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中国の農業由来バイオマスエネルギー産業の発展の現状と効果の評価にかかる研究(その2)

2016年11月24日

高 文永:
農業部農業エコロジー・資源保護総合ステーション

博士。主に農村の再生可能エネルギー利用や農業における資源・環境保護に関する業務に従事する。

李 景明:
農業部農業エコロジー・資源保護総合ステーション、中国メタン発酵ガス学会

その1よりつづき)

2. 中国における農業由来バイオマスエネルギー産業の発展効果にかかる評価

2. 1 農業由来バイオマスエネルギー産業の経済効果分析

 バイオマスエネルギー産業の経済効果は、企業そのものの経済・財務効果のみならず、その実施が周辺地域にもたらす経済発展や収益も考慮される。バイオマスエネルギーの開発利用にかかる主な技術には、メタン発酵施設の整備、各種発電、バイオ燃料などに関するものが挙げられる。本稿では、資料分析と典型例の調査を通じて、主な類型のバイオマスエネルギー産業にかかる経済けん引効果を分析する。

2.1.1 バイオマス発電

 バイオマス発電とは、バイオマスエネルギーの開発利用の中でも比較的成熟した技術である。調査と推算によれば、容量2.5万kWのバイオマス発電ユニット1基当たり、年間で農林廃棄物20万t余りを処理できると見積もられる。これら廃棄されたバイオマスは従来の農業生産に付随してプラスアルファの収入をもたらす。1年間の発電量は1.5億kWhに上り、生産額に換算すれば1億元近くに上り、概ね農家40万戸の一年分の生活用電力をまかなうことができる[4]。また、燃料の買い付けや加工、保管、運輸のために農民からの労働力が提供され、雇用創出効果は約1000人余りに上る。発電所に到達するまでの平均コストを300~350元/t-1として計算すると、一つの発電所が燃料供給の過程すべてで直接または間接的に農民に支払う関連費用は、合計6000~7000万元に上る。このほか、バイオマス発電産業は農業設備に対する巨大な市場ニーズを生むため、中国における農業の機械化レベル及び農業の現代化レベルの向上が大きく促され、増収につながる。同等の火力発電ユニットとの比較で言えば、石炭に対する代替効果は年間にして7~8万t(標準石炭換算)で、CO2排出削減効果は約10万t以上となり、石炭使用に伴う費用の節約や、CDMプロジェクトによる拠出資金の上積みにもつながる。

2.1.2 バイオマスガス集中供給

 燃料ガスの生産に幅広く用いられている技術は、バイオマスの熱分解によるガス化で、これには有酸素熱分解ガス化と無酸素熱分解ガス化、及びその複合型がある。バイオマスの有酸素熱分解ガス化技術には、主に固定床型、流化床型がある。無酸素熱分解法の場合、農村で使用可能のものとしては通常熱分解技術があり、プロセスフローはシンプルで、運転やメンテナンスが容易である。その燃焼熱量は3800~4800kcal/m-3で、ガスと共に炭、木酢液、タールなどの副産物も得ることができる。これらガス化技術で使用する原料は、いずれも薪・柴、藁、トウモロコシの芯などが基本で、植物体1t(ドライベース)につき可燃ガス350 m3、木炭300kg、タール50kg(販売可能な品質のもの)を得られる。北京市延慶、房山、大興、懐柔、通州、昌平、平谷などの区・県におけるバイオマスガス集中供給システムにかかる調査結果によれば、北京市における藁を使用したガス集中供給システムには、酸化ガス化型と熱分解乾留型の二種類のガスステーションがあり、中でも酸化ガス化型の数が多く、合肥天炎、山東大学、瀋陽富城、遼寧億兆、山東君健といったメーカーの技術が多く用いられている。運用されている集中ガス供給システムは、酸化ガス化型が66システム、熱分解乾留型が2システムで、供給対象エリアはかなり広く、使用する農家の人口は2万9860人程度(表5を参照)に上る。通常、藁を原料とするガス集中供給システムは、藁1kg当たり2~2.4m3の可燃ガスを産し、1戸・1日当たりの藁由来の可燃ガス使用量は平均6m3に上る。1m3当たり0.15元の料金の場合、一年分は300元となり、石炭火力と比べると約200 元以上の燃料費を節約することができる。この技術を利用すれば、クリーンなエネルギーを得られるだけでなく、石炭の使用量も節約できる上、副産品から付加価値も生み出すことできる。

