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中国の資源環境の収容制約―地域の差異と類型化(その3)

2016年 3月11日

徐勇(中国科学院地理科学・資源研究所)

張雪飛(中国科学院地理科学・資源研究所、中国科学院大学)

李麗娟(中国科学院地理科学・資源研究所)

戴爾阜(中国科学院地理科学・資源研究所)

徐衛華(中国科学院生態環境研究センター)

その2よりつづき)

2 結果の分析

2.1 単一要素収容制約の地域的差異

2.1.1 利用可能土地資源潜在力

 全国デジタル標高地形図(DEM)と2000年TMリモートセンシングイメージ解訳土地利用図をベースとして、地形標高2000m未満の対応傾斜値15o未満、地形標高2000-3000m間の対応傾斜値は8o未満、地形標高3000m以上の対応傾斜値は3o未満、基本農地の耕地に占める比β=0.85とのパラメーター設定に基づき、全国の県別各土地利用類型の面積を算出する。その後、土地部門の2000年と2008年の土地利用変化状況の対比図で算出されたデータを利用し、増減処理と修正を加え、2008年の全国県別予備建設適正用地面積と一人当たりの予備建設適正用地面積を算出する。

 2008年の中国の建設利用可能用地の予備建設適正用地の面積は合計28.34×104km2で、全国の陸地国土総面積に占める割合は約2.99%だった[13]。全国の一人当たりの予備建設適正用地面積の平均値は0.32ムー(1ムーは約666m2)/人で、各県級区間の差異は大きく、最高で一人当たり39ムー/人近い県もあれば、最低ではゼロの県もあった。一人当たりの予備建設適正用地の県別データの平均値と大小の特徴に基づき、全国を0.3ムー/人未満、0.3—0.8ムー/人、0.8ムー/人以上のそれぞれ「不足」「中等」「比較的豊富」の3類型に分けた(図1)。

図1

図1 中国の一人当たりの利用可能土地資源潜在力の空間分布

 総体的に見ると、中国の一人当たりの予備建設適正用地の空間分布は、北が豊富で、南が不足しているとの基本的な特徴を持つ。「不足」とされた県級単位は1307カ所あり、主に青蔵高原や東部沿岸、河南・安徽・湖北・湖南・江西などの省に分布し、雲貴高原や四川盆地、広西・陜西・内蒙古・新彊などの省区にも散らばって広がっていることがわかる。「中等」とされた県級単位は813カ所で、空間分布は比較的幅広く、各省市区にいずれも分布しており、中国の地形の第2段に比較的集中している。「比較的豊富」とされた県級単位は255カ所で、東北や華北北部、陝西・甘粛・寧夏地区、新彊、青蔵東南部などに主に分布し、青海や山東、江西、雲南などにも散らばって分布している。

2.1.2 利用可能水資源潜在力

 全国三級流域の1956年から2000年までの多年平均地表水・地下水資源量を土台として、利用可能水資源潜在力の段階的算定方法と技術プロセスに照らして、2005年の全国の県別利用可能水資源潜在力と一人当たりの利用可能水資源潜在力を算出する。一人当たりの利用可能水資源潜在力の県別データの大小の特徴に基づき、全国を500m3/人未満、500—3000m3/人、3000m3/人以上のそれぞれ「不足」「中等」「比較的豊富」の3類型に分ける(図2)。

図2

図2 中国の一人当たりの利用可能水資源潜在力の空間分布図

 中国の一人当たりの利用可能水資源潜在力の空間分布は非常に不均衡で、南方に多く北方に少なく、山間部に多く平原部に少ないという総体的な特徴を示した。南方地区の一人当たりの利用可能水資源潜在力は比較的高く、大部分の地区で500m3以上だった。北方地区では、東北の一部地区が一定の潜在力を備えるほかは、水不足問題が比較的際立っており、広範囲の過度開発地区も存在している。

 「不足」とされた県級単位は1087カ所で、黄淮海平原や黄土高原、東北平原、河西回廊、四川盆地などに集中し、新彊の天山南北斜面とカシュガル周辺、雲南中部地区、東南沿岸、珠江デルタなどにも点在していた。「中等」とされた県級単位は1016カ所で、南側と北側に分かれて分布していた。南方では、福建・浙江・江西・広東・湖南・貴州・広西・雲南・海南などの省区と秦巴山地や川東鄂西丘陵山地などに分布していた。北方では、東から西へと主に、東北平原とその周辺、内蒙古、新彊中部・西南部などに集中している。「比較的豊富」とされた県級単位は273カ所で、青蔵高原とその周辺、新彊の辺境地区、東北の辺境地区などに主に分布し、南方の諸省や海南などの省区にも散らばっている。

