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フルデプス潜水船の流体力学的研究に関する最新の状況(その1)

2016年12月 2日

姜 哲:上海海洋大学深淵科学技術研究センター、上海深淵科学エンジニアリング技術研究センター副研究員

海洋プラットフォームの全体設計および流体力学的性能に関する研究、潜水船の流体力学的性能に関する研究に従事。

崔 維成:上海海洋大学深淵科学技術研究センター、上海深淵科学エンジニアリング技術研究センター教授

構造疲労および極限強度、潜水船の全体設計に関する研究に従事。

概要:

 科学技術の発展に伴い、人類は超深海帯と呼ばれる水深6500m以上の海溝に関心を持つようになった。上海海洋大学超深海科学技術研究センター(HAST)は、11000m級のランダー(Lander, 海底設置型超深海調査機器)3隻および11000m級の複合型無人深海潜水船1隻、11000m級の有人深海潜水船1隻によって構成されるフルデプス対応の超深海科学・移動型ラボラトリーの建設を発表した。潜 水船に関しては、下降水深の増加に伴い、流体力学的研究が重要性を増す。スピーディかつ安定的な下降・上昇運動は、フルデプス無人潜水船および有人潜水船の開発において解決の待たれる重要な問題の一つである。本 稿では、世界に現存するフルデプス有人潜水船3隻および超深海複合型無人潜水船1隻について論じたうえで、フルデプス潜水船の開発における流体力学的研究の最新動向を総括し、下降・上 昇運動および船体の流体力学的最適化領域の最新状況を重点的に検討する。また、HASTが現在開発を行っているフルデプス有人潜水船についても、流体力学的研究および設計構想の概要について説明する。

キーワード:フルデプス潜水船、流体力学、下降・上昇運動、船体の流体力学的最適化

はじめに

 潜水船は、一般的に有索式無人探査機(または遠隔操作無人探査機, ROV)、自律型無人探査機(AUV)および有人潜水船(HOV)の3種類に分類される。AUVは、海面上の風波の影響を受けずに、長 距離かつ広範囲に及ぶ捜索や探測活動を隠密裡に実施することができる。一方、ROVは遠隔操作が可能なことから、到達地点にあたかも人の目や手が届くような感覚で操作を行うことができ、リ アルタイムの情報伝達と長時間に及ぶ水中定点作業が可能である。また、HOVによって、人類は実際に現場に赴いて観察・作業を実施できるようになったため、そ の精緻な作業能力や作業範囲の面でROVを凌駕している。これら3種類の潜水船は、それぞれの特徴によって相互に補完性があるため、状況によっては共同作業が必要とされる。このうち、有 人潜水船が技術的に最も難しく、最も複雑である。潜水船を利用した海洋探査にはすでに50年の歴史があり、地質、沈殿物、生物、地球科学、地球物理学等の面で多くの重要な発見がなされている。2012年6月、中国の独自開発による有人潜水船「ジャオロン」号(蛟龍、Jiaolong)がマリアナ海溝で水深7062mの潜水に成功したことは、中国がアメリカ、フランス、ロシア、日本に続き、6 000m級の有人潜水技術を持つ世界第5の国となったことの表れである。また、これによって、第2世代の作業型有人潜水船のなかで、ジャオロン号の潜水深度が最大となった[1-2]

