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生物を規範とした超小型飛翔体の空気力学的課題研究の発展と挑戦(その1)

2016年 8月12日

楊文青:西北工業大学航空学院 副教授,博士

主な研究分野:超小型飛翔体、非定常空力特性

宋筆鐸:西北工業大学航空学院

宋文萍:西北工業大学航空学院

陳利麗:中国航空工業集団公司 第一飛機設計研究院

概要

 生物を規範とした超小型飛翔体の空気力学的課題研究の進展に関するまとめ、及び将来の発展傾向と挑戦について分析する。自然界の飛行生物と比較すると、現在の超小型飛翔体の飛行能力はかなり低く、高度な生物工学とも大きな隔たりがある。中でも、関連するレイノルズ数が低く不安定という、空気力学的課題が研究者を悩ませる主要な問題となっており、数値の模倣と風洞実験が困難なために模擬飛行にてデータを収集するにとどまっており、実際の環境における正確なデータの収集に至っていない。具体的な問題としては、(1)生物を規範とした超小型飛翔体のレイノルズ数を10³~10⁵とすると、遷移や乱流という非常に敏感な地域において関連する流動機構が複雑になる。(2)柔軟な翼と飛行中の空力弾性は密接に関係している。(3)高機動飛行は空力弾性との連結を引き起こすため、飛行力学的な問題が生じる。(4)飛翔体の複雑な形が飛行制御システムとフィードバック結合型制御の設計などを困難にしている。こうした複数の領域にわたる複雑な問題が存在するため、現在の研究手段では生物を規範とした超小型飛翔体の研究に対して十分な分析と改善設計を打ち出すことが難しい。上述の問題解決の基盤として、高機動かつ敏捷性に優れた形状に関する研究が進められている。生物工学による柔軟な翼の硬度分布の詳細な設計が進めば、超小型飛翔体は自然界を飛行する生物と同じように自ら変形する能力を備えることが可能となり、複雑な環境下においても高機動飛行能力が発揮され、最終的には高度な生物工学的外形と性能を持つ人造の鳥や羽虫を生み出すことが可能となると考えられている。

[キーワード] 超小型飛翔体、レイノルズ数、空気力学的に不安定、流動機構連結、複合領域最適設計

はじめに

 生物を規範とした超小型飛翔体は、生物工学に基づく外形と飛行特性を有している。また、小型で機動性が優れているため、環境観測、セキュリティ監視など重要なデータを取得する用途における画期的な改善が期待されている[1-2]。今世紀初頭に超小型飛翔体の研究に火がつき、その流れは現在まで続いている。ここ十数年における発展を通じて、超小型飛翔体の研究は良好な成果を挙げていると言えるだろう。生物を規範とした超小型飛翔体の中でも代表的なものは羽ばたき飛翔体である。従来の飛翔体の飛行方式とは異なり自然界生物の羽ばたき飛行方式を採用しているため、飛行に必要な揚力と推力を生み出すことが可能である。適切な外形、硬度、運動方式を有する翼が理想的な揚力と推力を生み出すため、飛行生物の羽ばたき飛行は潜在的価値を秘めていると言える。例えば、小さなミツバチは自身より重い花粉を持って飛行することが可能であり、トビにいたってはヤギ一頭を掴んで飛行することがきる。また、羽ばたき飛行は羽ばたく頻度と幅を異なる飛行条件に合わせて随時調整することができるだけでなく、羽ばたき飛行から滑翔に切り替えてエネルギーを節約することもできる。

 超小型飛翔体は、質量が小さく飛行速度は遅い。飛行性能は突風により大きな影響を受けるため、柔軟な翼構造を採用している。これにより、突風に対し適切に変形することが可能となり、一定の耐風が可能となる[3-4]。柔軟な構造により、十分な構造変形を利用することができるため、空気力学的な新たな分布影響に対する詳細な設計を行うことが可能となり、超小型飛翔体の空気力学的性能を改善することができる。飛行生物も柔軟な翼構造を有しているため、突風に抵抗し飛行の機動能力を高めることができるのである。

 羽ばたき飛行は、空気の渦のエネルギーを十分に利用できる点が重要かつ優勢な点の一つである。従来の固定翼機は翼の先端の渦によりエネルギーが消費されてしまうため、小型の翼といった技術を採用してその影響をできる限り軽減している。しかし、羽ばたき翼の場合は翼先端の渦が前縁渦と同時に作用するため、揚力が増加する。柔軟な構造の羽ばたき翼は、接線に沿って変形することで空気力を新たに分布させるため、推力を大幅に増加させることができる。

 柔軟な翼の飛行時の推力には主に2つの要素がある。翼の前縁における吸収力と接線に沿った変形が引き起こす圧力分布の変化である。翼後部の柔軟性が増すと推力も増すため、効果的に迎角を大きくすることが可能となる。接線の柔軟性が一定の範囲内で増加する時、有効な迎角と空気力は接線に沿った外形の変化により減少するが、平均推力と瞬間推力が空気力の方向の変化によって大幅に増加する。開く方向の柔軟な変形に対しては、一定の適切な範囲内において推力を増加させることが可能となる。

 翼型と翼平面形は羽ばたき翼の空力特性に大きな影響を与えるため、様々な外形の羽ばたき翼の柔軟な構造の特性が研究されている。理論上、構造の変形には適切な範囲があり空力特性を改善することが可能である。しかし、この分野はさらに深いところまでの研究が必要とされている。特に、予測が難しい突風といった複雑な状況が柔軟な変形と空力特性に与える影響のメカニズムを解明することが重要である。

