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原子力発電所放射性廃液中の微量核種の逆浸透技術による除去の研究の進展(その1)

2017年 1月25日

魏新渝:環境保護部核・放射線安全センター

博士、高級工程師(シニアエンジニア)。主要研究テーマは、「三廃」(気体・液体・固体廃棄物)処理技術

馬鴻賓:中国核電工程有限公司

熊小偉,王一川,譚承軍,方圓:環境保護部核・放射線安全センター

王志:天津大学化工学院

概要:

 本稿は、中国の原子力発電所運用における放射性廃液及びその処理システムの特質を紹介するものである。また国内外の核施設の放射性廃液処理プロセスにおける逆浸透の応用について総論し、逆浸透膜内での溶質の輸送メカニズムを考察し、現在商用に供されている逆浸透の設計・評価モデルの水中微量放射性核種除去への応用のフィージビリティを分析を試みた。さらに中国の原子力発電所における放射性廃液中の微量核種のRO膜による除去はさらなる改善が必要であり、これには、▽中国の原子力発電所が排出する主要放射性核種(110mAgや54Mn、その化合物など)のRO膜による除去の研究や影響因素の分析の発展、▽水中微量放射性核種のRO膜による除去のメカニズムの研究の展開、▽RO膜除去効率と水中微量放射性核種濃度、膜面積と結びつけた評価モデルの構築―などが含まれる点を指摘する。

キーワード:微量核種;逆浸透;放射性廃液;原子力発電所;除去メカニズム;評価モデル

 環境悪化に対応し、エネルギー供給の安全を保障するため、中国は、安全確保を土台として、原子力発電を効率的に発展させてきた。中国大陸部では2015年9月までに、すでに竣工し発電している原子力発電ユニットは27基、建設中の原子力発電所のユニット数は25基に達している。中国の原子力発電の発展に伴い、放射性廃棄物の数量も急劇に増加している。原子力発電所において産出される放射性廃液の減量化を実現し、環境に対する危害をできるだけ減少せることは、放射性廃棄物管理における重要な問題である[1-3]

 逆浸透技術は、除染効率が高く、二次廃棄物の産出量が比較的少ないことから、中国の第3世代原子力発電ユニットの放射性廃液処理システムに応用されることとなっている。だが逆浸透技術による水中微量核種除去の法則とメカニズムの研究はまだ発表されておらず、除去プロセスを記述した評価モデルはまだない。本稿では、この問題をめぐって、中国の原子力発電所運用における放射性廃液及びその処理システムの特質の調査・研究を行った。中国内外の核施設の放射性廃液処理プロセスにおける逆浸透の応用について総論し、逆浸透膜内での溶質の輸送メカニズムを考察し、現在商用されている逆浸透の設計・評価モデルの水中微量放射性核種除去への応用のフィージビリティを分析した。原子力発電所の放射性廃液微量核種の逆浸透技術による除去の課題を論述し、逆浸透技術による水中微量核種の除去メカニズムの研究と評価モデルの開発の土台を固めた。

1 原子力発電所の放射性廃液及び処理システムの特質

 通常の運用状況においては、原子力発電所の原子炉における核分裂反応によって産出される核分裂生成物のほとんどは燃料被覆管内に閉じ込められ、極微量が燃料被覆管を通って一次ループの冷却剤に入る。同時に核分裂によって産出された中性子は、一次ループの冷却剤とホウ酸、構造材料を活性化し、活性化物質を産出する。GB/T13976-2008によると、熱出力3400MWの加圧水型原子炉の稼動状態下の一次ループ冷却剤において、主に液体の形式で排出される核種(不活性気体と14Cを除く)の比放射能の和は約136GBq/tで、中レベルの放射性レベルに属する[4]。一方、核種の質量分率の和はわずか3.65×10-9で、微量レベルに位置している。

 一次ループの冷却剤システムからの正常な排出と配管・部品の微小浸透により、放射性物質が、一次系統と二次系統に入り込むことは避けられない。これらの廃液は、原子力発電所の放射性廃液システムによる収集・処理・貯留を経て、基準を達成していることが確認された上で、環境中に排出される。中国は、原子力発電所の廃液排出に対して非常に厳しい規定を設けている。Gb6249-2011は次のように規定している[1]。「沿岸部の施設については、タンク式排出口の放射性廃液中のトリチウムと14Cを除くその他の放射性核種の濃度は1000Bq/Lを超えてはならない。内陸部の施設については、タンク式排出口の放射性廃液中のトリチウムと14Cを除くその他の放射性核種の濃度は100Bq/Lを超えてはならない」。放射性核種濃度1000Bq/Lは、核種質量分率の和で約3×10-14に相当し、極めて低いレベルに属する。排出基準の要求を達成するため、原子力発電所は、高効率の放射性廃液処理システムを設け、主要核種の除染係数(DF、処理前の放射能濃度/処理後放射能濃度)を105以上(内陸部の原子力発電所は106以上)にする必要がある。中国の第2世代及び第2世代改良型の加圧水型原子炉(M310、CPR1000など)においては通常、化学的不純物の含有量の低いプロセス排水は2~3基のイオン交換器を連結して処理し、化学的不純物の含有量と放射能濃度がいずれも比較的高い化学排水は蒸発法で処理し、浮遊物質の含有量が高く、放射性濃度が比較的低い地上排水とサービス排水は濾過法で処理する方法が取られている。放射性廃液処理システムの総除染係数は103前後で、105に到達しておらず、原子力発電所では通常、追加のイオン交換器を2基直列させ、除染係数が高められている。

