-9.

10 陸大道. 我国区域発展総体戦略与西部開発. 経済地理, 2000, (3): 1-4.

11 鄧小平文選(第三巻). 北京: 人民出版社, 1993.

12 樊傑. 人地系統可持続過程、格局的前沿探索. 地理学報, 2014, (8) : 1060-1068.

13 金鳳君, 王成金, 李秀偉. 中国区域交通優勢的甄別方法及応用分析. 地理学報, 2008, (8) : 787-798.

14 樊傑,郭鋭. 面向“十三五”創新区域治理体系的若干重点問題. 経済地理, 2015, (1) : 1-6.

15 魏后凱, 鄔暁霞. 我国区域政策的科学基礎与基本導向. 経済学動態, 2010, (2) : 57-61.


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