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タッチパネル用ガラスの精密加工技術および工具に関する研究の進展(その1)

2017年11月14日

盧 家鋒:広東工業大学機電工程学院大学院生

超硬材料および研削材・研削工具の研究に従事。

幸 鋒:河源市樹熊超硬磨具有限公司

曽 憲明:河源市樹熊超硬磨具有限公司

博士、研究員。主な研究分野はパターン認識、脳型情報処理。

張 鳳林:広東工業大学機電工程学院教授、河源市樹熊超硬磨具有限公司

博士。主な研究方向テーマは超硬材料の工具の製造ならびに硬脆材料の加工およびシミュレーション。

概要:

 携帯電話やタブレットPC、ウェアラブルデバイスの発達に伴い、タッチパネル用ガラスの材料および製作加工技術も世代交代を続けている。本稿では、タッチパネル技術の分類とタッチパネル用ガラスの発達の現状を総括し、タッチパネル用ガラスの加工プロセスを明らかにしたうえで、タッチパネル用ガラスの各種精密加工技術の特徴とタッチパネル用ガラスの精密研削のためのダイヤモンド研磨工具の進化の方向性を分析する。

キーワード:タッチパネル用ガラス、精密加工技術、ダイヤモンド研削工具

はじめに

 タッチパネルはスマートフォン、タブレットPC、ノートパソコン、電子書籍、ゲーム機等の分野で幅広く応用されている。近年はスマートフォン、タブレットPC、車載モバイル端末や商業化情報レファレンスシステム等のスマートデバイスの広範な普及に伴い、タッチパネル製品とその技術も全世界で急速に発展し、産業規模も拡大を続けている。市場調査会社TrendForceのレポートによれば、2014年における世界のスマートフォン出荷台数は11億6700万台に達し、2013年比で25.9%増、2015年における世界のスマートフォン出荷台数は12億9300万台に達し、前年同期比10.3%増であった。TrendForceの予測では、スマートフォン市場は2016年も引き続き飽和状態となり、年間成長率は7.3%で、総出荷台数は14億台に迫るだろう。

 タッチパネル用ガラスは高強度という要求を満たすために、その多くは基板材質に強化ガラスを採用している。強化ガラスは切削加工の難度が高いために加工の際にエッジ割れが生じやすく、このエッジ割れによりガラスの強度低下が生じやすいことから[1]、タッチパネル用ガラスには精密な加工が必要である。このため、タッチパネル用ガラスの精密加工技術と工具に関する研究の進展について総括し、検討することには重要な意味がある。

1 タッチパネル技術

 電子ディスプレイの分野におけるタッチパネルの応用が拡大するにつれ、タッチパネル技術も発展し、向上を続けている。現在のタッチパネル技術には、主に抵抗膜方式、超音波表面弾性波(SAW)方式、赤外線方式、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある[2-3]。抵抗膜方式と静電容量方式は主に中小サイズ向けの応用技術である。抵抗膜方式のタッチパネルは最も早く登場したタッチパネルの一つで、感圧センサを利用して制御するが、技術が成熟している上にシンプルで、価格的にも利点があることから、メーカーにとっては一般的に最もアプローチしやすいタッチパネル技術である。しかし、光透過率が低く、耐久性が低い等の欠点がある。超音波表面弾性波方式のタッチパネルは導電性媒質を含まない普通のガラスパネルをCRT、LCDまたはPDP等のディスプレイの前面に設置したもので、その主な特徴は適応能力が高いことである。超音波エネルギーによって作動面が構成されるために、超音波表面弾性波方式のタッチパネルのガラス基板には中間層や構造応力がまったくないことから、公共スペース等の劣悪な環境条件での使用に向いている。表面型静電容量方式のタッチパネルの表面は導電膜に覆われているため、作動の際に人間や他の物体が接触すると、電極が表面における電荷の変化を感知し、接触位置を確定する。赤外線方式のタッチパネルは、X-Y方向に設置された赤外線マトリクス・スイッチによって接触位置を検出し、確定する。赤外線方式のタッチパネルは低価格で設置が簡単であり、軽微なタッチや機敏なタッチもよく感知できるが、赤外線によって動作を感知することから、太陽光や室内照明等の外界のすべての光線変化がその確度に影響してしまう。表面型静電容量方式のタッチパネルは寿命が長いものの解像度が低く、多点検出(マルチタッチ)ができない。投影型静電容量方式はITOエッチング式により製造され、タッチの際にはXとYの交差ポイントの電気容量の変化によって接触位置を検出し、耐用性と光透過率が高く、反応スピードが速く、マルチタッチ機能を有する等の長所がある。2007年以降のApple社によるiPhone、iPadシリーズの大成功によって投影型静電容量方式のタッチパネルが爆発的に成長したことから、またたく間に抵抗膜方式タッチパネルに取って代わり、現在のタッチパネル技術の主流となっている。

