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中国キャリアロケット技術の発展(その1)

2018年7月27日

魯 宇: 中国運載火箭研究院研究員

中国運載火箭(キャリアロケット)技術研究院科学技術委員会主任。

概要

 中国の宇宙輸送システムの建設は1960年代に始まり、50年近くの発展を経て、世界が注目する成果を上げた。合理的な配置と全面的なカバーを実現した宇宙輸送システム体系は、さまざまなペイロードを低・中・高の各軌道に打ち上げることができる。国際協力の面では、搭載打ち上げ、商業衛星打ち上げサービス、軌道上引き渡しの3つの面で一定の実績を上げている。本稿では中国の宇宙輸送システムの発展成果を総括し、宇宙輸送システムの未来の発展とりわけ人工知能技術の応用を展望した。

キーワード:キャリアロケット、国際協力、低コスト、人工知能

序言

 中国の宇宙輸送システムの代表としては現在、長征シリーズキャリアロケット、遠征シリーズ軌道移転キャリア(上段)、再利用可能キャリアがある。宇宙進出の安全と高い信頼性、スピード、経済性、環境保護性を確保し、宇宙探索技術の発展を推進し、人類文明の前進を促進することは、中国の宇宙輸送システムの発展目標だ。

 中国の宇宙輸送システムの建設は1960年代に始まり、50年近くの発展を経て、世界が注目する成果を上げた。宇宙に進入し、宇宙を開発・利用する強大な能力を備え、地球の低軌道への運搬能力が20tを超え、有人打ち上げ能力を持ち、地球以外の天体への着陸探査ができる世界で数少ない国の一つとなった。

 中国宇宙輸送システムの発展は、中国国民経済の建設に土台を築いただけでなく、宇宙探索と国際商業宇宙発展に貢献した。中国の宇宙事業は、国際協力を十分に展開し、世界各国と宇宙技術を共同で発展させ、その成果を共有する能力と意欲を持っている。

1 中国の宇宙輸送システムが得た成果

 中国の長征シリーズキャリアロケットの発展は5つの段階を経て、4世代・17型のキャリアロケットを開発し、さまざまなペイロードを低中高の異なる軌道に投入する能力を備えている[1]。長征シリーズキャリアロケットの発展は、常温推進剤から低温推進剤、直列から並列、一ロケットにつき一つの衛星の打ち上げから複数の衛星の打ち上げ、物品の輸送から有人飛行、最下段の1回の始動から複数回の始動へと、技術の飛躍を実現した。2017年6月末までに、中国長征シリーズキャリアロケットは249回にわたって飛行し、打ち上げ成功率は96%に達した。キャリアロケット技術の発展は、宇宙技術に広大な舞台を提供し、中国の衛星とその応用、有人宇宙技術の発展を推進し、「有人宇宙プロジェクト」「北斗ナビゲーション」「月探査プロジェクト」を代表とする中国国家重大プロジェクトの実施の成功を強力に支え、中国の宇宙事業の発展に力強い下支えを提供した。

1.1 4世代のキャリアロケットの開発

 第1世代キャリアロケットは、CZ-1とCZ-2を含み、液体燃料ミサイルの改良によって作られたもので、はっきりとした武器の特徴を備えていた。第1世代ロケットは、中国キャリアロケットを実現したが、運搬能力などの総体性能は低く、使用やメンテンナンスの性能で劣り、発射場での試験・打ち上げ周期が長く、アナログ制御システムを取っていた。

 第2世代キャリアロケットは、CZ-2Cシリーズ、CZ-2D、CZ-3、CZ-2Eを含み、依然として液体ミサイルの痕跡を帯び、第1世代ロケットを土台として技術改良したものだった。第2世代ロケットは、原始状態のCZ-2Cロケットを土台として改良し、第1段と第2段はCZ-2Cロケットとほぼ同じで、有毒推進剤(四酸化二窒素と非対称ジメチルヒドラジン)を採用し、デジタル制御システムを取っていた。

 第3世代キャリアロケットは、CZ-2F、CZ-3Aシリーズ、CZ-4シリーズを含む。第3世代ロケットは第2世代を土台として、信頼性の向上と技術の改良を引き続き展開し、システムレベル冗長デジタル制御システムを採用し、第3段が加えられ、任務適応能力は大きく高まった。有人宇宙任務の需要を満たすため、脱出システムを増やして有人ロケットを開発し、任務の信頼性を大幅に引き上げ、発射場での試験打ち上げプロセスを簡略化し、使用とメンテナンスの性能を高めた。

