第134号
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鉄鋼インテリジェント製造を背景としたマテリアルフローとエネルギーフローの協同方法(その2)

2017年11月29日

鄭 忠,黄 世鵬,竜 建宇(重慶大学材料科学・工程学院)

高 小強(重慶大学経済・工商管理学院)

その1よりつづき)

2 鉄鋼製造プロセスのマテリアルフロー・エネルギーフローと鉄鋼企業の主要情報化システム

2.1 鉄鋼製造プロセスに基づくマテリアルフローとエネルギーフロー

 現代の鉄鋼複合企業は、鉄や石炭化工、鉄鋼製造、高付加価値加工を一体化した典型的な複合過程システムである。中国の鉄鋼製造の多くは長い工程を持つ。製鉄前のマテリアルフローにおいては、資源が事前加工(焼結やペレットなどの製鉄原料の製造とコークスの製造)され、高炉での精錬を経て高温の溶鉄が得られる。溶鉄は、鉄鋼業界内の運輸(列車や自動車、クレーン)を経て製鋼所に到達し、事前処理された後、転炉に送られ、酸化精錬を施され(短いプロセスであれば鉄スクラップを電気炉によって精錬され)、一定の品質の溶鋼となる。さらに二次精錬(LF、RH、CASなど)を経て、特定の成分と温度を備えたクリーンな合格溶鋼が得られる。高温の溶鋼は、連続鋳造過程を経て凝固・成型(連続鋳造による成型は98%以上を占める[39])され、特定の形状と規格を備えたビレット鋼(またはダイキャスト用のインゴット)に変わる。ビレット鋼は、工法の要求に基づき、加熱炉の温度を高めることによってその熱加工性能を変え、適度な圧延処理(熱間圧延・冷間圧延)を通じて最終的に規格に合った鉄鋼製品を得る。システム全体の動的進行の過程においては、マテリアルフローとエネルギーフローが鉄鋼製造過程において相互に結合すると同時に、自らの体系を形成し、両者は時に分かれ時に合わさり、鉄フローを主とするマテリアルフローネットワークも存在するし、各種エネルギー媒体のエネルギーフローネットワークも存在する。マテリアルフローとエネルギーフローは、プロセスネットワークの主要工程に沿った各現場の設備、即ち製造ユニットにおいて、ネットワークのインタラクションと結合を起こす。

 このため鉄マテリアルフローは、製造プロセスの工程/現場設備の製造ユニットによって構成される製造プロセスネットワークに沿って運動する。主要な工程設備、例えば各種の冶金反応装置と鉄鋼製品の製造加工設備(コークス炉、高炉、転炉、鋳造機械、加熱炉、圧延機など)は、製造プロセスネットワークにおいてマテリアルフローが通過するネットワークの節目を構成する。冶金においては、冶金技術の要求を満たすためには、補助材料の加入(補助材料の物流)や各種の予備品などの物流もかかわってくるが、これらの鉄マテリアルフロー以外の物流は、生産における物流の動きの中ではひとまず考慮しない。鉄フローの冶金加工過程は、エネルギーの消耗または二次エネルギーの産出を伴うことがあり、各種のエネルギーは形式の違いによって異なるエネルギーフローネットワークを構成する。鉄フローは大量のエネルギー(熱焼結砿やコークス、高温溶鉄、高温溶鋼、高温ビレット鋼など)を帯びているが、この部分のエネルギーは、メインの物流加工進行過程で直接利用される以外の部分について、エネルギーフローシステムの一部として考慮しない。一般的には、単独で体系をなすエネルギーフローネットワークだけを考慮する。これは主に、異なるガスの産出--分類--保存--利用システム、電力システム、気体・動力分類製造・調節システムなどのエネルギーフローシステムにかかわる。電力サブネットワークは、生産過程におけるほとんどの設備の通常稼働に動力を提供し、各生産設備や動力設備、補助設備などの電力利用需要を満たす。企業は、外部の電気エネルギーを購入するか企業自身のガスや余熱、余圧で発電するかして、電力サブネットワークを形成する。ガスサブネットワークにおいては、コークス炉と高炉、転炉が、物理・化学反応と物質変化を通じて、コークス炉ガスと高炉ガス、転炉ガスをそれぞれ産出する。これらのユニット設備は、エネルギー利用設備であると同時に、二次エネルギーの各種ガス製品の産出設備でもある。ガスエネルギー製品の産出と流動、応用は、ガスサブネットワークを形成する。ガスは主に設備の加熱に用いられ、余ったガスは発電に用いることができる。鉄鋼企業はさらに、酸素ガスや窒素ガス、ヘリウムガス、圧縮空気などの特殊な気体と動力を保証する必要がある。各自の輸送パイプラインを通じて、高炉や転炉、精錬炉などのユニット設備に、生産過程の必要を満たす気体を提供する。このほか生産進行過程においては、蒸気(余熱ボイラーから産出)や余圧(高炉炉頂)などの余熱・余剰エネルギーの産出と利用の問題もある。種類の異なる気体がそれぞれ動力サブネットワークを形成する。そのうち余熱と余圧も発電に用い、電力サブネットワークに入ることができる。異なるネルギー媒体によって構成された各エネルギーサブネットワークも、製造プロセスの主体工程・現場設備の製造ユニットで合流し、工程における必要を満たすために相互に協調する。