2 タッチパネル用ガラスの分類

 タッチパネル用ガラスはタッチパネルを構成する重要な一部であり、その用途に応じてカバーガラスと基板ガラスに分類できる。また、パネル面板の材質によりPETフィルム、強化ガラスとサファイアガラスに分けられる。PETフィルムは従来型の抵抗膜方式のタッチパネルに使用されるため、後文で詳述しない。

2.1 タッチパネル用のカバーガラス

 初期のタッチパネルのほとんどは抵抗膜方式のタッチパネル技術を採用したデバイスに使用されていたため、カバーガラスにアクリル板またはソーダ石灰ガラスが一般的に使用されていた。しかし、その機械的強度は低く、表面の耐擦傷性と耐衝撃性のいずれも劣っていたため、ディスプレイパネルが破損したり、表面がざらざらしたりする状況がよく生じていた。一般消費財としての電子製品でタッチパネルが普及するにつれ、静電容量方式のタッチパネルの応用が広がり、タッチパネルのカバーガラスに対する要求も高まった。そのため、今ではタッチパネル用のカバーガラスのほとんどに高アルミノケイ酸ガラスが使用されており、硬度が高く、耐摩耗性に優れることを特徴としている。市場に流通する高アルミノケイ酸ガラスは主に外国企業で生産されており、よく見られるブランドに米国・コーニング社のGorilla、日本・旭硝子社のDragon-trailやドイツ・ショット社のXensationCover等がある。

 一方、高アルミノケイ酸ガラスを使用したカバーガラスに関する研究開発は、中国ではスタートが遅い。成都光明光電は現在、MJB5グレードの高強度ガラスを発売しており、関係筋によれば、サファイアガラスよりも高い強度を誇っている。2014年には科立視材料科技有限公司が「オーバーフローダウンドロー法」という名のガラス製造技術を開発し、0.4mmの高アルミノガラスを使ったカバーガラスの製作と量産に成功したが、生産されたカバーガラスは組成中に炭酸ナトリウムが含まれる上に、TFTガラス基板には使用不可であった。

 近年、ワングラスソリューション(OGS)とガラスフィルム静電容量(GF)がタッチパネルメーカーの技術研究における二大焦点となっている。このうち、ワングラスソリューションとは、カバーガラスの上面にセンサを作製することによって、基板ガラスを1枚分と貼り合わせ1回分を節約しているため、タッチパネルをより薄くし、コストも下げることができる。OGS技術の登場によって、タッチパネルのカバーガラスに対する要求は高まった。今や、カバーガラスは静電容量方式タッチパネル技術におけるもっとも重要な材料の一つであり、その加工技術は製品品質と歩留まりに大きく影響すると言える。

2.2 タッチパネル用の基板ガラス

 タッチパネル用の基板ガラスには主にソーダ石灰シリカガラスが採用されており、サイズ規格は主に1.1mm、0.7mm、0.5mm、0.33mm等である。主な海外メーカーは米国・コーニング社、日本の旭硝子社と日本電気硝子社があり、中国メーカーには南玻集団、河北東旭集団等がある。タッチパネル用のカバーガラスに比べ、技術要求はやや低い。

