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エネルギー革命:化石エネルギーから新エネルギーへ(その1)

2016年10月26日

鄒 才能:中国石油勘探開発研究院、中国石油勘探開発研究院廊坊分院

教授級高級工程師、博士指導教官、李四光地質科学賞受賞者。『天然気工業』第7期編集委員会委員、『Natural Gas Industry B』編集委員会委員。現在、中国石油勘探開発研究院副院長と中国石油勘探開発研究院廊坊分院院長を兼任。非在来型石油・ガス地質学、在来型の岩相地層石油・ガス埋蔵や大型石油・ガス地区などの地質理論技術研究と調査・生産の実践などに主に取り組む。

張 国生:中国石油勘探開発研究院廊坊分院

趙 群:中国石油勘探開発研究院

熊 波:中国石油勘探開発研究院廊坊分院

概要:

 世界全体のエネルギー発展の形勢を予測するため、エネルギー発展の歴史の分析を手に取り、エネルギー利用の方式が「薪から石炭」「石炭から石油・ガス」への転換を経た後、「石油・ガスから新エネルギー」の第三の重大な転換を経つつあることを明らかにする。世界の化石エネルギーの供給量は総体として十分にあるが、キー技術のブレークスルーと環境保護のニーズは、化石エネルギーから新エネルギーへの転換を加速・推進している。世界のエネルギー消費は現在、「石油」「天然ガス」「石炭」「新エネルギー」の4者が並び立つ時代に入りつつあり、一次エネルギー消費構造におけるその割合はそれぞれ32.6%、23.7%、30.0%、13.7%となっている。中国のエネルギー消費も、石炭が大部分を占めていた時代から、「石炭」「石油・ガス」「新エネルギー」の3つによって支えられる時代に入りつつある。世界のエネルギー発展は次のように予測できる。①石油は「安定期」に入っている。生産量は2040年頃にピークを迎え、ピークの年の生産量は約45×108 tとなると見られる。②天然ガスは「旺盛期」に入っている。生産量は2060年頃にピークを迎え、ピークの年の生産量は約4.5×1012 m3(石油換算40.5×l08 t)となると見られ、今後のエネルギーの持続可能発展において柱となると考えられる。③世界の石炭生産量は安定しつつも減少しており、石炭の発展は高効率・クリーン化の「転換期」に入っている。汚染物排出量は大幅に低下し、一次エネルギーの消費構造に占める比重もいくらか縮小していく見通しだ。④新エネルギーの開発利用は徐々に「黄金期」に入り、一次エネルギーの消費構造に占める比重は大幅に拡大していくものと見られる。このことから次の結論が得られる。①中国のエネルギーの生産と消費は自らの特性を持っており、エネルギーの発展にあたっては国情の現実から出発しなければならない。石炭資源のクリーンで効率的な利用を強化することは、中国のエネルギー・環境問題の解決のカギとなる。②国家のエネルギー安全を保障するには、中国では、石油生産量を2×l08 tに到達させる必要がある。③タイトガスやシェールガスなどの非在来型資源の開発の歩みを速め、中国の天然ガス生産量を2030年までに3000×l08 m3に到達させるという目標の実現に努めなければならない。④新エネルギー資源の開発利用を強化することによって、中国は、一次エネルギーの消費構造に占める非化石エネルギーの比重を2030年までに20%に到達させるという目標を実現することができる。

キーワード:エネルギー革命、化石エネルギー、新エネルギー、石油・ガス、石炭、再生可能エネルギー、非在来型石油・ガス、シェールガス、タイトオイル、ナノ技術、グラフェン、インターネット+

 エネルギーは、水や食糧とともに、人類の生存に不可欠な3大要素の一つである。世界のエネルギー発展は、新たな歴史的時期に入りつつあり、エネルギーのクリーン・低炭素発展は今後の必然的な流れとなっている。非在来型石油・ガスによる革命は、米国がここ40年余りにわたって夢見てきた「エネルギー独立」戦略の実現を後押ししている。米国政府は2008年、「グリーンエネルギーによって米国を再生する」というエネルギーの大戦略を打ち出した。とりわけここ数年の米国における、シェールオイル・ガスやタイトオイルなどに代表される非在来型石油・ガスの「4つの革新」は革命的なものと言える。これには、連続型石油・ガス集積を核心とする地質理論の革新、水平井体積粉砕を核心とする技術革新、プラットフォーム式の「工場化」された採掘による生産方式の革新、市場競争メカニズムを核心とする管理の革新が含まれる。米国の非在来型石油・ガス革命は現在、世界の石油・ガスさらにはエネルギー全体の局面を変化させ、世界の政治・経済の発展に重大な影響を与えている。中国政府も最近、「エネルギー消費の革命を推進し、不合理なエネルギー消費を抑制する」「エネルギー供給の革命を推進し、多元的な供給体系を構築する」「エネルギー技術の革命を推進し、産業のアップグレードを牽引する」「エネルギー体制の革命を推進し、エネルギーの急速な発展に道を開く」というエネルギー革命戦略を打ち出した。筆者は本稿で、世界のエネルギー発展の歴史から出発し、世界のエネルギーの全体の発展情勢を整理し、これを土台として、中国のエネルギーの国情を考慮し、中国のエネルギー発展が直面する挑戦を分析し、これに対応するための策略を提案したい。

