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「中国製造2025」の本質は開放と協力 グローバル化の趨勢にも沿うものだ

2018年6月5日 蘇波(中国人民政治協商会議第13期経済委員会副主任、元工業情報化部副部長)/江瑞(翻訳)

今月初旬にもハイレベル通商協議がおこなわれるなど、長期化も予想される中・米の貿易摩擦。その過程で急速にクローズアップされてきたのが「中国製造2025」だ。警戒感をにじませるアメリカの動きに対し、同計画制定に関わった蘇波氏が、その意義や目指すものを説く。

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写真1:蘇波氏。写真/中国新聞社

 4月3日(米国時間)、米通商代表部(USTR)は、中国からの輸入製品約500億ドルに対し、25%の追加関税を課す方針を発表した。対象製品リストには、航空宇宙、情報通信技術(ICT)、ロボット・機械産業など約1300品目が含まれており、明らかに「中国製造2025」を念頭に置いたものと思われる。アメリカ側は中国製品に対する追加関税措置について、「中国製造2025」の米国企業への「強制政策」に対抗するものであるとし、「中国のこれらの政策は、ハイテク産業分野における経済的リーダーシップを奪い取り、『中国製造2025』をはじめとする、自国の産業計画を実現させるためのものだ」と主張している。

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写真2:今月3日・4日に中国でおこなわれたハイレベル通商協議にも参加した、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表。撮影/中国新聞社記者 鄧敏

 USTRが発表した中国の貿易慣行に関する調査報告書は、その結論部分で「中国製造2025」に100回以上も言及している。米通商製造政策局のピーター・ナバロ局長は3月28日、米ブルームバーグテレビの取材に対し、関税の主な対象は「中国製造2025」の重点業界だとし、次のように述べた。「中国は臆面もなく『中国製造2025』を宣言した。これは全世界に対し、『今後はわれわれがすべての新興産業を牛耳る。お前たちの経済に未来はない』と宣言したに等しい。該当分野はAI、ロボット、量子コンピューターなどだ」。米商務省のウィルバー・ロス長官は1月のダボス会議で、「中国製造2025」はアメリカの「直接的脅威」になるとし、中国の狙いは「ほぼすべての新技術分野」において巨大な市場シェアを握る世界のリーダーになることだと述べている。また、「この直接的脅威は、技術移転の強制や知的財産権の侵害、商業スパイ活動など、あらゆる良からぬやり方で現実になる。産業の生産能力過剰という単純な問題では決してない」とも語った。

 アメリカはWTOの基本原則と精神に大きく背いて典型的な貿易保護主義と自国中心主義に走り、不当に貿易紛争を引き起こしておきながら、表面的には中・米間の貿易問題を解決するためと見せかけ、その裏で中国の製造強国戦略「中国製造2025」を標的にし、中国の意図を曲解して根拠のない批判を繰り返している。その政治的意図は明らかだ。

 最新の「国家安全保障戦略」の中で初めて中国を「アメリカのパワーと影響力、利益に挑戦し、わが国の安全と繁栄を損なおうとする」戦略的ライバルと形容したことは、中国に対するアメリカの政治的位置づけに重大な変化が生じたことをはっきりと示している。今回アメリカが引き起こした貿易戦争は、もはやただの貿易戦争ではない。その実体は、アメリカが貿易の名の下に、中国のハイエンド製造業の発展に圧力をかけ、中国の台頭を抑制することで、長期にわたり自国の経済的優位と政治的霸権を保とうとするものだ。アメリカの政府高官も、中国の10大発展分野を対象に輸入製品に追加関税をかけ、中国のハイテク分野の発展を「抑制」し、「遅延」させると公言してはばからない。英『デイリー・テレグラフ』紙がいみじくも指摘したように、トランプ大統領が宣戦布告した関税戦争は、貿易とは何の関係もない。彼の頭にあるのは、原始的な力関係、つまり、2大強国のどちらが21世紀の技術と世界を掌握するかの闘いなのだろう。アメリカは、中国の経済力や競争力が強大化し、中国のやり方や制度の影響力が拡大していくさまに脅威を覚え、こうした戦略的抑制行動に出た。それゆえ、この闘いはすぐに終わることはなく、今後ますます激しく複雑になり、深刻化・長期化していくだろう。われわれはこうした現実を十分認識し、決して動揺せず、備えなければならない。「中国製造2025」は開放的で包容力があり、オープンで透明性のある平和的な発展計画だ。かつて工業情報化部副部長兼同計画の制定責任者だった筆者は、計画の研究および制定の全プロセスに深く関わり、その背景や意図、目標、任務を熟知している。同計画に対するアメリカの憶測、疑念、非難は何の根拠もない反面、下心だけは見え見えで、まったく説得力に欠けている。

