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知能ロボットの現状及び発展(その1)

2016年 8月31日

任福継:合肥工業大学情感計算・先進智能機器安徽省重点実験室教授、徳島大学教授

主な研究テーマ:ロボット

孫暁:合肥工業大学情感計算・先進智能機器安徽省重点実験室副教授。

主な研究テーマ:感情コンピューティングとロボット

 科学技術の進歩と社会の発展に伴い、煩雑な日常業務から解放されたいという人々の願いは高まり、知能ロボット市場の発展の促進力となっている。また知能ロボット産業は、一国の科学技術の革新とハイエンド製造業の水準をはかる重要な尺度であり、その発展に対する世界各国の関心はますます高まっている。本稿は、国内外の知能ロボットの発展の現状と発展の水準を紹介し、知能ロボット関連技術とロボットの分類、知能ロボットの各産業・各業界における応用について述べ、知能ロボットの発展の行方と展望を検討するものである。

 21世紀に入って以来、ロボット技術の発展に対する中国内外における重要性はますます高まっている。ロボット技術は、未来の新興産業の発展に対して重要な意義を持つハイテクノロジーの一つと考えられている。英国王立工学アカデミーは2009年の科学報告書「自律システム」において、2019年にロボット革命を迎えるとの見通しを示した。習近平総書記は2014年、中国科学院第17回院士大会と中国工程院第12回院士大会での講話において、ロボットの開発と製造、応用は、一国の科学技術の革新とハイエンド製造業の水準をはかる重要な尺度であり、中国のロボットの水準を高めると同時に、市場シェアをできる限り広げなければならないと強調した。「ロボット革命」は、「第3次産業革命」の切り口の一つとなり、重要な成長分野ともなり、世界の製造業の局面に大きな影響を与える。さらに中国は、世界最大のロボット市場となると考えられている。

 ロボットは広義には、人類の行為または思想を再現する機械や、その他の生物を再現する機械(ロボット犬、ロボット猫など)が含まれる。狭義のロボットの定義には多くの分類法と議論[1]があり、コンピューターのプログラムの一部がロボットと称されることさえある(クローラロボットなど)。国際標準化機構は、米国ロボット工業会のロボットに対する定義を採用している。「プログラム可能で複数の機能を持つ操縦機。またはさまざまな任務を実行するためコンピューターによる動作の改変とリプログラミングの可能な専門システム。一般的に、アクチュエータや駆動装置、検査測定装置、制御システム、複雑な機械などからなる」。ロボットは、機械・電子・コンピューター・センサー・制御技術・人工知能・バイオニクスなど多様な学科を総合した複雑な知能機械である。現在、知能ロボットはすでに、世界各国の研究の焦点の一つとなり、一国の工業化水準をはかる重要な尺度となっている。ロボットは、作業を自動で行う機器装置であり、人類の指示を受けるものもあれば、事前に作成したプログラムに従って稼働するものもあり、人工知能技術によって定められた原則に基づいて行動するものもある。現代工業においては、ロボットは、自動で任務を遂行できる人造機器装置であり、人類の作業の代替または補助に用いられ、一般的には電気機械装置で、コンピュータープログラムまたは電子回路によって制御される。ロボットの範囲はとても広く、自動的なものもあれば、半自動的なものもある。本田技研工業のASIMOや TOSYのTOPIOのような人型ロボットもあれば、産業ロボットもある。さらに多くのロボットがともに稼働する群ロボットもあれば、ナノロボットもある。真に迫った外観と自動化された動作を備えた理想的なハイファイロボットは、制御論・機械電子・コンピューター・人工知能・材料学・バイオニクスの高度な統合の産物と言える。ロボットは、反復性や危険性が高く人類がやりづらい作業や[2]、大きさの制限によって人類ができない作業、宇宙空間や深海などの人類の生存に適さない環境での作業を行うことができる。ロボットはますます多くの分野で人類を代替しつつあり、外観や行動、認知、さらには感情においても人類の代わりを務めつつある。ロボット技術は、その初期においては工業分野で応用されたが、ロボット技術の発展と各産業における需要の高まりに伴い、コンピューター技術やネットワーク技術、MEMS技術など新技術の発展の後押しを受け、近年は、従来の工業製造分野から、医療サービスや教育娯楽、地質調査、生物工学、災害救助などの分野にも急速に広がり、それぞれの分野のニーズに応じたロボットシステムの研究や開発が進んでいる。過去数十年のロボット技術の研究と応用は、人類の工業化と近代化のプロセスを大きく推進し、ロボットの産業チェーンを徐々に形成し、ロボットの応用範囲は日増しに広がっている。

