第139号
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木材プラスチック複合材料の応用の現状と発展の動向(その1)

2018年4月27日

劉 彬,李 彬,王 懐棟,陳 希: 北京工業大学循環経済研究院

龔 裕: 北京工業大学循環経済研究院

博士、研究員。資源環境と循環経済の研究に主に従事。

概要:

中国内外の木材プラスチック複合材料の応用の現状と最新の研究成果を紹介し、近年の木材プラスチック複合製品業界が直面する問題を総括し、木材プラスチック複合材料の発展の見通しを展望した。

キーワード:木材;プラスチック;複合材料;性能;応用

 経済の急速な発展に伴い、自然資源的に対する人々の需要は日増しに高まっている。木材は幅広く応用される自然資源の一つであり、その需要量は直線的に成長している。木材の供給不足はすでに、世界の多くの国が直面する広範な問題となっている。中国の森林率は21.63%にすぎず、木材自給率は35.4%にとどまり[1]、需要の大部分は輸入に頼っている。新型の環境保護複合材料としてのプラスチックは、耐腐食性が高い、質量が軽い、製作コストが低いなど長所を持ち[2]、幅広く応用されている。だがこれに伴って、大量のプラスチック廃棄物も問題となりつつある。関連部門の統計によると、2015年の中国のプラスチック製品の生産は8000万tで、その生産量は世界の年間総生産量の4分の1を占めた[3]。木材供給量の不足とプラスチック廃棄物の処理の問題は一刻も早い解決が待たれており、この時運に乗って生まれたのが木材プラスチック複合材料である。

 木材プラスチック複合材料は、プラスチック木材複合材料とも呼ばれ、WPCと略称される。木粉とプラスチックを一定の割合で混ぜ合わせ、腐食耐性が高く、耐酸・耐アルカリ性も高く、力学的性能に優れ、熱的性能も比較的安定した一種の複合材料を作る[4]。木材プラスチック複合材料は、その優れた力学的性能によって、建築材料や室内装飾などの分野で幅広く応用されるようになった。

1 中国内外の木材プラスチック複合材料の応用の現状

1.1 中国国外の木材プラスチック複合材料の応用の現状

 木材プラスチック複合材料は欧州で生まれた。20世紀初頭、フェノールホルムアルデヒド樹脂と木粉からなる複合材料が発明され、その後、木材プラスチック製品の研究の幕が上がった。当初、木材プラスチック複合材料に使用されたプラスチックの母材は一般的に、成形されていない熱硬化性プラスチックのプレポリマーだった[5]。1960年代初めになって、熱可塑性プラスチックを母材とした木材の処理によって、新型の熱可塑性材料木材プラスチック製品が作られるようになった。この主の製品は一般的に、木粉と熱可塑性プラスチックを高速ミキサーと押出機に入れ、均等な混合や造粒、押出成形、冷却、定方向切割などを経て製造される。

