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中国における鉱物資源の開発利用による環境への影響(その2)

2016年 9月28日

陳軍:中国地質大学マルクス主義学院副教授、中国地質大学中国鉱物資源戦略・政策研究センター

博士,主な研究テーマは資源環境経済学

成金華:中国地質大学中国鉱物資源戦略・政策研究センター教授

博士指導教授,主な研究テーマは資源環境経済学

その1よりつづき)

2.鉱物資源の開発利用による環境影響が形成される理論および仮説

 従来型の鉱業の発展とは意味合いが異なり、鉱物資源の開発利用においては、鉱物資源が生産要素として構成され、特定の地域に作用を及ぼし、経済社会に影響を及ぼすプロセスを指す。このプロセスには鉱業生産部門による鉱物探査、精製、製造等の技術措置の採用から、鉱物資源の採掘または鉱物資源の鉱産物への転化という生産活動までを含む上に、関連産業が鉱物資源または鉱産物を運用して社会的生産を行った結果として生じる鉱物資源の消費活動までが含まれる。このため、鉱物資源の開発利用という概念は比較的広い意味を持つ。

 我々は、以下の2つの面から鉱物資源の開発利用による環境影響を理解することができる。第1に、鉱業生産による環境への自然物理作用である。つまり、経済社会因子による影響を考慮しない前提で、鉱業生産部門が鉱物資源を直接採掘して獲得した場合、ならびに採掘、製錬、製造等の工程を経て生産された鉱産物による自然環境への影響である。第2に、産業構造や技術進歩、政府管理等の、経済システムにおいて鉱物資源の利用を決定するいくつかの重要な要素による自然環境への影響、すなわち、現実の社会背景において、産業構造や技術進歩、政府管理等の要素による制約のなかで、人々が鉱物資源または鉱産物を利用して社会生産を行う際に、資源消費の面からもたらされる環境影響である。鉱物資源の開発利用による環境影響を分析するには、鉱業の発展という自然物理学的次元から、鉱物資源の開発による自然環境への影響を鉱物資源の種類ごとに把握する必要がある。しかし、さらに重要なのは、経済システムのなかで上記の重要な経済変数がいかに直接的または間接的に鉱物資源利用のプロセスに影響し、かつ、環境影響をもたらすかを総合的に考慮することである。これらの主な経済変数の作用メカニズムを明らかにすることは、鉱物資源の開発利用による環境影響問題を理解し、解決するための重要ポイントである。

2.1 産業構造の影響メカニズム

 産業構造とは、一定の地域空間内でさまざまな産業によって構成される各産業間の関係および比率関係である。近代的な生産システムにおいては、国民経済システムの運営は鉱物資源を代表とする各種自然資源による支えから切り離すことはできないが、産業構造も資源の開発利用の強度および方法に影響を与え、ひいては環境変化の方法および強度にも影響を与える。一般的に、国民経済における第二次産業の比率が大きすぎる場合、そのなかでも重化学工業の比率が大きすぎ、軽工業が充分に発展していない場合には、自然資源が大量に消費される。労働力資本や技術条件が立ち遅れている場合には、技術および管理政策が主導的役割を果たすことができず、鉱物資源製品の一次加工化やローエンド消費が促されるため、経済システムの運営面から見れば全体的に製品および資源の大量消費や浪費が進み、生態環境が汚染され、破壊されるのは必然である。

 資源の豊かさや生産要素の流動性、市場の成熟性、地域間貿易等の要素の影響を受けて、産業構造は地域ごとに異なる特色を持つ。地域の産業構造によって鉱物資源の開発利用に対するニーズは異なるため、自然環境への影響レベルもさまざまである。鉱物資源密集型地域では、資源開発に対する地域経済の依存性は高く、産業発展における資源の専用度も高いが、産業間の関連性は低く、単一資源依存型の産業構造が形成されやすく、高い埋没費用(サンクコスト)と資源開発部門による生産要素へのロックイン効果が生じやすい。資源の高収益性という強力な刺激を受け、労働力、資本等の生産要素が次々に資源開発部門に流入し、同部門の持続的拡大と急速な繁栄が推進される。そして、環境保護制度と汚染対策メカニズムの不足を背景に、環境損害および汚染排出に多様性、持続性および複雑性が生じる。しかしながら、鉱物資源が相対的に不足する地域では、地域経済の成長は地域内の人材や資本、技術および制度の比較優位性に依存するため、非資源型産業が選択され、技術革新や製品革新によって新たな優勢産業が育成される傾向がある。このため、地域内のハイテク産業が発展し、産業発展に必要となる労働力資本が蓄積され、市場規則の健全化と製品構造の更新によって、資源消費が低く、利用効率が高く、環境汚染の少ない発展モデルが徐々に形成される。

