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大型地下式原子力発電所の主要技術研究(その2)

2017年 1月27日

鈕新強:長江勘測規劃設計研究院

中国工程院(工学アカデミー)院士、院長、博士。現在は主に、大型水利水力発電プロジェクトと地下式原子力発電所設計・研究事業に従事する。

羅琦:中国核動力研究設計院

趙鑫:長江勘測規劃設計研究院

張文其:中国核動力研究設計院

劉海波:長江勘測規劃設計研究院

李翔:中国核動力研究設計院

その1よりつづき)

2.4 主要施工技術

 CUP600原子炉建屋空洞ドームの採掘のスパンは約48m、高さは約13.4mである。スパンの大きさを考えると、ドーム採掘にあたっては、中部の核心となる岩柱(直径約10m)を残し、扇形分布による対称的な採掘とサポートを行い、ドリル穴の傾斜と深さを通じてドームの輪廓の成型を制御する[15]。格納容器ドームは、地下空洞上部にフレームを作り、リフティングシャフトから部品を入れ、現場で溶接する。その施工難度と質制御難度はいずれも、国内の大型水力発電所のスパイラルケーシングの設置難度よりも高く、現場の溶接プランは技術的に実行可能で、溶接の質を確保できる[16]。地下空洞施工や主要設備の設置などの技術に対するエンジニアリングの類比と立体シミュレーション分析による論証は、国内の地下式プロジェクトの施工技術が地下式原子力発電所の施工要求を完全に満たすことができることを示している。

2.5 消防・人工環境

 大亜湾原子力発電所と田湾子力発電所の一次系統の消防と通風系統の研究に基づき、CISPDRと清華大学は共同で、地下式原子力発電所の消防と人工環境の技術研究と設計を展開した[4]

(1)消防:設計原則と消火措置は地上式原子力発電所の基本的に一致する。地下一次系統には交通空洞回廊が多く、退避・救援路線が長く、地下空洞の閉鎖性が良好であるために消火の隔絶と火災蔓延拡大の抑止がしやすいといった特質に基づき、地下式原子力発電所に適合した火災自動警報・自動消火系統を設計し、スマート化された安全退避系統を増設することにより、地下式原子力発電所の消防安全を確保できる。

(2)人工環境:設計の思考の道筋や系統案、系統規模は、地上式原子力発電所と基本的に一致するが、地下一次系統の通風と空調は、通風の抵抗力が大きい、差圧通風を形成しやすい、直流通風の条件が劣っているなどの問題を抱えており、地下式原子力発電所に適合したスマート化人工環境系統を特別に設計し、地上に相当する人工環境を地下一次系統に備えさせた。

2.6 水の安全

 水の安全には主に、洪水防止の安全、水供給の安全、水環境の安全の3つが含まれる[2]

(1)洪水防止の安全:地上式原子力発電所と同様、地下式原子力発電所の立地標高は「乾立地」の原則を守り、地上建築物の配置はいずれも設計基凖の洪水位の高度よりも上とする。発生率の極めて低い設計基凖を上回る洪水位の洪水に遭遇しても、地下式原子力発電所の一次系統は地下にあるため、対外通路を封鎖すれば、一次系統の洪水防止の安全を保障できる。

(2)水供給の安全:極端な乾燥気候の条件下では、内陸部の原子力発電所には水供給不足のリスクがあり得る。地下式原子力発電所は、自らの強みを利用し、水源の多様性を増やすなどの面から水供給の安全保障の強化に着手することが考慮される。高位置プールの設置によって、発電所全体が停電したという状況においては、パッシブ特性を利用して、原子力発電所の安全系統に冷却水源を提供する。高位置プールが破壊され、原子力発電所に水を供給できないという状況に対しては、その他の水源と原子力発電所の間に予備の採水系統を設置して原子力発電所に水を供給する。

(3)水環境の安全:通常の稼動と設計基凖における事故状況においては、地下式原子力発電所の水環境の安全は、地上式原子力発電所と基本的に一致する。地下式原子力発電所が重大事故において産出する可能性のある放射性廃水の地下水汚染を防止するため、専門の防護系統[17-18]を設計した。自主開発した有限要素SSC-3Dモジュールを利用して構築した等価連続多孔亀裂体モデルで計算した結果、地下式原子力発電所の放射性廃水の遷移防護措置の効果は明らかで、放射性廃水の外への排出を有効に阻止できることがわかった。

2.7 重大事故対策分析

 地下式原子力発電所は、多くの種類の特別な安全措置を取っている。原子炉キャビティへの注水による圧力容器の機能停止の防止、重大事故時の迅速な減圧による高圧炉心溶融の防止、パッシブ・水素複合による水素の燃焼または爆発の防止、パッシブな格納容器の出熱、重大事故下での格納容器と原子炉建屋空洞の減圧系統、放射性廃水の地下遷移防護などが挙げられる。分析を通じて、地下式原子力発電所は重大事故の有効な緩和という目標を達成できることが論証された[2]

