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四足歩行ロボットの発展の現状および今後の展望(その1)

2016年 8月30日

孟 健:山東大学控制科学・工程学院博士研究員

研究領域:四足歩行ロボットの制御システム。

劉 進長:中華人共和国科技部ハイテク研究発展センター

栄 学文:山東大学控制科学・工程学院

李 貽斌:山東大学控制科学・工程学院教授

研究領域:ロボット技術、スマート制御理論およびコンピュータ制御システム。

概要

 自然界には伝統的なタイヤ式車両またはクローラ式車両では到達できない地形が数多く存在するが、哺乳動物がこれらの地形で自由に歩行できることは、四 足歩行による移動方式の優位性を余すところなく示している。研究者たちは動物に啓発されて四足歩行ロボットの研究を深め、実り豊かな成果を得てきた。本稿においては、中国および海外における四足歩行ロボットの発展の現状を詳述し、四足歩行ロボット領域に関連する重要技術を総括し、その今後の方向性を展望する。

 人類は紀元前1000年以上前のはるか昔にタイヤを発明し、数千年にわたるタイヤの実用は人類に大いなる便利さをもたらした。しかし、その使用と改良のプロセスにおいて、人類は徐々にその限界を認識してきた。地球の陸地表面には山地や丘陵、絶壁等、伝統的なタイヤ式車両またはクローラ式車両では走行できないさまざま凹凸地形が存在するが、哺乳動物はこれらの地形で自由に歩行できる。このことは、四足歩行による移動方式の優位性を余すところなく示している。具体的には以下のとおり。

1) 四足歩行による移動方式は着地点が離散しているため、作業空間内で着地点を能動的に選択できることから、障害物や深い穴を跨ぐことができる。

2) 四足歩行による移動方式は横方向の運動に制約がないため、全方向移動を実現しやすい。

3) 足先運動と体幹重心運動は互いに非干渉であり、能動的防振を実現できるため、起伏のある地形を移動する際に体幹運動の安定性を維持することができる。

4) 足を使って障害物を跨ぐ際に、重心の上下移動による余分なエネルギー消費を回避することができる。

 自然界を見渡すと、大型陸生動物のほとんどは四足動物であり、山地や丘陵、草原、砂漠等、どの地形でも四足動物の姿が見られる。このことは、自然界が四足歩行による移動方式を選択していることを充分に物語っている。四足歩行ロボットは四足動物を模倣対象として、四足動物のようにフレキシブルな運動ができる潜在能力を持たせた上で、二足歩行ロボットより優れた安定性と六足歩行ロボットよりシンプルな機構を持たせた、実用的で将来性の高い移動型ロボットである。この10数年間、中国および海外の研究者は四足動物の運動法則について研究を行い、多数の四足歩行ロボットの設計に成功した。現在、四足歩行ロボットは理論の発展レベルや材料、駆動機構の性能等の面でまだ制約があるため、その運動性能は四足動物と大きな差があるが、喜ばしい成果も多く見られる。四足歩行ロボットの改良にはさらなる不断の努力が必要とされる。

1 中国および海外における四足歩行ロボットの発展の現状

 1960年代以降、中国および海外の研究者によって、一連の四足歩行ロボットの試作機[1,2]が開発された。なかでも代表的なのは米国MITのRaibertが1984年に設計した四足歩行ロボット[3]である。このロボットは脚部に伸縮構造を採用し、シリンダーを使用することで接地時の緩衝と跳躍を実現し、virtual legsおよびthree-part control systemに基づいて動態バランスを実現し、trot、paceおよびboundの状態でスピーディかつ安定的な疾走[4]が可能である。図1のとおり。

図1

図1 Raibertが設計した四足歩行ロボット

 イタリア工科大学(Istituto Italiano di Tecnologia)では2007年から油圧電気駆動(HyQ)による四足歩行ロボット[5](図2)の開発に着手した。このロボットは長さ1m、幅0.5mで、足を伸ばした後の伸長は0.98m、自重は70㎏で、電気・油圧混合駆動を採用し、険しい地形での安定的匍匐[6]および跳躍相のあるtrot状態を実現し、かつ、外界から一定の妨害を受ける中での安定維持[7]も可能にした。

図2

図2 HyQ四足ロボット

 MITは高速疾走が可能な四足歩行ロボットCheetah[8]を設計した。このロボットのエネルギー消費係数(Cost of Transport)は0.5の低さに達し、改良版の四足歩行ロボットCheetah v2(図3)はbound状態下において8km/hの速度で前進し、かつ、高さ0.46mの障害物を飛び越えることができる。

図3

図3 MIT Cheetah v2 四足ロボット

 このほか、野外環境における運行が可能な四足歩行ロボットもいくつか存在する。特筆すべきは米国Boston Dynamics社の成果であり、同社の開発による四足歩行ロボットBigDog(図4)[9]は最大負荷が154kgで、35°の傾斜を登ることができ、trot状態で氷面、砂利面、雪面、砂地および浸水路面を歩行でき、crawl状態で煉瓦の山を乗り越え、bound状態で谷間を飛び越え、横から蹴られてもわずか数歩の調整でバランスを回復することができる等、驚異的な性能を持つ。

図4

図4 BigDog 四足ロボット

 Boston Dynamics社はその後、さらに高い負荷能力(181kg)と航続距離(32.2km)を有する四足歩行ロボットLS3(図5)を開発した。このロボットはさらに高い抗抵抗能力を持ち、転倒後もその場で起立することができ、かつ、リアルタイムで地形情報を探測してオンラインで着地点を調節でき、ナビゲーターを識別して人間への追従を完遂できる。