 原子力発電技術が第3世代に発展しつつある中、放射性物質の排出と抑制にはより高い要求がなされるようになり、先進的な軽水型原子炉の実用でも文書での言及を求められるようになった。廃液処理システムは、濾過とイオン交換の技術によることとし、蒸発処理技術の使用を減少させ、システム設計をより単純にし、操作性を高め、固体廃棄物の産出量を減少させるなどの効果を求める必要がある[5]

 中国の第3世代原子力発電は、米国AP1000の基準を導入して設計したもので、その放射性廃液処理システムは、「化学的凝集+深層濾過+イオン交換」を統合した方法を採用している。原子力発電所で、例えば、0.25%の燃料要素被覆管の破損が発生した際には、廃液処理システムの下流に2台のイオン交換器を直列投入するか、可動設備を経て処理する。可動設備の処理方法は、「活性炭吸着+1級6段逆浸透(RO)+イオン交換」の統合方法である。

 中国が自主開発した第3世代反応炉の特質を持つACPR1000原子力発電ユニットは、「化学的凝集+活性炭吸着+イオン交換+1級2段RO」の統合方法を利用している。つまり「化学凝集+活性炭除」によってゲルと浮遊粒子を除去する。その後、溶解した放射性核種をイオン交換器を通じて除去する。処理後の廃液が排出基準に達していない場合は、1級2段ROユニットによって処理する。RO技術及びそのイオン交換との統合技術は、中国第3世代原子力発電ユニットの放射性廃液処理システム中に用いられるものとなる[6]

 放射性廃液処理システムの設計プロセスにおける放射性核種除染係数の値は主に、GB/T13976-2008基準を参考にして取られた。この基準における核種除染係数の値は、米国原子力規制委員会(NRC)の技術文書「NUREG-0017」によっている[7]。1970年代の米国のPoint BeachとGinna、Robinsonの発電所における洗浄廃液と模擬廃液のRO分離試験データに基づき、NUREG-0017は、RO装置の洗浄廃液処理の除染係数を30とし、その他の廃液と地面排水、プロセス排水はヨウ素とセシウムの含有量が高いため、RO除染係数は10とした。

 中国で運用されている加圧水型原子炉の測定結果によると、放射性廃液処理システムの処理を経た後の液体流出物においては、トリチウムと14C以外の主要核種は、58Coや60Co、110mAg、54Mn、137Csなどだった。米国の加圧水型原子力発電所における液体流出物においては、トリチウムと14C以外の主要核種は、58Coと60Co、137Cs、134Cs、55Feだった。米国の加圧水型原子力発電所から排出された放射性核種とは異なり、中国で運用されている加圧水型原子炉から排出される放射性核種は、58Coと60Co、137Csを除いて、排出された110mAg、54Mnはすでに、周囲の環境に影響を及ぼす主要核種の一つとなっている[8-10]

 このように、GB/T13976-2008とNUREG0017の両基準においては、中国の原子力発電所における放射性廃液の特質が考慮されておらず、廃液における異なるタイプの核種に対するROの除去効果が提起されておらず、RO膜モジュールの異なる排列・組み合わせ方式、例えば1級多段、2級多段(「級」は一級前のROの浸透液を原水とし、「段」は一段前のROの濃縮液を原水とする[11])を用いた場合の廃液中核種の除去効果が考慮されていない。このほか▽原子力発電所の一次ループと二次ループの循環水処理システムにおいては各種の非放射性化学物質、例えばホウ酸(H3BO3)、ヒドラジン(N2H4)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、アンモニウムまたは水酸化アンモニウム(NH3)、硫酸ジメチルなどが添加されるが、放射性核種の除去に対してこれらの物質はいかなる影響を持つか、▽RO技術の発展に伴い、原子力発電所の放射性廃液における微量核種に対するRO膜の除去効果にはいかなる変化が発生しているか、▽除染係数は、廃液中の核種濃度とRO膜の面積に応じていかなる変化の法則を持っているか―などもさらなる研究が求められている。

その2へつづく)

参考文献

[1] GB 6249-2011 核動力厰環境輻射防護規定[S].

[2] GB 14587-2011 核電厰放射性液態流出物排放技術要求[S].

[3] 羅上庚.放射性廃物処理與処置[M].北京:中国環境科学出版社,2007:58-77.

[4] GB/T 13976-2008 圧水堆核電厰運行状態下的放射性源項[S].

[5] Electric Power Research Institute (EPRI). Advanced light water reactor utility requirements document volume III ALWR Passive Plant[R]. Revision 8, Issued, 1999.

[6] H A Abdulgader, V Kochkodan, N Hilal. Hybrid ion exchange-Pressure driven membrane processes in water treatment: A review [J].Separation and Purification Technology,2013,116:253-264.

[7] United States Nuclear Regulatory Commission. Calculation of releases of radioactive materials in gaseous and liquid effluents from pressurized water reactors[S].NUREG-0017.

[8] 馬麗,王建華,李吉鵬,等.某濱海核電厰低放射性廃水的海洋環境影響預評価[J].応用海洋学学報,2013,32(1):29-35.

[9] 許明霞.圧水堆一回路冷却剤活化腐蝕産物鈷銀銻[J].核安全,2012(1):1-8.

[10] 方嵐,徐春艶,劉新華,等.圧水堆核電站一回路活化腐蝕産物源項控制措施探討[J].輻射防護,2012,32(1):8-14.

[11] Dow Filmtec. Steps to Design an RO/NF Membrane System[OL]. http://www.dowwaterandprocess.com/en/resources/steps_to_design_ an_ro_nf_membrane_system#/accordion/AB2192C8-4F3B-4A38-9 2FB-471A54172AB1.

※本稿は魏新渝,馬鴻賓,熊小偉,王一川,譚承軍,方圓,王志「反滲透技術去除核電廠放射性廃液中痕量核素的研究進展」(『水処理技術』第41巻第12期,2015年12月、pp.10-19)を『水処理技術』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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