2.8 全ライフサイクルの安全評価とリスク分析

 設計・建造・運用・廃炉などの段階を含む地下式原子力発電所の全ライフサイクルの全面的なリスク分析と安全評価においては、REFLETプログラムを用いてCUP600の特別安全施設の設計案の初期的な研究を行い、冷却剤喪失事故(LOCA)後の長期冷却段階における炉心ホウ酸結晶と炉心再臨界への対応措置を提起した。発電所全体の停電事故や輔助給水系統・空圧ポンプの一連の機能停止事故においては、RELAP5/MOD3プログラムを用いて計算したところ、事故後72時間以内に、二次側パッシブ余熱排出系統は炉心の余熱を排出することができるとの結果が出た。MAAP4.04プログラムとCISERプログラムを用いて地下式原子力発電所の重大事故後の水素の振る舞いや炉心熔融物の内部滞留などを分析したところ、事故過程における格納容器内の平均濃度を水素複合器が有効に引き下げることができ、原子炉キャビティ注水系統を利用して圧力容器を水没させることで圧力容器の下部ヘッドの完全性の確保が可能であることがわかった。

 確率論的安全評価(PSA)の視点から、地上式原子力発電所と地下式原子力発電所の環境への主要放射性物質放出経路に対し、定性的な比較と初期的な定量計算分析を行った。これによると地下式原子力発電所は、既存の地上式原子力発電所における4カ所の障壁に加え、もう1カ所の実体障壁を加えることで、重大事故の防止と緩和の能力が大きく高まり、炉心損傷頻度(CDF)は10-7(炉・年)-1級、放射性物質の大規模放出頻(LRF)は10-8(炉・年)-1級(格納容器内から空洞内まで)に達した。漏れた放射性ガスに対して格納容器空洞が密封・一次保存の機能を果たすことを考えれば、外部環境への放出の確率は非常に低くなり、国家の最新の安全標凖の要求を満たすことができる。同時に、地下式原子力発電所は重大事故時の放射性物質の収容で明らかな強みを持ち、放射性物質の貯留・封鎖・処理・隔離を実現し、原子力発電所の安全を十分に有効に確保できることが論証された[11]

2.9 緊急対応計画区

 米国原子力規制委員会(NRC)の「RG1.183」において規定されている600MW原子力発電所の放出額を採用し、緊急対応計画関連の規範を参考とし、二層の格納容器モデルを構築し(内層は格納容器、外層は原子炉建屋空洞)、TACTプログラムを用いて環境放出のソースアイテムを計算した。結果:GB18871—2002「電離放射線防護・放射線源安全基本標凖」の提出した一般介入水準によると、実効線量は2日以内に10mSvを超えてはならず、7日以内に50mSv、30日以内に30mSvを超えてはならなず、甲状腺等価線量は100mSvを超えてはならないとしている。もしもこれを緊急対応行動の線量限度とするならば、「内層格納容器が早期に有効性を失い、内層格納容器の漏れ率が1%/dで、外層格納容器の漏れ率が0.1%/dである」という状況で場外への緊急対応(原子炉から450mまたは500m)が必要となるほかは、場外緊急対応の必要な状況はなかった。

 地下式原子力発電所の特徴ある設計は、格納容器の破損またはバイパスによって大規模な放射性物質の放出が起きる確率を極めて低い水準[約10-9(炉・年)-1]に抑え、内層格納容器の漏れ率を1%/d以下、外層格納容器の漏れ率を0.1%/d以下とすることを可能とする。このため地下式原子力発電所は、場外緊急対応計画を簡略化し、場外緊急応答区なしの技術の可能性を探ることが検討される[2]

2.10 廃炉

 即時解体は投資が大きく、被曝線量も高いが、封鎖もしくは埋蔵した後の核の安全リスクが存在しない。長い期間をもうけた解体は、人員の被曝線量を大きく減少し、廃炉解体後は核の安全リスクを完全に取り除くことができるが、原子力発電所の閉鎖期間における安全要求が比較的高い。密封埋蔵路線は明らかな優位性を持っているが、立地選定と埋蔵後の安全分析に対する要求が高い。地下式原子力発電所の設計時には、使用済み核燃料の後処理や放射性廃棄物の貯留、原子炉廃炉後のその場での密封などを総合的に考慮し、地下建設による投資コストの増加を相殺すると同時に、プロジェクト全体の経済収益を高めることができる。

