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中国の国土空間開発・保護局面の最適配置理論の革新と「十三五」計画の対応戦略(その2)

2016年 3月24日

樊 傑:中国科学院科学技術戦略諮問研究院、中国科学院地理科学・資源研究所、中国科学院地域持続可能発展分析・シミュレーション重点実験室

その1よりつづき)

2 制約性——主体機能の位置付けと資源環境収容力

 世界の発展の実践と理論研究はいずれも、モデル転換の発展段階においては、「上から下へ」統制力の強い管制が、秩序ある持続的な発展や転換効率・効果の向上にとって極めて重要となることを示している[16]。異なる階層や部門の政策決定者、利益の異なる社会層や地域、類型の異なる企業・事業団体等は、科学的発展観が形成され、なおかつエコ文明建設が広く受容されている背景の下であっても、現実的な利益と転換コストの二重の制約を受けることから、科学的発展とエコ文明を自覚的に自らの行動のうちに貫徹させることにはまだ大きな難度がある[17]。このため計画と政策を通じて必要な制約的措置を実行することは、政府が調整機能を果たすための有効なツールとなる。

 統制力を強調することは、新たな党中央が緑色発展を推進し、統治能力と統治体系の近代化を進めるにあたっての、重要な政策的方向となる。

2.1 主体機能の位置付け

 具体的なひとつの地域に対して統制力の強い管制を実行する際には、同地域に対して合理的な機能の位置付けを行うことが、土台となり根拠となる。その後、発展目標の要求や空間構造、開発強度制御を、異なる空間スケールの地域ごとに遂行し、制統制力の強い地域管制を実現する[18]。主体機能区は、制約性地域統治体系の土台となり得る。

 「十三五」計画における「全国主体機能区計画図」の重大な意義は、各地の機能の位置付けを明確化し、主体機能区を基礎的な制度とし、総合的な政策の構築と空間計画体系の整合を通じて、上から下への有効な管制を実現することにあるとの指摘がなされている[19-21]。地域の機能類型を具体的に見ると、国家スケールの主体機能の位置付けの類型には、大規模に集積した人口と経済を受け入れる「都市化地区」、食糧安全を保障する「農業主産区(主要産地)」、生態安全のための障壁を形成する「生態機能区」、「自然・文化遺産保護地」の4大地域が含まれる。空間スケールが小さくなるほど、機能類型はより多様となり、機能の管制は土地用途の管制により近付く。

 理論的にさらに検討すべき点は、まず、異なる空間スケールで目標志向が実現されたと前提した場合(地域機能の形成と空間局面の形成を含む)、地域機能類型がいかに構成され、地域統治体系がいかなる適応性を持つのかということである。次に、自然条件の分化法則と経済社会発展の空間組織法則を尊重することを土台に、空間構造を最適化し、様々な地域の生産・生活・生態空間の比率関係を重点的に確定し、「点―軸―面」の空間形態の配置プランを制定し、空間開発強度というカギとなるパラメーターの可能性を探ることである。

 初期的な研究からは、「点―軸―面」によって構成される地域系統空間構造は、経済社会の発展水準と自然環境条件の変化に伴い、一定の法則を持った変化を経ることがわかっている。難点は、科学的なメカニズムからは、異なる地域の合理的な空間開発強度の閾値をまだ導き出しておらず、空間構造を確定することは難しいということである。「三生空間」の構造の合理的な比率関係を確定するメカニズムのモデル構築はとりわけ問題とされている[20,22]。このほか各種主体機能区はいずれも、合理的な開発方針を持つ必要がある。「生産空間の集約と高効率、生活空間の快適さ、生態空間の自然美」を実現する計画や手段、政策体系の応用研究も、主体機能位置付けの理論や方法の研究の重要な内容となる。

2.2 資源環境収容力

 主体機能の位置付けを前提として、人口・経済の発展と資源環境状況の均衡程度の関連統治体系の設計を通じて、戦略や計画、政策の制約性をさらに強化する必要がある。この均衡程度は、現在直面するカギとなる問題を手引きとして、資源環境が収容力を備えているかという問題にまとめられる[23](図3)。

