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中国の資源環境の収容制約―地域の差異と類型化(その4)

2016年 3月15日

徐勇(中国科学院地理科学・資源研究所)

張雪飛(中国科学院地理科学・資源研究所、中国科学院大学)

李麗娟(中国科学院地理科学・資源研究所)

戴爾阜(中国科学院地理科学・資源研究所)

徐衛華(中国科学院生態環境研究センター)

その3よりつづき)

2.2 資源環境収容制約の地域類型

 4つの単一要素の収容制約の級別類型からは、中国では、水・土地資源潜在力が不足とされた地区と環境ストレス度・生態制約度が高いとされた地区が、資源環境が強制約を受けている区域であり、合計面積は国土の総面積の90%に達することがわかる。4つの単一要素で「不足」と「高い」の級別を受けた県級単位を組み合わせて分析すると、中国の資源環境収容制約には、二重の要素の制約を受けている類型が見られるだけでなく、3つの要素さらには4つの要素の複合的な制約を受けている類型もあることがわかる。二重要素の制約には「土地-水」「土地-環境」「土地-生態」「水-環境」「生態-水」「生態-環境」の6類型があり、三重要素の制約には「土地-水-環境」「土地-水-生態」「土地-環境-生態」「水-環境-生態」の4類型があり、四重要素の制約は「土地-水-環境-生態」の1類型がある。これら11個の地域類型の状況は表2、空間分布は図5-7を参照。

表2 中国資源環境収容制約地域類型
制約類型 県級単位(個) 面積(104km2) 人口(104人) 一人当たりGDP
(104元)
土地-水 643 86.95 63011.54 3.41
土地-環境 508 70.17 49564.79 3.80
土地-生態 485 254.77 17965.87 2.07
水-環境 542 80.57 47431.44 3.47
生態-水 156 51.45 6775.10 2.39
生態-環境 130 36.61 6346.15 3.01
土地-水-環境 373 44.47 39181.17 3.82
土地-水-生態 53 12.28 3181.96 3.10
土地-環境-生態 68 18.10 4105.13 3.06
水-環境-生態 43 8.50 2490.83 2.85
土地-水-環境-生態 19 2.61 1516.89 3.30

 土地-水制約類型には643県級単位があてはまり、土地面積は86.95×104km2、人口は6.3億人を数える。主に、黄淮海平原や四川盆地、汾渭窪地、天山北斜面、東南沿岸などの地区に分布し、その他の地区の大都市にも散見される。土地-環境制約類型には508県級単位があてはまり、土地面積は70.17×104km2、人口は4.96億人を数える。主に、賀蘭山・竜門山ライン以東地区に分布し、黄淮海平原と長江デルタ、雲南・貴州・重慶の境界地区にまとまって分布し、その他の省区にも散見される。土地-生態制約類型には485県級単位があてはまり、土地面積は254.77×104km2、人口は1.7億人を数える。青蔵高原と雲貴高原、南方山地・丘陵地区に集中して分布し、北方の内蒙古などの省区にも散らばって分布している。水-環境制約類型には542県級単位があてはまり、土地面積は80.57×104km2、人口は4.74億人を数える。黄淮海平原と長江デルタ、四川盆地、黄土高原辺境、長江中流地区に集中して分布し、東北平原や東南沿岸、新彊などにも散らばって分布している。生態-水制約類型には156県級単位があてはまり、土地面積は51.45×104km2、人口は0.68億人を数える。黄土高原地区に主に分布し、四川東部や雲南中部、内蒙古、新彊にも散らばって分布している。生態-環境制約類型には130県級単位があてはまり、土地面積は36.61×104km2、人口は0.63億人を数える。黄土高原周辺や雲貴高原、浙江北部沿岸などに主に分布している。

図5

図5 中国資源環境収容制約地域類型分布(二重要素)

図6

図6 中国資源環境収容制約地域類型分布(二重要素)

 三重要素の制約の主要類型は土地-水-環境制約類型で、373県級単位があてはまり、土地面積は44.47×104km2、人口は3.92億人を数えた。土地-水-生態と土地-環境-生態、水-環境-生態の3類型にあてはまる県級単位はそれぞれ53カ所、68カ所、43箇カ所で、土地面積は12.28×104km2、18.1×104km2、8.5×104km2、人口は0.32億人、0.41億人、0.25億人だった。三要素制約類型は主に、賀蘭山・竜門山以東地区に分布し、華北平原や長江デルタ、江蘇、雲南・貴州・四川の境界地区などに比較的集中した。四重要素の共同制約類型に19県級単位があてはまり、分布は散らばっているが、江蘇沿岸や重慶市とその周辺に比較的集中していた。

