第136号
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高可用性クラウドコンピューティングに基づく中国インテリジェント林業ビッグデータシステムの探究(その2)

2018年1月30日

李 清鋒: 東北林業大学数字化校園建設弁公室

アシスタント・エンジニア。主要研究テーマはインテリジェント林業とビッグデータ。

孔 明茹: 牡丹江医学院紅旗医院信息中心

黄 英来: 東北林業大学信息・計算機工程学院副教授

主要研究テーマはインテリジェント林業とモノのインターネットシステムの開発応用。

その1よりつづき)

2 中国のインテリジェント林業のシステムアーキテクチャー

 中国のインテリジェント林業のシステムアーキテクチャーは、クラウドコンピューティングやIoT、モバイルインターネット、ビッグデータなどの現代の通信技術を土台とし、「インテリジェント林業立体感知」「インテリジェント林業協同管理」「インテリジェント林業生態価値」「インテリジェント林業国民生活サービス」「インテリジェント林業総合管理」の5大体系をカバーする新型林業発展モデルである。インテリジェント林業の主要な特徴には基礎性と応用性、本質性が含まれる。インテリジェント林業の建設を通じて、最適化された生態、環境に配慮した産業、顕著な文明性を特性としたインテリジェント林業体系を最終的に形成する必要がある。中国インテリジェント林業のシステムアーキテクチャーをめぐって、本稿は、中国インテリジェント林業のデータ共有プラットフォームと林業のIoTシステムという新たな模索を革新的に打ち出し、林業発展の新形態に建設的な構想を提供するものである。

2.1 中国インテリジェント林業のデータ共有プラットフォーム

 中国林業情報の近代化構築には科学技術の革新が必要となる。本稿では、中国のインテリジェント林業のデータ共有プラットフォームという概念を提起する。これは、各林政業務システムモジュールからデータ資源共有センターに定期的にデータを通知し、その他の必要な業務システムも共有センターから関連林業資源データを読み取ることができるもので、林業データ資源の統合と共同構築、共有を実現するものである。北京市園林緑化局は情報化手段を利用し、各業務データ間の深い融合の強化を通じて、総合的な政策決定分析と対外公共サービスの能力を高めた。造林管理システムは、資源林政データを呼び出すことによって、伐採と焼け跡の更新の設計にデータによるサポートを提供する。管理部門は、林地の審査認可の際、造林と古樹名木のデータを呼び出すことにより、徴用・占用される林地内に重点造林プロジェクトや重点保護古樹名木、開発禁止エリアなどがないかを判断し、計画設計の際の調整に役立てる[12]。

2.2 林業IoTシステムの新たな模索

 長年の技術発展を経て、IoTはすでに、各産業に応用されている。林業IoTは、GISやGPS、RS技術、北斗衛星測位システムなどを核心とした林業「天網」システムで、無人機低空画像撮影モニタリングシステムを利用し、収集した画像資料をリアルタイムで返し、林業におけるIoTシステムの全面的で総合的な応用を実現し、林区資源の総合利用管理効率を高め、高解像度で全範囲をカバーする空中感知モニタリングシステムを構築するものである。馬建浦[13]は、有線通信やマイクロ波通信、衛星通信、モバイルインターネットなどのインテリジェント林業構築における応用の検討を通じて、インテリジェント林業構築において存在する通信技術の不足と今後の発展方向を指し示した。従福森[14]は、IoT技術サービスやIoT感知などの面から、インテリジェント林業構築の発展の新モデルを打ち出した。

 林業IoTシステムは、フロントエンド感知層とネットワークトランスポート層、林業IoTアプリケーション層に分かれる。

 林業IoT感知層:IoT技術は、近距離無線通信技術(NFC)や電波個体識別(RFID)、赤外リモートセンシング、GPSまたは北斗衛星測位システム、ガスセンサーなどの設備を通じて、林区情報のモニタリングや識別、収集を行い、林業管理の政策決定関連部門にデータを返送することを可能とする。感知層のセンサーデータ識別やエッジコンピューティングなどの技術の応用は、林業資源データの収集効率を高めた。

