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中国の高比率再生可能エネルギー発展の実現のための研究(その1)

2016年11月 7日

白 建華:国網エネルギー研究院

工学博士、高級工程師(エンジニア)、国務院特殊手当専門家。主要研究テーマは、エネルギー戦略・計画、エネルギー・経済・環境・電力総合発展計画など。

辛 頌旭:国網エネルギー研究院

工学修士、高級工程師。主要研究テーマは、エネルギー戦略・計画、新エネルギー送電網接続・運用、技術経済評価など。

劉 俊:国網エネルギー研究院

工学博士、高級工程師。主要研究テーマは、エネルギー戦略・計画、再生可能エネルギー送電網接続、エネルギー貯蔵技術など。

鄭 寛:国網エネルギー研究院

工学博士、工程師。主要研究テーマは、エネルギー戦略・計画、新エネルギー送電網接続・運用、技術経済評価など。

概要:

 再生可能エネルギーを大いに発展させることは、世界及び中国におけるエネルギー資源の不足や環境の悪化、気候変動に対応するための重要な手段となる。本稿は、▽再生可能エネルギー発電のランダム性や間欠性などの特性を考慮し、高比率再生可能エネルギー発展に適応した新型の電力計画と生産シミュレーションのモデルを構築し、▽中国の2050年における再生可能エネルギーの発展の見通しを研究し、中国の2050年における電源構造と地域間電力潮流規模を算出し、総合的な効果の評価を行い、▽同時に中国の高比率再生可能エネルギーの発展経路と関連政策を提案した。

キーワード:エネルギーインターネット、再生可能エネルギー、電力計画、生産シミュレーション

はじめに

 世界的な工業化が始まって以降、従来型の化石エネルギーが大量に開発・使用されるようになった。これによってエネルギー資源不足や環境悪化、気候変動、氷河融解、海面上昇などの問題が際立つようになり、人類の生存と持続可能発展が深刻に脅かされるようになった。従来の化石エネルギーを土台としたエネルギーの生産・消費方式はすでに継続できなくなり、風力エネルギーや太陽エネルギーを代表とした再生可能エネルギーが徐々に、人類のエネルギーの持続可能発展に向けた重要な選択肢となりつつある。再生可能エネルギーの中では、大型・中型の水力発電が高い調節性能を備えているのを除けば、風力発電や太陽エネルギー発電は制御可能性が比較的低く、その出力の変動性とランダム性はより多くの不確定性を電力システムにもたらすものとなっている。風力発電や太陽エネルギー発電などの再生可能エネルギー発電の割合の高まりは、システムの計画設計や調整運用、保護・制御、経済性分析などに影響を与えている。高比率の再生可能エネルギーは、電力システムのピーク調整圧力を高め、従来型電源がシステムの調節に頻繁に参加するようになり、その経済的耐用年数に影響を与えることとなる。さらに揚水発電やエネルギー貯蔵など柔軟に調節可能な電源に対する要求も高まっている。

 再生可能エネルギーの大規模開発と効率利用を実現し、石炭などの化石エネルギーの代替を着実に進めるためには、世界的なエネルギー網を構築し、超高圧電力網を基幹ネットワーク(ルート)とし、クリーンエネルギーを主導とし、世界を結びつけた強力なスマートグリッドを形成する必要がある。エネルギー開発の「クリーン代替」と末端エネルギー利用の「電力エネルギー代替」を実現することは今後、高比率再生可能エネルギーの発展を実現する重要な経路の一つとなる[1-3]

 本稿はまず、世界のエネルギー発展が直面する厳しい情勢と重大な課題を整理し、未来のエネルギー発展の見通しを展望し、再生可能エネルギーを大いに発展し、世界的なエネルギーインターネットを構築する重要な意義を分析した。さらに高比率再生可能エネルギー発展に適した電力計画の生産シミュレーションのモデルを構築し、中国が高比率再生可能エネルギーを実現するための今後の電源構造や地域間電力潮流をターゲットに実証研究を行い、発展のロードマップとこれに関連する方策を提起する。

1 世界のエネルギー発展の趨勢と啓示

1.1 世界のエネルギー発展が直面する厳しい課題

 第一に、エネルギーの安全。世界の化石エネルギー資源には限りがあり、現在の採掘ペースで考えれば、石炭はまだ100年余り持つが、石油・天然ガスは50年前後しか維持できない。さらにエネルギー資源と消費の局面は不均衡で、資源不足国のエネルギー対外依存度は高まり続けている。現在、中国の石油と天然ガスの対外依存度はそれぞれ58.1%と31.6%に達し、エネルギー安全の問題は際立っている[4-5]