 浅地層処分は一般的に地下50m以内とされる。地下式原子力発電所の建設予定深度は100~200mで、低中レベル放射性廃棄物の地層処分のための中等深度に属し、その安全性はより高いものと言える。地下式原子力発電所の密封前には、使用済み核燃料を取り出し、洗浄や処理を通じて系統配管の放射性物質の遊離性汚染を除去し、原子力発電所の一次ループ系統内の各項目が「GB9132」における浅地層処分廃棄物の条件に適合するようにする。

 このためふさわしい立地条件においては、障壁の設置や浸透防止施設の増設を通じて、地下式原子力発電所を中低レベル放射性廃棄物処分場とすることが考えられる。地下式原子力発電所においては密封埋蔵路線を取り、立地選定・設計・建設にあたっては、最終処分場としての必要性を十分考慮し、必要な場合は、物理的障壁によって放射性核種の遷移速度を遅らせ、環境と公衆の安全を確保することを推薦する[2]

2.11 経済性分析

 炉型が同じで規模もほぼ等しい海南昌江原子力発電所と比較し、具体的な立地を検討し、2基の60万kWユニットを想定して概念設計を行い、初期的な分析を経て次の結果を得た[4]

(1)地下式原子力発電所は主に、地下空洞と地上プラットフォームによる採掘サポート、核種の地下遷移の防護、循環水の取水費用、一次系統を地下に置いた後の設備の設置や配管の延長などの費用が加わり、静的投資の増加幅は12%以内で、受容可能なものと考えられる。

(2)原子力発電のベンチマークのオングリッド電力価格である0.43元と比べると、オングリッド電力価格は約10%高まる。国家発展改革委員会は、原子力発電のオングリッド電力価格のベンチマークを発表する際、原子力発電技術の導入や自主革新、重大設備の国産化の任務を負った最初のまたは初期の原子力発電ユニットまたはモデルプロジェクトについては、オングリッド価格は全国の原子力発電ベンチマーク価格から適度に引き上げることができると強調している。地下式原子力発電は、現在の原子力発電研究の新たな方向の一つであり、内陸部の原子力発電の安全な発展に重要な意義を持ち、その建造コストも地上式原子力発電所をわずかに上回るにすぎず、国家の相応の優遇政策を求めるべきものと言える。

(3)場外緊急対応や廃炉、核の安保などを総合的に考慮し、地下式原子力発電所の経済効果は地上式原子力発電所より優れていると考えられる[19]

3 結論

 第3世代先進原子力発電技術と地下建設の実践経験を十分に参考にした上で、大量のシミュレーション計算と動的シミュレーション分析を通じて、大型地下式原子力発電所の設計と施工における主要な技術問題はいずれも適切に解决できることがわかった。地下式原子力発電所は安全性がより高く、建造においても技術的に実行可能であり、経済的にも合理的で、第4世代原子力発電技術の一部の特徴を備えており、中国の原子力発電の安全な発展の新たな道と言える。このため大型地下式原子力発電を国家事業のレベルへと早期に引き上げ、研究を継続し深化させ、地下式原子力発電所のモデルプロジェクトの実験研究と事前準備を適時に展開し、モデルプロジェクトの建設を推進し、国家の未来のエネルギー発展のため重大科学技術サポートの提供を決定することを希望する。

(おわり)

参考文献

[2] 長江勘測規劃設計研究有限責任公司,中国核動力研究設計院. 反応堆及帯放射性的輔助厰房置于地下的大型核電站:中国,201420318070.7[P]. 2014-11-26.

[4] 地下核電站合理布局研究課題組. 地下核電站合理布局研究[R]. 中国工程院重点咨詢研究項目,2014.

[11] 長江勘測規劃設計研究有限責任公司,中国核動力研究設計院. 核島洞室群 L 形布置地下核電站:中国,201420318068.X [P]. 2014-11-26.

[15] 長江勘測規劃設計研究有限責任公司. 地下核反応堆洞室超大跨度穹頂預留中心岩柱施工布置:中国,201420316785.9 [P]. 2014-11-26.

[16] 長江勘測規劃設計研究有限責任公司. 一種地下核電站反応堆洞室安全殻穹頂安装結構:中国,201420316829.8 [P]. 2014-11-26.

[17] 長江勘測規劃設計研究有限責任公司. 地下核電站放射性廃水地下遷移防護系統:中国,201420318038.9 [P]. 2014-11-26.

[18] 地下核電站対周辺生態環境影響研究課題組. 地下核電站対周辺生態環境影響研究[R]. 中国工程院重点咨詢研究項目,2014.

[19] 蘭洋,雷鳴,主麗萍,訳. 大型地下核能聯合体的成本優勢[J]. 国外核動力,2012, 33(5): 36-43.

※本稿は鈕新強,羅琦,趙鑫,張文其,劉海波,李翔「大型地下核電站関鍵技術研究」(『核動力工程』第36巻第5期,2015年10月、pp.6-11)を『核動力工程』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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