 柔軟な翼は飛翔体の空力特性に大きな影響を与えるため、関連の研究論文も多く存在する。しかし、現在の研究はいまだ根本的、初歩的なものであるため、多くの課題は依然として未解決のままである。突出した課題として、いくつかの非線形相互作用及び構造が異種に対して与える羽ばたき飛行の空力特性と構造の変形を通して羽ばたき飛行の安定性を高める方法などがある。

 これらの課題は独立したものではなく、羽ばたき飛翔体設計の運動学、動力学、柔軟な構造の特性など多方面に関連するものである。そのため、より深い総合研究を進めることにより、高性能な飛翔体を設計することが可能となる。

 上述の内容に関する研究は既に進められており、論文も数多く存在する。近年発表された研究論文はより深く詳細な内容となっている。本稿の目的は、現在の空気力学に関連する特性の研究発展であり、将来の研究発展傾向ならびに直面する課題と挑戦を提示することである。

1 スケーリング法と重要な無次元パラメータ

 スケーリングの研究により、パラメータ数の減少に対し一つの系統に過ぎなかった重要な意義を有するパラメータの特性が描写され、各パラメータの重要性[5]が示されるようになった。羽ばたき翼の研究による主要な無次元パラメータは以下の通りである。

(1)レイノルズ数Re

 慣性力と粘性力との比で定義される無次元数。その定義は下記の通りである:

1(1)

 ρfを流体の密度、Lrefを特性長さ、Urefを飛行速度、μを粘性係数とする。

 羽ばたき翼は飛行中に揚力と推力により、必要な羽ばたき運動が生じる。特性長さは通常平均の空力翼弦であり、参考時間は羽ばたきの周期、飛行速度は飛行状況と運動規律によって決定される。

 空中浮遊飛行時の飛行速度は翼先端の平均速度を取る。この時のレイノルズ数は公式(2)で示すものとする。翼の振り幅、羽ばたき頻度、平均空力翼弦の平方及びアスペクト比は比例する

2(2)

 ARを翼のアスペクト比、Φを翼の振り幅、fを羽ばたき頻度、cmを空力平均翼弦とする。

 飛行時の速度には多くの要素があるが、前進飛行速度、または翼先端の平均羽ばたき速度を用いることができる。前進飛行速度を用いる場合のレイノルズ数は公式(3)に示すものとする。空力平均翼弦と飛行速度は比例するものとし、羽ばたき頻度と翼の振り幅は含めないものとする。

3(3)

 U∞は前進飛行速度、または一様流速度とする。

(2)ストローハル数St

 前進飛行速度と羽ばたき速度が比例することを表している。当該パラメータは飛行中の渦放出の影響を表すものである[6]。羽ばたき飛行における当該パラメータの定義は以下の通りである。

4(4)

 定義から考えると、当該パラメータは羽ばたき翼の前進飛行時の推進効率の指標とみなすことができる。

(3)換算周波数k

 羽ばたき運動における流れの非定常性を表しており、流体乱流の空間尺度と弦長の比較が含まれる[7]。定義は以下の通りである。

5(5)

 翼先端の平均速度を参考とする場合の換算周波数は以下のように表される。

6(6)

 当該定義における換算周波数と翼の振り幅、及びアスペクト比は反比例し、羽ばたき頻度とは関係していない点に注意が必要である。

 前進飛行速度を参考とする場合の換算周波数は以下のように表される。

7(7)

 この時、換算周波数は羽ばたき頻度と空力平均翼弦と比例し、飛行速度と反比例する。前進飛行速度を参考値とする場合の換算周波数とストローハル数の関係は以下の通りである。

8(8)

 まとめると、いくつかの似たような前提下における飛行速度と羽ばたき飛行スケーリング法の関係は表1のようになる。表1に基づき各パラメータ間の関係を研究し、その影響や規則の研究に繋げることが可能となる。

表1 羽ばたき飛行における無次元パラメータと尺度依存
Table 1 Dimensionless parameters and size dependence of flapping wing
無次元パラメータ 翼先端羽ばたき速度
ref=tip
前進飛行速度
ref=
長さ 頻度 長さ 頻度 速度
レイノルズ数Re c2m f cm 無関係
ストローハル数St 無関係 無関係 cm f U-1
換算周波数k 無関係 無関係 cm f U-1

その2へつづく)

参考文献

[1] Hundley R OSST, Gritton E C. Future technology-driven revolutions in military operations[R]. Documented Briefing of the RAND National Defense Research Institute. December, 1992.

[2] Steven A A. palm-size spyplane[J]. Mechanical Engineering, 1998, 11(3):74-78

[3] Shyy W, Lian Y, Tang J, et al. Aerodynamics of low Reynolds number flyers[M]. New York: Cambridge University Press, 2008.

[4] Shyy W, Berg M, Ljungqvist D. Flapping and flexible wings for biological and micro air vehicles[J]. Progress in Aerospace Sciences, 1999, 35(5):455-505.

[5] Shyy W, Aono H, Chimakurthi S K, et al. Recent progress in flapping wing aerodynamics and aerpelasticity[J]. Progress in Aerospace Sciences, 2010, 46(8):284-327.

[6] Triantafyllou M S, Triantafyllou G S, Yue D K P. Hydrodynamics, 2000, 32:33-53

[7] Christensen R M. Mechanics of composite materials[M]. Reprinted. New York: dover Publications Inc, 2005.

 ※本稿は楊文青、宋筆鋒、宋文萍、陳利麗「倣生微型撲翼飛行器中的空気動力学問題研究進展与挑戦」(『実験流体力学』第29卷第3期、2015年6月,pp.1-10)を『実験流体力学』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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