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中国自動車市場の展望

2018年9月18日

陳選

陳 選(チン セン):フリーライター

略歴

 1982年、 吉林大学日本語科卒、1986年、中国社会科学院大学院日本研究所修士課程卒、中国国際信託投資公司( CITIC)勤務。1989年来日、北海道大学法学部大学院修士課程卒、大 手商社長年勤務。中国自動車メーカーのビジネスアドバイザーでもあった。

一.4200万台の市場になる見通し

 中国の自動車市場は2001年に中国のWTO加盟に伴い、自動車が家庭に入ってくるモータリゼーション時代が始まったことを契機に高速成長期に入り、この16年の間に、200万台未満から2915万台の規模になった。2017年6月まで、中国の自動車保有台数が2億台を超え、アメリカに次ぐ世界2位になった。

 2016年のデータによると、中国の2016年の自動車販売台数は2803万台で、世界の2番手(米国)、3番手(日本)、4番手(ドイツ)の三つの国の自動車市場の合計販売台数より、また5番手から20番手までの16ヵ国市場の合計販売台数より多くなったという。2001-2016年の中国自動車市場発展の沿革を整理してみると、二つの段階に分かれる。第一段階(2001-2010年)の間、中国自動車市場は二桁の高速成長率を維持し、200万台から10倍増の2000万台に飛躍的に成長してきた。2010年以後から現在、第二段階として自動車の個人保有台数が多くなるにつれて、自動車の生産・販売台数が落ち、中国自動車市場は成長率一桁の安定成長期に入った。この16年間中国自動車市場の急成長に恵まれて、民族系自動車メーカーも世界の一流自動車メーカーの在中国合弁企業も大きく発展してきた。例えば、2016年、フォルクスワーゲンのグローバル市場での販売台数が1000万台を超えたが、中国市場だけで約4割の400万台強を販売した。米国GMの中国市場における販売台数は同社のグローバル市場での販売台数の38.7%を占めたという。中国民族系メーカーも吉利汽車、長城汽車のような優秀企業が生まれてきた。

 ところで自動車先進国の保有台数(米国を除き600台/千人)と比べ、中国の自動車保有台数が131台/千人に過ぎないこと、また、自動車販売台数の中で乗用車の販売台数が商用車よりやや少ないこと、マイカーの比率及び自動車販売の重点地域が購入制限実施の大都会より中小都市に移っていること等を考えると、専門機関の試算によれば、中国自動車市場全体としてはまたプラス1400万台の余地があり、また専門家によるといずれ4200万台の市場規模になろうという。2030年に新エネルギー自動車と自動運転車両の新車販売及び関連サービスが5000億ドルになり2035年に世界における電気自動車の60%近くが中国で販売されるとの見通しである。

二.電気自動車市場が急成長

 2017年に純電気自動車とプラグインハイブリッド車両の全世界における販売台数が142万台に達した。その中で中国での販売台数は約55%を占める78万台であった。中国は連続4年間、電気自動車の高成長が続き、2017年に国内メーカー上位三社のBYDが13万台、北京汽車と吉利汽車がそれぞれ10万台の販売台数になり、米国テスラと肩を並べている。

 北京自動車グループ董事長である徐和誼氏は純電気自動車とプラグインハイブリッド車両を今後、企業成長の戦略的なコア商品として、これをもって世界一流の自動車メーカーの仲間入りを目指すと表明している。これは中国自動車メーカーの野心の表れであるし、中国政府の国家戦略にも合致している。

 中国自動車市場における新エネルギー車の急成長に伴い日欧の世界一流メーカーも中国市場仕様の電気自動車の開発と生産を急いでいる。トヨタは2019年からカローラ等のプラグインハイブリッド車両を発売し、2020年に新たに10種類の電気自動車を中国で販売すると発表した。日産自動車は2018年後半に中国で現地生産の純電気自動車を発売する計画である。ホンダも2018年に広州汽車本田で、2019年に東風汽車本田でそれぞれ電気自動車の生産開始を計画・予定している。最近、中日企業が共同で電気自動車の充電標準・規格の統一を図るニュースが目に映った。この統一標準・規格が実現できれば、世界で約90%のシェアを中日両国が握ることになる。