 現在の潜水船の開発は、以下の2つの傾向がある[3]。第一に、多機能・複合型に向けた開発であり、最も影響力が大きいのはアメリカのフルデプス複合型無人潜水船「ネーレウス」[4]である。ネ ーレウスはAUVとROVの2種類の潜水船の機能を合わせ持つ。また第二に、さらなる水深、つまりフルデプスに向けた開発である。HOVに関しては、1960年1月に、スイスの科学者ジャック・ピ カールとアメリカ海軍中尉ドン・ウォルシュが乗った深海潜水船「トリエステ」が、マリアナ海溝最深部の潜水に初めて成功した[5]。つまり、彼 らは同海溝最深域のチャレンジャー海淵に到達した世界初の人類となったが、合計9時間の潜水時間中で2人が最深域に滞在したのは20minにとどまった。2012年3月26日、アメリカ人ジェームズ・キ ャメロンの操縦による潜水船「ディープシーチャレンジャー」(Deepsea Challenger)がマリアナ海溝に再び挑戦し、水深10908mに到達した。しかし、こ のプロジェクトでは製造技術とコスト削減の観点から球殻のサイズを可能な限り縮小し、直径わずか1.09mの球殻内に操縦者1人を座らせる格好となった。1回限りの深海探索であれば、こ のように狭い空間でも操縦者は耐えうるのかもしれないが、連続潜水は不可能であろう[6]。その後、アメリカHawkes Ocean Technologies(H.O.T)社がフルデプス有人潜水船Deep Flight Challengerの試作機開発と試験に成功した[7]。一方、アメリカDeep Ocean Exploration and Research(DOER)社 のフルデプス有人潜水船DeepsearchもGoogleの資金援助により、2010~2012年に設計プランを完了している[8]。2014年には、日本の海洋研究開発機構(JAMSTEC)が有人潜水船「 しんかい12000」について、2023年までの海洋試験を目指すことを発表した[9]。また、中国では、2013年に上海海洋大学深淵科学・技術研究センター(HAST)が11000m級のランダー3隻、1 1000m級の複合型無人深海潜水船1隻、11000m級の有人深海潜水船1隻によって構成されるフルデプス対応の超深海科学・移動型ラボラトリーの開発を発表した[10]。ROVについては、日本は1995年にフルデプス無人潜水船「かいこう」の開発に成功したが、2003年にビークル(子機)を亡失している。他方、従来技術によるAUVに関しては、現行最大深度は6000mである[11]。2 009年5月、アメリカ・ウッズホール海洋生物学研究所(WHOI)の開発した複合型無人潜水船(hybrid remotely operated vehicle,HROV)「ネーレウス」(Nereus)が マリアナ海溝の潜水に成功し、水深10902mに到達した[4]。しかし、このネーレウスも、2014年5月にニュージーランド北東のケルマデック海溝の水深9900mにて大破している[12]。中国では、上 海交通大学水下工程研究所の葛彤・研究グループが国家工信部の支援を受けて、フルデプス複合型無人潜水船の重要技術に関する研究を過去に実施していた[13]。また、中 国船舶科学研究センターの徐鵬飛も崔維成教授の指導により、11000m級の複合型無人潜水船の重要技術について2008年から研究を行い、300m級試作機2タイプの試験を完了している[14]

 流体力学的性能も潜水船の重要な要素の一つである。潜水船が劣悪な海洋環境でも正常に作動して運行できるかどうかは流体力学的性能によって決まるうえに、潜 水船に積み込む燃料の量や運行コストにもかなりのレベルで影響を及ぼす。文献[3]においては、深海域におけるAUV、ROV、H OVならびに深海ステーションの設計に影響を及ぼす流体力学的問題がとりまとめられている。ジャオロン号を含む第2世代潜水船の設計における主要寸法基準と外形要素の選択は、主 に主船体ならびに耐圧殻の乗員と搭載設備に十分な空間を提供するためであるため、ここで流体力学の果たす役割は限定的と言うべきだろう。とはいえ、作業深度が深まるにつれ、流体力学は大きな影響を及ぼす。ジ ャオロン号の技術では、フルデプス(すなわち11000m)までの下降・上昇に8時間を要するため[15]、これでは海底作業時間が確保できない。次世代型フルデプス潜水船では、6 時間以上の海底観測時間を確保するために、下降・上昇時間を4時間以内に制御することが要求される。すなわち、船体の流体力学的最適化に向けた設計や、革新的な急速下降・上昇方法の構築による下降・上 昇速度の大幅な向上が求められている。

 本稿では、世界に現存するフルデプス有人潜水船3隻およびフルデプス複合型無人潜水船1隻の特徴ならびにフルデプス潜水船の流体力学研究の最新状況について論評する。また、上海海洋大学深淵科学技術研究センターで開発中の11000m級有人潜水船「彩虹魚号」の流体力学研究に関する基本構想を提示する。