表5

表5 各区県のバイオマスガス化による集中ガス供給の発展現状

2.1.3 メタン発酵プールの建設

 中国では、ふんだんにある家畜・家禽の糞尿を資源として利用することができる。しかも、多くが各戸で分散して飼育されているため、家庭用のメタン発酵プールの設置には適した条件であり、メタン発酵プールを中心に、台所設備やトイレ、豚飼育小屋などを改造し、家庭の生産活動や生活の中で生じた廃棄物や人のし尿を回収して、メタン発酵プールでの嫌気発酵によるメタン生成に利用することが可能である。投資が小さいながらも、効果が見えるのが早く、ノーリスクでハイリターンの技術である。河南省での調査結果からの推算によると、農家の各家庭につき8~10m3程度のメタン発酵プールを設置すれば、家族3~5人程度であれば家庭の一年分の日常の炊事・照明をまかなうことができるほか、通常であれば農地5~6畝(1畝=1/15ha)分の肥料を作ることができ、生活用石炭・電気の支出を年間で約400~600元節約し、化学肥料や農薬の使用による支出を約300元減らすことができる。

2.1.4 サツマイモ由来燃料エタノール

 燃料エタノールの生産プロセスは、後の工程で脱水や一定比率の石油との混合があるのを除けば、前の工程は通常のエタノール生産プロセスと似ており、技術的にかなり成熟したものであり、歩留まりも高い。傅学政らの試算によれば、年産10万tのサツマイモ由来燃料エタノール工場を設立した場合、エタノールの利益は1億50万元になると見込まれ、これに加えてCDMプロジェクトによる拠出資金として1,620万元が毎年得られる。サツマイモの年間必要量は75万tで、1万ha 近くの農地からの収量に相当する。1t当たり400元として計算すれば、1ha当たりの額は3万元となり、労働力1人で管理できる農地の広さを10畝とすれば、年間収入は1万5,000元以上に上り、その収益力は水稲を栽培した場合と比べても1,527元上回る。

 但し、以上はいくつかの典型的なバイオマスエネルギー産業について経済効果を簡単に分析したものに過ぎず、この他にも多くの経済効果の要素が未分析のままである。

2.2 農業由来バイオマスエネルギー産業の発展にかかる環境効果の評価

 バイオマスエネルギーの利用技術は、廃棄したバイオマスエネルギー源を再利用することによって、他のエネルギーや資源を代替したり、節約したりすることに主眼がある。さらに、バイオマスエネルギー源の燃焼後に排出されるCO2やメタン発酵プールの廃液・残滓などは、農作物の成長に必要な養分に転用できるため、ほぼ無汚染生産を実現していると言える。ただ、中国のバイオマス資源はかなり豊富であるものの、充分に利用されていないため、これらが環境汚染の原因となってしまうという深刻な問題がある。報道によれば、中国では毎年2億t余りの藁が露天で焼却され、20億t余りの家畜・家禽の糞尿が水質汚染を引き起こし、1000万tのプラスチックごみが発生し、1000万haの農地はビニールシートの被覆により土壌の栄養を失っている。このため、バイオマス廃棄物を十分に利用すれば、優れた経済効果を生み出すばかりでなく、さらに環境汚染を根本から減らし、農村の生活条件を効果的に改善し、農村の都市化プロセスを促すことが可能になる。[6]