図3 資源環境収容力の制約的な管制の枠組

図3

 主に次の3つのレベルから管理を行う。産業と産品のネガティブリストをターゲットとしたミクロレベルの管理、空間上の耕地・水・生態・環境のレッドラインをターゲットとしたメゾレベルの管理、資源環境収容力に対するマクロレベルの警報管理である[24-26]。このうちネガティブリストとレッドラインによる管理は事前管理であり、資源環境収容力の警報は地域発展状況への判断と予想を土台とした事後管理であると言える。資源環境収容力の算定可能性という問題を理論方法面で解決できないうちは、資源環境の収容超過状態の評価と資源環境の質への認識を通じて、中国の県級単位を資源環境の「収容超過」「収容超過間近」「収容不超過」などの収容状態類型で区分し、資源利用の効率と環境汚染の圧力の状況の分析を踏まえ、収容超過類型をさらに、地域発展の持続可能性を示す「非常に厳重な警告」「厳重な警告」「警告」「警告間近」「警告なし」などの等級に分けることは、資源環境収容力のマクロな制約作用を発揮させる有効な手段となる。

 こうした科学的な取り組みを通じて、「自然賦存条件」「経済社会発展」「資源環境管理」の3次元からさらに、問題の区県の資源環境収容超過の原因を解明する。資源環境の整備や機能区の建設、警報類型区の発展などから、誘導政策による支援や制約・管制政策、緊急処理政策などを手引きとして、財政政策や投融資政策、産業政策、土地政策、人口政策、環境政策などの制限的な政策や措置を展開すれば、「十三五」計画期間中に制約的な政策の新たなブレークスルーを実現することができる。中国の資源環境収容力の警告評価で収容超過の県区がいつか一つもなくなった時、中国は、持続可能発展の軌道に全面的に入ることとなる[27,28]

3 照準性——差別化された貧困扶助・都市化モデル

 空間規制と地域統治において中国で最も際立った問題と言えるのが、戦略性の欠如のほか、地域差を無視した一律処理という問題である。同様の政策を取ることは全国を全体として見た時は合理的に見えるものの、具体的な地域を見た場合は、不適合となってしまうという問題が出てくる。一部の地方では比較的良好な計画が、別の場所ではひずみを生むということがあり得る[29]。中国の陸地は960万平方キロメートルにわたって広がり、自然地理の環境には顕著な違いがあり、地理的な条件や歴史的な歩みも大きく異なり、経済社会発展の土台と未来のグローバル化の過程における位置付けも異なる。

 全国発展戦略、とりわけ重大な計画や政策の制定においては、それぞれの地域の発展モデルや経路、措置を十分に検討しなければならない。差別化された制度設計の不在は、計画や政策の照準性の低さにつながる。照準性が低ければ、計画や政策の操作可能性を保障することは到底できず、計画や政策が効力を失う主要な原因となり得る。

3.1 各空間レベルの高精度貧困扶助

 貧困者の扶助や貧困脱却は、「十三五」計画において、党中央に高く注目された命題である。中国の貧困扶助・貧困脱却の発展段階と実際の効果の分析からは、中国がすでに、貧困扶助の難関攻略と貧困地区・地域の発展の段階に入っていることがわかる。精度の高い貧困扶助を行うためには、基層部に向けて農家や個人にまで寄り添った取り組みを行わなければならない。

 さらに重要なのは、中国の貧困地区の発展条件の差異に配慮し、それぞれのレベルに応じて分類を行い、それぞれの類型地域の貧困扶助の目標と戦略の重点を確定し、それぞれに適合した貧困扶助の政策と措置を選び、差別化された貧困扶助の審査・監督指標を制定し、異なる空間スケールの地域における精度の高い貧困扶助を実現することである[30]。このためには、発展条件を手引とした指標体系を選択し、中国の貧困地区に対する初期的な分析を行う必要がある。