1. 中国および海外の次世代型フルデプス潜水船

1.1 フルデプス有人潜水船

 現在、現役で活動しているフルデプス有人潜水船(最大潜水深度2000m超)は、アメリカのAlvin[16]、ロシアのMir-1、Mir-2[17-18]、Rus、Consul[19]、中 国のジャオロン号、日本のしんかい6500[20-21]、そしてフランスのNautile[22]の合計8隻である。このうち、アメリカのAlvinは、4700回の潜水活動を行った後に2011年に一度は引退したが、2013年に新型Alvinが投入された。新型では、潜水深度が6500メートルで設計され、球殻内部容積の拡大や、観察窓の視野改善、上昇・下 降速度の向上等が図られた。

 1999年、WHOIは国際深海科学界による第2世代有人潜水船に関する提案に基づき、次世代型有人潜水船の発展構想を発表した[23]。これには、①作業水深の向上、②下降・上昇速度の向上、③ 水中可視性の向上、④人にやさしい作業環境、⑤科学研究用設備機器の可変負荷の増大、⑥電池能力の向上、⑦全方位型自動定位能力、⑧すべての観察者によるビデオカメラの操作、水平・垂直方向の撮影(pan and tilt video)が可能となることがある。これを土台として、2009年にアメリカの潜水船設計者Graham Hawkesは、将来のフルデプス有人潜水船について、以 下のような発展構想を発表した。すなわち、科学的観察および工業実用に貢献するために、フルデプス潜水船では乗務員2名を実現し、ホバリング・作業能力を備え、質量は4.5t以内とし、フ ルデプス深度への到達を実現し、構造安全係数は1.5で、開発・運行コストを現在の1/10まで引き下げることである[24]

 つまり、フルデプスでの作業能力を備えることが、次世代型有人潜水船の開発目標である。現在、世界で5隻のフルデプス有人潜水船が開発段階にあり、このうち1隻、す なわちキャメロン研究グループによる潜水船「ディープシーチャレンジャー」(Deepsea Challenger)がすでに海上試験に成功し、アメリカDOER社のDeepsearchとHOT社のDeep Flight Challengerの2隻がプランニングと試作機開発を完了させている(図1参照)。また、日 本海洋研究所のしんかい12000と上海海洋大学深淵科学技術研究センターの11000m級有人深海潜水船「彩虹魚号」は開発段階にある。以下、Deepsea Challenge、D eepsearchおよびDeep Flight Challengerを概観する。

(1) Deepsea Challenge

 Deepsea Challenge(DSC)は映画監督キャメロンの出資により、民間研究グループが7年の開発期間をかけて製造したフルデプス有人潜水船である。2 012年3月にマリアナ海溝の潜水に成功し、最大深度10908mに到達した。さらに、科学観察や3Dビデオ撮影等の作業も行っている。

 DSCの質量は11.8tで、従来技術による潜水船が水平方向の構造配置を採用しているのと異なり、Deepsea Challengeでは垂直方向のため長さ2.3m、幅1.7m、高 さ8.1mとなっているため(注:長さ、幅、高さのいずれも、DSCの急降下姿勢におけるサイズである)、下降・上昇速度の向上を実現している[25]。3 つの部分から構成される船体の最大部分はフレーム構造で全容積の70%を占めており、深海圧力に耐えうる新型複合発泡材料により構成される。この発泡材料の基本構成ではガラス球中にエポキシ樹脂を溶け込ませ、予 圧することによって、浮力の提供を実現すると同時に、支持フレームとしての役割も持たせている。フレーム構造の下方は乗員キャビンであり、乗員キャビン(球殻)の直径は109cm、材厚は6.4cm、居 住空間は0.35㎥で操縦者1名しか搭乗できないが、球殻はフルデプス水深での海水圧力(110Mpa)に耐えうる。乗員キャビン底部にはビデオカメラ、サンプリング装置、ロボットアーム等が設置されている。DSCにはビデオカメラが合計6台設置されており、このうち4台は外部環境を、2台は乗員キャビン内部を撮影し、最も大きい1台はIMAX映像の撮影が可能である。

