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宇宙船の地球帰還時における空気力学特性の概要(その2)

2016年 8月23日

方方:中国宇宙技術研究院 有人宇宙飛行本部 研究員、修士

主な研究テーマ:宇宙機空気動力学、システム工学設計

周璐:中国宇宙技術研究院 銭学森宇宙技術実験室 技師、修士

主な研究テーマ:宇宙機再突入軌道設計

李志輝:中国宇宙空気力学研究・発展センター 超高速空気力学研究所研究員、博士、博士生教官

主な研究テーマ:多様な流動様式の空気力学シミュレーション及び応用研究

その1よりつづき)

3 宇宙船再突入時の空力特性と飛行性能

3.1 大気圏再突入時に必要とされる空力特性と設計

 宇宙船が宇宙速度で大気圏に再突入する際の空力特性に求められることは、主に減速飛行、軌跡コントロール、安定飛行、空力加熱の4点である。(その1 図2を参照)。

1)減速飛行

 再突入の際、大気と宇宙船との間に生じる空力作用により宇宙速度を減速させ、着陸前にパラシュート回収のための低速化を実現するようにしている。空力抵抗特性として、この帰還弾道の減速要求を満たす必要がある。

2)軌跡コントロール

 宇宙船が半弾道式により再突入する時には十分な揚力が必要になるため、再突入軌跡をコントロールし、軌跡過負荷と着陸点の精度コントロールに対応できる空力特性が求められる。

3)安定飛行

 宇宙船が安定した姿勢で減速下降する際、宇宙船の空力モーメントは平衡姿勢と動態軌道特性を維持し、動態の安定性を確保する必要がある。

4)空力加熱

 再突入する際の融蝕などによる熱の流れを確保するために、信頼できる遮熱措置と宇宙船の表面熱のコントロールが必要になる。そして、帰還弾道の変化と総加熱量により宇宙船の空力特性に合致する防熱素材を選択し、設計する必要がある。

3.2 再突入時の空力特性と飛行性能

 宇宙船が半弾道式により帰還する際、飛行マッハ数は高度の変化に伴い図5が示すように典型的な曲線を描く。宇宙船を取り巻く空気流域や気体の非平衡反応など流体の特性[2,26-27]に基づき、空力特性の変化規律を分析すると、以下の3つの飛行段階に分けることができる。

1)高空段階、高度が80Km以上、マッハ27.0以上である。そのうち、高度100km以上の大気は希薄流であり、80~100kmは過渡流に属するため化学非平衡の流場が存在する。

2)中空段階、高度が40~80kmの空域でマッハは8.0~27.0である。大気は連続スリップ流に近づき、気体化学非平衡の取り巻く流場に属する層流境界層となる。

3)低空段階、高度10~40Km の空域でマッハが0.6~0.8である。大気は連続媒質流となり化学平衡の流場が生じる乱流境界層となる。

図5

図5 宇宙船再突入飛行過程におけるH-Ma曲線

Fig.5 Curve of flying altitude vs Mach number for spacecraft Re-entry Earth’s atmosphere

3.2.1 空力抵抗と帰還減速特性

 宇宙船の外形により、飛行速度方向に空力抵抗が発生するため減速が実現する。鈍頭から錐状形となり再突入する際の抵抗係数をCDとし、高度の変化による典型的な特性を図6(a)に示す。図6(a)を見ると、超音速飛行の高空飛行段階では抵抗係数が高度の低下とともに減少している一方、中空飛行段階では高度が低下しても基本的に変わることがない。低空飛行段階では、高度が20~40Km(マッハ2.0~8.0)の場合の抵抗係数が高度の低下とともに増大していき、高度が10~20kmの場合(マッハ2.0以下)では急速に減少する。

 空力抵抗の定義式D=ρV2ACD/2を基にすると、空力による減速作用は抵抗係数と正比例するほか、大気密度ρ、飛行速度Vとは平行であり、宇宙船特性面積Aとは正比例する。そこで、宇宙船の典型的な半弾道式による帰還時の速度―高度との関係性を図6(b)に示す。この図から分かるように、高空飛行段階における減速過程は、抵抗係数が高く飛行速度も高いが、大気密度が希薄であるため空力による減速が弱く、飛行高度の低下に伴う速度の変化は決して大きくない。中空飛行段階では飛行高度の低下に伴う飛行速度の減速が速い。特に高度40~60km段階では飛行速度が半分以上減速するため、空力減速は明らかである。低空飛行段階では、高度の低下に伴う減速が続き前段階よりもさらに顕著になる。最終的には、1/3近くの空力減速が実現している。