 第二に、環境汚染。化石エネルギーの生産や運輸、加工・転換、使用は、空気や水、土壌などの生態環境資源に深刻な汚染と破壊をもたらしている。また化石エネルギーの燃焼によって排出される大量の煙塵やSO2、窒素酸化物などの大気汚染物質は、スモッグや酸性雨などの環境汚染をもたらしている。さらに化石エネルギーの採掘は、地下水位の下降や水質汚染、土地痩せ、植被破壊などの問題を引き起こしている[6-7]

 第三に、気候変動。化石エネルギーの燃焼によって産出されるCO2は、世界の人類の活動による温室ガス排出の56.6%とCO2排出の73.8%を占め、世界の気候変動や氷河融解、海面上昇などの気候問題をもたらしている。国連の「気候変動に関する政府間パネル」は第5次評価報告書において、1880年から2012年までに世界の地表の平均温度は0.85℃上昇し、1983年から2012年までの30年はこれまで記録にある限り北半球で気温が最も高い30年だったとした[8-9]

1.2 世界のエネルギー発展の趨勢

 世界のエネルギー安全や環境汚染、気候変動などの課題に対応するためのカギは、エネルギー構造の調整、つまりエネルギー構造における化石エネルギーの比重を低め、再生可能エネルギーの割合を高めることにある。米エネルギー省は、高比率の再生可能エネルギーによる電力供給の発展に向けたロードマップを制定し、米国の再生可能エネルギーによる発電量の比重を2050年までに80%とする方針を打ち出した[10]。カナダは、再生可能エネルギーの発電量が総発電量に占める割合を2035年までに68%とする計画だ[11]。日本政府は、海上風力と地熱、バイオマス、海洋の4分野における発電能力を2030年までに、2010年度の6倍以上に拡大する目標を掲げている[12]。EUは、EUのエネルギー構成に占める再生可能エネルギーの割合を2050年までに50%に到達させる目標を制定している[13]

 国際エネルギー機関(International Energy Agency,IEA)と世界エネルギー会議(World Energy Council,WEC)は、気候変動による制約に基づき、世界の未来のエネルギー発展の見通しに対し、複数のシナリオからなる予測をそれぞれ打ち出した(表1)[14-15]。その結果は、高比率の再生可能エネルギーという発展経路が、世界の排出削減と気温上昇の制御を実現するための有効な道であることを示している。

表1:IEAとWECによるエネルギー発展のシナリオ
Tab. 1 Forecast scenarios of the energy of the world by IEA and WEC
シナリオ シナリオ状況 予測結果
IEA 保守政策
シナリオ
2012年半ばまでに世界各国が取ったエネルギー分野の政策措置だけを考慮。保守的なシナリオ。 2035年、化石エネルギー燃焼によって排出されるCO2総量は世界で431億tに達し、一次エネルギーに占める化石エネルギーの比重は約80%となる。
新政策
シナリオ
各国がすでに取っているまたは承諾している再生可能エネルギー発展戦略と政策措置を考慮。このシナリオが実現される可能性は高い。 2035年、化石エネルギー燃焼によって排出されるCO2総量は世界で372億t、化石エネルギーの割合は約76%となる。2100年までに世界の気温は3.6℃上昇し、炭素排出濃度は700ppmとなる。
450ppm
シナリオ
世界の気温上昇幅を2℃以内に抑える(大気中のCO2濃度を450ppm以内に抑える)ことを目標に、世界と各国がエネルギー発展経路を制定。 2050年、化石エネルギーの割合は約64%に低下し、炭素排出総量は216億tに減少する。2100年の炭素排出濃度は450ppm、気温上昇幅は2℃未満に抑えられる。
WEC Jazz
シナリオ
国際市場においてエネルギーの自由取引が実現され、新エネルギーと低炭素エネルギーの発展は市場が決定。価格を基礎として、エネルギー資源の完全な自由競争が実現される。 2050年、再生可能エネルギーの発電量の割合は31%、CO2排出量は441億t、炭素排出濃度は590~710ppmとなる。
Symphony
シナリオ
エネルギーに関する国際的な政策と措置を通じて、エネルギーと環境の持続可能発展が実現される。補助金などによって再生可能エネルギーの発展が支援される。気候変動対応のためのさまざまな政策が実施される。 2050年、再生可能エネルギーの発電量の割合は48%に達し、CO2排出量は191億t、炭素排出濃度は490~535ppmに抑えられる。

