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中国の地熱資源の特性と発展対策(その1)

2016年 9月28日

周総瑛:中国石化集団新星石油公司、国家地熱エネルギー源開発利用研究・応用技術推進センター

博士、教授級高級工程師。主に石油・ガス資源評価、地熱資源評価などに取り組む。 

劉世良:中国石化集団新星石油公司、国家地熱エネルギー源開発利用研究・応用技術推進センター

劉金侠:中国石化集団新星石油公司、国家地熱エネルギー源開発利用研究・応用技術推進センター

概要

 地熱エネルギーは、グリーン(環境友好)で低炭素、循環利用可能な再生可能エネルギーの一種である。中国には地熱資源が豊富に存在し、その中心は中低温資源である。高温地熱資源は、中国の地質構造の特性とその地球構造における部位に制約され、チベット南部—四川西部—雲南西部地区と台湾地区の両地区に主に集中している。だが中国の地熱産業は初期段階にあり、資源の開発利用の程度は低く、地熱資源の利用のほとんどは直接利用を主としており、地熱発電は明らかに後れを取っている。本稿では、中国の地熱資源の開発利用が直面する問題をめぐって、地熱産業発展促進のための5つの対策を提案した。(1)国家級地熱産業核心技術研究開発プラットフォームを設立する。(2)高温岩体の調査開発利用モデルプロジェクトの建設を早期に始動する。(3)優遇支援政策を制定し、地熱産業を急速発展の軌道に乗せる。(4)地熱流体還元技術を積極的に普及し、環境を適切に保護する。(5)全国的な地熱資源管理法規を早期に打ち出し、中国の地熱資源の開発利用の法制化管理を進める。

[キーワード]:地熱資源、地熱帯、地熱発電、地熱暖房、還元技術

 エネルギー不足と環境汚染は現在、世界の持続可能発展を制約する重要問題の一つとなっている。地熱エネルギーは、クリーンで低炭素、循環利用可能な再生可能エネルギーの一種である。クリーンエネルギー(太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマスエネルギー、地熱エネルギーなど)のうち、地熱は、現実的かつ競争力を備えた手段の一つである。地熱資源は、埋蔵量が大きく、分布が広く、クリーンで環境に優しく、安定性が高く、利用率が高いなどの特性を備え、未来のエネルギー供給と省エネ・排出削減に対して巨大な潜在力を持っており、世界各国の高い評価と重視を受けている。

 中国の地熱産業は初期段階にあり、資源の開発利用の程度は低い。だがその地熱資源は豊富で、分布が広く、大きな発展の見通しを持ち、市場の潜在力は大きく、省エネ・排出削減においても重要な役割を果たすと考えられる。2013年初め、国家エネルギー局と財政部、国土資源部、住宅都市農村建設部は、『地熱エネルギーの開発利用促進に関する指導意見』(以下『意見』)を共同発表し、地熱エネルギーというこの新たなエネルギーの開発利用に政策の土台を築いた。『意見』は、2015年までに、全国の地熱暖房面積を5×108m2、地熱発電の発電容量を100 MW、地熱エネルギーの年利用量を2000×104標準炭トンとし、2020年までに、地熱エネルギーの年利用量を5000×104標準炭トンとする目標を掲げている。

1 地熱資源の中身と分類

1.1 地熱資源の中身

 地球は、膨大な熱の宝庫であり、巨大な熱エネルギーを内包している。火山の爆発や岩盤の熱伝導、温泉、熱を帯びた地下水の運動などを通じて、熱エネルギーは絶えることなく地表に送られている。

 地熱資源とは、人類が経済的に利用できる地球内部の地熱エネルギーと地熱流体と、その有用部分を指す。現在利用可能な地熱資源には主に、天然に湧き出た温泉、ヒートポンプ技術を通じて開発・利用された浅層地熱エネルギー、人工ドリリングを通じて直接採掘利用される地熱流体と高温岩体中の地熱資源が含まれる[1]。

 現在進行中の各種の地熱資源調査活動において主に評価されているのは、評価対象に含まれる「熱」の量であり、これに伴って生まれる副産品はまだ評価の範疇に入れられていない。地熱資源における熱エネルギー量は二つの部分からなる。第一に、熱貯留体内の岩石媒体に蓄えられた熱エネルギー量。第二に、熱貯留層の地下熱水に蓄えられた熱エネルギー量である。この二つの部分のエネルギー量の和が、地熱地域の地熱資源量となる[2]。地下地熱資源量はすべて採掘することはできず、取り出すことのできるのは一部分にすぎない。この部分は可採(可回収)地熱資源量と呼ばれ、採掘率(回収率)と地熱資源量との積に等しい。採掘された地熱エネルギー(生産井で得られた熱量)は一部分だけが利用される。利用の可能なこの部分を有効利用地熱資源量と呼ぶ。