 ドイツBMWはiX3を2020年にまず中国で発売すると計画し、またこれを契機に今後、中国で発売する新エネルギー車は全て最新鋭の車にすると強調した。

 フォルクスワーゲンは江淮自動車と電気自動車製造専門の合弁会社を設立し、40種類の新エネルギー車を開発すると表明し、2021年までに中国にある六つの工場で純電気自動車等の新エネルギー車を生産し、また、2022年までに150億ユーロを投資し、新エネルギー車、自動運転、コネクテッドカー等の分野での共同開発に資金を充てると表明した。

 吉利自動車傘下のボルボも2025年時点で、純電気自動車の販売台数が同社のグローバルにおける販売台数の半分を占めるようになると言っている。

 テスラは上海で工場を設立すると決定し、現在、中国人技術者の募集を大いに行っているところである。

 ダイムラーとGMも中国市場における電気自動車のビジネスプランを立てている。

 中独政府も「コネクテッドカー運転分野における合作についての連合声明」を発表し、中国とドイツ企業は7月に電気自動車分野における多岐にわたる合作プロジェクトについて合計で七つの協議書を締結した。フォルクスワーゲンと江淮自動車が共同で研究開発センターを設立すること、長城汽車とBMWが新たに合弁会社を設立すること、ダイムラーと清華大学の協力強化などが含まれている。

三.新エネルギー自動車市場の急成長の裏に中国政府のバックアップあり

 中国ほど電気自動車の発展に力を注ぐ国は他に無かろう。電気自動車の生産と販売において中央政府が様々な政策を実施し、充電施設などインフラの建設での財政支援も並々ならぬものである。2012年に公表した「省エネ自動車産業発展計画(2012-2020年)」で、2020年に乗用車の平均燃費は5.0リットル/百キロメートルに引き下げ、その後の発表では更に2025年に4.0リットル/百キロメートルに引き下げるように求めた。2017年に発表した「自動車産業中長期発展計画」の中で、2020年に一部重要部品のコア技術分野でグローバルにおける中国メーカーの競争力を高め、2020年に世界でも知名度の高い自動車ブランドを幾つか確立するという目標を掲げている。また、中国国内で設立する電気自動車メーカーについて、外国資本による100%の出資が認められることになった。さらに2019年より、中国で3万台以上自動車を生産あるいは輸入する自動車メーカーは国内・国外企業を問わず、販売台数の10%が純電気自動車や、プラグインハイブリッド車両等の新エネルギー車両でなければならないと求められている。

 中国政府はまたリチウム電池供給サプライヤーチェーン構築のため、外資のリチウム電池メーカーの中国進出を促している。

 新エネルギー電気自動車の発展につれて広域に亘る充電スタンドに対するニーズが高まってくるため、中央政府の「電気自動車充電施設建設計画」では2020年までに、各地で50万基の公共充電スタンドや800カ所の充電ステーションの新設を計画している。

 中央政府のみならず地方政府も新エネルギー車両の発展を後押ししており、既に88都市が新エネルギー車両の支援策を発表している。このような強力な政府のバックアップがあって初めて短期間で中国は世界最大の電気自動車市場になったのである。新エネルギー車両利用の先進都市である深センの例を見てみよう。深センは1300万人口を擁し2000平方キロメートルの面積があるが、現在、1.65万台の電気乗合バスが走っている。タクシーもほとんど電気自動車あるいはプラグインハイブリッド車両である。

 2035年に、中国は世界一の自動車市場の立場をキープしながら、中国の自動車メーカーが世界一流メーカーの仲間入りを実現できるのか、また中国は「安全、高効率、グリーン、文明」のスマート自動車社会になるであろうか―

 今後、中国自動車市場は下記の幾つかの趨勢になるかと推測されている。

1)一桁の成長に留まり、SUVが相変わらず最も人気のある車種であり続ける。

2)業界の淘汰が進み、勝ち組と負け組が一段と鮮明になってくる。

3)消費水準の向上がキーワードになり、高級車などの輸入が多くなる。

4)新エネルギー車の発展により充電スタンドの増加、電池技術の向上による航続能力の長距離化、車体の軽量化、自動運転、カーシェアリングの普及、新興自動車テクノロジー企業が中心になる新業種の誕生等。

 これから自動車業界、業態および市場が目まぐるしく変化するであろう。また、トヨタが開発する水素燃料電池自動車、空飛ぶ自動車等が中国自動車市場でどういうパフォーマンスを見せるかにも期待するところである。

(本文中引用したデータ等はネット上の自動車新聞等によるものである)


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