1 国内外の発展の現状

 一国の科学技術の革新とハイエンド製造業の水準をはかる重要な尺度であるロボット産業の発展には、世界各国がますます関心を高めている。主要経済国は次々と、ロボット産業発展を国家戦略に格上げし、製造業の競争優位の維持や再獲得の重要な手段としている。海外ではロボットの研究の開始が早く、比較的成熟した発展を示している。その代表である米国と日本、欧州は、各自の生産力発展の必要に基づき、多種多様なロボットを開発してきた。国際ロボット連盟(IFR)の統計報告[1]によると、産業ロボットの販売額は2014年、前年から29%増加し、販売台数は22万9261台に達し、史上最高を記録した(図1)。産業ロボットメーカー各社はいずれも、前年2013年からの成長を実現した。中国での販売台数は約3万7千台に達し、販売量は世界第一で、前年比成長率は60%に達した。サービスロボットの2014年の販売台数は11.5%増加し(図2、図3)[2]、販売額は3%増えて3億7700万ドルにのぼった。各種の類型のサービスロボットの2015年から2018年までの販売台数は2590万台に達し、総価値は12億2千万ドルに達する見通しだ(図4)。Allied Market Research社の最新報告によると、世界の産業ロボット市場は2014年から2020年まで年平均成長率5.4%で発展し、その販売額は2020年までに411億7千万ドルに達するとされる。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートが2013年に発表した報告書「世界経済の変革をリードする12の破壊的技術」で、モノのインターネットやクラウド技術、次世代遺伝子技術、3D印刷、新材料、再生可能エネルギーなどの12の「破壊的技術」の5番目に先進ロボットを位置付けた。ロボット産業の世界における経済規模は2025年までに年間1兆7千億ドルから4兆5千億ドルに達するとの見通しが示された。

図1

図1 産業ロボットの歴年の販売データ(IFR)

Fig. 1 Annual supply of industrial robots (IFR)

図2

図2 サービスロボットデータ比較(IFR)

Fig. 2 Comparsion of service robots (IFR)

図3

図3 サービスロボットの予測(IFR)

Fig. 3 Prediction of service robots (IFR)

図4

図4 車いすロボット"Friend"

Fig. 4 "Friend" wheelchair robotics

 米国は2013年、「From Internet to Robotics」との副題の付いたロボット発展のロードマップ報告を発表した。知能ロボットにはこの中で、20世紀のインターネットと同等の重要な位置付けがなされた。ロボットは、人類の生活と経済社会の発展の各方面に影響を与えていくものと考えられ、米国が製造業の変革を実現し、経済発展を促進するための核心技術として位置付けられた。米国が2010年に打ち出した「先端製造パートナー計画」においては、産業ロボットの発展を通じて製造業を再興し、情報ネットワーク技術の優位性を生かして新世代の知能ロボットを開発するとの方針が示された。欧州連合は、世界最大の民間用ロボット研究開発計画「SPARC」を始動した。計画によると、2020年までに28億ユーロを投じ、24万口の雇用が創出される。同計画には、200社余りの企業と約1万2千人の開発人員が参加し、製造業・農業・健康・交通・安全・家庭など各分野へのロボットの応用がいずれも盛り込まれた。ドイツが製造業における主導的な地位を保つために打ち出した「インダストリー4.0」も、知能ロボットと知能製造技術を、新たな産業革命を迎えるための切り口と位置づけている。日本も、ロボット技術の長期発展戦略を制定し、ロボット産業を「新産業発展戦略」における7つの重点支援産業の一つとしている。日本政府は、ロボットを経済成長戦略の重要な柱とし、ロボットの潜在力を掘り起こすことによって日本経済の成長を実現しようとしている。韓国は「知能ロボット基本計画」を制定したほか、2012年10月には、2022年までのロボット政策をまとめた「ロボット未来戦略」を発表し、韓国のロボット産業の拡大や国内のロボット企業の海外市場への進出支援などに政策の焦点を当てた。

 中国のロボットは、産業ロボットの研究と製造を中心として1970年代に始まった。中国のロボット技術の開発はそのスタートこそ遅かったものの、急速に発展している。発展は大きく3つの段階に分けることができる。1980年代からは産業ロボットを中心とした研究と製造が本格的に始まり、国家の難関攻略政策や863計画などの後押しを受け、1990年代初期からは、自前の知的財産権を備えたスポット溶接やアーク溶接、組み立て、塗装、切断、運搬、包装、パレタイジングなどの製品が次々と打ち出され、中国の産業ロボットは実践において重要な一歩を踏み出した。この間には、中国政府は、さまざまな分野のロボット発展計画を次々と打ち出した。1990年代のプロトタイプとデモンストレーションの段階を経て、2000年からは産業化の段階に入った。

 中国は2006年、知能サービスロボットを「国家中長期科学技術発展綱要」に盛り込み、2012年には、「十二五」(第12次5カ年計画、2011-2015)期におけるサービスロボットの科学技術発展特別計画が打ち出され、2013年には「産業ロボット産業の発展推進に関する工業・情報化部の指導意見」が発表された。2010年以降、中国のロボットの装備台数は年々増え、ロボットの全産業チェーンの形成に向けた発展が進んだ。

