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世界革新指数2017年版を読み解く

2017年 7月28日

陳 東敏: 北京大学産業技術研究院グローバル革新指数研究センター主任/教授 世界知的所有権機関(WIPO)イノベーションインデックス研究センター国際顧問

 北京大学千人招致学者、先進学際学科研究院、ビッグデータ研究院主任教授。2012-16年に北京大学産業技術研究院院長、科学技術開発部部長に就任し、北京大学の産学研事業を担当。同時に北京大学インキュベーターと協力するシードマネーファンド、エンジェルファンド、ベンチャーファンドの管理に関わる。
世界知的所有権機関(WIPO)イノベーションインデックス研究センター国際顧問。米ハーバード大学Rowland研究院所長顧問委員会メンバー、量子装置物理研究室主任を15年にわたり務める。その後、中国科学院物理研究所、北京物性物理国家実験室主任、蘇州技術研究院の創業者、執行院長を歴任。
米シリコンバレー連環創業者で、米シリコンバレー4-D-S社首席科学者、コア技術発明家を歴任。米シリコンバレーMiradia Inc社創業者、CTOに就任し、在職中に企業の8000万ドル以上の資金を調達し、200件以上のMEMS技術特許を発展させ、世界最大の半導体メーカーであるTSMCへの授権に成功。

世界的に有名な科学誌に70編以上の記事を掲載し、100件以上の国際特許を保有。米「応用物理週刊」副編集長。米シリコンバレー「華美半導体協会」前会長、名誉顧問。

 グローバル・イノベーション・インデックス(The Global Innovation Index 2017 GII)の2017年版が6月15日、ジュネーブで発表された。中国は2016年の25位から22位に浮上した。

図1

1. 指数の構造

 2017年版は81のサブ指標を用い、政策環境、教育、研究開発、インフラ、ビジネス環境、インプット・アウトプットなどの面から、世界127ヶ国の総合的なイノベーション力を系統的に評価。世界の人口の92%、GDPの98%を網羅している。GIIはイノベーションインプットインデックスとイノベーションアウトプットインデックス、及び双方のレベルを比較したイノベーション効率を用い、系統的・全面的に国家イノベーション体制を評価。インプットの下には制度、人的資本及び研究、インフラストラクチャ、市場の洗練度、ビジネスの洗練度という5大支柱がある。アウトプットの下には知識と技術の生産、創造的な生産という2大支柱がある。そしてこの7大支柱は81指標から成り立っている。GIIは十年間に渡り研究・調整・改善されている。調整は国家イノベーション体制をより全面的かつ科学的に評価することが目的。国家イノベーション力の変化の他に、国家のイノベーションインデックスの順位もこの調整や、特殊イノベーション要素をめぐり実施された具体的な内容による影響を受ける。そのため順位の変化だけではなく、国家イノベーション体制の7大支柱とサブ指数を全面的に分析することで、指数の指導的意義を理解することができる。

図2

2. 指数の順位

 2017年度のランキングではスイスが再び首位をキープした。2016年と比べ(括弧内の数字は2016年の順位)、トップ10ヶ国の順位に変動があったが、いずれも10位内をキープした。これはトップ10ヶ国が依然として世界のイノベーションをけん引しているためで、GIIがほぼ安定していることを間接的に説明している。

 中国の順位は昨年の25位から22位に浮上するという喜ばしい成果となった。中国の指数上昇は主に、市場の開放、企業の研究開発への取り組みの重視、人材育成と知的財産権の保護、国際特許出願件数の増加、自主設計・研究開発製品の比率の上昇、創業者の成長と能力の向上といった、前向きな変化がその主な要因となった。

 2017年の指数を分析すると、中国の改善が必要な内容は、政策・法環境、イノベーターの育成、資本市場の開放の程度、特に小規模金融サービス体制、中小企業の資金調達環境などとなっている。

図3

3. 中所得国の罠

 多くの経済学者は、中国が中所得国の罠に陥ることを懸念し、警告を続けてきた。GII報告書のデータ(上図)によると、中国のイノベーション力が急成長している。中国は中所得国の集団に別れを告げ、高所得国の集団に接近しようとしている。イノベーションはこれらの国がリードと発展を維持する、最も根本的な駆動要素だ。

 中国政府は2020年に世界イノベーション型国家になり、2030年に世界イノベーション型国家の先頭集団に入り、2050年にイノベーション強国になる目標を打ち出した。「イノベーション型国家」の定義をトップ20とするならば、中国はこの目標達成まであと順位を2つ上げればいい。

図4

4. 地域クラスター指数

 今年のGIIは初めて地域クラスターを評価した。過去10年間の研究において、国家イノベーション力の向上を牽引する地域クラスターの重要性が大幅に高まっている。いかにGIIを使い地域クラスターの能力を効果的に調べるかは、人々が関心を寄せる問題だった。今年は新たな章が追加された。ビッグデータ分析を利用し、国際発明特許のサブ指数に焦点を絞り、地域クラスターを構築した。上図の通り、ファーウェイ、テンセント、華大基因、大疆、光啓などのイノベーション型企業が台頭し、中国の深セン―香港地区の発明創造能力は日本の東京・横浜地区に次ぐ2位となっており、シリコンバレーを上回っている。


日中大学フェア&フォーラムウェブサイト

 

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