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水中も高熱もなんのその 特殊ロボットの「すごさ」に迫る

2018年8月23日 華凌(科技日報記者)

 ハイテク技術の集大成である特殊ロボットの発展は、新たな科学技術革命の到来を加速している。エカテリンブルク・エキスポ国際展示場でこのほど閉幕した「第5回中国—ロシア博覧会」では、ハルビン工業大学ロボット集団(HRG)の出展した特殊ロボットが大きな話題を呼び、世界の注目を集めた。

 先ごろ、公安部警用装備調達センターは、HRGの爆発物処理ロボット、消防ロボット、警備ロボット、水中探査ロボット、警察用無人船などをいずれも調達リストに盛り込んだことを公表した。これらの特殊ロボットはどのような高い能力を持ち、人類に不可能な任務を遂行するのか。筆者はこのほど、北京経済技術開発区にあるハルビン工業大学ロボット集団特殊ロボット事業部を訪れ、話を聞いた。

危険知らず 消防と爆発物処理に能力発揮

 事業部には、キャタピラ式の赤い消防ロボット「消防衛士」があった。上部に噴射ノズルがあり、機動的に移動できる。

 「火災が発生したら、現場は猛烈な炎に包まれる。このベビーカー程の大きさのスマート消防(消火)ロボットは、60メートルから80メートルの水柱を噴き出すことが可能で、3、4階建ての高さまで届く」と、ハルビン工業大学ロボット集団特殊ロボット開発責任者の韓震峰氏は語った。

写真1

スマート消防ロボットによる消防演習

 この消防ロボットのキャタピラは、特殊材質でできており、最高で750℃に耐えることができる。遠隔操作で、走行や登坂、階段昇降、障害物越えを行うことができる。さまざまな環境に適応し、耐熱、遮熱、防雨、防食、電磁干渉回避などの性質を備え、全天候での持続的作業が可能だ。

 「消防ロボットは煙霧透視能力と正確な識別機能を備え、消防作戦の先遣隊として、火災現場に残った作業員や火災源の位置を正確に識別することができ、より有効な救援とより迅速な消火が可能となる。自己噴射冷却システムを備え、火事現場で長時間にわたって作業する能力があり、火の中をくぐり抜けることもできる」と韓氏は語る。

 危険弾薬や爆発物の処理は非常に危険な作業であり、作業員による爆発物処理は安全上のリスクが高い。大まかな統計によると、過去10年だけで、世界で弾薬の廃物処理による安全事故は約1万2千件に及び、3万人以上の爆発物処理専門家と工兵が負傷・死亡している。このため一部の国は爆発物処理ロボットの開発を急いでいる。

 「このロボットはもう一つ、爆発物を探し出し、処理する機能も持っている。マニピュレーターは柔軟ですばやく動き、自由度が大きく、性能が安定し、総じて適応性も高い。これはわれわれが開発過程で突破した難点の一つだ。ぬかるんだ路面、無人化した町、炭坑、油田などさまざまな地形でスピーディーに移動し、危険物の検出や回収、移動、運搬、破壊を行い、化学工業系の燃焼や爆発のリスクの高い場所での危険物の実地調査を安全検査員に代わって行うことができる」と韓氏は説明した。

写真2

爆発物捜索・処理ロボット

 製品をより実際のニーズに合ったものとするため、開発チームは、多くの特別警察活動の現場を調査し、スマートモジュール化設計の路線を取った。ロボットは、さまざまなセンサーモジュールを追加することができ、あるモジュールが壊れたらすぐに交換できるようにした。拡張やメンテナンスが容易で、一台で複数の用途に使えるだけでなく、製品のコストも有効に抑えられた。端末システムを遠隔操作することで、ボタンを一つ押すだけで、現場で必要な各種の任務をロボットに遂行させることができる。

配管ネットワークをメンテナンス 都市の「血栓」を捜索

 地下配管ネットワークは都市の「血管」「神経」とも言えるもので、電力や排水、通信などの安全、さらには社会や国民生活の発展にもかかわる。だが現在、中国の都市配管システムは、定期的な検査がされておらず、事故発生後に問題を解決することになりがちで、経済損失さらには作業員の死傷事故を引き起こしている。