図5

図5 LS3四足ロボット

 また、同社はさらに、高速移動能力を持つ四足歩行ロボットWildCat(図6)を開発した。このロボットはboundおよびgallop状態で平坦な路面を疾走でき、歩行状態の切り換えを実現することができ、最高速度は25.7km/hに達する。

図6

図6 WildCat四足ロボット

その後、同社は2015年に小型の油圧駆動による四足歩行ロボットSpot(図7)を発表した。このロボットの自重はわずか72.6㎏で、電気モーターによる油圧ポンプ方式を採用してロボット全体に油圧エネルギーを提供しており、油圧駆動による高い動態性や出力という特徴を持つ一方で電気駆動による静かさや発熱量が少ない等の長所を維持している。室内外のいずれでも運行可能で、高性能ロボットの設計に新たな筋道を提供した。

図7

図7 Spot四足ロボット

 中国国内の四足歩行ロボットは1990年代からスタートした。清華大学が開発した四足歩行ロボットQW-1[10]は静歩行状態での全方向移動を実現した。上海交通大学の開発した四足歩行ロボットJTUWM[11]シリーズは、静歩行および動歩行状態の運動分析および制御に成功した。2013年には,山東大学[12](図8)、国防科技大学[13](図9)、ハルビン工業大学[14](図10)、北京理工大学[15](図11)および上海交通大学[16](図12)によって油圧駆動式四足歩行ロボットがそれぞれ開発され、速度および負荷能力のいずれの面でもかつての電気駆動式ロボットから大幅な向上が見られた。

図8

図8 山東大学の四足ロボット

図9

図9 国防科技大学の四足ロボット

図10

図10 ハルビン工業大学の四足ロボット

図11

図11 北京理工大学の四足ロボット

図12

図12 上海交通大学の四足ロボット

 四足歩行ロボットは数十年の発展を経て徐々に実用化が始まっており、今や戦場に駆けつけるまでになった。米国は四足歩行ロボットの領域でトップの地位を保ち続けており、すでに野外環境でのテストを終え、険しい地形でのパフォーマンスと運動のフレキシビリティのいずれにおいても極めて優れているため、今後ますます重要な役割を発揮するものと見られる。

その2へつづく)

参考文献

[1] McGhee R B. Finite state control of quadruped locomotion[J]. Simulation, 1967, 9(3): 135-140.

[2] Mosher R S. Test and evaluation of a versatile walking truck[C]//Proceedings of Off-Road Mobility Research Symposium. Washington DC, 1968: 359-379.

[3] Raibert M H. Legged robots that balance[M]. Massachusetts: MIT press, 1986.

[4] Raibert M H. Trotting, pacing and bounding by a quadruped robot[J]. Journal of biomechanics, 1990, 23(Suppl 1): 79-98.

[5] Semini C. HyQ: Design and development of a hydraulically actuated quadruped robot[D]. Genoa, Italy: University of Genoa, 2010.

[6] Semini C, Barasuol V, Boaventura T, et al. Towards versatile legged robots through active impedance control[J]. The International Journal of Robotics Research, 2015. doi:10.1177/0278364915578839.

[7] Barasuol V, Buchli J, Semini C, et al. A reactive controller framework for quadrupedal locomotion on challenging terrain[C]//Robotics and Automation (ICRA), 2013 IEEE International Conference on. IEEE, 2013: 2554-2561.

[8] Seok S, Wang A, Chuah M Y, et al. Design principles for energy-efficient legged locomotion and implementation on the MIT Cheetah Robot[J]. IEEE/ASME Transactions on Mechatronics, 2014, 20(3): 1117-1129.

[9] Wooden D, Malchano M, Blankespoor K, et al. Autonomous navigation for BigDog[C]//Robotics and Automation (ICRA), 2010 IEEE International Conference on. IEEE, 2010: 4736-4741.

[10] 汪勁松, 易昕. QW—1型全方向型四足歩行ロボットの設計および実験に関する研究[J]. 機械工程学報, 1991, 27(5): 69-74.

[11] 馬培蓀, 馬烈. 全方向型四足歩行ロボットJTUWM—IIの角を曲がる際の歩行状態の研究[J]. 上海交通大学学報, 1995, 29(5): 87-92.

[12] Rong X, Li Y, Meng J, et al. Design for Several Hydraulic Parameters of a Quadruped Robot[J]. Appl. Math, 2014, 8(5): 2465-2470.

[13] Cai R B, Chen Y Z, Hou W Q, et al. Trotting gait of a quadruped robot based on the time-pose control method[J]. International Joumal of Advanced Robotioc System, 2013, 10(148).

[14] Li M, Jiang Z, Wang P, et al. Control of a quadruped robot with bionic springy legs in trotting gait[J]. Journal of Bionic Engineering, 2014, 11(2): 188-198.

[15] Gao J Y, Duan X G, Huang Q, et al. The research of hydraulic quadruped bionic robot design[C]//Complex Medical Engineering (CME), 2013 ICME International Conference on. IEEE, 2013: 620-625.

[16] Hu N, Li S, Huang D, et al. Crawling Gait Planning for a Quadruped Robot with High Payload Walking on Irregular Terrain[C]//Proceedings of the 19th IFAC World Congress, 2014 . IFAC, 2014: 2153-2158.

※本稿は孟健、劉進長、栄学文、李貽斌「四足機器人発展現状与展望」(『科技導報』第33巻第21期、2015年11月,pp.59-63)を『科技導報』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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