 中国の貧困地域は大きく次の4つに分けられる。第一に、資源の優位性と市場の潜在力はあるが投資環境に不足がみられ、とりわけ地域のインフラ条件が整っていない貧困地区。主に、中国南西部などの水・温度の条件が比較的良い地域に分布している。こうした地域は往々にして生態環境に優れ、生物資源とりわけ特産の農業副産物資源が豊富である。観光や景観、文化の資源価値も際立っている。山地・丘陵の開発程度は低く、地理的に離れており交通が不便なため、大規模生産や商品経済の水準は高くない。投資環境と地域のインフラ条件を重点的に改善することで、貧困状態は通常、すばやく大きな改善を遂げる。とりわけ企業の発展と大規模経営が進むことで、地域全体の貧困脱却と発展効果は顕著なものとなる。

 第二に、資源の優位性が際立ち、エネルギー・鉱業資源や観光資源などが地域を超えた全国的な価値を備えた貧困地区。資源開発の投資規模が大きいため、外来資本による開発を主なモデルとして取り入れていることが多い。資源開発規模が増大し、企業の収益が上がっても、現地の貧困状態に実質的な改善はあまり見られず、鉱業・農業間や都市・農村間の生活水準の格差は広がり続ける。その問題の本質は、資源の優位性が、現地の人口の貧困を脱却し富をもたらす経済的な優位性に転化しておらず、資源開発の収益分配に深刻な問題があるということにある。このため、優勢にある資源を一定の割合で現地の人口に分け、貧困脱却のための資産とし、この資産を資源開発企業に株式参入するための資本とし、企業収益の配当という形で毎年の安定した収入とすることで、貧困脱却と小康社会実現の目標を達成することを検討すべきである。

 第三に、良好な生態の優位性を持っているが、従来型の理念と工業文明に対する認識のために、この優位性を取引可能な産品として定義することができず、生態の保護と建設の中から経済収益を得ることのできない貧困地区。清浄な空気と水の不足が深刻化し、産業発展による炭素排出に対する森林や草原の炭素吸収機能による軽減作用が高まり、生態建設によって全国の持続可能発展能力が増強され、環境によって投資収益の正の外部性が強化されるのに伴い、生態の保護と建設の直接的・間接的な経済効果はエコ文明の発展段階において高まり続けている。このため政府(国家)調達や企業調達、地域間取引、生態補償など、市場メカニズムによる手段と融合した多くの手段を取ることは、貧困だが生態の良好な地域が付加価値を創造し、富をなすための新たな経路となっている。このため市場取引のルールを制定し、監督管理を行うことは、政府の政策の革新の要点となり、貧しい生態地区が発展の長期的なメカニズムを構築する重要な方向性となっている。

 第四に、資源の優位性を持たない貧困地区。政府は、基本公共サービスの均等化をはかると同時に、人的資源の就業能力の訓練を強化し、人口の外部への移住を誘導する必要がある。

3.2 差別化された都市化モデル

 新型都市化は、現段階で中国が近代化を実現するための重要な手がかりとなる。だが都市群を主体形態とすることを強調するあまり、都市化水準が50%を超えた後の空間分類による指導がおろそかとなったことは、中国の不健全な都市化にリスクをまたひとつ増やしてしまっている[31-33]。このため、それぞれが特色を備えた地域都市化モデルを検討・構築し、中国都市化空間配置の基本的な形態を最適化する必要がある。初期的な分析によると、中国「十三五」時期の差別化された都市化モデルは少なくとも次の6種類を含むものと考えられる。

(1)東部大都市連続区(帯)の発展。科学技術による革新駆動発展への転換を率先して実現し、大都市連続区の産業のアップグレードと機能向上を加速する。空間構造を調整し、都市化水準と都市建設の質の同時の向上を促進する。大都市連続区内で住民地区の分散した地区の都市化経路を転換し、全域都市化の発展局面を形成し、都市連続区の放射・牽引作用を高める。

(2)海岸新都市帯の構築。「港湾―産業パーク―都市」の一体化の計画と発展を進め、海岸生態環境の保護と海陸の統一調整を行い、海岸帯の異なる利用機能の協調をはかり、海岸帯の開発と集散施設の建設の共同発展を実現する。