図6
図6

図6 宇宙船の典型的な弾道帰還時に生じる抵抗係数及び減速特性

Fig.6 Drag coefficient and decelerating performance along with representative trajectory for spacecraft re-entry

3.2.2 空力揚力と軌跡コントロール特性

 半弾道式による再突入時では、一般的に宇宙船のロール角Φを通して揚力コントロールが行われ、弾道平面上に大きさを投影し、着陸に照準を合わせ再突入軌跡[5]をコントロールする。鈍頭から錐状形になってから再突入する際の揚力係数をLとし、高度変化に伴う推移を図7(a)に示す。図7(a)から分かるように、超音速の高空飛行段階では宇宙船の揚力係数は高度の低下に伴い減少する。また、中空飛行段階では、高度が20km付近(マッハ2.0以下とする)の揚力係数は飛行高度の低下に伴い増大した後に減少する。

 空力揚力の大きさの定義はL=ρV2ACL/2となる。宇宙船は高度約80~85km付近で揚力コントロールを行う。地球の引力が一定値に達し、揚力コントロールが終了するのは一般的にパラシュートが開く直前の約20kmの高度である。典型的な半弾道式により再突入する宇宙船のロール角Φに沿った弾道変化曲線を図7(b)に示す。図から分かるように、揚力コントロールの規律は60km以上の飛行段階では揚力係数と飛行速度は比較的大きいが、大気密度が希薄であるため標準弾道に標準を合わせ、ロール角を約60°以上にコントロールする必要がある。飛行高度の低下に伴い、60km以下の飛行段階では空力作用が増強されるので、ロール角を40°以下に減少コントロールすることができる。

図7
図7

図7 宇宙船が再突入する際の揚力係数とロール角の高度に伴う変化

Fig.7 Curves of lift coefficient and rolling angle vs altitude along with representative trajectory for spacecraft re-entry

3.2.3 迎え角のトリムと飛行安定特性

 再突入過程において、宇宙船上の空力と地球の引力には一種の平衡状態が生じ、トリムがとれる状態になるため迎え角のトリムを表示できる。回転型外形の宇宙船は一般的に重心からいくつかの軸線が一定の距離をとることで迎え角のトリムを実現し飛行している。これを慣性トリムとも言う。宇宙船は迎え角のトリムにより安定して減速下降することができる。必要な条件を以下に記す。

式

 式中のmを宇宙船のピッチング・モーメント係数とする。αmはピッチング・モーメント静導関数とする。αは飛行迎え角とする。再突入飛行過程において、鈍頭が錐状形になる宇宙船の迎え角のトリムをαTとし、ピッチング・モーメントの静導関数をαmとした高度変化に伴う推移を図8に示す。図8から分かるように、超音速の高空飛行段階では、迎え角のトリムが高度の低下に伴い減少する。中空飛行段階では、迎え角のトリムは高度が低下しても基本的には変化しない。低空飛行段階では、高度が20km付近(マッハ2.0以下とする)で、高度の低下に伴い迎え角のトリムが減少する。再突入時の全過程ではCαm<-0.002であり、静的安定性を備えている。

図8
図8

図8 典型的弾道に沿い再突入する際の迎え角トリムと静的安定性

Fig.8 Trim angle of attack and stability performance along with representative trajectory for spacecraft re-entry

 宇宙船の動的安定性とは干渉作用を受けた後、コントロールが無い状態において、自身の動力学特性を通して一定時間内で本来の平衡状態に戻ることを指す。基本的には、動導関数が0より小さい動的安定状態、動導関数が0より大きい動的不安定状態、動導関数が0と等しい臨界(リミットサイクル)状態がある。鈍頭が錐状形になる典型的な宇宙船の再突入時に際し、外形3方向の動導関数が高度により変化する状況を図9に示す。図中のMQはピッチング動導関数とする。NRはコースを外れる動導関とする。LPは回転導関数とする。図9からわかるように、宇宙船の再突入飛行過程における3つの方向は全て動的安定性を保っている。