特定の国を標的にしたものでも挑戦するものでもない

「中国製造2025」は、特定の国を標的にしたものでも、特定の国に「挑戦」するものでもなく、ましてや、中国がすべての新興産業、すべての新技術分野を牛耳るための計画でもない。計画ひとつで世界経済を牛耳るという、強大なアメリカですらできないことが、他の国にできるわけがない。「中国製造2025」の唯一の目的は、中国の製造業の技術を高め、製造強国となることだ。これは13億の中国人民が抱く、近代国家建設への強い願いであり、中国自身が発展するための戦略的ニーズなのだ。「中国製造2025」制定にあたっては、以下に述べる2つの時代背景が考慮された。

 ひとつは、新たな産業革命と産業の変革への対応だ。グローバル金融危機のあと、西側の工業大国は次々と「再工業化戦略」に乗り出し、新たな産業革命と産業の変革に対応するため、産業成長戦略を制定した。アメリカの「先進製造パートナーシップ(AMP)」(2011年)、ドイツの「インダストリー4.0」(2013年)、フランスの「未来の産業」(2013年)、日本の「製造基盤白書(ものづくり白書)」(2014年)などだ。中国も、2013年初頭から製造強国戦略の研究を始め、製造業発展の指針となる「中国製造2025」を制定・公布した。計画策定の際には、各方面の意見をオープンに求めるとともに、EUやドイツなどと対話や交流を重ね、特にドイツの「インダストリー4.0」とは政府間協力メカニズムを構築、互いに手本としてきた。計画の制定・実施は、オープンかつ透明性の高いものとなっており、国際協力や外国企業の参加を歓迎している。計画内容は、WTOの要求に100%沿うものだ。

 もうひとつは、中国が製造強国を建設する基盤と条件を備えていたことだ。中国は2010年にアメリカを追い越し、世界一の製造業大国になると同時に、国連の国際標準産業分類(ISIC)が定める工業関連の全分類区分(大分類39、中分類191、小分類525)を世界で唯一完備するに至った。長年にわたるイノベーションと発展を経て、中国の製造業の技術レベルは大幅に向上、新技術の成果もマグマのごとく噴出している。実力が高まり、国内に広大な市場ニーズが生まれるにつれて、製造業全体の早急な構造調整と産業の高度化が望まれていた。「中国製造2025」は、経済のグローバル化のもと、中国製造業の積極的なモデルチェンジと高度化、国際競争への参入というニーズと趨勢に従ったものだ。世界をリードする製造強国たるアメリカがとるべき正しいやり方は、他国に対する抑制によって自身の優位性を守ることではなく、国際協力と国際競争に積極的に加わりつつ、さらなる成長を追求することだろう。

中国の産業高度化に必要な10大重点分野

「中国製造2025」は、中国製造業の全面的レベルアップを実現するための計画であり、そこで掲げられている10の重点発展分野は、現状分析と次なる技術革命や産業変革への対応、技術レベルや市場ニーズといった要素に立脚し、業界の技術進歩を促すという観点から選ばれたものだ。それらは以下のように大別される。①すでに世界のトップレベルにあるが、さらなるイノベーションにより、技術的にリードしていくことが望まれる次世代通信設備、先進軌道交通設備、宇宙設備、発電・送変電設備。②世界のトップレベルに並んでおり、今後もイノベーションを続け、遅れを取らず発展することが求められる海洋設備、省エネ・新エネ車、スマート生産、ロボットなど。③世界のトップレベルとはまだ差があるため、イノベーションのスピードを上げ、少しずつ距離を縮め、トップレベルを目指す必要のあるハイエンドNC工作機械、航空設備、農業機械、新素材、バイオ医薬品および高性能医療機器である。

