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動車組先頭車両の車体疲労強度の分析(その2)

2017年 2月23日

宋燁:西南交通大学牽引動力国家重点実験室博士課程

研究テーマは車両工学、車体疲労信頼性、動車組車体・台車枠試験技術。

鄔平波:西南交通大学牽引動力国家重点実験室研究員、博士課程指導教官

賈璐:西南交通大学牽引動力国家重点実験室博士課程

その1よりつづき)

3 空力荷重下の車体強度の分析

 列車が地面に沿って高速で運行する際、列車の周囲の空気もこれに伴って運動し、特定の非定常流場を形成し、一般にこれは「列車風」と呼ばれる。列車風は、列車付近の環境の空気圧力を波動させ、強 烈な空気の流動を引き起こす。向かい合って走行する2列の列車がすれ違う時には、すれ違う瞬間にこの働きが激化する。とりわけある列車の先頭または後尾がもう一つの列車とすれ違う時には、も う一列の列車のすれ違う側の表面の空気圧力の突然の変化を生み、瞬間的な圧力衝撃を形成し、約数十ミリ秒の間に正負の圧力のピーク値が相次いで出現し、この瞬間的な圧力の衝撃が列車のすれ違いの圧力波となる。 

 この圧力波は、列車の運転台の正面と車体側面に作用し、主に3つの面での危害を生む。①運転台正面と車体側面の窓ガラスが圧力の衝撃によって破壊される可能性がある。② 列車車両の気密性が十分ではない状況においては、圧力波が車内に伝わり、車内の人員の耳に不快をもたらし、乗車快適性を悪化させる。③過大なすれ違い空気圧力波は、列車の横向きの振動を拡大し、走 行の安全を危険にさらし、車体構造を損壊する可能性がある。本稿は主に、高速列車の開けた場所でのすれ違い、トンネルの通過、トンネルでのすれ違いにおける圧力波動の車体構造への影響を研究した。

3.1 開けた場所でのすれ違いにおける空力荷重

 高速列車が等速ですれ違う時、すれ違う側の典型的な圧力波動図は図4の通りである [11]

図4

図4 高速列車すれ違い時における典型的な圧力波

 本稿においては、先頭車両を頭部と車体部の二つの部分に分けて加重分析し、頭部の風を受ける面に1200Paの圧力を加えた。車体をエリアに分け、時間変化に伴う表面圧力を加え、す れ違い過程の車体の圧力波動をシミュレーションした。車体構造に対する列車のすれ違い過程における空力荷重波動の影響をくまなく表現するため、またコンピューターの能力と計算時間も考慮し、結 果の信頼性と精確性に影響しないことを前提に、空力荷重波動が比較的激しい部分すなわち図5で囲った区域を荷重の入力区域とする。

図5

図5 圧力波動計算区域

図6

図6 計算区域のタイムステップ図

 図5においては、計算区域の時間プロセスは0.18sである。結果の精確性と加重の便をはかるため、この区域を10のタイムステップに分ける。タイムステップの間隔は0.018sである(図6)。列 車が300km/hの等速ですれ違う際、一つのタイムステップの圧力波動線がかすめる距離、すなわち試験車の頭部が被検査車両の車体とすれ違う距離は次の通りである。

1703song02_04

 同動車組の先頭車両の車体部分の長さは17.686mであるため、この車体部分を6分区に分け、第1分区から第5分区までの長さは3mとし、第6分区の長さを2.686mとすることができる(図7)。 

図7

図7 空力荷重車体の分割図

 各タイムステップ内で圧力波の通る距離sは、車体の各分区に対し、次の関係式を持っている。

 平均圧力は次のように求められる。

1703song02_07

 式中の-pは同分区の平均圧力である。pは、同分区のある時刻の瞬間の圧力である。vは圧力波動線の通る速度である。

 Originグラフ作成ソフトウェアを利用し、10タイムステップを積分し、式(3)から10タイムステップの平均圧力を求める(表6)。

表6 各タイムステップ内の平均圧力
タイムステップ 1 2 3 4 5
平均圧力(Pa) 473 1080 1479 1272 490
タイムステップ 6 7 8 9 10
平均圧力(Pa) -517 -1330 -1573 -1283 -772

 計算区域の第1タイムステップの圧力波の車体第1分区への到達を第1作動状況とする。この時、圧力波は車体の側面に到達したばかりである。計 算区域の第10タイムステップの圧力波が車体第6分区に到達した時を最後の作動状況とする。この時、すべての圧力波はすでに先頭車両の車体を完全にかすめ終わっている。

 上述の作動状況を順番通りに加重することで、圧力波が車体側面をかすめる全プロセスを表現することができる。加重の際には、車体のドアと窓への圧力は、実際の状況を考慮し、そ の表面積とそれぞれの作動状況の下での同分区の表面圧力に基づき、ドアと車窓にかかる圧力をそれぞれ計算し、この圧力をそれぞれ車体の有限要素モデルのドアの枠と車窓の枠の上の節点へと加重し、ド アと窓にかかる力をドア枠と窓枠の節点に均等に担わせる。