2.2 鉄鋼企業主要情報化システム

 鉄鋼製造過程のマテリアルフローとエネルギーフローの進行状況と生産制御情報はいずれも、企業の情報システムを借りて表現され、情報システムの情報フローを通じて生産の順調な進行とエネルギーの有効利用を指導する。鉄鋼企業の生産進行管理のレベルにおいては、情報化システムは図1のように示される。一般的には、企業資源計画システムと製造実行システム、プロセス制御システム(process control system,PCS)、エネルギー管理システムなどが含まれる。企業資源計画システムと製造実行システム、プロセス制御システムはそれぞれ、製造企業の生産運営の意思決定レベル制御レベル、実行レベルに上から下へと対応し、生産工程システム管理と生産実施制御の情報化システムとなる。エネルギー管理システムは、生産能力とエネルギー利用設備のモニタリングとエネルギー管理を行う情報システムであり、エネルギーデータの収集を担い、生産過程全体のエネルギーに対して管理と分配を行い、企業のエネルギーの意思決定を補助する。現在、企業のエネルギー管理システムは基本的に、相対的に独立した情報システムとなっており、生産指揮・実行システムとの連携は限られている。

図1

図1 鉄鋼企業の主要情報化システム

Fig.1 Main information systems in the iron and steel enterprise

 具体的には、企業資源計画システムは、企業運営の全体に向けた情報化管理システムであり、一般的には、生産制御(計画と製造)、物流管理(流通と調達、ストック)、財務・人的資源管理などの機能モジュールを含み、マテリアルフローやエネルギーフロー、資金フローなどの計画制御にかかわる。販売に基づく生産の方式を通じて生産計画や資源計画などを制定し、鉄鋼製造プロセスに対する総体配置とシステム制御を行う。製造実行システムは、工場やラインのレベルに分かれた製造実行システムであり、製造過程の資源の平衡と生産計画の実施を考慮し、製品やロットに注目し、鉄鋼生産における製造過程(製鉄--製鋼--精錬--連続鋳造--圧延など)の各工程と主体設備を通じて生産の実施と管理を行い、企業資源計画システムとプロセスを協調させる進行の制御である。同時に生産実行の関連情報の収集を担い、生産管理・制御活動の情報が集まるキーポイントとなり、上層の企業資源計画システムと下層の製造ユニット設備プロセス制御とを協調させる架け橋となる。プロセス制御システムは、具体的な冶金または加工生産過程をターゲットとし、プロセスの各主要工程の現場設備上の生産工法プロセス制御や生産データ収集、プロセスの進行管理指令の実行などを主に担い、具体的な生産過程の順調な進行を確保する。エネルギー管理システムは、生産進行過程におけるエネルギー利用に対して分散制御と集中管理を行う情報化管理システムであり、企業資源計画システムと製造実行システム、プロセス制御システムと連携し、鉄鋼生産における生産設備とエネルギー利用設備をリアルタイムでモニタリングし、エネルギー情報を収集し、加工・分析・処理し、エネルギーの使用を有効に予測し、合理的なエネルギー需要計画を制定し、エネルギーの管理水準と利用効率を向上させる。