 近年、中国のロボット技術の研究は大量の成果を実現し、ロボット製品は広大な市場の将来性を示している。国内の多くの研究所(ハルビン工業大学上海交通大学北京航空航天大学中国科学院瀋陽自動化研究所、清華大学合肥工業大学、ハルビン工程大学、華南理工大学浙江大学東南大学北京工業大学など)はいずれも、知能ロボットにかかわる研究と教育を展開している。

 世界のロボット4大大手であるスウェーデンのABB、ドイツのKUKA、日本のファナック、同じく日本の安川電機、さらにそのほかの世界的に有名なロボットメーカーはいずれも中国市場の発展を見込み、中国に次々と分社や支社を設立し、産業ロボット製品の販売や生産製造、システム統合などの業務を展開している。

 中国国内のブランドで、比較的早い時期から発展し、ある程度の規模を備えるようになったメーカーとしては、瀋陽の新松(SIASUN)や安徽の埃夫特(EFORT)、東莞の啓帆(STSrobotics)、広州数控(GSK)などが挙げられる。2014年10月までに中国のロボット関連企業は430社を超え、毎週平均で2社の企業が新設されている。ロボットと直接的・間接的な関係を持つ企業は4000社余りにのぼり、毎年300社以上が新設され、30社から50社の上場企業がM&Aや技術導入などの方式でこれらの産業への進出を始めている。長城証券の最新報告によると、このうち産業ロボット分野がまず爆発的な発展を遂げ、2020年には中国の市場規模は1千億元に達する見通しだ。今後6年の総配備需要は63万8千台から176万台とされ、少なく見積もっても85万台に到達すると見られている。

 サービスロボット分野は今後5年から10年で爆発的な発展を始め、その規模と発展速度は、産業ロボットの比較にならないものとなると考えられている。控え目な見積もりで、産業ロボット本体の総市場規模は1275億元、システム統合は3825億元に達する。軍用地上ロボットは 340 億元、無人機は460億元、高齢者介護ロボットは390億元、障害者補助ロボットは243 億元、公共サービスロボットは10 億元で、サービスロボット市場の総規模は1443 億元に達する。

 2013年4月21日には、中国機械工業連合会が率いる「中国ロボット産業連盟」が北京で設立された。同連盟は今後、中国のロボットの生産・学習・研究・運用を大きく推進し、ロボットの技術と製品の各業界における普及と応用を加速するものとなる。同連盟は、国内のロボットの研究と産業に従事する100団体以上をメンバーとし、産業チェーンを拠り所とし、資源の統合と長所の補完、共同発展、ウィンウィンという革新的な協力モデルを形成し、産業の健全で秩序ある発展を促進するサービスプラットフォームを構築する。

 現在、国産の移動ロボットは大規模な輸出を始めている。中国のサービスロボットや特殊ロボットは高い競争力を形成し始めており、2013年の国産産業ロボットの販売総台数は 9500台を超えた。政府はこれを土台とし、ロボット産業化拠点の建設を積極的に支援している。すでに新松ロボット社や博実ロボット社などを代表とする多くの産業化ロボットメーカーが形成され、中国のロボット産業発展の土台が築かれている。

 中国のロボット産業は良好な発展を見せているものの、国産ロボットの市場シェアはまだ低く、ブランドの知名度も低い。海外ブランドのロボットの中国市場におけるシェアは90%を超えている。中国の産業ロボット調達量に占める日本の6大ロボットメーカーの割合は2分の1に達する一方、中国本土の4大ロボット設備メーカーの中国市場シェアは合計しても5%にすぎない。このためロボット産業は、開発・生産・製造・販売・統合・サービスなどにわたる秩序ある細分化された産業チェーンを形成するには至っておらず、製品の付加価値は低い。主要先進国と比べると、中国のロボット産業の発展の速度は遅く、核心技術で弱みを抱え、市場シェアと付加価値が低い。ロボットの技術と製品の幅広い応用と絶え間ない拡大に伴い、ロボットは今後も、急速な発展の勢いを保持するものと考えられ、ロボット産業には、品質の向上と持続可能発展の実現が求められている。

その2へつづく)

参考文献

[1]Greg H. Robots could cost Australian economy 5 million jobs, experts warn, as companies look to cut costs[N/OL].[2015-10-15].http://www.abc.net.au/news/2014-05-28/robots-could-cost-australian-economy-5-million-jobs-expert-says/5484740.

[2]Crystal A. 5 jobs being replaced by robots[EB/OL]. [2015-10-15].http://excelle.monster.com/benefits/articles/4983-5-jobs-being-replaced-by-robots.

※本稿は任福継、孫暁「智能機器人的現状及発展」(『科技導報』第33巻第21期、2015年11月,pp.32-38)を『科技導報』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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