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中国の農業由来バイオマスエネルギー産業の発展の現状と効果の評価にかかる研究(その3)

2016年11月25日

高 文永:
農業部農業エコロジー・資源保護総合ステーション

博士。主に農村の再生可能エネルギー利用や農業における資源・環境保護に関する業務に従事する。

李 景明:
農業部農業エコロジー・資源保護総合ステーション、中国メタン発酵ガス学会

その2よりつづき)

3. 農業由来バイオマスエネルギー産業の現状問題の分析

 中国の農業由来バイオマスエネルギー産業は、近年になって急速に発展しており、一部の技術はかなり成熟し、一部産業はすでに中規模試験またはパイロット事業の段階に入っている。但し、全国の状況を全体的に見渡すと、中国の農業由来バイオマスエネルギー産業には、なお解決の待たれる問題がいくつか存在する。

 (1) 原料供給が依然としてボトルネックとなっている。農業由来バイオマスエネルギー産業を発展させるには、充分かつ安定的な原料供給がその必須の前提である。この産業を発展させる上での原料面の制約要因は、主として高すぎる原料コストにある。バイオマスエネルギー資源は分散しており、エネルギー密度も比較的低いため、集約化が難しく、企業の生産コストを引き下げるのは困難であり、一部の大企業は、コスト高のために政策的な補助金に頼ってようやく維持できている状況である。事実、国は最も早くから古くなった穀物を利用した燃料エタノール生産を行っている指定4社に、これまで間断なく補助金を給付してきた。このため、現在のレベルでは、バイオ燃料の原料コストを抑えるのは困難であり、政府による補助金への依存から脱することは不可能である。原料供給は、依然としてバイオマスエネルギー産業の発展を制約するボトルネックである[9]

 (2) 待たれる産業化技術レベルの向上:中国では、作物の藁や家畜・家禽の糞尿を利用したメタン発酵技術が早くから利用され、比較的成熟したバイオマスエネルギー利用技術となっている。しかし、家畜・家禽の糞尿や高濃度の有機廃水を利用した大型のメタン発酵処理技術は、進展が遅い。でんぷん質の原料を利用するエタノール製造プロセスはかなり成熟しているものの、コストが高くつくほか、安定的な資源確保が難しく、使える資源のすべてを燃料エタノールの産業化に利用することは難しい。木質などの繊維性廃棄物を燃料エタノール生産に利用する技術に今後の期待が集まるものの、分解力の高い菌種の選定や、セルロース分解酵素のコスト(酵素が全コストの約80%を占める)、前処理プロセスの改良などの問題が解決されていない。バイオマスの分解・液化によるバイオオイル生産技術は、高効率の急速分解プロセス及びその装置、バイオオイル精製プロセス及びその設備、関連環境技術の面での向上が待たれる。ラン藻類も優れたオイル製造資源と目されるが、その培養方法やオイル抽出技術の面ではエネルギー消費量の大きさや投資額の大きさなどが問題となっている。全体としてみれば、産業化の技術はまだ完全に成熟してはおらず、高品位のバイオマスエネルギーを製造するための技術、業界参入規制などについてより深く検討する必要がある。一部の成熟した技術については、大規模化による産業形成を図るためには、関連するプロセスや設備が必要になる。産業化のための生産技術のボトルネック問題は、なお解決が待たれる。

 (3) 策定が待たれる組織編制・規模拡大のプランニング:現在、中国は再生可能エネルギーや農村におけるバイオマスエネルギー開発について、それぞれ全国的な計画を打ち出しているが、各地での進展に当たっては、現地の実情に即した開発方法が明確になっておらず、一部地域ではバイオマスエネルギー産業の発展に関する全体構想や科学的な思考が欠けており、無計画な発展が見受けられる。今後の産業化に向けて、まずはバイオマスエネルギー資源の分布・発展潜在力などの基礎的状況を調査して把握した上で、適正なプランニングと組織編制の最適化を図ることが必須になる。

 (4) 待たれる産業としての全体効果の更なる向上:中国の農業由来バイオマスエネルギー産業の持続的かつ安定的な発展を実現させるためには、それ自体の全体効果がカギとなる。現在、中国のこの産業では、単一の製品に依存した生産方式が主体で、全体としての高い効果には結びついていない。このため、バイオマスエネルギーの産業計画を策定するにあたっては、製品の全体利用率や全体としての経済性に着目すべきである。

 (5) 更なる改善が待たれる産業政策:中国政府はバイオマスエネルギーなど再生可能エネルギーの発展を極めて重視しており、資金・税財政・価格などを利用した大きな優遇政策を打ち出しているものの、一部政策は運用性が低く、関連政策との連携を欠いており、一部の補助金政策に柔軟性が欠けているほか、一部政策では公正性を欠いていたり、関連政策との整合性がなく体系化されていないといった問題が散見される。