 生産プロセスにおける主要工程の現場設備は、生産システムとエネルギーシステムの主要なモニタリング対象であり、生産実行とエネルギー消耗、二次エネルギー産出、データ収集の土台を構成し、生産システムとエネルギーシステムの情報のインタラクションと協同の土台ともなる。エネルギーシステムは、すべてのエネルギー利用・生産設備のモニタリングにかかわる。だが現在の鉄鋼企業の生産管理とエネルギーの情報化システムは多くが単独で構築されており、進行過程においては情報のインタラクションが欠け、生産とエネルギー、資源の供給がマッチしていないなどの問題があり、エネルギーの需要に基づく供給と有効な利用を難しくしている。このため有効な協同最適化方法を探究し、協同最適化メカニズムを構築し、生産とエネルギー情報システムの間の疎通を強化することで、マテリアルフローとエネルギーフローの協同最適化を促進し、生産効率とエネルギー利用効率を高める必要がある。

3 鉄鋼製造プロセスにおけるマテリアルフローとエネルギーフローの協同

3.1 製造ユニット上の協同

 製造プロセスの工程の現場設備から構成される製造プロセスネットワークのノード上では、鉄フローの冶金または加工過程で化学的・物理的変化が発生し、材料やエネルギーの消耗や変換が起こる。任意の現場設備に対し、流入・流出する物質の変換とエネルギーを分析することにより、当該現場設備の物質とエネルギーの結合関係を得ることができる(図2)。任意の工程i(合計n個の工程があると仮定、i=1,2,...,n)の現場設備x(i,j)においては、前の工程からこの設備に流入するマテリアルフロー、主に鉄マテリアルフローfm(i,j)inは、エネルギーフローfq(i,j)inを帯びて現場設備に流入する(mとqはそれぞれ、マテリアルフローの変数とエネルギーフローの変数を示す)。生産過程においては、原料または補助材料などの材料fm(i,j)aを加えたり、エネルギーfq(i,j)aを加えたりする必要もありえる。生産加工後に排出される廃棄物はfm(i,j)w、加工過程のエネルギーロスはfq(i,j)wで示される(現場設備のそのものの性質とインプットに関係する)。加工の終了後、循環利用可能物質fm(i,j)rは対応する補助マテリアルフローネットワークに流入し、利用可能なエネルギーまたはエネルギー源fq(i,j)rはエネルギーフローネットワークに流入する。加工の終わった鉄マテリアルフローfm(i,j)outは特定の主体設備から流出し、次の工程に入り、エネルギーfq(i,j)outを帯びて出ていく。

図2

図2 設備上のマテリアルフローとエネルギーフローの結合関係

Fig.2 Coupling between materials flow and energy flow in unit manufacturing equipment

材料平衡と熱平衡(エネルギー保存)、材料とエネルギーの転換関係を通じて以下のように分析できる。

 設備上のマテリアル平衡関係:

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 設備上のエネルギー平衡関係:

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 転炉設備を例としたマテリアルとエネルギーの分析は図3に示す通りである。現場設備上のマテリアルフローとエネルギーフローの分析を通じて、マテリアルフローとエネルギーフローの結合と協同最適化を行う。鉄フローの資源条件や加工任務、生産目標に対する理解を通じて、生産過程のエネルギー供給に対する需要を明確化し、物質転換に必要なエネルギーのインプットと可能な二次エネルギーのアウトプットの方式と数量を確定する。製造ユニットの生産情報とエネルギー情報のリアルタイムのモニタリングを通じて、製造実行システムと企業資源計画システム、エネルギー管理システムへのすばやいフィードバックを行うことにより、マテリアルフローとエネルギーフローの最適のマッチングの実現に条件を作り出す。