 計算によると、開けた場所でのすれ違いの際、車体にかかる圧力波の変動は、「まず高まり、後に縮小する」という形を示し、すれ違いの圧力波が車体の第4区分に到達した際、車 体の最大相当応力146MPaが出現するが、これは材料の許容応力よりも小さい。図8と図9は、開けた場所でのすれ違いの際の車体全体と運転台の応力の図である。

図8

図8 開けた場所でのすれ違いの車体全体の応力図

図9

図9 開けた場所でのすれ違いの運転台の応力図

3.2 トンネルでのすれ違い

 トンネルでのすれ違いは、坑口効果とすれ違い圧力波の重ね合わせであり、トンネルすれ違いの車体側壁の圧力波動は、開けた場所でのすれ違いのように「鉛直圧力波線」が 縦方向に車体をかすめるものではなくなる。本稿は、最も劣悪な圧力波動値を計算作動状況とし、すれ違い側の側壁に-4600Paの圧力を加え、すれ違い側でない側壁に-3000Paの圧力を加え、運 転台の風を受ける面に4000Paの圧力を加え [12-13] 、ドアと車窓の上の圧力もそれぞれドア枠と窓枠に加えた。

 計算によると、最大相当応力値は178.3MPaで、材料許容応力を下回った。図10と図11は、トンネルにおける350km/hの等速でのすれ違いの際の車体の全体と運転台の応力図である。

図10

図10 350km/h等速トンネルすれ違いにおける車体全体の応力図

図11

図11 350km/h等速トンネルすれ違いにおける運転台の応力図

3.3 トンネル通過

 トンネル通過の際には、車体側壁の圧力波動は主に、坑口効果によって引き起こされ、トンネル壁に近い側の車体測定点の圧力変化値は、中心に近い側の車体測定点の圧力値よりも4%前後高くなる [14] 。今 回の計算では、運転台の風を受ける面に2500Paの圧力をかけ、一方の側壁に-3000Paの圧力、もう一方の側壁に-3120Paの圧力をかけ、面積に応じてドアと車窓にかかる圧力を計算し、ド ア枠と窓枠の上にそれぞれこれを加えた。さらに高速列車が350km/hでトンネルを通過する際の車体の空力荷重の作動状況をシミュレーションした。

 計算によると、最大相当応力値は168.9MPaで、材料許容応力を下回った。図12と図13は、高速列車が350km/hでトンネルを通過する際の車体全体と運転台の応力図である。

図12

図12 トンネル通過時の車体全体の応力図

図13

図13 トンネル通過時の運転台の応力図

3.4 横風効果

 列車の横風問題は、列車の運行の安全性にかかわる。列車の速度の高まりに伴い、列車に対する横風の空気抵抗力、揚力、横力は急速に増大し、列車の横向き運動の安定性にも影響を与え、列 車転覆のような深刻な事態も招き得る。分析においては、横風の風速を25m/sとした。列車が350km/hで運行する際には、先頭車両の車体が受ける横力は64.13kNであり、車体の側壁に均等に加えた [15]

 計算によると、最大相当応力値は152.1MPaで、材料許容応力を下回った。図14と図15は、350km/hで運行する高速列車が横風効果を受けた際の車体全体と運転台の応力図である。

図14

図14 横風効果における車体全体の応力図

図15

図15 横風効果における運転台の応力図

4 車体疲労強度の評定

 車体の疲労破壊をもたらす荷重は主に、空力荷重、列車の牽引・制動によって引き起こされる縦方向荷重、軌道の鉛直・横方向・弯曲の不規律によって引き起こされる荷重がある。本稿は、グ ッドマン線図を用いて、車体の疲労強度を評価した。

4.1 疲労強度の評定方法

 構造による疲労亀裂の方向は最大の主応力の方向と垂直関係にある。疲労破壊のこの際立った特性に基づき、3方向の応力状態を単方向の応力状態へと転換し、応力循環の平均応力と応力振幅を計算し、修 正グッドマン曲線に基づき、構造疲労強度の評定を行う。

 多軸応力状態と単方向応力状態の転換方法は以下の通りである。①それぞれの荷重作動状況下における構造の主応力の数値と方向を確定する。② すべての荷重作動状況における構造の最大主応力の方向を基本的な応力分布方向とする。計算最大主応力はσmaxである。構造基凖線(または計算モデル全体の座標系の座標軸)との角度αを計算する(図16a)。③ その他の荷重作動状況における主応力を、すでに確定された最大主応力の方向へと投影する。その投影値が最小となる応力値は最小主応力σminである(図16b)。④ 最大と最小の主応力値から平均応力σmと応力幅σaまたは応力比Rを計算し、多軸応力状態の単軸応力状態への転換を完了する。