 木材プラスチック複合材料の応用分野を広げるため、S. Migneaultら[6]やD. Alvarez-Valenciaら[7]、N. Ayrilmis[8]などは、木材の種類や木粉の添加量、木材プラスチック複合材料の性能に対する木粉粒径の影響を研究した。S. MigneaultらとD. Alvarez-Valenciaらの研究によると、木材の種類について言えば、種類の異なる木材は、その中に含有される成分がそれぞれ異なる。木材の各成分は、木材プラスチック複合材料に対して異なる影響を及ぼす。セルロースは、木材プラスチック複合材料の力学的性能を高めることができるが、木材プラスチック製品の耐候性と熱安定性には不利に働く。ヘミセルロースは、木材プラスチック製品全体の性能に副作用を及ぼす。リグニンは、木材プラスチック製品の熱安定性と耐候性を高めることができるが、紫外線劣化耐性を低下させる。抽出成分は木粉のプラスチック母材における分散に不利に働く。熱帯地区の木材はセルロースの含有量が比較的高く、亜熱帯地区の樹種はリグニンの含有量がいくらか多い。木粉添加量について言えば、木粉添加量が少なすぎると、溶融したプラスチック母材で木粉が有効な構造を形成できず、「孤島」の形式でプラスチック母材に存在することになり、力学的性能の強化という効果を生むことができない。木粉添加量が多すぎると、木粉の分散が均等でなくなり、力学的性能の低下幅をむしろ拡大させる。K. Behzid[9]は、大量の研究を通じて、適切な木粉添加量を導き出し、その質量分率は20%~32%であるべきだとした。S. Migneaultら[10]は、木粉の粒径を重点とした研究と検討を行い、木粉の粒径は、木材プラスチック製品の性能に対して、木材の種類や木粉の添加量よりも際立った影響を与えるとの結論に至った。一般的には、木粉の粒径が小さくなるほど、木材プラスチックの力学的性能は高まる。だが実際には、木粉の粒径がある範囲を超えると、その力学的性能は逆に下がる。これは木粉の粒径が小さくなるほど、木粉顆粒の間の凝集作用が高まり、顆粒が応力集中を引き起こす確率が高まり、複合材料内部で微細なシルバーストリークを生みやすくなり、材料性能を損なう触発点となりやすいためである。木粉の粒径は80~100メッシュが適切である。

 I. Michalska-Pożogaら[11]とB. L. Shahら[12]は、木材プラスチック複合材料の総体性能に対する各プラスチック母材[ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)]の影響を研究した。その結論によると、PPプラスチックは側鎖メチルを帯びていることから、室外使用の過程では日照の影響を受けて化学結合が断裂し、劣化や退色、力学的性能の低下などの問題が起こりやすい。PVCは、弱極性を示す数少ないプラスチック母材の一つである。分子結合に活発なα-HとCl基を持ち、熱安定性が低く、不飽和結合を極めて容易に生み出す。極性を示すPVCは極性木粉との接触の際、ほかには見られない独自の優位性を発揮し、適合性は一般的にPEよりも高く、PPを大きく上回る。だがPPに似た欠点も存在し、劣化耐性が低く、室外での使用には適していない。そのためPVC木材プラスチックは室内装飾にしばしば用いられる。PE木材プラスチックは、現在市場で流行している室外木材プラスチック材料である。その原因は、PE木材プラスチックの良好な劣化耐性と腐食耐性、設置性能にある。だがそのクリープの問題は実質的な解决が得られていない。

 木材プラスチック複合材料は原料が幅広く、価格が低く、環境に優しいことから、中国国外ではしばしば、インテリア用品や一般型材、車両船舶、公共運輸などの分野に用いられ[13-14]、すでに一定の市場規模を形成している。北米は木材プラスチック複合材料の応用がさかんな地区で、北米の木材プラスチック複合材料の年間使用量の成長率は2010年にはすでに10%に達していた[15]。北米の年産1万トン以上の大型木材プラスチック企業は100社余りにのぼり、その木材プラスチック複合材料製品の多くは、深い色の中実床板材で、フローリングや車内装飾などに幅広く応用されている[16]

 日本は、地理的な位置の特殊性から、地震多発地帯に属しており、質量が軽く防水の木材プラスチック複合材料をより多く用いる傾向にある。M. Kiguchiら[17]は、木材プラスチック材料の接続方式や製品構造、防水性能の立ち入った検討を行い、構造や接続などの面から、日本などの特殊な地域における木材プラスチック材料の応用問題への対応を可能とした。木材プラスチック複合材料は、耐水性や力学的性能、耐用年数が木製品を上回ることから、日本での使用はかなり進んでいる。製品の多くは、家屋の建築や水産養殖施設などに用いられている。