 以上を鑑み、ここでは第1の仮説として次のことを提示したい。すなわち、鉱物資源の開発利用プロセスにおいて、産業構造は環境汚染をもたらす重要な原因となる。汚染処理メカニズムが不健全な条件では、地域の産業レベルの違いによって、鉱物資源の開発利用による環境影響にも地域差が生じる。

2.2技術進歩の影響メカニズム

 経済の内生的成長理論によれば、技術進歩が充分に効果的であるなら、1人あたりGDPが正の最適成長率を実現するのは可能である。このような最適成長率の基本的な特徴の1つは、技術進歩メカニズムによる影響を受け、経済システムにおいて効率的な資源配分と自然環境の低損害が実現できることである。鉱物資源の開発利用による環境影響問題においては、経済の内生的成長理論も適用性を持つ。それは主に、鉱物資源の開発利用の総量が相対的に少ない経済発展の初期段階においては、国家そのものの有するストレージ・テクノロジーが立ち遅れているため、技術発展事業に対する充分な資金投資も難しい。鉱物資源の開発利用におけるR&D投資と労働力資源のレベル低下によって、国が技術進歩を通じて資源の開発利用方式を改善したり、汚染排出を制御したりする効果に制約が生じうる。消費総量の増加に伴って鉱物資源はますます不足するため、経済が急速成長の段階に入り、国が大量の社会的富を蓄積して一定の資本、労働および技術的優位性を構築することができれば、貨幣資本によって資源の豊かな国から鉱物資源製品を直接購入し、かつ、FDI、R&D活動ならびに技術の直接輸入等の方法による技術のスピルオーバー効果により、資源利用および環境保護に対する技術学習や技術導入、技術吸収を強化し、中国国内で技術革新を行い、資源節約および汚染制御に関する知識の拡散を促し、資源の利用効率を向上させ続け、排出削減技術を採用することによって、環境汚染を低減させることができる。鉱物資源の開発利用と環境保護との関係を調和させるには、技術進歩を全面的に推進し、鉱物資源の開発利用効率を向上させ、使用プロセスにおける浪費を減らし、汚染排出を制御しなければならない。鉱物資源の開発利用と環境保護における技術進歩は、鉱物資源の生産要素と生産条件のあらたな組み合わせを実現し、潜在的なハイエンド効率と社会効果を獲得する主な道筋である。

 生産要素の投資にばかり依存し、資源の利用効率の向上に頼らない経済成長の長期的維持は難しく、技術進歩と効率の改善こそが経済の長期的成長の重要な源泉である。技術進歩は、地域ごとに異なる実現モデルがある。中国における鉱物資源の開発利用方法の選択とその環境影響に対する制御および対策は、その地域の技術進歩によって制約され、かつ、以下2つのレベルで地域差が現れる。すなわち、技術が発展した地域においては、政策と地域的優位性によって大量の技術が導入され、豊富なR&D資金と労働力資本が蓄積され、オリジナルイノベーションを主とする技術進歩モデルが主に採用されるため、鉱物資源の開発利用および環境対策上、先進的な技術設備と強い技術的優位性を獲得しやすい。これらの地域では、鉱物資源は高い技術的支援のもとで、効果的な利用が実現できる生産技術と利用方法が模索され、先進的な汚染制御設備と制御政策の採用によって資源消費や汚染排出が減少するため、環境に優しいグリーン型の発展を実現できる。これとは逆に、発展途上地域では、経済発展レベルが低く、R&Dの資金や労働力資本が相対的に乏しいため、技術のオリジナルイノベーション能力も弱い。これらの地域では、鉱物資源の開発利用および環境対策の実施の際には、先進国から直接技術を導入し、模倣し、吸収していることから、鉱物資源の開発利用と環境対策の効率は先進国に比べて遅れている。

 以上を鑑み、ここでは第2の仮説として次のことを提示したい。すなわち、技術進歩は環境の変化に対して逆方向に作用し、鉱物資源の開発利用による環境影響の制御に積極的な効果を果たす可能性がある。地域の発展に伴って技術進歩レベルも高まるため、鉱物資源の開発利用による環境影響は相対的に小さくなるが、逆の場合は大きくなる。