2.2.1 バイオマス成型燃料

 バイオマス成型燃料は、良質な再生可能エネルギーであり、石炭などの化石燃料の代替物となりうるものであり、農業、都市生活、工業・農業生産への利用が可能である。さらには、バイオマス発電にも利用することができ、石炭火力と比しても、エネルギー、環境などを含めた総合効果はかなり突出している。年間生産量3000tのバイオマス成型燃料で、約2400t分の石炭火力に相当する。また、排出された燃えカスも直接農地へ埋めることが可能であり、農業のエコロジー環境の保護にプラスになっている。中国において、緻密成型燃料の生産に使用できる藁は毎年約有3.5億t程度産しており、これらで石炭2.1億t分(標準石炭換算)を節約できる計算である[7]

2.2.2 バイオマス発電

 バイオマス発電にはクリーン、安全で持続可能という特長があり、バイオマス発電による熱供給を増やせば、石炭火力の小型ボイラーからの置き換えを進め、燃焼効率を高め、大気環境を改善することができる。また、農林生産の裾野を広げ、農業にかかる産業システムを拡大し、農村の衛生状況や農民の生産活動や生活の条件改善の助けともなる。また、バイオマスエネルギー発電において現状でより重要なことは、業界としての排出削減やCDMプロジェクトの実施にも参加できることである。メガワット級の発電・売電プロジェクトであれ、数十キロワットないし百キロワット程度の自家発電プロジェクトであれ、いずれも藁や籾殻などの農林廃棄物を利用して発電するものであり、CDMメカニズムのすべての条件を満たすことができ、中国の持続可能な発展のニーズにもかなうものであり、中国政府が優先的な展開を奨励するCDMプロジェクトとなっている[8]

2.2.3 メタン発酵プロジェクト

 バイオマスを利用したメタン発酵プロジェクトは、中国では早くから展開されている。その最初の目的の一つが、農村の生態環境を改善することであり、現在のメタン発酵プロジェクトはバイオマスを利用した熱供給ができるほか、メタン発酵後の廃液や残滓の有効利用も次々と始まっている。メタン発酵後の廃液を液体肥料として使えば、化学肥料の使用に伴う農村の面源汚染を減らせるほか、作物の病虫害を防止する作用も一定程度見込まれ、農薬の使用量を減らすことができる。メタンはさらに、水資源不足にもある程度の緩和効果がある。正常な使用状況であれば、10m3のメタン発酵プール1つ当たり、メタン発酵後の廃液は年間で30t発生するが、メタン発酵では一般的に養豚施設の清掃排水や糞尿を発酵原料としているため、水分を添加する必要はない。

2.2.4 サツマイモ由来エタノール

 サツマイモを利用した燃料エタノールの生産で発生するCO2ガスは、その一部を回収することができるほか、残りは大気に放出された後、サツマイモの成長過程で吸収されるため、CO2の排出ゼロを実現できる。サツマイモを利用したエタノール生産では、効率の高いクリーン生産の新プロセスを採用できる。発生する廃水のCODcr、BOD5の量が高いことから、その生化学反応に適した特性を生かして、嫌気-好気反応を採用したメタン発酵により、高濃度の有機廃水の分解を行い、排出する汚水を国家基準に適合するレベルまで処理することが可能である。サツマイモ原料は、エタノール発酵とメタン発酵を経て、原料に含まれる窒素の大部分と、リン・カリウムのすべてを残しつつ、一部有機物が腐植に置き換わるため、優れた有機肥料を作ることができ、優れた土壤改質効果が見込まれる。ボイラーから発生する燃えかすの用途も幅広く、道路の埋戻材や路盤材などに使用できる。また灰は、セメントの骨材としてセメントに直接混ぜて使用することができるなど、有効利用の範囲は広く、展望は良好である。

