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京津冀(北京・天津・河北)における大気煙霧排出状況の研究(その2)

2016年 4月14日

姜克雋

姜克雋:中国国家発展改革委員会エネルギー研究所 研究員

 専門領域はエネルギー環境システムモデル研究、中国総合環境政策評価モデル(IPAC)の開発主担当。研究領域はエネルギーおよび気候変動政策に関連するシナリオモデルが中心。既存研究のもと、国際政策決定プロセスや国際モデル研究にも関与。

その1よりつづき)

3. 京津冀のエネルギーと排出状況

3.1 京津冀大気煙霧状況

 2013年における北京の大気中のPM2.5は、基準値超過が最も深刻な汚染物質となった。北京の大気中の汚染物質6項目のうち、SO2とNOの2項目の年平均濃度のみが国家基準を満たし、その他の4項目は何れも基準値超過、それぞれ、PM2.5年平均濃度が156%超過の1立方あたり89.5マイクログラム、二酸化窒素(NO2)年平均濃度が40%超過の1立方あたり56.0マイクログラム、粒子状物質(PM10)年平均濃度が54%超過の1立方あたり108.1マイクログラム、光化学オゾン(O3)は15%超過であった。総じていえば、大気煙霧対策を経て、2013年の北京市主要汚染物質二酸化硫黄、窒素酸化物、化学的酸素要求量、アンモニア態窒素排出量は前年比でそれぞれ7.25%、6.29%、4.3%、3.8%減少、2年前倒しで国が通達した「第12次五カ年計画」の汚染物質排出削減任務を完遂した。

 2013年、天津市における大気の質が基準値内の日数は145日で、通年の40%を占めた。化学的酸素要求量、二酸化硫黄、窒素酸化物排出総量はそれぞれ22.15万トン、2.48万トン、21.68万トン、31.17万トン減少し、2012年比で3.48%、2.82%、3.43%、6.75%低下し、国が通達した汚染物質排出削減任務を完遂させた。2013年の天津市大気汚染物質濃度状況によると、天津市のSO2年平均濃度は1立方あたり59マイクログラムで、年平均濃度基準(1立方あたり60マイクログラム)よりやや低かった。NO2年平均濃度は1立方あたり54マイクログラムで、年平均濃度基準(1立方あたり40マイクログラム)を0.4倍超過、PM10の年平均濃度は1立方あたり150マイクログラムで、年平均濃度基準(1立方あたり70マイクログラム)を1.1倍超過、PM2.5の年平均濃度は1立方あたり96マイクログラムで、年平均濃度基準(1立方あたり35マイクログラム)を1.7倍超過した。

 2013年の河北省・市街地における大気質優良日数は平均で129日であった。2013年、河北省内多くの市が大気汚染に見舞われ、大気質の優良な順に並べると、張家口、承徳、秦皇島、滄州、廊坊、衡水、保定、唐山、邯鄲、石家荘、邢台となり、これらの市における基準値超過日ではPM2.5とPM10を主とする汚染物質がやや多くみられた。2013年以来、河北省では石炭削減、自動車抑制、粉塵削減、企業のガバナンスといった対策を集中的に実施し、重度汚染日は減少傾向を示した。2013年、河北省の化学的酸素要求量、アンモニア態窒素、二酸化硫黄、窒素酸化物の排出量は2012年比でそれぞれ2.9%、3.51%、4.2%、6.17%減少し、いずれも所期目標を達成した。

 研究者は京津冀地域の煙霧汚染観測、シミュレーション予測および警報研究を基に、京津冀地域の大気重度煙霧汚染の形成メカニズムと汚染源解析に関する初歩的な結果を得ることができた。京津冀地域煙霧汚染物の排出源は多業界・多側面を含む。汚染源には、1)火力発電、粗鋼、セメント、レンガ、板ガラスといった石炭燃焼関連の工業を含む工業点源汚染、2)採油、製油、ゴム、プラスチック、製薬といった石油関連の工業を含む重化学点源汚染、3)石油製品を動力とする交通輸送車両を含む交通移動線源、4)都市化生活汚染源と大気の粉塵を含む農業生産生活面源汚染の5つがある。

3.2 京津冀エネルギー発展

 京津冀地域の単位面積当たりのエネルギー消費量は大きい。京津冀地域の地理的面積は21.31万平方キロメートルで、国土面積の2.2%を占める。2012年の京津冀地域のエネルギー消費量は4.6億トン(標準炭)で、全国のエネルギー消費量の12.6%を占める。単位面積当たりのエネルギー消費で計算すると、2012年、北京、天津、河北省はそれぞれ全国平均値の11.6、18.2、4.3倍、とりわけ天津市は、エネルギー消費量の増加に伴い、単位面積当たりのエネルギー消費総量水準が急速に上昇している。京津冀地域の石炭燃焼状況から見ると、中国科学院研究のデータ(孟亜東2014)では、2012年、京津冀地域の石炭消費総量は3.2億トン(標準炭)で、世界の陸地面積の0.3%に満たないものの、世界の消費量の6%の石炭を燃焼している。同地域のエネルギー消費とりわけ石炭消費量は持続的に増加しており、すでに地域の生態バランスと大気環境に深刻な影響を与えている。