1.3 未来への啓発

 高比率再生可能エネルギーの発展の実現には、柔軟な調節や広範囲のエネルギー資源配置などの機能的特徴を備えた電力システムが必要となる。中国の再生可能エネルギーの総体比率は依然として低いが、水力や風力、太陽光による発電にはすでに深刻な「無駄」が生じている。再生可能エネルギーの大規模開発と効率的な吸収というニーズに対応するためには、国外の経験を参考として、柔軟な調節の可能な電源の建設を加速すると同時に、電力網の相互連結の規模を拡大する必要がある。

その2へつづく)

参考文献

[1] Chu S,Majumdar A.Opportunities and challenges for a sustainable energy future[J].Nature,2012,488(7411): 294-303.

[2] 劉振亜『全球能源互聯網』[M].北京:中国電力出版社,2015:106-111. Liu Zhenya.Global energy internet[M] .Beijing:China Electric Power Press,2015:106-111 (in Chinese).

[3] 白建華「全球能源互聯網正向我們走来」[N].『国家電網報』,2014-09-04(1). Bai Jianhua . Global energy internet is coming to us[N]. State Grid News,2014-09-04(1)(in Chinese).

[4] 国家能源局「煤炭工業発展“十二五”規劃」[EB/OL].北京:国家能源局,2012[2012-03-20].http://www.nea. gov.cn. NEA.Coal industry planning in the 12th Five-year period[EB/OL].Beijing:NEA,2012[2012-03-20].http:// www.nea.gov.cn(in Chinese).

[5] 国家能源局「2030 年国家能源戦略研究報告」[R].北京:国家能源局,2010. NEA.Report on Chinese energy strategy to the year of 2030[R].Beijing:NEA,2010(in Chinese).

[6] 劉振亜「智能電網与第三次工業革命」[N].『科技日報』,2013-12-05.Liu Zhenya.Smart grid and the third industrial revolution[N].Science and Technology Daily,2013-12-05(in Chinese).

[7] 林伯強「能源革命需転変計劃思維」[N].『人民日報』,2014-08-20(5). Lin Boqiang.Energy revolution needs to change the planning thinking[N].Renmin Daily,2014-08-20(5) (in Chinese).

[8] IPCC. Climate change 2007 : Synthesis report [EB/OL].Geneva,Switzerland: IPCC,2007.http:// www.ipcc.ch.

[9] IPCC.Climate change 2014:Impacts,adaption,and vulnerability[EB/OL].Cambridge: Cambridge University Press,2014 [2014-03-20].http://www.ipcc.ch.

[10] NREL. Renewable electricity futures study [EB/OL]. USA:Golden C O,2012[2012-06-19].http://www. nrel.gov.

[11] NEB. Canada’s energy future 2013: Energy supply and demand projections to 2035 [EB/OL].Canada:NEB, 2013.http://www.neb-one.ga.ca.

[12] 新華網「日本公布可再生能源発展新戦略」[EB/OL].新華網, 2012[2012-08-31] . http://news.xinhuanet.com/ world/2012-08/31/c_112919092.htm. Xinhuanet . Japan announced the new development strategy of the renewable energy[EB/OL]. Xinhuanet, 2012[2012-08-31].http://news.xinhuanet.com/world/2012-08/31/c_112919092.htm.

[13] European Commission.Energy for the future: renewable resources of energy white paper for a community strategy and action plan[EB/OL] . Brussels : European Commission , 1997[1997-11-26] . http:// www. economicsweb institute.org.

[14] IEA. World energy outlook 2013 [EB/OL].Paris,France: IEA,2012.http://www.iea.org.

[15] WEC. World energy scenarios: composing energy futures to 2050 [EB/OL].London,UK:WEC,2013.http://www. worldenergy.org.

※本稿は白建華,辛頌旭,劉俊,鄭寛「中国実現高比例可再生能源発展路径研究」(『中国電機工程学報』第35巻第14期、2015年7月,pp.3699-3705)を『中国電機工程学報』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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