 上述の現象を招いた主な原因は、中国の降水分布に、東南に多く西北に少ないという明らかな特徴があることである。東南沿岸は2000mmを超えるが、西北に向かって徐々に少なくなり内陸では50mmを下回る。水資源のこのような分布の局面は、北方の水資源の需給の矛盾を際立たせている。流域区分から見ると、北方の6大流域(松花江流域、遼河流域、黄河流域、淮河流域、海河流域、内陸諸流域)の土地面積は全国の63.6%を占め、人口は全国の45.3%を占めるが、水資源量の全国総量に占める比率は19.0%にすぎず、水資源不足問題がとりわけ際立っている。

2.1.3 環境ストレス度

 環境ストレス度の算定結果と県別データの大小の特徴に基づき、全国各県級単位のストレス度を「高い」「中等」「比較的低い」の3類型に分ける(図3)。

図3

図3 中国環境ストレス度空間分布図

 総体として見ると、中国の環境ストレス度の空間局面はおおよそ、賀蘭山—竜門山ライン(図3の青色破線)を境としていることがわかる。「高い」と分類される地区は主に、このラインの東部に集中し、西部は基本的に「比較的低い」と分類されている。

 環境ストレス度が「高い」とされた県級単位は763カ所で、華北平原や長江デルタ、江蘇省北部、四川・重慶・貴州・広西省区、東北平原、黄土高原地区北部などにまとまって広がり、北京・広州線の鄭州以南の沿線地区、汾渭窪地、東南沿岸、河西回廊、天山南北斜面などの地にも散らばっている。環境ストレス度が「中等」と分類された県級単位は303カ所で、空間分布は「高い」とされた地区とほぼ一致し、多くがその周辺に位置している。環境ストレスが「比較的低い」とされた県級単位は1310カ所で、空間分布は極めて広範囲にわたり、賀蘭山・竜門山ライン以西地区に主に分布している。

 東部地区の分布は地形と密切に関係しており、主な分布地は、内蒙古東部と東北の大・小興安嶺や長白山、黄土丘陵区、秦巴山地、膠東半島、南方の山地・丘陵地区などとなっている。大気と水の環境ストレス度を見ると、京津冀(北京・天津・河北)や長江デルタ、珠江デルタ、その他の大都市周辺地区はいずれも両者のストレス度がいずれも高く、人口と工業が高度に密集していることと関係していると考えられる。西南地区の貴州と重慶、四川は、大気環境ストレス度の高い地区とされており、その主な原因は、硫黄含有量の高い石炭を使っている上、地形条件が大気汚染物の拡散に不利であることが考えられる。水環境ストレス度の高い地区は主に、遼河と海河、淮河、松花江、長江、黄河の中下流などの流域地区に現れている。

2.1.4 生態制約度

 生態制約度の算定結果と県別データの違いに基づき、全国の各県級単位を制約度の「高い」「中等」『比較的低い』の3類型に分けた(図4)。

図4

図4 中国生態制約度空間分布図

 総体として見ると、中国の生態制約度の空間分布は、天山・大別山ライン(図4の青色破線)を境として、西南側は高く、東北側は低くなっていることがわかる。生態制約度が「高い」とされた県級単位は902カ所で、新彊南彊や青蔵高原、黄土高原地区、アルシャー盟、雲貴高原、秦巴・武陵山区、華南山地・丘陵などの地区にまとまって集中し、内蒙古東部や浙江北部沿岸地区、長白山・大別山・五指山などの山地にも散らばっている。「中等」とされた県級単位は642カ所で、内蒙古中東部や燕山・太行山区、河北黒竜港地区、青海柴達木盆地周辺地区などに比較的集中し、四川東部や貴州中部、湖南南部、広西中部、東南沿岸、西蔵「一江両河」(雅魯藏布江とその支流の拉薩河・年楚河)流域、天山・長白山・小興安嶺などにも散らばっている。「比較的低い」とされた県級単位は832カ所で、華北平原や東北平原、長江中下流平原、新彊北彊地区にまとまって分布し、汾渭窪地や青海東部、新彊西部、四川盆地、東南沿岸などにも散らばっている。

その4へつづく)


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