2.2.5 農業由来バイオマスエネルギーの利用により起こりうる環境問題

 バイオマスエネルギーの産業への利用は、環境との親和性は大きいものの、生態系に対して無視できない環境問題も存在することが研究で明らかになっている。生産段階では、原料の前処理や輸送などの一部の加工・利用プロセスで、様々な程度の汚染が発生する恐れがある。バイオマスエネルギーの開発・利用をめぐるより大きな影響は生態環境面で発生すると考えられる。広大な面積の農地に単一の特定のエネルギー作物を栽培すれば、生態システム内部の生物多様性が破壊され、農地に生息する一部の野生動物の多様性を減少させてしまう恐れもあるとされる。本来は森林や湿地などの自然の植生のあった場所で、バイオマスエネルギーを得るために単一の植物を生産すれば、土地の養分が流失し、土壌流失が激化する可能性もある。このため、大規模なバイオマス利用に当たっては、バイオマス原料の生産プロセスに対して詳細なアセスメントを行うことが必要である。中国におけるバイオマスエネルギーにかかる産業の発展は、「食糧用穀物を侵食せず、食糧用耕作地を侵食しない」ことを原則としつつ、藁や樹皮といった農林業の廃棄物など、穀物以外の産物を加工原料に利用することを奨励し、また耕作に適しない塩分の多い土地や荒廃した山林など生産性の低い土地を利用して、バイオマス原料基地を造成することを推奨すべきである。

2.3 農業由来バイオマスエネルギー産業の社会牽引効果の分析

 農業由来バイオマスエネルギーの開発・利用及びその産業の発展は、良好な経済牽引効果を有するだけでなく、汚染物の排出減少や、生態環境の改善などの生態環境面の効果もあり、農村のエネルギー構造の最適化や農業生産の構造調整、農家の生活の質的向上など多くの面でも、優れたモデル牽引効果を有している。

 (1) 農村におけるエネルギー構造の最適化:農業由来のバイオマスエネルギーは、農村の生活用エネルギーの約60%を占めており、農村のエネルギー消費総量のうち、藁や薪・柴を直接燃やす方式が29%を占めている。バイオマスエネルギーの開発・利用により、廃棄された藁を処理することができ、露天での燃焼による空気、地表水、地下水などへの汚染が減少するほか、石炭の使用節約やこれに伴う環境汚染問題の減少にもつながる。このため、バイオマスの開発・利用は、エネルギーの消費構造を最適化し、生態環境条件を改善し、社会主義に基づく新たな農村の建設を進める上での重要な措置となる。

 (2) 循環農業の発展への寄与:農業由来のバイオマスエネルギーの開発は、農林業の生産に伴う廃棄物を転用するものであり、多様な循環型農業生産モデルの構築を可能とする。これは、環境汚染の低減に役立つだけでなく、化学肥料や農薬の使用低減、生産コスト縮減にも役立ち、さらには農業製品の品質や収量の増加にもつながり、循環型農業の良い形の発展を促し、ひいては農業の真の意味での持続可能な発展の実現に寄与するものである。

 (3) 農村人口の就業促進と農家の所得増:バイオマス資源の栽培・収穫・輸送・加工処理などの様々なプロセスで、農村人口のために多くの雇用を創出することができ、農家の増収に直接的または間接的に寄与する。専門家の試算によれば、中国の既存のバイオマスエネルギー資源を十分に活用できれば、生産額が3兆元伸び、約6000万人の雇用が創出されると予想される。

その3へつづく)

参考文献

[4] 陳建省、張春慶,田紀春ほか/『バイオマスエネルギー発展の趨勢及び策略』[J]山東農業科学、2008,(4):120-124.

[5] 中国新エネルギー網: http://www.newenergy.org.cn/

[6] 崔凱/『中国バイオマス産業地図』[M]北京:中国軽工業出版社、2007

[7] 王衍亮/『2014 農業資源環境保護と農村エネルギー発展報告』

[8] 劉尚余、趙黛青、駱志剛/『バイオマス直接燃焼発電によるCDMプロジェクトの発展にかかる重要問題の分析と研究』[J]太陽能学報、2008 29(3):379-382

※本稿は高文永,李景明「中国農業生物質能産業発展現状与効応評価研究」(『中国沼気』第33巻第1期、2015年,pp.46-52)を『中国沼気』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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