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オルドス盆地のタイトガス貯留層における間隙流体による地震予測方法(その2)

2018年 2月28日

楊 華: 中国石油天然ガス集団公司教授級シニアエンジニア

博士。石油地質総合研究および石油・ガス探査開発管理業務に従事。

王 大興: 低浸透性油ガス田探査開発国家工程実験室、中国石油長慶油田公司探査開発研究院教授級シニアエンジニア

博士。石油の地球物理学的手法による研究および地震による貯留層の予測研究に従事。

張 盟勃: 低浸透性油ガス田探査開発国家工程実験室、中国石油長慶油田公司探査開発研究院

王 永剛: 中国石油長慶油田公司探査開発研究院

劉 力輝: 成都理工大学

張 盟黎: 中国石油長慶油田公司探査開発研究院

その1よりつづき)

2 応用例

 多くの岩石力学的パラメータの中でも、圧縮係数は高密度貯留層の研究において非常に重要なパラメータである[12]。実際の応用成果や油田掘削データならびに地質状況の比較の結果、岩相制御下において計算された圧縮係数により、高密度貯留層におけるスイートスポットの発達エリアが指定できることがわかる。ガス飽和度に対する圧縮係数の感度はポアソン比、弾性係数および減衰等のパラメータを明らかに上回ることから[13]、圧縮係数はタイトガス貯留層のスイートスポットを描き出す重要なパラメータであると言える。蘇里格ガス田の盒8段タイトサンドのガス含有度を評価する際に、圧縮係数はガス層、ガス層以外、水層、乾燥層の順に小さくなるため、圧縮係数は蘇里格ガス田の盒8段ガス層の研究において重要な意味を持つ。

2.1 掘削エリア概況

 蘇里格ガス田は典型的な大型の岩性ガス層で、下部二畳系の石盒子層8段は上下2段に分けられる。貯留層は盒8下段の水中分流路に堆積した岩屑質の石英砂岩が主で、盒8段砂岩の孔隙率は4%~14%、平均孔隙率は8.8%で、浸透率は主に(0.05~5.00)×10−3 μm2、平均浸透率は0.872×10−3μm2[3]で、典型的なタイトガス田である[14-16]。しかし、大面積の高密度貯留層を背景に相対的高浸透貯留層が局地的に発達し、水中分流路中部の砂岩を主としており、岩性の多くは粗砂岩で分布は非連続的で、貯蔵量と生産能力の面でスイートスポットエリアとなっている。貯留空間は残留粒子間孔隙、溶蝕孔隙、粒子間孔隙を主としており、スイートスポットエリアは中から高程度のガス飽和度(55%~85%)で、マイクロメートルオーダーおよびサブミクロン~ナノメートルオーダーの2つの孔隙口体系が発達し、貯留層の多孔性流能力と孔隙管の大きさの関係を分析したところ、孔隙管総量の25%未満の割合しかない大口径の孔隙口の浸透率への貢献度は80%に達することが分かった。このため、相対的に孔隙口の浸透率が高いエリアを探究し、ガス・水分布を予測することは、ガス田の効果的開発を制約する鍵となる[17-18]。物理検層による岩石の物理学的分析の結果、圧縮係数はガス飽和度の変化に対して最も敏感で、気体・液体両相の差を顕著に反映しうることが判明した。また、圧縮係数は縦横波弾性パラメータの重合前逆解析により求められ、高密度貯留層におけるスイートスポットを予測する重要なパラメータであることがわかった。

2.2 応用例

2.2.1 掘削後方法の検証

 蘇里格地区におけるフルデジタルのマルチウェーブ地震探査は2003年に始まり[3,19]、2010年までにフルデジタルの3成分3次元反射法地震探査を103 km2、フルデジタルの3成分2次元反射法地震探査を5 360 km完了させた。また、シングルポイントにおける3成分デジタル検波器による受信、深井戸における励起を採用した。実施回数は100回、観測システムは6035-45-10-45-6035である。低減速領域の薄い(50 m未満)砂漠エリアでの探査については、3つの補正値ごとに重合した網羅回数は30回以上に達し、データのSN比が高かったため[18]、縦横波統合逆解析によりクオリティの高い縦横波速度と波動インピーダンス断面を得た。図2の圧縮係数の計算フローにより、地震岩相における断面予測を基礎に圧縮係数を計算した結果を図7eに示す。