 韓氏は「環境の劣悪で検査難度の高い作業は、ロボットを作業員の代わりとして、都市配管の検査やメンテナンスを担わせることが可能である」と指摘する。

 「配管検査ロボットはサイズが小さく、直径80センチの地下配管にも入り込むことができる。防水や耐熱、軽量などの特徴を持ち、-30℃から50℃の作動環境で秒速0.5メートル以上での連続作業ができる」と韓氏は語る。

写真3

配管検査ロボット

 配管検査ロボットは、軍用基準に照らして、複数のセンサーの融合技術を通じて、配管漏れの場所を正確に判断し、配管内部に破裂や変形、腐食、異物侵入、沈積、スケール形成、樹根障害物などの不具合がないかを検査し、施工やメンテナンス、定期検査で重要な役割を果たすものとなる。

 「技術的には、このようなロボットは、キャタピラ式移動装置、制御システム、電動ケーブル巻き上げ装置の3つの部分からなる。この装置には、前方に多次元の回転の可能な解像度470lpi、光学ズーム10倍、白光高出力ハロゲンランプを備えた、フロント式多次元回転カメラを搭載し、配管の前方と側面の検査と柔軟な観察を可能とし、明晰な画像効果を実現した。同時に高解像度カラーモニター上では配管内の映像画面情報とソナー分析画像をリアルタイムで映し出し、検出したデータを検査作業員にわかりやすく提供し、正確で専門的な検査報告を形成し、後期の配管修復作業に信頼できる根拠を示すことが可能となる」と韓氏は語った。

水中に潜航 引き上げ作業や捜索で活躍

 水中ロボットは、無人遠隔制御潜水器とも呼ばれ、水中の極限で作業するロボットである。

 ハルビン工業大学ロボット集団の水中ロボット開発責任者の張川氏は「水中救援活動では、水域環境が複雑で、水流が激しく、潜水作業員の体力に限界があるなどの要素が捜索救助を妨げる原因となる。水深30メートルを超える水中ではなおさら安全面のリスクが高くなる。水中ロボットは、潜水員が水中に入ることなく、水中捜索や映像観測、目標の測位などの救援補助活動のほとんどを遂行することができる」と語る。

 張氏は「湖での目標物の引き上げでは、まず警察用無人船でソナーを通じて広範囲をスキャンし、疑わしいポイントをいくつか見つけた後、水中ロボットを湖底へと潜航させて確認し、専用の道具を用いて目標物を水面に引き上げることができる。このロボットはさらに、必要であれば、公安システムと協力し、刑事事件での決定的な証拠の捜索、水中の銃器などの凶器の捜索と回収をすることができる。水中ロボットについた小型のマニピュレーターを通じて、積載量の範囲内で5キロから10キロの物体を直接引き上げることもできる」と語る。

 水中ロボットは構造的には2つの部分からなる。一つは水中部分、つまり本体部分。推進器やカメラ、ソナーシステム、照明システムなどが含まれる。もう一つは水上部分。上部の電源や制御端末はアンビリカルケーブルを通じて水中ロボットと連動し、エネルギーと制御信号を供給する。ロボット本体が採取した映像信号やセンサー信号もこのケーブルを通じて制御端末に伝送される。

 「水中ロボットの場合、水中環境は空気中よりも複雑なので、通常の作業を行うのにより確かな能力が必要になる。複雑なスマート制御システムとモニタリング識別システムは水中ロボットの鍵となる技術であり、水中ロボットの正常な安定的な運動と周囲環境の認識を可能とする。このうちわれわれが自主開発した濁水中撮影技術は画像の明晰度を2倍以上に高めた」と張氏は説明した。

 ダムの閘門や堤防、海上大橋の橋脚など長時間にわたって水につかっている設備は数年の使用後、それぞれ異なる程度での表面腐食や欠損、亀裂、露筋などの不具合が出現する。早期に発見して処理しなければ大きな災いとなりかねない。

 「特殊水中ロボットは、適切な観察・検査設備を携帯して水中を潜航し、問題を一つずつチェックし、獲得した情報を制御端末にすぐに伝え、その後の検査・メンテナンス案策定のための一次資料を提供するツールとなる」と張氏は語った。(写真はいずれも取材先提供)


※本稿は、科技日報「無惧水深火熱 特種機器人凭啥這幺“猛”」(2018年7月20日付,第06版)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。


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