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都市ランキングは「不動産価格」ではなく「イノベーションと人材」を映す鏡

2018年7月11日 閻肖鋒(文)/及川佳織(翻訳)

4月に発表された『第一財経』誌の最新都市ランキングでは、それまでの「北上広深」のランキングに変化が見られた。そこから読み取れる「魅力ある都市」の姿とは?

 これからは「北上広深」(北京・上海・広州・深圳)ではなく、「上北深広」と言うべきだろう。これは『第一財経』誌が発表した2018年中国1~5線都市(「線」は社会活動における重要度、影響力による都市の等級区分)の最新ランキングの結果だ。ほかの都市ランキング同様、今回のランキングも侃々諤々の議論を巻き起こしている。

 『第一財経』傘下の新一線都市研究所が、昨年1年間の170ブランドのビジネスデータ、ネット企業19社のユーザーの行動データ、データ会社の都市ビッグデータに基づき、中国の地級市以上の338都市でランキングを作成した。ランキングは、ビジネスリソースの集中度、都市の中枢性、住民の活発さの度合い、ライフスタイルの多様性、そして未来の可能性という5つの指標をもとにしている。

 以下が、その最終結果だ。

 まず、「北上広深」が「上北深広」の順に変わった。さらに、成都、杭州、重慶、武漢、蘇州、西安、天津、南京、鄭州、長沙、瀋陽、青島、寧波、東莞、無錫の15都市が「新1線」都市に選ばれた(表記はランキング順)。

 人々の議論の的になったのは、なぜ北京が1位の座から落ちたのか、ということだった。これは、北京が人材の吸引力とイノベーション度という点では依然トップだが、北京戸籍以外の居住者の立ち退きにより、住民活発度指数が下がったためだ。また、深圳のビジネス魅力指数が広州を上回った点については、包容力とイノベーションを歓迎する深圳の風土が、中国の1線都市の中でも際立っているからだと説明されている。

 都市とは、人がつくるものだ。都市に人々が流入し、自分の住処を見つけると、増え続ける一方の環境や社会の問題が、彼らに絶えず思考を促す。「理想の都市とは、いかなる都市か」と。

 都市ランキングとは、不動産価格の指針となるものではなく、その都市のイノベーション度合いを測るものだ。その点に疑いはない。

 かつての1・2・3線都市のランキングは、その都市のGDPやビジネス上の投資価値をもとにしていた。これは必然的に「都市ランキングとは、不動産価格ランキングなのか」という疑問を生じさせる。

 だが、ここ数年は、「人材こそが都市発展の核心」を意識する都市が増えてきている。南京、杭州、成都、西安、武漢などの「新1線都市」では、人材確保に関する新たな政策が相次いで打ち出され、大学生や専門技術者を引きつけている。これは「人材争奪戦」、もっと言えば、都市発展の核心的要素の争奪戦だ。

 都市の未来を決めるのは人であり、都市の競争力を決めるのは若者、正確に言えばイノベーションのアイデアを持った若者たちだ。イノベーションは都市を変革する潜在力の要となるものであり、スタートアップ企業こそ、イノベーションの主体として最も重要なもののひとつだ。今回の「新1線都市」ランキングによれば、杭州と成都の創業支援プラットフォームの数と融資規模は1線都市に肉薄しており、起業環境が最もよい「新1線都市」だという。

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2018年版の「新1線都市」ランキングで1位になった成都市。同市は、2016年以来3年連続で首位をキープしている。写真は同市の「高新区(ハイテクパーク)」。

 人材の最も重要かつ安定的な供給源は大学だが、大学があれば、その都市が豊富な人材を擁しているということにはならない。南京は優秀な大学生が多い「新1線都市」だが、同市に残る卒業生の割合の低さが問題になっている。都市が競争力を引き上げるには、人をとどまらせることが肝心なのだ。

 今回の都市ランキングがいみじくも述べているように、多様性があり開かれた都市空間とイノベーティブな人材の共生には、因果関係がある。「発展の道」とは、現在最前線にある産業を追いかけることではない。優秀な人材と資源を集結させ、新たなチャンスの到来に備えておくこと。それこそが、都市のエネルギーを最大化させる「発展の道」なのかもしれない。

 理想的な都市には、無数の生活スタイルがあるはずだ。それが多元的で包容力のある都市の気質を生み出し、それが魅力にもなる。レストラン、カフェ、スポーツセンター、書店、博物館、映画館などの場所は、都市の住民にとって仕事と自宅以外の「第3の空間」だ。そこで知人や初対面の人と言葉を交わし、情報を交換することでインスピレーションを得る。ジョギング、フィットネス、読書、音楽、旅行などのレクリエーションによっても、都市の余暇の豊かさを測ることができるだろう。

 都市管理について言えば、ハード面はもちろん重要だが、ソフト面も不可欠だ。もし、都市の管理者一人ひとりが会社の経営者がするように、市場における需給関係を考え、都市住民が本当に求めているライフスタイルを理解しているのならば、その都市こそ「理想の都市」になれる。あるネットユーザーがいみじくもつぶやいている。「その都市が好きなら、ランキングなんて気にするかい?」


※本稿は『月刊中国ニュース』2018年8月号(Vol.78)より転載したものである。


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