図7

図7 蘇里格ガス田の地震重合前逆解析縦波波動インピーダンス(a)、横波波動インピーダンス(b)、ポアソン比(c)、岩相(d)および圧縮係数断面(e)

 図7の断面には8つのガス井があり、S1、S2とS8井戸のガス試験生産量はそれぞれ14.7×104、4.5×104、9.8×104 m3/dで、産業用ガスの高生産量井戸であった。S3、S5、S7井戸のガス試験生産量は、それぞれわずか0.8×104、1.4×104、1.5×104 m3/dで、低生産量井戸であった。一方、S4、S6井戸はガス水生産井戸で、S4井戸のガス生産量は3.1×104 m3/d、水生産量は4.5 m3/dで、S6井戸のガス生産量は2.0×104 m3/d、水生産量は7.5 m3/dであった。

 掘削後検査の結果、以下のことが明らかになった。高ガス含有貯留層は高横波波動インピーダンス(赤—黄)、低ポアソン比(赤—黄)、高圧縮係数(赤—黄)で、その例はS1、S2、S8井戸近辺の逆解析断面に表れている。低ガス含有貯留層は高横波波動インピーダンス(赤—黄)、中—低ポアソン比(黄)、中圧縮係数(黄)で、その例はS3、S5、S7井戸近辺の逆解析断面に表れている。また、ガス水層は高横波波動インピーダンス(赤—黄)、中ポアソン比(黄)、低圧縮係数(緑—青)で、その例は水生産量の高いS4、S6井戸近辺の逆解析断面における中高圧縮係数層が薄すぎるため、この井戸がフラクチャリングするとガスと水が同時に発生し、圧縮係数の予測結果と実際のガス試験結果はよく一致する。

2.2.2 掘削前の流体検査

 試掘ガス井E01は蘇里格ガス田の北部にある。ガス井近隣の試掘、ガス試験データによれば、このエリアの盒8段では砂岩貯留層が比較的発達し、ガスが普遍的に含まれているため、探査において有利な目標エリアである。また、堆積相の変化によりもたらされる砂岩岩体の薄化または貯留層物性の劣化、ガス層の厚さの薄化、かつ、近隣井戸における水の発生により、一定の地質学的リスクが存在する。地震データによれば(図8を参照)、当該ガス井の盒8段の重合前逆解析による横波波動インピーダンスは高く(赤)、ポアソン比は低いことから(赤—黄)、このガス井では砂岩岩体が発達し(砂層の予測厚さは30 m)、かつガス層が存在し、圧縮係数制御断面により盒8段下部ではガス層が発達し、盒8段上部には水が含まれることが分かる。このガス井の実際の掘削においては盒8段で砂岩が35.9 mあり、物理検層により盒8段下部にはガス層が10.1 m、ガス水層が2.5 mあり、盒8段上部にはガスが含まれ、水層が15 mあることがわかった。ガス試験によりオープン・フロー・キャパシティは10.119 5×104 m3/dで、水が7.5 m3/dが発生したことから、地震予測と実際の掘削結果がかみあうことがわかる。

図8

図8 蘇里格ガス田のE01ガス井における地震予測

横波波動インピーダンス(a)、ポアソン比(b)、岩相(c)、圧縮係数(d)および盒8段総合物理検層図(e)

 最近、掘削が完了したE02ガス井の地震予測断面によれば(図9を参照)、この井戸の盒8段における重合前逆解析による横波波動インピーダンスは高く(赤)、ポアソン比は低いことから(赤—黄)、この井戸では砂岩岩体が発達し(砂層の予測厚さは30 m)、かつガス層が存在し、圧縮係数制御断面により盒8段下部ではガス層が発達し、盒8段上部には水が含まれることが分かる。このガス井の実際の掘削においては盒8段で砂岩が32.3 mあり、物理検層により盒8段下部にはガス層が4.8 mあり、盒8段上部にはガス層が5.3 mあり(試掘待ち)、地震予測と実際の掘削結果がかみあうことがわかる。