 (6) 待たれるステークホルダー体系の更なる改善:バイオマスエネルギー産業の発展には、十分かつ安定的な原料が必要であるとともに、原料から生産、販売に至る産業体系の各プロセスに存在する問題を適切に解決していく必要がある。産業システムが体系化されていなければ、原料コストが高騰する主な原因となる。バイオマスエネルギーの開発には、高い効率の商業エコシステムが必要となる。現在、中国のバイオマス資源は回収・輸送など多くのプロセスが十分に組織化されておらず、ロスが大きい。販売段階での問題も突出しており、このような問題が存在するため、全体としての生産体系が正常なサイクルとして機能するに至っていない。

4. 農業由来のバイオマスエネルギーの開発が今後の社会・経済発展に及ぼす影響の予測

 農業由来バイオマスエネルギー産業の発展は今後、一連の関連産業の発展を促すとみられ、また類似する産業間での競争が発生する可能性もある。中国の実情やバイオマスエネルギー産業全体の性質を踏まえると、同産業は主として農林業及びその生産プロセスで発生した廃棄物を利用するものであり、一部はエネルギー作物を利用している。このことから、大きな環境改善効果が見込まれ、一部産業に対するマイナス影響は比較的小さいとみられる。

 (1) 従来型エネルギー及びその関連産業への影響:農業由来のバイオマスエネルギー及びその他の再生可能エネルギー、クリーンエネルギーを利用した化石エネルギーの代替が進みつつあり、こうしたエネルギー代替が従来のエネルギー及びその関連産業に影響を及ぼすのは必至である。例えば、化石エネルギー使用量が減少し、化石エネルギーの現在の独占的な地位が失われ、国際原油価格へも影響が及ぶなどである。このほか、交通車両やその製造産業といった従来のエネルギーを使用する業界にも、大きな影響が及ぶだろう。

 (2) 農林業の生産及びその加工業への影響:農業由来バイオマスエネルギー産業を発展させるためには、その基盤となる大量の資源が必要となる。中国では、農林業の生産に伴い発生した廃棄物を原料として利用することに重点を置いている。なぜなら、エネルギー作物の栽培や収穫、生産性の低い土地の活用は、加工産業を含めた農林業の生産に一定の影響を与えるためである。もし、これら産業が「食糧となる穀物を人間から奪い、食糧用耕作地を侵食する」局面になれば、穀物価格の上昇を招き、生産性の低い土地ばかりでなく、土壌が肥沃な耕作好適地までもがエネルギー作物に占用されてしまう。これにより、一部地域では単一のエネルギー作物の作付面積が増大し、森林及び資源保護システムが侵され、一部地域では供給可能な水資源が不足するなどの恐れもある。

 (3) その他産業への影響:農業由来バイオマスエネルギー産業の発展は、従来のエネルギーや農林業の生産に対して大きな影響を及ぼす。また、マイナス影響も多く、他の多くの関連産業にも一連の影響が及ぶとみられる。例えば、物流システム、設備製造業、CDMプロジェクトの実施、金融市場、ひいては人々の生産活動・ライフスタイルなどすべてに影響があるだろう。全体的に見て、農業由来バイオマスエネルギー産業そのものが一つのシステムプロジェクトであり、その発展が関連産業にプラスまたはマイナスの影響を与えるのは必然的である。全体としては、プラスの影響が主体になると考えられ、マイナス影響に対しては相応の措置を取ることで回避できるだろう。

5. 結び

 (1) 中国の農業由来バイオマスエネルギー産業は、なおその発展の初期段階にあり、原料の転換や品質向上などの問題が存在する。今後の発展に向けて、産業のキャパシティや規模の拡大に着目しつつ、製品の品質向上を図るべきである。

 (2) 中国の農業由来バイオマスエネルギー産業は、生産能力・規模のいずれも好調に発展しており、一部産業は中国の国情に適したものである。一部産業は、循環経済モデルの発展や原料の転換などの面でなお調整が必要であり、また一部産業は国外と比較して規模・製品供給方法の面で遅れており、拡大や改良が待たれる。中国は関連の標準規格や規範を速やかに制定するとともに、業界参入規制の策定を進め、一部の外国企業による国内の希少資源の過度な利用を防ぐ必要がある。

 (3) 現在、中国におけるバイオマスエネルギー産業の組織編制はほぼ合理的であるものの、産業の規模の発展に比して使用できる原料の量が釣り合っておらず、各地域においては資源量に即して規模の拡大を決定すべきである。

 (4) 農業由来バイオマスエネルギー産業は、経済、環境、社会のあらゆる面で、大きな牽引効果を有している。今後の開発に当たっては、こうした効果を十分に発揮させることに重きを置くとともに、環境や生態系へのマイナス影響にも注意を払うべきである。

 (5) 現在、中国の農業由来バイオマスエネルギー産業の発展をめぐる主な問題として、原料がそのボトルネックとなっていることや、産業化のための技術レベルが不十分であること、産業の布陣や規模の発展についての科学合理的なプランニングが待たれること、産業としての全体効率が低いこと、産業政策の整備が待たれることなどが指摘される。

(おわり)

参考文献

[9] 胡啓春/『農村のバイオマスエネルギー利用の発展モデル分析』[J]バイオマス化学工程、2008,42(3):26-30.

※本稿は高文永,李景明「中国農業生物質能産業発展現状与効応評価研究」(『中国沼気』第33巻第1期、2015年,pp.46-52)を『中国沼気』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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