1 世界のエネルギー発展の基本法則

1.1 エネルギー発展の3大転換

 人類のエネルギー利用の方式は、薪から石炭、石炭から石油・ガスへの転換をほぼ完了したのに続き、石油・ガスから新エネルギーへの第三の重大な転換を迎えようとしている。原始時代に人類が初めて火の使用を開始してから、エネルギーは、人類の生存に不可欠な資源となってきた。容易に手に入れることのできる木材は、人類の初期の防寒や調理などの基本的な生存の必要を満たした。炭鉱の採掘技術の進歩に伴い、エネルギー密度の高い石炭が幅広く応用されるようになった。1769年にはワットが新方式の蒸気機関を発明し、1875年にはフランスで世界初の石炭燃焼発電所が建設されるなど、人類文明の進歩は、石炭産業の加速的な発展を促し、石炭は、1780年代には一次エネルギー消費における比率で薪を超え、その総量で最大の一次エネルギーとなり、薪から石炭への第一の重大な転換が完了した。1886年にダイムラーが内燃機関を発明すると、高効率のエネルギー資源としての石油・ガスの需要が大幅に高まった。石油・ガスの地質理論や坑井採掘・仕上げや精製などの技術の進歩は、石油・ガス生産量の大幅な向上を促進し、一次エネルギー消費構造における比率は急速に高まり、1965年には50%を超え、石炭に代わって世界第一のエネルギーとなり、石炭から石油・ガスへの第二の重大な転換が完了した。

 エネルギーに対する経済・社会の需要量の持続的な増加と低炭素社会の到来に伴い、従来の化石エネルギーから非化石の新エネルギーへの第三の重大な転換は必然的な流れとなっている。近年、石炭や石油などの高炭素エネルギーの利用がもたらす生態環境問題は日増しに深刻化している。20世紀初期の英国ロンドンの「霧の都」の形成や、中国で広範囲に起こっている煙霧現象はいずれも、石炭などの高炭素の化石エネルギーの大規模な利用が主因となった。良好な生態環境に対する人類のニーズの高まりにつれ、天然ガスや新エネルギーなどのクリーンエネルギーの一次エネルギー構造における比率は徐々に拡大していくと見られる。世界の一次エネルギーは現在、石油と天然ガス、石炭、新エネルギーの4つが並び立つ局面に入りつつある。だが新エネルギーだけでエネルギー構造を支えることは、今後かなりの長期にわたって難しいだろうということは、はっきりと認識しておかなければならない。

1.2 エネルギー発展の3大傾向

 エネルギー資源のタイプと生産方式、利用方式から見ると、世界のエネルギー発展は総体として、高炭素から低炭素へ、単純な生産から技術を通じた生産へ、直接的な一次転換から多次転換へと発展する傾向にある。

(1)エネルギーのタイプの高炭素から低炭素への発展とは、化石エネルギーから非化石エネルギーへの移行を意味する。単位熱量当たりの石炭含有量は石炭が26.37t/TJ、原油が20.1t/TJ、天然ガスが15.3t/TJである。一方、水力発電、風力発電、原子力エネルギー、太陽エネルギーなどはほとんど炭素を含まない。石炭から石油・ガス、石油・ガスから新エネルギーへの発展の過程において、各タイプのエネルギーが産出する汚染物量と炭素排出量はより低くなり、良好な生態環境へという発展のニーズに適応し、これを満たしてきた。

(2)資源生産方式は、単純な生産から技術を通じた生産へと発展している。エネルギー発展の全体としての形勢を振り返ると、原始時代における人類が自然から直接的にエネルギーとしての薪を得ていたのに対し、炭鉱採掘や油田開発では工学的な技術がますます重要となり、原子力エネルギーや風力エネルギー、太陽エネルギーなどの新エネルギー資源の開発はいずれも技術集約型産業となっている。特定のタイプのエネルギーの開発プロセスから見ても、技術の重要性がわかる。石油・ガスの採掘を例に取ると、早期の石油採掘は垂直井が中心だったが、水平井技術と水力破砕技術の応用で産出量の低い大量の坑井の有効な開発ができるようになり、近年はさらに、水平井の多段階破砕技術の応用によってエネルギー分野の「シェールオイル・ガス革命」が推進されている。

(3)エネルギー利用方式は、直接的な一次転換から多次転換へと発展している。第一次産業革命以前、薪と石炭のエネルギー利用は、直接的な熱利用を中心としていた。1769年の蒸気機関と1875年の内燃機関の発明によって、エネルギー利用は動力利用の方向へと拡大した。さらに1831年のファラデーによる電磁誘導の発見で、エネルギー利用方式はさらに電力方向へと発展し、エネルギー利用の電気化時代が幕を開けた。