「中国製造2025」では、以上挙げた分野が市場競争の中でイノベーションと発展を継続していけるよう、それぞれに発展の指針を与えている。この点からも明らかだが、「中国製造2025」が「すべての新興産業を牛耳る」ものであるはずがない。新興産業には中国が発展を望む10分野をはるかに超える数が存在しており、しかも、10分野のうちのいくつかは、新興産業ではなく、従来型の製造業だ。アメリカ政府高官の罵りにも近い物言いは、無知ゆえではなく、やる方なき憤懣の発露というべきものだろう。世界一の経済大国たるアメリカも、これまで製造業の成長計画をいくつも発表してきたが、「産業を牛耳る」までには至っていないし、ましてや「他国の経済に未来はない」という状態にも達していないのだから。

開放と協力を前提としたウィン・ウィンの発展計画

「中国製造2025」にはアメリカ企業に移転技術を「強制」する文言はどこにもない。そもそも中国には外国企業に対し技術移転を強制するいかなる法律も存在しない。改革開放以降、中国は絶えず門戸を開け放ち、他国との協力を強化し、積極的に外資と技術を導入してきた。それは、互恵関係を基本とした協力という国際的な経済ルールにのっとり、外国企業の中国進出に望ましい環境と条件を提供するものであり、双方の利益に完全に沿うものだった。2016年には、アメリカから中国へ1189件・89億3800万ドルの、中国からアメリカへは1337件・37億4900万ドルの技術輸出契約が成立している。中国が経済発展で挙げた巨大な成果は、中国人民の勤勉さと知恵、苦労と奮闘、そして正当な国際協力によって勝ち取ったものだ。ハイテク分野への研究開発投資を拡大し続けたことで、イノベーションの成果も続々と現れている。昨年、中国全体で研究や試験に投じられた額は、GDPの2.12%を占める1兆7500億元で、世界の総支出の21%を占めており、しかもここ数年は年平均18%のペースで増加している。また、中国国内外で昨年申請された特許は369.8万件、付与された特許権は183.6万件で、いずれも世界一だ。国際特許では、昨年の全世界の申請数24・35万件のうち、中国は4万8882件で、日本を追い越し世界第2位となった。昨年比で13%増加しており、近い将来アメリカも追い越し、世界一になるだろう。世界知的所有権機関(WIPO)が指摘するように、中国はいまや、イノベーション型技術の主要生産国なのだ。中国の長年にわたる発展が、「グローバル化とは互恵的なものであり、外国企業が中国で投資や提携関係を結ぶのは双方に利する」ことを証明している。中国という巨大市場に魅力を感じて進出した外国企業は、中国でかなりの利益を上げただけでなく、技術的イノベーションの進展と世界的競争力の向上という恩恵にもあずかってきた。逆に、中国に対する技術の封鎖や提携の制限といった行為は、かえって中国の自力更生を促し、技術的ボトルネックの突破を早め、重要技術における完全自主イノベーションを実現たらしめ、中国が世界のトップレベル入りをするという結果を生んだ。中国の長年にわたる発展は、「先進技術は金では買えない、ハイエンド技術のイノベーションは己の力のみによって達成しなければならない」ことを一度ならず証明した。

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写真3:同僚とともに中国初のペタFLOPS級スパコン「天河1号」の稼働状況を点検に回る国家スーパーコンピューター天津センター応用研究開発部の孟祥飛部長(右)。 写真/新華社

「中国製造2025」は、開放と協力を前提とした発展計画だ。中国経済の急速な発展は、グローバル化によりもたらされた。中国は今後も改革開放を堅持し、国際自由貿易のルールとシステムを遵守し、外国企業との協力・交流を強化していくだろう。そして、より多くの外国企業を「中国製造2025」に受け入れ、発展に望ましい外部環境を整えるとともに、中国企業が海外に進出し、グローバル化という舞台で公平な競争に参画し、他国とともに発展していくことを支援していくだろう。


※本稿は『月刊中国ニュース』2018年7月号(Vol.77)より転載したものである。


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