 林業IoTネットワークトランスポート層:林区における無線ネットワーク業務は、階層別の建設推進を通じて、次世代モバイルネットワーク通信技術5Gネットワークや林区の自己構築した超短波ネットワークセグメントの方式と結びつけ、林区の防火駐在ポイントや森林保護ステーションの無線ネットワークのカバーを実現する。無人機の低空撮影と画像データのリアルタイム送信を活用し、新世代通信技術の伝送ネットワークや無人機リモートセンシング測量技術と結びつけ、林区の各種資源の生長の軌跡を形成する。携帯電話やGPSモジュールを備えたPADなどの各種のスマート端末を通じて、時間や場所を問わずにアプリケーションシステムにアクセスできる。収集したデータは1分前後の間隔でクラウドコンピューティングコントロールセンターに伝送し、林業の各種の資源ベースを構築し、林業ビッグデータ分析・政策決定システムにデータのサポートを提供することができる。

 林業IoTアプリケーション層:林業IoTを、林区資源環境モニタリング、林区野生動植物保護モニタリング、林区防火安全モニタリング、林区病虫害モニタリングなどの分野に応用できる。森林と林区の防火ビデオ監視警報システムや防火指揮派遣システム、林地保護人員GPS管理システムを通じて、北斗衛星測位技術に基づいた林区生態スマートデバイスを設計し、林地保護員にスマートな提案を行う。

 林業IoTシステムは、情報の感知と収集、林業データの伝送、データ交換などの段取りを経て、インテリジェント林業ビッグデータシステムの建設にデータソースを提供することができる。インテリジェント林業ビッグデータシステムは、データクレンジングやモデル分析を通じて、政策決定者に政策決定管理の根拠を提供することができる。

3 高可用性クラウドコンピューティングに基づく中国インテリジェント林業ビッグデータシステムアーキテクチャー

 劉亜秋ら[15]は、インテリジェント林業の発展における高信頼性クラウドプラットフォームの応用を初期的に検討した。本稿は、高可用性クラウドコンピューティングに基づくインテリジェント林業ビッグデータシステムの探究モデルを打ち出した。その核心部分は、高可用性クラウドコンピューティング資源センターと、ビッグデータマイニング結果の分析からなる。ビッグデータマイニング分析は、林政とその改革などの関連するスケジューリングストラテジーや補助政策決定システム、GISモデリング、データクレンジングなどの技術と組み合わせ、インテリジェント林業の構築管理に根拠を提供する。高可用性クラウドコンピューティング資源センターは、林業資源モニタリングシステムや林業資源データの収集・伝送などのシステムに、基盤となる物理的サポートと技術サポートを提供し、林業資源のコンピューティングクラウドの建設コストと運営コストを引き下げることができる。林業基礎データベースとマルチディメンショナルなデータの収集を背景とし、林業クラウドコンピューティングセンターや林業IoT技術、ビッグデータ分析などの情報技術を下支えとし、ビッグデータマイニング分析技術を応用し、一体化された林業ビッグデータ分析システムを構築することが可能となる。

3.1 システムアーキテクチャー

 中国のインテリジェント林業ビッグデータのシステムアーキテクチャーは、IaaS層とPaaS層、SaaS層の3つの部分に分けられる。このうちIaaS層は基盤サポートプラットフォームを提供し、PaaS層は統一的なデータインターフェイスを提供し、SaaS層は林業ビッグデータ分析層である。具体的なアーキテクチャーを図2に示した。

図2

図2 高可用性クラウドコンピューティングに基づく中国インテリジェント林業ビッグデータシステムアーキテクチャー

 IaaS層は、インテリジェント林業ビッグデータシステムの基盤サポートサービスを受け持ち、分散ストレージやネットワーク計画、ファイアウォールなどを含み、林業情報化建設に安全で信頼できる物理的な稼動環境を提供する。林業のパブリッククラウドとプライベートクラウド、ハイブリッドクラウドのサポートのカギとなる。