 高アルミノケイ酸ガラスは強化度が一般のソーダ石灰シリカガラスより高いものの、ソーダ石灰シリカガラスのほうが高アルミノケイ酸ガラスよりはるかに安価で、強化後は一定の強度に達し、保護効果があることから、多くのメーカーがコスト削減のために、スマートフォンの中でもローエンド製品のタッチパネル用カバーガラスに一般のソーダ石灰シリカガラスを使用し始めている。南玻集団は新型の溶融塩成分を採用し、厚さが0.3~1.1mm、サイズが(300×300)mmより大きい超薄型の板ガラスに化学強化処理を行っている。処理後の化学強化ガラスの表面応力の平均値は300~450MPaで、反り率は0.2%を下回ることから、ガラスの可切削性と反り率の両立が可能で、ディスプレイ基板の使用要求を満たすことができる。秦皇島設計院はディスプレイ用ガラスの応用に関連してその作製と性能研究を行っており、実験的に作製した超薄型ガラスを強化処理した後の表面応力は702MPaに達することから、液晶ディスプレイの要求を満たしている。

2.3 サファイアガラス

 2013年11月にApple社はiPhone6のタッチパネルにサファイアガラスを使用する可能性があることを発表した。その後、Apple社はiPhone6で実際にサファイアガラスを採用することはなかったものの、Apple Watchのディスプレイでは採用を決めた。こうして、サファイアガラスは広く認知され、注目されるようになったのである。

 サファイアガラスで使われているのはサファイアの結晶であり、ガラスではないため、厳密にいえばサファイアガラスという名は正確ではない。サファイアとは硬度が9(モース硬度)のコランダムの結晶であり、その硬度はスマートフォンのパネル用ガラスとして有名なGorillaより高く、耐擦傷性能もGorillaより優れる。また、サファイアの光沢度はガラスより高く、化学的安定性と熱安定性もガラス面板を上回る。しかし、サファイアの生産技術は複雑で、特に大きいサイズのサファイア製タッチパネルでは製造コストが高く、ガラス面板に比べて1枚あたり約10倍の差がある。

 人工サファイアに関しては1902年に研究が始まったが、そのほとんどは小さいサイズの結晶についてであった。大きいサイズのサファイアは近年になって製作が始まり、熱交換法、キロプロス法、温度勾配法、キロプロス法を改良したSAPMAC法(Sapphire growth technique with micro-pulling and shoulder-expanding at cooled center)等、さまざまな方法が開発されている。サファイアは硬度が高く、製造工程後半の研磨やバフ研磨のいずれも困難なことがサファイアのコストを引き上げている。現在、Apple社スマートフォンのパネルでサファイアガラスが使用されているのに加え、中国メーカー数社もサファイア製パネルを使ったスマートフォンを発表している。サファイアガラスには優れた性能があるため、サファイアの製造方法が改良され、規模が拡大し、生産効率が上がれば、価格も下がる可能性がある。このため、将来的には、サファイアガラスがタッチパネルの分野でさらに広く応用される可能性がある。

その2へつづく)

参考文献:

[1]. 呂沫,張飛特,王建花.TP玻璃切割工芸研究[J].電子工芸技術,2014(4):242-245.

[2]. 劉瑞.触摸屏技術及其性能分析[J].装備製造技術,2010(3):69-70,76.

[3]. 呂明,呂延.触摸屏的技術現状、発展趨勢及市場前景[J].機床電器,2012(3):4-7.

※本稿は盧家鋒、幸鋒、曽憲明、張鳳林「触屏玻璃精密加工技術与工具研究進展」(『超硬材料工程』2016年第28巻第4期、pp.51-55)を『超硬材料工程』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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