 第4世代(次世代)キャリアロケットは、CZ-5、CZ-6、CZ-7、CZ-11などを含み、環境に優しい無毒・無汚染の推進剤を採用し、信頼性の高いバス技術を採用し、最大運搬能力は本質的に高まった。

1.2 中国の宇宙事業を推進した3つの画期的成果

 人工地球衛星と有人宇宙船、月探査器の打ち上げは、中国の宇宙事業の発展の3つの画期的な成果となった。1970年4月24日、中国は長征一号(CZ-1)キャリアロケットを用いて、人工衛星・東方紅一号を地球低軌道に投入することに成功し、自国の衛星を自国が作ったロケットで打ち上げた世界で5番目の国となった。1999年、CZ-2Fロケットは、試験宇宙船・神舟一号の打ち上げに成功し、中国は、有人宇宙技術を自国で発展させる世界で3番目の国となった。2003年10月、中国は初めて有人宇宙飛行を成功させた。2012年6月には、有人でのランデブー・ドッキングに初めて成功した。2007年10月、CZ-3Aロケットは、中国初の月探査衛星「嫦娥一号」を予定軌道に投入することに成功し、中国の宇宙事業がさらに深い宇宙の探査という新たな分野に踏み出したことを示した。

1.3 有人、月探査、北斗などの一連の重大プロジェクトを完了

1)有人宇宙プロジェクト:CZ-2Fキャリアロケットは13回の打ち上げを完了し、延べ14人の宇宙飛行士を宇宙に送ることに成功した。2回のドッキング目標機を打ち上げ、ランデブー・ドッキング任務を成功させ、長期にわたる軌道上での人員を配備した宇宙ステーションの建設に堅固な土台を築いた。

2)月探査プロジェクト:CZ-3AとCZ-3B、CZ-3Cの各ロケットは4回にわたる月探査飛行器の打ち上げを完了した。2013年12月に打ち上げられた嫦娥三号探査器は中国初の地球外の天体への軟着陸を実現した。後続のCZ-5キャリアロケットはさらに、サンプルリターン任務を実施する。

3)北斗ナビゲーションプロジェクト:CZ-3Aシリーズロケットと遠征シリーズ上段は、18ロケットによる21基の北斗ナビゲーション衛星の打ち上げを完了し、北斗のローカルナビゲーションシステムの建設を完成させ、グローバルナビゲーションシステムの建設に土台を築き、中国と周辺国の経済建設に優れたサービスを提供することになる。

4)その他の重大プロジェクト:長征シリーズロケットはさらに、高解像度地球観測衛星、風雲シリーズ気象衛星、放送通信衛星の予定軌道への投入に成功し、中国の社会と国民経済の発展に貢献した。

2 中国の宇宙輸送システムが備える能力

2.1 自由に宇宙に出入りする能力

 長征シリーズキャリアロケットは、小型ロケットとしてCZ-6、CZ-11(固体)、中型ロケットとしてCZ-2シリーズ、CZ-3Aシリーズ、CZ-4シリーズ、CZ-7、大型ロケットとしてCZ-5シリーズを含む。中国はさらに、快舟などの固体燃料キャリアロケットも開発した。長征シリーズキャリアロケットは、低中高の異なる軌道にさまざまなタイプの衛星、探査器、宇宙実験室、有人宇宙船、貨物宇宙船を投入する能力を備えた。LEOの運搬能力は25t、GTOの運搬能力は14tで、運搬能力と軌道投入の精度はいずれも世界の先端水準に達した。長征シリーズキャリアロケットは、一つの衛星の打ち上げもできるし、複数の衛星の打ち上げによるスピーディーな配備も行うことができる。遷移軌道への打ち上げもできるし、作動軌道に衛星を直接投入することもできる。総じて現有の長征シリーズロケットは、実用宇宙機を各宇宙軌道に打ち上げる能力を備えている[2]