図7

図7 中国資源環境収容制約地域類型分布(複数要素)

3 結論と提案

3.1 主要な結論

 一人当たりの利用可能土地資源潜在力、一人当たりの利用可能水資源潜在力、環境ストレス度、生態制約度の4指標をカギとして、段階的または統合式算定方法の構築を通じて、中国の水・土地・環境・生態の資源環境要素の収容制約を県級単位別に算定し、空間的な差異を分析し、地域類型の区分を行った。研究結果からは、中国の90%近くの国土は資源環境の強制約状態にあり、そのうち半分近くが二重の要素の強制約を受けており、賀蘭山・竜門山ライン以東の人口・産業の密集区に集中していることがわかる。

 資源環境の単一要素収容制約の基本的な特徴としては、▽中国の東部・中部の人口密集地区と青蔵高原は土地資源不足の強制約状態にある、▽華北と西北、東北、四川盆地、南方都市地区は水資源不足の強制約状態にある、▽華北平原や長江デルタ、浙江北部、四川・重慶・貴州・広西の各省区、東北平原、黄土高原地区北部、北京・広州線鄭州以南沿線地区、汾渭窪地、東南沿岸、河西回廊、天山南北斜面などは環境ストレスが強制約状態に達している、▽生態の強制約区域は天山・大別山ラインの西南部に集中し、同ライン東北部の黄土高原とアルシャー盟、東北周辺、浙江北部沿岸にもまとまって分布している――などが挙げられる。

 資源環境の複数要素収容制約の基本的な特徴としては、(1)複数要素の交差した制約類型は様々で、二重要素の制約類型もあれば、三重要素さらには四重要素の制約類型もある、(2)主体となるのは二重要素の制約類型であり、11制約類型のうち6つが二重要素の制約を受けるもので、そのうち4類型ではあてはまる県級単位が480カ所以上だった、(3)空間分布は比較的集中しており、土地—生態制約類型が青蔵高原に集中しているのを除くと、その他の交差制約類型はほとんど賀蘭山・竜門山ライン以東地区に集中している――が挙げられる。

3.2 対策の提案

 中国の資源環境収容制約の面積が広大で、かかわる地域が広く、類型が複雑・多様で、人口・産業の密集区と高度に重なり合っているという特徴を踏まえて、今後とりわけ「十三五」(第13次5カ年計画)期間は、以下の3方面の対策措置を取ることが望ましい。

(1)地理国情要素のビッグデータの観測・統合計画の推進。地理国情要素の基礎データは、国家または地区の資源環境状態や経済社会の発展動態の正確な把握と中長期発展戦略の科学的な制定の重要な根拠となる。地理国情基礎データのカバー範囲が全面的と言えず、単位が整合せず、過去のデータが散失しているなどの現状を踏まえ、資源環境と経済社会の地理国情要素の基礎データの観測や統合、処理事業を強化する必要がある。

(2)資源環境収容力評価の基礎理論と方法を研究する大科学計画を始動する。資源環境収容力は、国家または地区が国土空間開発における保護と規制を推進し、産業構造をアップグレード・調整し、経済社会の健全な発展を実現するための科学的な根拠の一つとなる。資源環境収容力評価に存在する収容対象の不明確や理論・方法の欠陥、参考にできる経験が世界にもないという現実を踏まえ、資源環境収容力評価の基礎理論と方法研究の大科学計画を国家が早期に始動することを提案する。

(3)資源環境収容力の観測・警報体制の構築を推進する。「資源環境収容力の観測・警報体制を構築し、水・土地資源や環境容量、海洋資源の基準超過区域に制限的措置を実行する」[12]ことは、新時期の中央による改革深化の重要な任務の一つである。だが過去2年の研究の進捗からは、直面する困難が政府や専門家の予想をはるかに上回っており、人力や財力の投入や組織保障などでの活動の強化が求められていることがわかっている。

(おわり)

参考文献:

12 徐勇, 湯青, 樊傑, 等. 主体功能区劃可利用土地資源指標項及其算法. 地理研究, 2010, 29 (7) : 1223-1232.


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