1703song02_16

 式(6)において計算された平均応力σmと応力幅σaまたは応力比Rに基づき、修正グッドマン疲労曲線から相応の許容応力を確定し、構造の疲労強度または寿命の評定に用いる。

図16

(a)        (b)

図16 最大・最小主応力の確定方法

4.1 車体疲労強度の評定結果

 疲労強度分析方法に基づき、高速列車の開けた場所でのすれ違い時の空力荷重の荷重作動状況と、軌道によって引き起こされる横向きと鉛直の加速度、牽引・制 動によって引き起こされる疲労荷重作動状況を利用し、計21種の疲労作動状況(表7)において、車体下部構造の側梁、車体外層、側壁内層、側壁中間層、運転台、床中間層、床表層の7つの部分に対し、疲 労強度の評定をそれぞれ行った。式(6)に基づき、MATLABプログラムを通じて7つの部分のそれぞれの節点の平均応力と応力振幅を計算し、車体材料のグッドマン疲労限度図に点を書き込む。す べての点がグッドマン曲線によって閉じられた区域にあれば、車体が疲労強度の要求を満たしたことになる。さらにグッドマン曲線に対する安全係数と最大・最小主応力に対応する作動状況を求め、車 体の設計に参考を提供する。

表7 疲労強度計算における荷重作動状況表
作動状況
1~15
作動状況
16
作動状況
17
作動状況
18
作動状況
19
作動状況
20
作動状況
21
空力荷重
作動状況
1~15
縦方向
0.15g[1]
縦方向
-0.15g
鉛直
1+0.15g
鉛直
1-0.15g
横方向
0.15g
横方向
-0.15g

 図17から図23はそれぞれ、車体の下部構造側梁と車体外層、側壁内層、側壁中間層、運転台、床中間層、床表層の7つの部分のグッドマン疲労強度曲線図である。図からは、す べての点がグッドマン曲線によって閉じられた区域にあることがわかる。計算によって得られた各部分の安全係数はいずれも1を上回り、車体は疲労強度の要求を満たしていた。

図17

図17 車体下部構造側梁の疲労強度評定

図18

図18 車体外層の疲労強度評定

図19

図19 側壁内層の疲労強度評定

図20

図20 側壁中間層の疲労強度評定

図21

図21 運転台の疲労強度評定

図22

図22 床中間層の疲労強度評定

図23

図23 床表層の疲労強度評定

5 結論

(1)静荷重の作用の下では、車体構造の変形は釣り合い、下部構造側梁の鉛直変形は5.39mmで、相対変形は比較的小さく、剛性の要求を満たした。

(2)EN12663を参照し、車体の7つの静荷重作動状況を確定した。静荷重の作用の下、車体の最大相当応力は280.2MPaで、作動状況7において産出され、第二端の空気バネ拘束部分に出現した。こ の最大相当応力は材料の降伏強度よりも小さく、静的強度の要求を満たした。比較的大きな相当応力が、運転台のドアの角、第二端の台車拘束部分、第一端の連結器補強板部、車体側壁・車体上部の移行部に発生し、そ のほかの部位の応力は比較的小さかった。

(3)車体材料のグッドマン図に基づき、構造の疲労強度の評定を行った。その結果によると、各部位の安全係数はいずれも1を上回り、一定の安全余裕を持ち、疲労強度の要求を満たした。

(おわり)

参考文献

[1] Beuth Verlag Gmb H.EN12663-1/2010,Structural Rerequirements of Railway Vehicle Bodies[S].Berlin: CNE,2010.

[11] 邱英政.高速列車交会圧力波数値模擬計算與測試研究[D].北京:北京交通大学,2007.

[12] 李人憲,関永久.高速列車隧道会車圧力波動問題[J].機械工程学報,2012,48(20),127-134. Li Renxian,Guan Yongjiu.Investigation of Air Pres-sure Pulse When Two High-speed Trains Passing byEach Other in Tunnel[J].Journal of Mechanical Engineering,2012,48(20):127-134.

[13] 章磊.高速列車隧道通過気動性能研究[D].成都:西南交通大学,2012.

[14] 何徳華.350km/h高速動車組空気動力学倣真研究[D].北京:中国鉄道科学研究院,2011.

[15] 毛軍,馬小雲,郗艶紅.基于流動模擬和動力学倣真的高速列車横風運行穏定性研究[J].北京交通大学学報,2011,35(1):44-53. Mao Jun,Ma Xiaoyun,Xi Yanhong.Research on theRunning Stability of High-speed Trains Under theCross Wind by Means of Simulation[J].Journal of Beijing Jiaotong University,2011,35(1):44-53.

※本稿は宋燁、鄔平波、賈璐「動車組頭車車体疲労強度分析」(『中国機械工程』第26卷第4期、2015年2月下半月、pp.553-559)を『中国機械工程』編集部の許可を得て日本語訳・転 載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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