 DSCのバラストおよび縦傾斜調整システムはTriesteと異なり、余分なバラストに頼らずとも海底に到達できる。水深に伴い潜水船の浮力は増加し続け、予定位置に達すると中性浮力状態となる。海 底でのサンプリング後は、中性浮力状態を維持するために、DSCの縦傾斜調節システムでは電磁石を利用したバラスト放出が可能である。DSCの浮上については、安全性の保障のために合計5つのプランを設計し、3 つの独立した電気回路システムを準備している。このうち、主回路はバラスト放出の制御用で、操縦者による操作が可能なうえに水上支援船から水中信号を送ることもでき、電 源アウト時には電磁コイルによる海路制御も可能である。2番目の電気回路システムでは、深海潜水船Alvinと同様にフランジボルト(Frangibolt)を利用し、緊 急時にはロボットアームを放棄することができる。3番目の電気回路システムはGTR(galvanic time release)方式を採用し、電対は一定の速度で溶解するが、溶 解速度は陰極保護材料と陽極保護材料の質量および海水塩分濃度、海水温度の影響を受ける。

 DSCにはスラスター12基が搭載され、海底運動の制御に用いられている。このうち、6基が垂直運動に用いられて速度は3.5knに達し、残りの6基が水平運動に用いられて速度は3knに達する。 

図1

図1 フルデプス有人潜水船3隻のイメージ[6-8]

(2) Deepsearch

 Deepsearchは、アメリカDeep Ocean Exploration and Research(DOER)社が開発中のフルデプス有人潜水船であり、科 学者向けに新たな海洋探索プラットフォームを提供することを目的としている。設計能力は11000m級だが、5000m級の作業が多く計画されている。設計目標は、①上昇・下降時間を低減し、海 底作業時間をより多く提供すること、②乗員により良い観測視野を提供すること、③潜水船レイアウトの最適化を目指し、標準コンテナに搭載可能とすること、④質量を25t以内に制御することである。

 Deepsearchの質量は20tで、全長11.3m、作業時の幅は3.44m(輸送時の幅は2.33m)、高さ2.31mであり、巡航速度は2kn、最大速度は6knである[26-27]。有 効荷重は680kg(乗員を含む)で、操縦者1名、科学者2名が搭乗可能である。球殻直径は172.7cm、厚さは10.16cmであり、アクリル樹脂によって製造されている。乗員キャビン(球殻)出 入口の直径は40.64cmである。Deepsearchでは、以下3つの面で技術革新に成功している。

 第一に、下降・上昇メカニズムの革新である。次の節で詳述する。

 第二に、球殻への新素材使用である。Deepsearchでは高強度ガラスを採用した球殻製造を計画している[26]。これは、従来のチタン合金に比べてはるかに軽量で、完全に透明なため、搭 乗者により良い視野を提供できる。これも、球殻の優劣を評価する最も重要な標準の一つである。この材料は、11000m級の海底における高圧・低温も耐容可能だが、エ ンジニアリング向け実用には解決を要する重要技術がなお多く存在し、これには、材料自体の失効分析、球殻の加工、球殻のフレーム上での固定、球殻出入口と貫通孔の処理、外 部塗料の選択および実験手順の構築等がある。

 第三に、浮力材料である。従来の合成発泡材料には密度が大きく、吸水率が大きいという欠点があり、潜水船の重量が重くなるため、大 規模なバラスト水システムを搭載して浮力材における浮力損失のバランスをとる必要がある。現在、セラミックス製の球殻が注目を集め始めており[28-29]、そ のフルデプスにおける密度はわずか340kg/㎥である。セラミックス浮力材料は、図2のとおり、数多くのセラミックス製耐圧筒によって構成される。セラミックス材料の応用にあたっては、次 の問題を考慮する必要がある。すなわち、①セラミックス筒の大量使用における経済性。②1つのセラミックス筒が破壊された時の衝撃によって他のセラミックス筒の連続破壊が生じる可能性。共 鳴破壊の安全性については検証を要する。③セラミックス筒の疲労影響。セラミックス筒の疲労・損傷の検査方法。④セラミックス筒の性能は人工試験による完全かつ充分な検証が可能かどうか。⑤ セラミックス筒のフレームの作製方法、である。

図2

図2 セラミックス製浮力材料のイメージ

(3) Deep Flight Challenger

 Deep Flight Challenger(DFC)は、H.O.T社の創始者で著名な潜水船設計士Graham Hawkesによって設計され、当初の目的は探検家Steve Fossettのマリアナ海溝潜水を支援することであった。H.O.T社は2005年にDFCの設計と建造を開始したが、投資者のSteve Fossett自身が2007年9月に飛行機事故で亡くなったことから、計画は一時中断していた。2010年に、イギリスのヴァージン・グループのリチャード・ブランソン(Richard Branson)会 長と新たな探検家Chris Welshが加わったことにより、プロジェクトが再開した。2011年にはマリアナ海溝への挑戦を計画していたが、大波の影響で構造が破壊され、こ のことがH.O.T社を乗員キャビン設計の最適化に向かわせることとなった。計画は今も中断している。