図9
図9
図9

図9 宇宙船の再突入時における典型的な動導関数の飛行高度による変化

Fig.9 Curves of representative flying dynamic derivative vs altitude for spacecraft re-entry

 動的に不安定な宇宙船では、姿勢制御システムにより動的安定性を有効にコントロールすることはできない[12、24-25、28]。その場合、飛行姿勢が維持できないため、宇宙船は平行迎え角付近で振動飛行することになる。姿勢制御システムが作用すれば、飛行姿勢を維持することができるため、平衡迎え角には戻らない。典型的な鈍頭が錐状形になる半弾道式による帰還時の弾道に沿う速度の変化を図10に示す。回転、軌道を外れる、ピッチングの3方向のそれぞれの速度をWx、Wy、Wzとする。これらは全て0付近で振動するが、再突入過程は全般を通しコントロールシステムの作用下で動的安定性を有していると説明できる。

図10
図10
図10

図10 典型的な弾道に沿い宇宙船が再突入する際の飛行角速度の変化

Fig.10 Curves of flying angle speed along with representative trajectory for spacecraft re-entry

3.2.4 空力加熱と融蝕防熱

 宇宙船が宇宙軌道から地球に帰還する際の空力加熱の特徴とは、高いエンタルピー、低熱流密度、長時間、複合物理領域ということである。半弾道式により再突入する際の宇宙船の熱流密度と風上の母線分布を図11に示す。図中のq₀を迎え角0の場合のよどみ点熱流密度とする。q/q₀を宇宙船表面の規格化熱流密度とする。maxを再突入飛行において出現する最大熱流時間密度とする。PHAIを風上が母線を起点とし円周方向に沿う経線角度とする。図11からも分かるように、宇宙船の典型的な断面に対して、円周方向の熱流密度が風上から風下に徐々に下がっていくと、最大熱流密度が風上の母線上、最低熱流密度は風下の母線上に留まる。熱流密度は球底中心部から風上の母線に沿って増大していき、最大熱流は風上が肩部となる時である。肩部を過ぎると熱流密度は急速に低下し始める。錐面に達すると熱密度はかなり低くなる。

図11
図11

図11 宇宙船再突入時における典型的な熱流密度の分布

Fig.11 Heat flux density distribution along with Representative surface for spacecraft re-entry

 再突入時の宇宙船の典型的な位置での熱流密度qの高度による変化を図12(a)に、熱流変化のシミュレーションを図12(b)にそれぞれ示す。図12(a)からわかるように、再突入点を起点とすると、高度の低下に伴い低熱流密度が徐々に増大していき、約50~60㎞の高空段階では最大値となる。高度50㎞くらいから熱密度の減少は加速していき、20㎞付近では0に近づく。その後は空力による加熱はほとんど生じない。この空力加熱環境下において、融蝕が停止する典型的な高度の位置を表1に示す。表1から分かるように、風下である後方の錐面で融蝕が最初に停止し、最後によどみ点の融蝕が停止する。後方錐面、底面の中心点、肩部、よどみ点では高度がそれぞれ40、37、34、32㎞以上となると融蝕が停止していく。

図12
図12

図12 宇宙船再突入時の典型的な弾道に沿う熱流密度の変化と熱流シミュレーション

Fig.12 Heat flux density along with representative trajectory for spacecraft re-entry and simulation result of heat flux

表1 融蝕が停止する宇宙船の典型的な高度位置
Table 1 Spacecraft altitude when ablation at representative location stops

Representative location

/km

Large bottom point

>37

Stagnation point

>32

Shoulder

>34

Leeward cone

>40

 鈍頭から錐状形になる際の加熱量の減少とその熱量は理想的であるといえる。肩部がスムースに連結することにより、局部曲率半径の減少を避けることができる。また、風上表面では宇宙船に尖点とステップが生じないため、大きな局部熱流の発生を防ぐことができる。局部加熱率の大きさは防熱素材を選択する際の重要な要素であり[11,29]、総加熱量の大きさで熱防護層の厚さを見極めることができる。

その3へつづく)

参考文献

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※本稿は方方、周璐、李志輝「航天器返回地球的気動特性綜述」(『航空学報』第36巻第1期、2015年、pp.24-38)を『航空学報』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同 方知網(北京)技術有限公司


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