2.3 政府管理の影響メカニズム

 鉱物資源の開発利用による環境変化は、人類の社会活動による自然環境への影響を実質的に反映したものである。一部の経済学者によれば、鉱物資源の開発利用による環境影響が形成される根本的な原因は、市場と政府の機能不良による負の外部性にある[23]。鉱物資源の開発利用の際は、外部性の存在のために、生産消費活動における個人コストが社会コストより小さい上に、市場交換の方法によって修正できないため、資源配分がパレート最適からかけ離れる結果となり、ひいては環境汚染および生態系破壊等の負の外部性の蔓延をもたらす。この際、市場を通じた鉱物資源の効果的な配分は実現不可能なため、政府関与、すなわち社会の公共権力を掌握する政府が仲裁者となって、市場原則を体現し、保障できるような資源開発利用規則を設定し、政策または法律の形式によって環境資源財産権関係およびさまざまな利益主体の権利を明確に画定し、保護することによって、市場取引の効率と公正性を保証するしかない。しかしながら、中国における鉱物資源の開発利用の実践で明らかに示されているように、一部の地方政府は鉱物資源の開発利用のプロセスにおいて行政指令による手段を正確に運用しておらず、環境政策の方法選択において科学性に欠け、環境管理措置によって公平競争を保護することも難しいことから、環境対策においては政府が往々にして機能不良となっている。鉱物資源の開発利用による環境問題の主な原因については外部性理論によって解釈することができ、市場と政府による二重の機能不良によって環境保護問題は現実的な試練に直面している。

 市場と政府の両方の機能不良については、効果的な管理手段を用いて環境汚染を規制し、鉱物資源の開発利用における環境影響の解決方法を模索することが、政府の経済社会管理における重要な内容となっている。1998年、中国政府は国土資源部機構改革を実施し、地方政府に鉱物資源の企画および管理の権利と責任を付与することによって地方政府の積極性を引き出した。これによって、地方政府は資源の開発利用に関するさまざまな段階における管理を着実に強化し、各地域における鉱物資源の開発利用秩序を規範化し、派生する環境問題の解決に責任を負うようになった。しかし、権力の下達に伴い、地方政府はその地域の経済資源を組織立て、運用することによって管轄地域の経済成長を促し、戦略的に中央政府とわたり合い、その地域における鉱物資源の開発利用における効率の最大化を可能な限り追求するようになった。

 こうして、地方政府のいわば二重ともいえる立場によって、鉱物資源の開発利用と環境管理に関する行為が複雑なものになった。マクロ的に見れば、鉱物資源の開発利用の各関係者の権力と責任をはっきりさせた全国的な管理体制を構築できていないために、中央および地方政府の財産権の境界や協調管理に関する職能が明確に画定されておらず、また鉱物資源の価格メカニズムや監督管理メカニズムも調整されておらず、鉱物資源の開発利用およびその環境管理の実践は多様化の様相を呈している。例えば、制度や政策の革新によって鉱物資源のエコロジー経済学的効率を高めようとする地方もあれば、旧態依然としたレントシーキングのやり方で資源や環境から利潤を得ようとする地方もある。一般的に、それぞれの地方における鉱物資源の開発利用後の環境保護に対する態度、エネルギーおよびその努力の程度は、主に政府が行う環境保護コストと収益との比較によって決まる。当然ながら、先天的な資源条件や経済社会の発展状態は異なるため、環境規制コストと収益に対する地方政府の判断にも差が存在するが、このような差も環境汚染に対する監督管理や対策の強度を支えるポイントとなり、環境汚染の伝播経路、社会的損害および拡散範囲における地域差を生んでいる。

 以上の理論分析に基づいて、ここでは第3の仮説として次のことを提示したい。すなわち、鉱物資源の開発利用における政府の管理行為は、環境汚染の制御に対して効果を発揮できる。しかし、これらの効果の発揮いかんは、資源環境管理における地方政府の職権発揮に対する態度や程度によって決まる。

(その3へつづく)

参考文献

  • [23] 万倫来, 胡志華, 李勤. 鉱物資源の開発利用による環境効果に関する研究の進展[J]. 資源開発・市場, 2009,(11):1024-1026. [Wan Lunlai, Hu Zhihua, Li Qin. Research Progress of Environmental Effects of Mineral Resources Development and Utilization [J]. Resource Development & Market, 2009,(11):1024-1026.]

※本稿は陳軍;成金華「中国鉱産資源開発利用的環境影響」(『中国人口·資源与環境』第25巻第3期、2015年,pp.111-119)を『中国人口·資源与環境』編集部の許可を得て日本語訳・転 載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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