図9

図9 蘇里格ガス田のE02井における地震予測

横波波動インピーダンス(a)、ポアソン比(b)、圧縮係数(c)断面

2.3 圧縮係数による流体識別の応用条件

 地震データに基づいて貯留層の圧縮係数を推算し、間隙流体の特徴(ガス含有度)に関する予測を行うことは新たな模索である。地質の応用においては、まずは貯留層の圧縮係数と流体飽和度の間に一定の関係があるかどうかについて考慮する必要があるが、これには岩石に対する大量の物理学的分析が必要となる。次に、岩石の物理学的モデリングによる流体代替分析の結論について研究し、ガス含有度の感度レベルについて評価をする必要がある。このほか、地球物理学的には、貯留層と非貯留層の区分における可能性と信頼度について考慮しなければならない。最後に、重合前の弾性逆解析を満たすことのできる高品質な地震のオフセットごとの重合データが必要であり、最良の応用条件とは、工事エリアに対して地震3成分の探査により得られた高品質な縦横波データがあることである。これらの応用範囲と適用性は、重合前地震データを利用した高密度貯留層における間隙流体の性質の予測における必要条件であり、貯留層の地質応用条件のみならず、地震重合前の逆解析弾性パラメータによる高品質なデータ基盤が必要である。

3 結論

 蘇里格ガス田の下部二畳系の石盒子層8段の高密度貯留層における岩石の大量の物理学的分析をもとに、圧縮係数の制御による間隙流体の特徴の予測方法を提起した。これは、地層の岩相識別を基盤に、孔隙における気体と液体の両相における圧縮係数の差を利用した貯留層の流体性質の識別であり、地震の重合前データを利用することで、逆解析による波動インピーダンスと速度を安定的に計算に利用することができ、予測の安定性と精度を向上させることができた。この方法は、蘇里格ガス田の下部二畳系の石盒子層8段の高密度貯留層におけるガス層、ガス水層、水層の識別に用いられ、実際の掘削結果と非常に良くかみあい、かつ、蘇里格のタイトガス田におけるスイートスポットの予測や流体識別について、実際の井戸の配置において非常に良い予測効果が得られた。圧縮係数の獲得は、地震の原始データの質と地震のオフセットごとの重合イメージの質により制約を受けるため、研究者に重視される必要がある。

(おわり)

記号:

Cc——圧縮係数,GPa-1;K——体積弾性率,GPa;m1,m2,n1,n2——座標変換係数,無次元数;vp——縦波速度,m/s;vs——横波速度,m/s;x,y ——原座標系;X,Y ——新座標系;Zp——縦波波動インピーダンス,kg/(m2·s);Zs——横波波動インピーダンス,kg/(m2·s);ρ ——密度,kg/m3

参考文献:

[3] 楊華, 王喜双, 王大興, 等. 蘇里格気田多波地震勘探関鍵技術[M]. 北京: 石油工業出版社, 2013.
YANG Hua, WANG Xishuang, WANG Daxing, et al. Critical technology for multi-wave seismic exploration in the Sulige Gasfield[M]. Beijing: Petroleum Industry Press, 2013.

[12] 王大興, 劉力輝, 王永剛. 致密儲層岩石力学参数予測方法研究及応用[R]. 上海: 第三届地震岩石物理学術研討会, 2014.
WANG Daxing, LIU Lihui, WANG Yonggang. The study and application of the prediction method for the prediction method of the tight reservoir rock mechanics parameter[R]. Shanghai: 3rd Seismic Rock Physics Academic Seminar, 2014.

[13] 楊双定. 縦横波参数提取與偶極横波老井資料重新処理[R]. 西安:中国石油集団測井有限公司長慶事業部, 2013.
YANG Shuangding. Primary wave and shear wave parameters extraction and dipole shear wave data of old well to treatment[R]. Xi’an: Changqing Bureau, Well Logging Cooperation, CNPC, 2013.

[14] 楊華, 付金華, 劉新社, 等. 蘇里格大型致密砂岩気蔵形成条件及勘探技術[J]. 石油学報, 2012, 33(S1): 28-35.
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[19] 王大興, 張盟勃, 陳娟, 等. 多波地震技術在致密砂岩気蔵勘探中的応用[J]. 石油地球物理勘探, 2014, 49(5): 946-953, 1005.
WANG Daxing, ZHANG Mengbo, CHEN Juan, et al. Application of multi-wave seismic in tight sandstone gas reservoir exploration[J]. Oil Geophysical Prospecting, 2014, 49(5): 946-953, 1005.

※本稿は楊華、王大興、張盟勃、王永剛、劉力輝、張盟黎「鄂爾多斯盆地致密気儲集層孔隙流体地震預測方法」(『石油勘探与開発』2017年第44卷第4期、pp.513-520)を『石油勘探与開発』編集部の許可を得て日本語訳/転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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