(3)内陸都市群の拡大発展。中西部地区の経済発展核心区を形成し、都市・農村の発展を統一的に計画し、合理的な都市群の組織方式と発展経路を選択し、都市群の範囲の過度の拡大によってあるべき機能と価値が喪失するのを回避する。

(4)従来の農業区の都市化を一歩ずつ推進する。厳格な土地管理を引き続き堅持し、建設用地の供給を調整し、県城(県政府所在地)と中心鎮の発展の建設用地需要を保障する。農業主要産地によって囲まれた中心都市の強化をはかり、大中規模の都市を主体形態とした県城を建設し、工業化と都市化が共同発展と相乗効果の軌道に入っていくよう促す。

(5)山地・丘陵の都市化の新モデルを探る。山地・丘陵の都市化の資源環境収容力を真剣に分析し、都市化推進の自然災害リスクを回避する。中心都市の波及・牽引作用を発揮させ、貧困地域の投資環境を改善する。小都市を主体形態として、山地・丘陵の都市化プロセスを推進する。生態補償メカニズムと資源税の改革を強化し、都市化プロセスを深刻に制約しているカギとなる問題を適切に解決する。

(6)辺境地区の都市建設の歩みを速める。辺境地区の都市化発展支援を主旨とし、越境商業貿易物流業と輸出入加工の拠点建設と結合させ、辺境後方基地都市と辺境前沿窓口都市の建設を加速し、辺境地区の都市帯を共同で構築する。辺境の発達都市によって国境の新たな顔を示し、高い生活水準と安定した就業環境で辺境の安全を安定化させる。

その3へつづく)

参考文献:

16 樊傑, 王亜飛, 湯青, 等. 全国資源環境承載能力監測預警(2014版)学術思路与総体技術流程. 地理科学, 2015, (1) : 1-10.

17 傅伯傑. 地理学綜合研究的途径与方法: 格局与過程耦合. 地理学報, 2014, (8) : 1052-1059.

18 樊傑. 中国主体功能区劃方案. 地理学報, 2015, (2) :186- 201.

19 樊傑. 我国主体功能区劃的科学基礎. 地理学報, 2007, (4) : 339-350.

20 Fan J, Sun W, Yang Z S, et al. Focusing on the major function- oriented zone: A new spatial planning approach and practice in China and its 12th Five-Year Plan. Asia Pacific Viewpoint, 2012, (1) : 85-95.

21 馬凱. 深刻認識建設主体功能区的重大意義. 人民日報, 2011- 09-09 (008).

22 徐勇, 湯青, 樊傑, 等. 主体功能区劃可利用土地資源指標項及其算法. 地理研究, 2010, (7): 1223-1232.

23 呉伝鈞.人地関系与経済布局. 北京: 学苑出版社, 1998.

24 戴爾阜, 蔡運竜, 傅沢強. 土地可持続利用的系統特征与評価. 北京大学学報:自然科学版, 2002, (2): 231-238.

25 李九一, 李麗娟. 中国水資源対区域社会経済発展的支撑能力. 地理学報, 2012, (3) : 410-419.

26 徐勇, 樊傑. 区域発展差距測度指標体系探討. 地理科学進展, 2014, (9) : 1159-1166.

27 陸大道, 樊傑. 区域可持続発展研究的興起与作用. 中国科学 院院刊, 2012, (3) : 290-300.

28 Lu D D, Fan J. 2050: The regional development of china. Beijing: Science Press, 2009.

29 鄭度, 欧陽, 周成虎. 対自然地理区劃方法的認識与思考. 地理学報, 2008, (6) :563-573.

30 蒋子竜, 樊傑, 陳東. 2001—2010年中国人口与経済的空間集聚与均衡特征分析. 経済地理, 2014, (5) : 9-13.

31 樊傑, 劉毅, 陳田, 等.優化我国城鎮化空間布局的戦略重点与創新思路, 中国科学院院刊, 2013, 28 (1) : 20-27.

32 馬凱. 転変城鎮化発展方式提高城鎮化発展質量走出一条中国特色城鎮化道路. 国家行政学院学報, 2012, (5) : 4-12.

33 楊偉民. 促進城鎮化的緑色化. 瞭望, 2015, (15) : 10-11.


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