 DFCで初めて、有人潜水船に水中翼が応用されることとなった。これは、流体力学の適切な運用と動力による推進補助によって、潜水船の下降・上昇運動を実現するものである。図3のように、乗員キャビンの特殊レイアウトおよび縦方向における合理的な配置によって、DFCの船体部分は大きなアスペクト比を持つようになり、これに伴って航行性能も向上した。この潜水船の下降速度は107m/minで、巡 航速度は2.2knであり、潜水船の最大作業範囲は24kmで、広範囲に及ぶ水中観察や測定作業に特に適している。DFCは、すべての機能試験と110~138Mpaにおける圧力試験をすでに完了している[7]

図3

図3 Deep Flight Challenger の外観および構造[7]

 DFCの乗員キャビンでは、円柱型耐圧構造にガラス製の先端部分をとりつけることによって、船室の空間利用率と乗員の視野を向上させた。これは、船体の流体力学的最適化にも効果がある。こ のように特殊な乗員キャビン構造を採用したために、操縦者は終始うつぶせ状態を維持することとなったため、大傾斜角状態における下降・上昇による不快を回避できる[30]。しかし、長 時間のうつぶせ姿勢自体が不快であるため、潜水船の水中作業時間が制約される。

 DFCのような小型有人潜水船では、乗員キャビンが潜水船全体の重量の約半分を占める。乗員キャビンの軽量化のために、DFCは高強度のカーボンファイバー・エ ポキシ樹脂複合材料を採用して円柱形の耐圧殻体を製造した。図4のとおり[24]。殻体の一端はチタン合金製の半球形の先端と、別の一端はガラス球の先端とつながっており、乗員に良好な上部視野を提供している。ま た、ガラス製の球の先端は開閉可能なため、乗員キャビンの出入口とすることができる。ガラス製の球と複合材料製の耐圧殻との間はチタン合金環で連結されている。

図4

図4 複合材料製の耐圧殻[24]

1.2 フルデプス複合型無人潜水船

 アメリカ・ウッズホール海洋生物学研究所(WHOI)の開発した「ネーレウス」(Nereus)は、世界初の複合型無人潜水船である。ネーレウスの乾燥重量は2.8t、有効荷重は45kg、長 さ4.25m、幅2.3mで、AUVモデル下での最大航行速度は2m/sである。

 ネーレウスはROVとAUVの特徴を合わせ持ち、無索状態においてAUVと同様に広範囲な海底探索が可能である。近距離観察や精密作業が必要な際は、船 上で軽質の光ファイバーケーブルを持つROVモデルに転換可能である(図5および図6のとおり)[31]。光ファイバーケーブルには極細、軽質およびリアルタイム伝達等の長所があるため、ネ ーレウスのエンジン性能への影響を効果的に低減できる。ミッション終了後は、ネーレウスは光ファイバーケーブルを自動的に切断し、バラストを放出して、自力で水面に浮上して回収することができる[32]。ネ ーレウスの船体は2つの扁平構造によって構成され、船上電子設備や電池、内部センサーはすべて耐圧殻内に設置され、セラミックスとチタン合金からなる新型の軽質材料を使用している[33]。耐 圧殻の外径は355cmである(図7のとおり)[12]。ネーレウスに必要な追加浮力は、中空の軽質セラミックス素材でできたフロートによって提供される[34-35]

図5

図5 AUVモード時のネーレウス号(2007年、ネーレウス号はハワイ海域で海洋試験を実施)[31]

図6

図6 ROVモード時のネーレウス号(2009年5月~6月、ネーレウス号はロボットアーム、サンプルバスケット等の設備を搭載、マリアナ海溝で海洋試験を実施)[31]

図7

図7 ネーレウス号の耐圧キャビン[12]

その2へつづく)

参考文献

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※本稿は姜哲、崔維成「全海深潜水器水動力学研究最新進展」(『中国造船』第56巻第4期,2015年12月,pp.188-199)を『中国造船』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記 事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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