図3

図3 転炉設備のマテリアルとエネルギーの分析

Fig.3 Analysis of materials and energy in the basic oxygen furnace

3.2 製造プロセスの協同

 鉄鋼製造プロセスの角度から見ると、鉄マテリアルフローは、生産工法の要求に基づき、プロセスの主要工程の現場設備上で冶金または加工を行い、物質とエネルギーの転換と利用を完了するものとみなされる。生産計画とエネルギー計画の調節の協調によって、マテリアルフローとエネルギーフローの結合を実現することができる。製造プロセスに基づく協調関係は図4に示す通りである。

図4

COG--コークス炉ガス; BFG--高炉ガス; LDG--転炉ガス

図4 鉄鋼製造プロセスネットワークにおけるマテリアルフローとエネルギーフローの関係

Fig.4 Relationship between materials flow and energy flow in the iron and steel manufacturing process network

 図4からわかるように、生産計画と調整の対象である鉄マテリアルフローの生産計画を土台とし、エネルギーフローが特定の位置でネットワークのインタラクションを行うようにする。各種の異なる形式のエネルギーフローネットワーク中では、生産能力とエネルギー利用の関係に基づき、進行ネットワークのマッチングを行う。エネルギー利用計画と生産計画を連携させ、生産作業計画を通じることにより、各冶金工程において必要なエネルギー供給計画を確定すると同時に、二次エネルギーの生成計画と二次資源量を確定し、エネルギーフローネットワークの需求のマッチングに用いることができる。エネルギーフローネットワークのエネルギーマッチング過程においては、エネルギー平衡と平衡分析方法を利用し、エネルギーの量と質の評価を行い、エネルギーの質と量に見合った供給と転化、利用、さらにエネルギーのカスケード利用を通じて、エネルギーの分配をさらに最適化し、エネルギー利用効率を高め、省エネ・排出削減を促進する。

 ガスサブネットワークを例に取ると、コークス炉と高炉、転炉の鉄フロー冶金過程においては、冶金反応は、コークス炉ガスと高炉ガス、転炉ガスをそれぞれ産出する(図4)。ガスエネルギー製品は産出後、ガスの種類に応じて分類保存とユーザーへの供給がなされ、エネルギーシステムに入る。加熱炉や熱風炉などの熱工業設備に提供して燃料として利用すれば、余ったガスも発電に用いることができる。製造プロセスの角度から見ると、一方では、生産計画情報を知ることは二次ガス資源の産出の予測を助け、生産調整情報を知ることは予測を修正し精度を高めることができる。もう一方では、計画と調整の情報は、製造プロセス中のエネルギー利用設備のエネルギー需要を予測・修正し、ガス利用効率を高めることを可能とする。

 総体的に言って、鉄鋼製造プロセスのマテリアルフローとエネルギーフローの協同最適化は、設備上の鉄マテリアルフローのエネルギーフローとの協同下の製造工程からの有効な制御を行い、生産計画調整に基づく製造プロセスネットワーク進行状態に対する制御によって実現し、生産情報システムとエネルギー管理システム、両者の協調作用を発揮させる必要がある。

その3へつづく)

参考文献:

[39]. The Editorial Board of China Steel Yearbook. China Steel Yearbook. Beijing: Mechanical Industry Press, 2015 (中国鋼鉄工業年鑑編輯委員会. 中国鋼鉄工業年鑑. 北京: 冶金工業出版社, 2015)

※本稿は鄭忠,黄世鵬,竜建宇,高小強「鋼鉄智能製造背景下物質流和能量流協同方法」(『工程科学学報』2017年第39巻第1期、pp.115-124)を『工程科学学報』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司