1.2 中国国内の木材プラスチック複合材料の応用の現状

 中国では、木材プラスチック業の研究開発は1980年代に始まったばかりで[18]、まだ新興産業に属する。大まかな統計によると、2013年までに、木材プラスチックの生産と開発に取り組む企業は270社を超え、年間生産額は80億元に達した[19]。中国のこの分野の生産水準と開発水準は飛躍的に進展したが、先進国に比べればまだ一定の隔たりがある。

 中国は森林面積が人口に対して少ない国の一つで、一人当たりの森林面積は世界平均の20%前後にすぎない。経済の急速な発展に伴い、木材使用量は日増しに増加しており、現在の木材の生産量は、人々の生活の需要を解決するまでには程遠い。大量に生み出されるプラスチック廃棄物も「白色汚染」(プラスチック汚染)の難題を生んでいる。中国のプラスチック回収率は15%で[20]、一部の先進国の平均回収率53%[21]のわずか3分の1にすぎない。中国の廃プラスチックの回収量は、プラスチックの生産量をはるかに下回っている。廃プラスチックはそのため日増しに積み上がりつつある。

 木材プラスチック業の中国での発展に伴い、木材プラスチック業による廃プラスチックの原料利用が、廃プラスチックのリサイクル問題を解決する有効な手段であるとの意識は高まり始めている。木材プラスチック複合材料は、木材とプラスチックをしのぐさまざまな力学的性能を備えている。木材プラスチック製品は寸法安定性が高く、吸水性が低く、木材のような反り返りや裂開などの現象は起きない。木材プラスチック製品に加えられる母材は熱可塑性プラスチックであることから、腐食耐性や耐酸・耐アルカリ性などでもほかに比べられるもののない優位性を誇り、耐用年数も比較的長い。使用済みの廃木材プラスチック複合製品は、新たな添加材として新たな木材プラスチック製品に加えることができ、再利用してもその性能は大きく変わらない。木材プラスチック製品で用いられる木粉は往々にして、木材製造の過程で生まれる木くずやおがくず、またはラッカセイの殻やヤシの殻、サトウキビ、アマ、コウマ、アサなどの植物繊維系物質であり、原材料コストという観点からは、木材プラスチック複合材料に必要な繊維の価格は木材原材料の価格をはるかに下回る。プラスチック製品という観点から見ると、木粉を加えることでその力学的性能は大きく高まる。例えば耐摩耗性は一般のプラスチックを平均で35%前後上回る[22]。また木材プラスチック複合製品は、プラスチックの加工のしやすさという特性もある。

 木材プラスチック複合材料の中国の全国各地での使用状况を想定し、王清文[23]や張会平[24]、李思遠[25]らは、木材プラスチック複合材料の凍結融解耐性や紫外線照射耐性などを研究・検討した。木材プラスチック複合材料は、木材品種の選択や助剤の差別化などの手段を通じて、中国国内各地での実際の応用のニーズを満たすことができる。

 中国はここ数年、「循環経済理念」を提唱し、「都市鉱山」(都市廃棄物中の資源のリサイクル)分野への企業の進出を導き、再生資源の循環利用を促進してきた。許文嬌[26]と王新傑[27]、呉玉鋒[28]は、廃高分子材料(廃回路基板、廃プラスチック、廃エポキシ樹脂板など)の総合利用の問題を研究した。その結論によると、原プラスチックと原木材に比べると、廃プラスチックや副産物の木粉・木くず、廃家具から抽出された木粉で製造された木材プラスチック複合材料は、単一原木材や単一原プラスチックを力学的性能でいずれも上回った。木材プラスチック複合材料は、再生可能な新型環境保護複合材料となる。現在、国内の木材プラスチック製品は多くが室内の家具[29]や農業製品、戸外の景観製品などの分野に用いられている。

その2へつづく)

参考文献:

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※本稿は劉彬,李彬,王懐棟,陳希,龔裕「木塑復合材料応用現状及発展趨勢」(『工程塑料応用』2017年第45巻第1期、pp.137-141)を『工程塑料応用』編集部の許可を得て日本語訳/転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司