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寒冷高地の砂地の人工植生回復区の地表堆積物の粒度の特徴(その3)

2017年 3月31日

田麗慧:北京師範大学環境演変與自然災害教育部重点実験室

研究テーマ:砂漠化防止対策と生態回復

張登山:北京師範大学環境演変與自然災害教育部重点実験室,青海省農林科学院

彭継平:北京師範大学環境演変與自然災害教育部重点実験室,国家林業局防治荒漠化管理中心

呉汪洋,張佩:北京師範大学環境演変與自然災害教育部重点実験室

その2よりつづき)

5考察

5.1 堆積物の粒度と植生の関係

 沙蒿は、典型的な砂地浅根性半低木であり、根系は水平に1m以上伸び、下方には主に20~40cmにわたって分布する。檸条は、深根性低木であり、根系の下方生長能力は沙蒿よりも高く、主に40~60cmの深さに分布し、主根は地下1m以上に達する。沙蒿の種子は、成熟して地面に落ちると、水分条件が比較的良い時には、すぐに芽を出し、根系の分布も浅く、発芽能力が高い。このため地表堆積物の改善能力も比較的高い。20年檸条砂丘の細粒砂含有量は、すべての砂丘のうちで最も高く、中粒砂の含有量が最低で、シングルピークの形状が最も整っている。この砂丘の優占植物種は沙蒿で、分布が均等である。檸条はまばらに生長している。この砂丘に対する貢献は沙蒿が檸条よりも大きく、地表堆積物の土質の変化に主導的な役割を果たしている。

 2008年、針茅の生長した丘間地を囲って、烏柳の挿し木造林を行った。5年の生長を経て、烏柳の高さは1.5m、生存率は80%以上に達している。その他の丘間地と比較すると、同地の粘土の含有量がほかの丘間地を大きく上回り、さらには囲い込んだ草地よりも高いことがわかる。その原因は、所在地と大きな関係があると考えられる。封育草地は、広大な丘間地にあり、東西に細長く分布しており、その南側の比較的遠い場所には流動砂丘があり、土性は、シルトと細粒砂を中心とし、明らかなダブルピークを示している。2008年に烏柳を植えた丘間地は、すでに固定された流動砂丘の東側にあり、同砂丘の植生は草本が中心で、夏季の洪水の影響を受け、細粒物質が丘間地まで流される。その断面からは、風砂堆積物と河川堆積物の明らかな分層が見られる。土性は粘土とシルトが中心で、砂粒も含み、ダブルピークを示している。

5.2 堆積物の粒度と物質の由来の関係

 異なる堆積物の粒径分布曲線は、堆積物の物質の由来の状況を反映したものとなる[31-33]。図6からは、流動砂丘の粒径分布が明らかな正規分布を示していることがわかる。檸条砂丘の粒径分布は流動砂丘と相似しており、シングルピークを示す。だが30年檸条はシルトの部分にわずかな小型のピークが見られる。封育草地の粒径は明らかなダブルピークを示し、シルト含有量は細粒砂の含有量さえ超えている。烏柳を栽培した年代の異なる丘間地の粒径分布は封育草地と相似しているが、各丘間地の間には差異がある。最も顕著なのは、4年柳丘間地で粘土・シルト含有量が砂粒含有量を大きく上回るが、8年烏柳丘間地では砂粒の含有量が明らかに多いという点である。これは同地区の砂丘の砂の物質の由来が相似性を示し、比較的単一的である一方、丘間地堆積物の由来が多相的であることを示している。

図6

図6 沙珠玉の人工植生回復区の0~60cm堆積物の粒径分布曲線

Fig.6 Grain size composition curves of land surfacedeposits on top 0-60cm of vegetationrestoration region in Shazhuyu

