第144号
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福建省三明市:山間地帯の都市に「国字号」の開発プラットフォームが集合

2018年9月21日 柯懐鴻、馬炳文、謝開飛(科技日報記者)

 CNC彫刻機などの開発・生産を手掛ける中機数控科技(福建)有限公司の責任者・羅鳴樟氏は、機械科学研究総院・海西分院が建設したハイエンド機器製造産業パークに入居した後の同社の変化について取材に応じ、「当社の製品は、かつては比較的単一的だったが、産業パークに入居してからは、当社の中機シリーズの雕刻機が欧米を含む数十カ国・地域にまで輸出されるようになった」と語った。機械科学研究総院の技術およびリソース面の優位性を活かして同社が開発した中央制御式のパネル家具フレキシブル加工ラインは、同分野における中国内外の空白を埋めた。

 福建省政府と同省三明市政府はこのほど、機械科学研究総院と協定を結び、機械科学研究総院・海西分院の新たなイノベーションと発展を共に推進していくことで合意した。三明市科学技術・知的財産権局の李栄安局長は、「三明市はこのほど、全国初の零細企業『大衆創業・万衆創新(大衆の起業、万人の革新)』基地のモデル都市に選ばれた。この大きなチャンスをしっかりと掴み、多くの『国字号(国の名前を冠した)』開発プラットフォームを誘致し、イノベーション駆動型の発展に向けた新たなエンジンを生み出していきたい」と語る。

 李局長はまた、「研究開発機関は地域のイノベーション体系の重要な一部分である」としたうえで、「大学や研究機関のリソースが比較的不足しているという市内の現状を打開するため、三明市は各産業チェーンに合わせたイノベーションチェーンを配置していく。市が重点的に育成する産業チェーンに、中央企業や一流大学・研究機関などによる大規模な開発プラットフォームを誘致する」と指摘ている。しかし、どんなに残業しても供給が需要に追いつかないほどだという。山岳地帯の小さな県にある企業が、海外企業による技術的封鎖を突破し、国外の同タイプの製品を上回る品質の製品を開発できたのは、なぜだろう?

 三明市科学技術・知的財産権局の李炳芳副局長は、この謎の答えについて、「三明市は開発プラットフォームの新たなメカニズムを模索している。研究機関や企業などによる利益共同体を結成し、これまで政府や企業の『付属物』でしかなかった開発プラットフォームを、独立した『経済体』に変え、市場を見据えた開発、インキュベーションおよび産業化を行っている」と明らかにした。例えば上述の半固体研究所は、国内唯一の半固体技術研究機関であり、機械科学研究総院・海西分院、将楽県国有資産公司、福建瑞奥麦特公司の三者による出資で建設され、企業化された運営が行われている。ニーズに合わせて、各技術分野のリーダー的人材からなる専門家チームを立ち上げ、開発を行っている。半固体高速パルプ化技術およびその産業化基地を有し、科学技術の成果と市場のシームレスなマッチングおよび成果の迅速な転化を実現した。

 三明市科学技術・知的財産権局の頼竜君副局長は、「高水準の開発プラットフォームを導入、共同建設することで、先進技術やハイエンド人材を集め、産業のアップグレードをけん引する成果の実用化を推進し、市全体のイノベーションの水準とレベルを大幅に向上させることができた」と語る。

 機械科学研究総院・海西分院はすでに、世界初となるノードラフトのクランクシャフトのクローズド生産ライン、中国初となる独自の知的財産権を有する全自動ファインブランキング生産ラインを建設している。また、中国紡績科学研究院は、同院が開発し、国家科学技術賞を受賞したプロジェクトの試行を三明市で実施する計画で、ゼロエミッション・ゼロ汚染を実現できるという。現在、同市の特許登録件数は2ケタ成長を続けており、ハイテク企業の総数は89社に達し、ハイテク産業生産高は600億元を突破している。


※本稿は、科技日報「"国字号"平台搶灘這箇山区市」(2018年09月03日,第07版)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。