1.2 地熱資源の分類

 地熱流体の輸送方式や温度の範囲、開発利用方式などの要素を総合的に考慮すると、地熱資源は、浅層地熱エネルギーと熱水型地熱エネルギー、高温岩体型地熱エネルギー(強化型地熱システム)の3種の類型に分けられる(表1)。

表1 地熱資源分類
Table 1 Geothermal resources classification

分類

浅層地熱
エネルギー

熱水型地熱エネルギー

強化型地熱
エネルギー
(高温岩体)

低温地熱
エネルギー

中温地熱
エネルギー

高温地熱
エネルギー

温度範囲

深度<200 m

温度<90 ℃

90 ℃≤温度<150 ℃

温度>150 ℃

温度>200 ℃

温度<25 ℃

 浅層地熱エネルギーは、地表下200 mの深さの範囲内にある、現在の技術的・経済的条件下で開発利用の価値を持つ、地殻浅部の岩石・土壌体と地下水中に埋蔵された、25 ℃以下の低温地熱資源を指す[3]。浅層地熱エネルギーには、浅層の岩石・土壌体や地下水が帯びた熱エネルギーが含まれると同時に、地表水が帯びた熱エネルギーも含まれる。浅層地熱エネルギーは、低位熱エネルギーに属し、ヒートポンプ技術による利用に適し、利用の際にCO2やSO2などの汚染ガスを産出しない。現在主に、都市の冬季の暖房と夏季の冷却に用いられている。

 熱水型地熱資源は、通常地熱資源とも呼ばれ、比較的深い場所にある地下水または蒸気に含まれる地熱資源であり、現在の地熱調査開発の主体である。地熱エネルギーは主に、天然に湧き出る温泉か、人工ドリリングによって直接採掘利用される地熱流体に含まれる。熱水型地熱資源はその温度によって、高温地熱資源(温度≥150 ℃)と中温地熱資源(90 ℃≤温度<150 ℃)、低温地熱資源(温度<90 ℃)の3級に分けられる[1](表1)。形成の原因による分類では、堆積盆地型地熱資源と隆起山地型地熱資源に分けられる。熱輸送方式による分類では、伝導型地熱資源と対流型地熱資源に分けられる。

 高温岩体(Hot-Dry-Rock, HDR)は、強化型地熱システム(Enhanced Geothermal Systems, EGS)、工学型地熱システムとも呼ばれ、一般的に温度は200 ℃を超え、埋蔵の深度は数千メートルに達し、内部に流体が存在しないか少量の地下流体しかない高温の岩体である[4]。高温岩体の熱エネルギーは、各種の変質岩または結晶岩のような岩体に蓄えられている。よく見られる高温岩体としては、黒雲母片麻岩や花崗岩、花崗閃緑岩などがある。高温岩体の開発利用にあたっては、熱貯留構造を人工的に作り出す必要がある。まず注水井(還元井)に温度の低い水を高圧で注入し、岩体に亀裂を発生させる。低温水の注入を続けると、亀裂は増加と拡大を続け、相互に連結し、大まかな平面状を呈する人工の高温岩体熱貯留構造が最終的に形成される。注入された水は、裂け目に沿って運動し、周辺の岩石と熱交換を発生し、200~300 ℃に達する高温高圧水または水と蒸気の混合物を産出する。生産井から採掘し、利用後の水は注入井を通じて地下に還元することで、閉鎖式の回路が形成される。

(その2へつづく)

参考文献

[1] GB/T 11615—2010. 地熱資源地質勘査規範 [S]. 中国国家標準化管理委員会, 2010. [GB/T 11615-2010. Geologic Exploration Standard of Geothermal Resource. Standardization Administration of the People’s Republic of China, 2010. ]

[2] DZ 40—85. 地熱資源評価方法 [S]. 中華人民共和国地質鉱産部, 1985. [DZ 40-85. Geothermal Resources Evaluation Method. Ministry of Geology and Mineral Resources of the People's Republic of China, 1985. ]

[3] DZ/T 0225—2009. 浅層地熱能勘査評価規範 [S]. 中華人民共和国国土資源部, 2009. [DZ/T 0225-2009. Specification for Shallow Geothermal Energy Investigation and Evaluation. Ministry of Land and Resources of the People’s Republic of China, 2009. ]

[4] 藺文静, 劉志明, 馬峰, 等. 我国陸区干熱岩資源潜力估算 [J]. 地球学報, 2012, 33(6): 1-5. [LIN Wen-jing, LIU Zhiming, MA Feng, et al. An estimation of HDR resources in China’s mainland. Acta Geoscientica Sinica, 2012, 33(6):1-5. ]

※本稿は周総瑛,劉世良,劉金侠「中国地熱資源特点与発展対策」(『自然資源学報』第30巻第7期、2015年7月,pp.1210-1221)を『自然資源学報』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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