 河北省のエネルギー消費は石炭が主で、2012年の河北エネルギー消費総量は2.9億トン(標準炭)に達し、エネルギー消費構造は石炭が49%、コークスが18%、電力が20%、油製品が約13%となっている。河北省の工業は主要なエネルギー消費部門であり、2012年の各部門の末端エネルギー消費構造によると、工業エネルギー消費は全社会エネルギー消費総量の79%を占め、住民生活用エネルギーは9%、交通等第三次産業の総エネルギー消費量は8%であった。河北省工業エネルギー消費量は主に鉄鋼、電力、化学工業、建材、石油加工、石炭採掘業のいわゆる6大エネルギー多消費産業に集中している。2013年、一定規模以上工業の6大エネルギー多消費産業に占める総エネルギー消費の割合は91%で、このうち、鉄鋼が52%、電力が20%、建材が5%、化学工業6%、石炭採掘業が4%を占める。

 天津市のエネルギー消費は石炭が主で、2012年の天津エネルギー消費総量は1億トン(標準炭)に達している。エネルギー消費構造は、石炭が37%、電力が22%、コークスが12%、天然ガスが4%、火力が6%、石油製品が19%前後を占める。天津市工業は主なエネルギー消費部門で、2013年の天津市各部門の末端エネルギー消費構造によると、工業エネルギー消費は全社会エネルギー消費総量の63%を占め、住民生活用エネルギーは11%、交通等第三産業の総エネルギー消費量は20%。天津市工業エネルギー消費量は主に化学工業、鉄鋼、電力産業。2013年、この3つのエネルギー多消費産業の一定規模以上工業総エネルギー消費に占める割合は68%で、このうち、鉄鋼が43%、化学工業が21%、電力が4%を占めた。

 北京市のエネルギー消費は電力と石油製品を主とし、2012年の北京エネルギー消費量は約7000万トン(標準炭)で、エネルギー消費構造は電力が33%、石炭が20%、天然ガスが15%、火力が6%、石油製品が約26%を占めた。北京市の主なエネルギー消費部門は第三産業で、2013年、北京市各部門の末端エネルギー消費構造によると、交通等第三産業各業種のエネルギー消費量の全社会エネルギー消費総量に占める割合は47%で、工業が29%、住民生活用エネルギーが20%を占める。北京市の第三次産業のエネルギー消費量のうち、交通輸送のエネルギー消費の比重が高く、第三次産業エネルギー消費の38%を占める。

3.3 京津冀の大気煙霧抑制に関する政策措置

 京津冀地域の大気煙霧抑制に関する政策措置は、大気汚染対策の法律法規と計画、汚染物質の排出削減の実施、エネルギー再利用クリーン化の推進、移動発生源汚染ガバナンスと汚染ガバナンス管理能力の強化といった多方面に及んでいる。

大気汚染対策法律法規と計画

  • 『重点区域大気汚染防治十二・五(第12次五カ年計画)計画』
  • 『京津冀及び周辺地域大気汚染防止行動計画実行のための実施細則』
  • 『中央国家機関の北京市大気汚染抑制大気の質保障措置の具体案』
  • 『大気汚染連合防止連合抑制事業区域大気の質改善の推進に関する指導意見』
  • 『天津市石炭消費総量削減とクリーンエネルギー代替実施案』
  • 『河北省石炭消費削減及び鉄鋼等生産能力減圧任務分解案』

エネルギー利用クリーン化推進政策措置

  • 京津冀地域における小型ボイラーの全面淘汰。
  • 重点業種汚染ガバナンス強化の加速。京津冀および周辺地区の二酸化硫黄、窒素酸化物、煙粉塵、揮発性有機化合物の総排出量の大幅な削減。2017年末までに、鉄鋼、セメント、化学工業、石油化学、非鉄金属といった業種でクリーン生産審査を実施し、企業のクリーン生産技術の改善を推進する。
  • 面源汚染ガバナンスの深化。工業現場の粉塵環境の管理監督を実施し、飲食業汚染物質排出などの厳格化を図る。
  • 京津冀地域での石炭消費総量の抑制の実施。
  • 京津冀地域におけるクリーンエネルギーへの代替の実施。天然ガス、液化石油ガス、石炭由来天然ガス、太陽エネルギーといったクリーンエネルギーの供給と推進力を増大させ、都市クリーンエネルギー使用比重を順次高める。
  • 重度汚染燃料の使用禁止エリアの拡大。北京市、天津市火気使用禁止面積は建築面積の80%を下回らない。使用禁止エリア内での原料炭の使用禁止。
  • 京津冀地域内での高効率クリーン化熱供給の推進。2017年末までに京津冀地域および周辺地域の80%で改造価値を有する既存の建築物で省エネ改造を実施する。

移動発生源汚染ガバナンス政策措置

  • 北京、天津での自動車保有台数抑制。
  • 京津冀地域の燃料油の質の改善。天津市、河北省は2013年末までに国家第四段階基準の車両用ガソリンを供給し、2014年末までに国家第四段階基準の車両用ディーゼルオイルを供給する。北京市、天津市および河北省の重点都市は2015年末までに国家第五段階基準の車両用ガソリン、ディーゼルオイルを供給する。
  • 京津冀地域の都市交通管理を強化する。
  • 京津冀地域の排ガス基準を満たさない車の淘汰を加速させる。
  • 北京、天津は新エネルギー車の普及を推進。北京は毎年新規増設あるいは更新する路線バスのうち新エネルギーとクリーンエネルギー燃料車の割合を60%以上にする。

その3へつづく)


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