 PaaS層は、林業クラウドサービスプラットフォームの重要な一部をなし、SaaS層とIaaS層の間をつなぐ役割を果たし、林業従事者のアプリケーション開発に、コンポーネントライブラリーや、データを統合するAPIインターフェイス、データのセキュリティー認証・管理などのサービスを提供する。PaaS層は、国家・省・市・県の一体化した各級の林業部門の各種の専門業務システムに、アプリケーションミドルウェアやデータベースミドルウェア、クラウドサーバーなどの基礎アーキテクチャーによる下支えを提供する。各種の林業情報システムによる構造化データと非構造化データの収集(人工収集、能動受信、受動受信、正確な増分データ収集など)は、SaaS層の林業ビッグデータ分析システムに信頼性の高いデータソースを提供することができる。

 SaaS層は、各級の林業管理機構に、科学的な政策決定に必要なマルチディメンショナルな情報サポートや情報分析サービスを提供する。インテリジェント林業のワンストップ式ビッグデータ分析システムを構築し、構造化データと非構造化データの事前処理や分析モデルの構築、タスクスケジューリング管理などの方法を通じて、インテリジェント林業の発展に向けた建設の構想を提供する。

3.2 林業ビッグデータシステムの特徴

 林業の各業務システムのデータは類型が多様で、マルチディメンションやマルチスケール、マルチシーケンス、多元性などの特性を備えている。林業資源モニタリング技術は豊富・多様で、構造化データと非構造化データの収集を通じて、歴史的なデータと結びつけ、インテリジェント林業ビッグデータ分析モデルを構築し、林業資源管理の政策決定の合理性と科学性を高め、林業従事者に理論的な指導と実行可能性報告をより良く提供するものである。林業ビッグデータシステムの主要な特徴は次の通り。

3.2.1 林業ビッグデータデータソースの特徴

 林業ビッグデータソースには構造化データと非構造化データ、データ共有プラットフォームがあり、国家林業局の発表する中国林業データ開放共有プラットフォームを公共データ資源の基礎データベースとして、各省・市・県などの林業部門のデータと結びつけ、林業システムの各部門のデータ資源の共同構築と共有を促進することができる。

 林業業務システムは雑多で、データ収集方式がさまざまで、入力基準がまちまちであることから、各種のデータの概念が不統一となっている。構造化データと非構造化データのクレンジングと記憶、マイニング、分析を行うことにより、基準の統一したデータソースを得ることができる。

3.2.2 林業ビッグデータの方法の特徴

 ブロックデータとは、各種の分散したポイントデータと分割されたバーデータのビッグデータを、一つの特定のプラットフォーム上にまとめ、これに持続的な重合反応を起こさせることを指す。この「持続的な重合」の実質は、一種の関連性による集合であり、データのマルチディメンショナルな分野や学科をまたいだ関連にある。ブロックデータは、ビッグデータの発展の高次形態であり、データ価値のマイニングに技術ソリューションを与えるものである[16]。本稿はこれに基づき、林業ブロックデータの概念を提出する。林業ブロックデータとは、データのマルチディメンショナルな融合と関連分析を通じて、よりスピーディーで正しい有効な判断と予測を林業の発展に提供するもので、その特徴は、林業データの融合を強調し、林業の従事者と管理者に有効で信頼できる指導の根拠を提供することにある。

3.2.3 林業ビッグデータ共有交換の特徴

 林業ブロックデータは開放と共有を強化し、各業務システムのデータ関連度が高いほど、重合分析能力はより高くなり、重合に基づく林業システムの関連性マイニングと展開分析の能力も高くなる。林業ビッグデータの共有交換の特徴は、データの融合と交換を強調することにある。林業の各業務システムは、統一的なインターフェイスを通じて、共有センターとのデータの送信と読み取りを行い、各業務システム間の情報の共有交換や林業資源モニタリングデータの管理を実現し、林業の政策決定の管理や投資、林地権の確定などに強大なデータサービスの下支えを提供する。

4 発展の展望

 中国は現在、経済社会発展の新たな段階にあり、林業の科学管理事業には、新たなより高い標準と要求が打ち出されている。高可用性クラウドコンピューティングに基づくインテリジェント林業ビッグデータシステムの探究を通じて、インテリジェント林業の建設と林区のマクロな管理と政策決定に科学的な参考と実施方式を提供し、情報のタコツボ化を是正し、資源システムの重複的な投資建設を回避する。林業資源クラウドの構築と多数の関係者の協同推進、深いレベルの融合発展を通じて、科学技術成果と実用技術のすばやい転換と実施を進め、林業の実際の業務との結合を実現し、林業の改革革新をよりいっそう推進する。