 平均粒径(Mz)と標凖偏差(δ)の散布図は、河川の砂と砂丘の砂を区分するのに使うことができる[25]。だが本実験においては、M-δ散布図の分布は理想的でなく、実験を経て、歪度(SK)の標凖偏差(δ)に対する散布図(図7)が比較的理想的で、砂丘堆積物と丘間地堆積物の物質の由来の差異を区分するのに使うことができることがわかった。図7からは、丘間地の均等性は砂丘の砂よりも低いことがわかる。砂丘の砂は一致性が高く、丘間地は差異が比較的大きい。30年檸条砂丘を除けば、その他の砂丘の砂の均等性と歪度の値の分布は比較的集中し、50年・40年・30年烏柳丘間地の由来と比較的一致している。その他の年代の烏柳丘間地の堆積物分布は差異性が高い。20年烏柳は均等性が最も高く、4年烏柳丘間地と封育草地は似たような均等性を示すが、歪度は比較的高い。4年烏柳丘間は、封育草地を土台として発展したもので、表層土壤に対する改良作用は、浅根性のイネ科植物が深根性の低木を上回り、草地の均等性は低木の生長している草地を下回っている。

図7

図7 沙珠玉の人工植生回復区の0~60cm堆積物の標凖偏差-歪度散布図

Fig.7 SK-δscatter diagram of land surfacedeposits on top 0-5cm of vegetationrestoration region in Shazhuyu

6 結論と検討

 沙珠玉の砂漠エリアの砂丘堆積物は細粒砂を中心としている。中国のいくつかの主要な砂漠の風成砂の粒度組成と一致し[34]、山を隔てた青海湖流域の砂地とは明らかな差異がある[35]。丘間地堆積物は、風成砂と河川堆積物が交互堆積したものである。

 数十年の植生回復を経て、砂丘の土壤の機械的組成は、依然として砂粒が主で、粘土とシルトの含有量は増加している。粘土防砂バリアの設置初期においては、表層0~5cmの土性に対する影響が比較的大きいが、対策の年限が増加するにつれ、流水と化学的風化の作用の下、粘土は少しずつ消失し、土壤が発育し始める。

 沙珠玉河の影響を受けることから、砂丘と丘間地の物質の由来には差異が存在する。土壤に対する改良作用は植物の違いによって異なり、表層土壤に対する改良作用は、浅根性のイネ科植物が深根性の低木を上回る。

 トングリ砂漠の南東の縁にある包蘭(包頭-蘭州)鉄道沿線の流砂対策は、中国さらには世界の砂漠化対策史における典型的な模範と言える[27]。砂坡頭における長期的な観測資料によると、50年の回復を経て、多年生草本が低木に代わって優占種となり始め、土壤クラストが育っている。深層土壤の水分含有量は減少し、表層5cmだけの土性が変化し、深層土壤の性状は変わっていなかった[11]。本稿の研究から、植物は、表層5cmの土壤に対して比較的大きな改良作用を持ち、対策の年限が増加するにつれ、細顆粒物質が増えることがわかる。植生と土壤とは相互に作用し、相互に影響しており、一度破壊されると、自然状態を回復するには長期的な過程が必要となる。

(おわり)

参考文献

[11] Li X R,Kong D S,Tan H J,et al. Changes in soil and vegetation following stabilization of dunes in the southeastern fringe of the Tengger Desert,China[J].Plant and Soil,2007,300:221-231.

[25] 成都地質学院陝北隊.沈積岩(物)粒度分析及其応用[M].北京:地質出版社,1978:44-45.

[27] 張春来,鄒学勇,楊碩,等.沙坡頭鉄路防護体系内風沙沈積的粒度特徴[J].地理研究,2007,26(1):75-82.

[31] 叶瑋,靳鶴齢,趙興有,等.新疆伊犁地区黄土的粒度特徴與物質来源[J].乾旱区地理,2008,21(12):1-8.

[32] 畢志偉,楊振京,徐建明,等.塔里木盆地腹地第四紀沈積物粒度特徴及其沈積環境[J].乾旱区地理,2009,32(3):335-339.

[33] 趙強,王乃昂,程弘毅,等.青土湖沈積物粒度特徴及其古環境意義[J].乾旱区地理,2003,26(1):1-5.

[34] 朱震達,呉正,劉恕,等.中国沙漠概論[M].北京:科学出版社,1980:29.

[35] 張登山,田麗慧,魯瑞潔,等.青海湖湖東沙地風沙沈積物的粒度特徴[J].乾旱区地理,2013,36(2):203-211.

※本稿は田麗慧,張登山,彭継平,呉汪洋,張佩「高寒沙地人工植被恢復区地表沈積物粒度特征」(『中国沙漠』第35卷第1期、2015年1月、pp.32-39)を『中国沙漠』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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