1.3 エネルギー発展の3大局面

 社会・文明の進歩と科学技術水準の向上に伴い、世界のエネルギーにおいては現在、「石油」と「天然ガス」、「在来型」と「非在来型」、「化石」と「非化石」の共同発展という新局面が形成されている[1]

(1)「石油」と「天然ガス」の新局面。国際エネルギーの発展の形勢と石油会社による調査・開発の動向から見ると、「石油の安定生産を続けながら天然ガスの生産を増やす」という大きな流れが見て取れる。天然ガスは、石油に対する「第一次革命」を形成するもので、世界は天然ガスの発展時代に入っていると言える。

(2)「在来型」と「非在来型」の新局面。在来型と非在来型の双方を重視することは、各大手石油会社の発展戦略に盛り込まれており、在来型の石油・ガスを資源調査の主体とし、在来型資源の生産を確保しながら、非在来型のキー技術の理論を明らかにし、有効な開発を順序を追って徐々に実現していく戦略が取られている。長期的に見ると、シェールガスやシェールオイル、天然ガスハイドレートなどの非在来型資源の潜在力は大きく、技術のブレークスルーが一旦起これば、在来型の石油・ガスに対する「第二次革命」を形成するものと考えられる。とりわけ「ハイドレート革命」は、「シェールガス革命」よりもさらに巨大な変化をもたらすものと考えられている。

(3)「化石」と「非化石」の新局面。従来の化石エネルギーは再生不可能であり、再生可能な非化石の新エネルギーは、従来のエネルギーに対する「最終革命」を形成するものと考えられる。石油工業の発展期が300年であるという説を認めるとすれば、1859年に世界の石油工業が始まってから今日までに150年が経過し、あと150年を残すのみとなっている。これは化石エネルギーのライフサイクルと考えることができる。風力エネルギーや太陽エネルギー、地熱エネルギー、さらには現在急速に発展しているエネルギー貯蔵や水素エネルギーはいずれも、大きな発展の見通しを示しており、化石エネルギーの枯渇を待たずに「新エネルギー革命」が到来する可能性もある。

1.4 エネルギー発展の二つの原動力

 社会・文明の発展は、エネルギーの需要の増大の原動力となっている。原始社会におけるエネルギーは主に、生存の必要性を満たすものだった。封建社会において人類の生活の質は高まり、初期的な工業生産はエネルギー需要量を大幅に高めた。産業革命以来、社会・文明はますます急速に発展し、交通や情報、文化・娯楽に対する人類のニーズは大幅に高まり、現代工業のエネルギー需要量はかつてないほど高まっている。高炭素エネルギーの開発利用の過程で産出される排水や排気、残渣による一連の生態環境問題の発生によって、エネルギーの生産と消費における生態面での必要性は近年、エネルギー発展のプロセスに組み込まれるようになっている。

 科学技術の進歩は、エネルギーの変革をもたらす原動力となっている。石油・ガスの発展を例に取ると、石油工業の歴史は科学技術発展の歴史とも重なり、石油・ガスの地質理論や技術の絶え間ない革新は、経済・社会の持続発展に、尽きることない原動力を与えている。石油・ガス工業の150年の発展の歴史のプロセスにおいては、石油・ガス理論に対して二度にわたって重大な革新がはかられた[1]。第一の革新は、在来型の石油・ガスのトラップを見つけようとするもので、第二の革新は、非在来型の新たな分野を開拓しようとするものである。在来型から非在来型への石油・ガスへの飛躍をはかる石油科学技術革命は、在来型石油・ガスの埋蔵トラップ理論から非在来型石油・ガスの連続型の集積理論へ、在来型の石油・ガス垂直井掘削技術からナノとガスドライブによる石油・ガスの採掘率向上技術への進展を意味する。理論と技術は、石油工業を絶え間なく前進させ、世界の石油・ガスの埋蔵量と生産量の安定成長を保持させている。2014年の世界の石油と天然ガスの可採埋蔵量はそれぞれ2,398×108 t、187×1012 m3で、生産量は石油換算で約73.5×108 tとなっている[2]。科学技術の進歩は、石油・ガス資源の発見と利用を推進し、石油・ガスに対する人類社会の発展のニーズを満足させている。

その2へつづく)

参考文献

[1]鄒才能, 陶士振, 侯連華,朱如凱, 袁選俊, 張国生, 等. 非常規油気地質学[M]. 北京:地質出版社,2014.

[2]BP.BP statistical review of world energy 2015[EB/OL].(2015-06)[2015-ll-20].
http://www.bp.com/content/dam/bp/pdf/energy-economics/statistical-review-2015/bp-statistical-review-of-world-energy-2015-full-report.pdf

※本稿は鄒才能、趙群、張国生、熊波、「能源革命:従化石能源到新能源」(『天然気工業』第36巻第1期、2016年1月,pp.1-10)を『天然気工業』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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