4.1 林業ブロックデータ研究の強化

 林業情報化は、国家情報化発展の重要な一部であり、インテリジェント林業の発展と実施を推進するには、林業業務の総合データの交換と共有を実現し、情報資源の配置の最適化をはかる必要がある。林業ブロックデータの発展と研究の加速は主に、林業のクラウドプラットフォーム化と林業データの関連度、重合力という3つの重要なポイントから着手される。中国のクラウドコンピューティングなどの分野でのスタートは早かったとは言えない。新技術の研究と応用を強化し、ブロックデータ技術の研究開発の速度を速め、インテリジェント林業の実施に技術的な保障を提供する必要がある。林業ブロックデータ技術の応用は、林業情報サービスに下支えを提供し、林業ビッグデータの建設と発展に参考を提供するものとなる。

4.2 インテリジェント林業ビッグデータにおける通信技術の応用研究の強化

 中国インテリジェント林業のビッグデータシステムの発展は、ハイクオリティなネットワークデータ伝送技術と切り離すことができない。だが林業における各種通信技術の応用には、伝送方式が雑多で効率が高くないなど多くの不足が存在する。このため、新世代モバイルインターネット技術の開発を加速し、林区の無線ネットワークのカバーを強化し、林業資源のリアルタイムモニタリングの水準を高め、モバイルインターネットとIoTの統合を推進し[17]、インテリジェント林業ビッグデータにおける通信技術の応用を促進する必要がある。

4.3 林業ビッグデータシステムの規格体系の構築強化

 インテリジェント林業ビッグデータの発展は、長期的な絶え間ない改善のプロセスであり、林業発展のプロセスにおいては、技術や規格の不統一という状況を免れることができない。インテリジェント林業ビッグデータ発展の統一的な計画を通じて、インテリジェント林業ビッグデータシステムの標準規格体系の構築を強化し、これらの林業データ資産を活用する必要がある。林業ビッグデータ研究を通じて、林業の管理や統治、政策決定などにサービスを提供し、インテリジェント化の方向への林業の発展を推進することができる。

 中国の林業ビッグデータ技術は依然として発展の初期にある。高可用性クラウドコンピューティングやIoT、新世代通信などの技術との結合を通じて、林業の情報化建設を大いに推進し、各級の林業情報資源クラウド共有プラットフォームを協同構築しなければならない。さらに林業政策決定システムの構築の加速を通じて、信頼できるスマート化された科学的な政策決定サービスシステムを林業従事者に提供し、林業のマクロな政策決定に科学的根拠を提供し、インテリジェント林業の発展を促進し、林業システムの効率的な協同管理、林業の立体感知、林業の突出した生態価値を特徴とする新型林業発展モデルを最終的に実現し、インテリジェント林業の価値を発揮し、インテリジェント林業が国民生活に本当に恩恵を与えられるようにする必要がある。

(おわり)

参考文献:

[12] 郴州新聞網.林業邁入"智慧時代"[EB/OL]. (2016-04-22)[2017-03-18]. http://www.czxww.cn/2016 /04/22/103858504237.html.

[13] 馬建浦.通信技術在我国智慧林業建設中的応用[J]. 世界林業研究,2016,29(4):72-75.

[14] 从福森.基于物聯網技術的服務、感知及管理智慧林業建設研究[J]. 中国林業産業,2016(5):52-53.

[15] 劉亜秋,景維鵬,井雲凌.高可靠雲計算平台及其在智慧林業中的応用[J]. 世界林業研究,2011,24(5):18-24.

[16] 連玉明.重新定義大数拠[M]. 北京:機械工業出版社,2017:7-8.

[17] CHO S E,PRAK H W. Government organizations'innovative use of the internet: the case of the twitter activity of South Korea's Ministry for Food,Agriculture,Forestry and Fishe ries[J].Scientometrics,2011,90(1):9-23.

※本稿は李清鋒 孔明茹 黄英来「基于高可用雲計算的中国智慧林業大数拠系統探究」(『世界林業研究』2017年第6期、pp.63-68)を『世界林業研究』編集部の許可を得て日本語訳/転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司