2.2 自前の有人打ち上げ能力

 中国は世界で3番目の自前の有人打ち上げ能力を備える国となった。CZ-2F有人キャリアロケットの打ち上げ成功率は100%に達する。スペースシャトルの退役後、有人打ち上げ能力を備えたキャリアロケットは、中国のCZ-2Fキャリアロケットとロシアのソユーズロケットだけとなった。

 CZ-2Fは、有人宇宙船の打ち上げに用いられ、有人宇宙事業のために開発された特殊な要求への対応能力を備えたキャリアロケットである。一般の商業キャリアロケットと比べると、より高い信頼性と安全性が求められる。システムレベル冗長技術を採用することで飛行の信頼性は0.97以上に達し、商業衛星などの有人以外の用途で用いられるキャリアロケットの0.91~0.93の信頼性指標を大きく上回った。同時にCZ-2Fロケットは、専用の故障検出処理システムと脱出システムを配備し、故障状況下での宇宙飛行士の生命の安全を確保し、CZ-2Fキャリアロケットの安全性指標は0.997を超えた。

2.3 高密度の打ち上げ能力

 長征シリーズキャリアロケットは、大量生産モデルを取り、高密度の打ち上げ能力を備えている。2011年~2017年5月末、長征シリーズキャリアロケットは、110回の打ち上げを完了し、年平均打ち上げ回数は16回以上、成功率は97%を超え、いずれも世界の最高レベルに達した。CZ-3Aシリーズロケットは西昌衛星発射センターで、中国の最短連続打ち上げ間隔周期記録を打ち立てた。

 高密度の打ち上げ能力は、絶え間ない技術改良とブレークスルーの結果である。キャリアロケットの状態を統一し、長征シリーズロケットの主要系統と単体に大量生産の条件を備えさせた。単一構造のシリーズキャリアロケットの間で機体の構造や測定システムの状態を統一し、コードネーム管理を弱め、大量生産の条件を整えた。

 高い成功率は、システムレベルの試験能力の向上の結果である。超低温分野の試験の鍵となる技術のブレークスルーを実現し、中国初の増圧輸送系統のシステムレベルの試験プラットフォームを構築し、冷却ヘリウム増圧冗長系統の原理性試験と液体水素温区低温系統試験を完了できる。

 集中的な打ち上げは、発射場のプロセスの絶え間ない短縮の結果と言える。試験場でのテストプロジェクトの最適化や自動化判読プラットフォームの開発などの措置を通じて、ロケット試験場の打ち上げ測定期間は50日から20日余りに短縮された。同時に、打ち上げプロセスに重要な影響を持つ機体とシステムの冗長改良を行い、打ち上げの信頼性を大幅に高め、ロケットの定時の打ち上げを確保すると同時に、キャリアロケットの狭いウィンドウまたはゼロウィンドウの打ち上げを実現した。

2.4 宇宙探査・宇宙軌道遷移能力

 高軌道キャリアロケットは、宇宙探査飛行器の打ち上げ能力を備えている。長征シリーズロケットの月遷移軌道(LTO)運搬能力は8.2t、火星遷移軌道(MTO)打ち上げ能力は5t。遠征シリーズ上段と長征シリーズキャリアロケットの組み合わせは、高軌道衛星の直接軌道投入打ち上げ任務と、複数の衛星の急速配備打ち上げ任務を主に担う。上段の開発では、先進熱制御や軌道セルフプラニングなどの技術で進展を開発、複数回の起動や長時間の作動、自律飛行などの特性を備えた。遠征シリーズ上段(YZ-1、YZ-2、YZ-3)の軌道上の最長作動時間は48hに達し、エンジンの最多起動回数は20回に達した。柔軟な使用が可能で、任務の適応性が高く、「宇宙連絡バス」と呼ばれ、中国の宇宙輸送システムの宇宙進入の能力を大幅に高めた。

その2へつづく)

参考文献:

[1] 呉燕生. 中国航天運輸系統的発展與未来[J]. 導弾與航天運載技術,2007(5):1-4.

[2] 秦旭東,竜楽豪,容易. 我国航天運輸系統成就與展望[J]. 深空探測学報,2016,3(4):315-322.

※本稿は魯宇「中国運載火箭技術発展」(『宇航総体技術』2017年第1巻第3期、pp.1-8)を『宇航総体技術』編集部の許可を得て日本語訳/転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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