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海を生かして発展し、強くなる山東省

2018年9月27日 王建高(科技日報記者)/張桂林(科技日報通信員)

第5次産業ブームが、「魚、エビ、貝、海藻、ナマコ」などが名物の山東省で起き、同省の沿海地域から中国全土の1万8000キロ海岸線に向かって波及している。

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中国科学院海洋研究所の科学調査船「科学」号 画像は取材対応者が提供

 青島魯海豊集団が3億元(1元=約16.40円)を投じて設計、建造した6艘の遠洋漁船がこのほど、青島西海岸新区から、モーリシャスに向かって出航した。今後は、インド洋海域で巻網作業を行うことになる。同漁船は、中国で初めて欧州式の巻網を採用して設計したマグロ漁獲専用船だ。

 改革開放実施から40年の間に、渤海の浜、黄海の浜、莱州湾、さらに膠州湾まで、海洋をめぐる戦略により、山東省に豊かな成果がもたらされてきた。2017年を例にすると、山東省の海洋生産総額は1兆4800億元に達し、中国全土の海洋生産総額の19.1%、山東省の生産総額の20.4%を占め、長年連続で全国2位の地位をキープしている。海洋漁業、海洋バイオ薬、海洋塩業、海洋電力、海洋交通運輸の5産業の規模に至っては全国1位となっている。

 海洋は、山東省の発展の最大の原動力、最大のメリットであり、さらに、ポテンシャルが最も大きい分野でもある。山東海洋強省穿設工作会議において、山東省党 委員会書記の劉家義氏は、「海上山東戦略や海洋強省戦略など、当省は、視野を広げて海洋を見、海洋をハイクオリティ発展の戦略要地と見なし、科学的に海洋を開発し、海洋を利用して、省民が裕福になり、強い省を作り、陸と海を統一して発展させる壮大な道を歩んでいる。そして、海洋をめぐる戦略に力を入れて、海洋経済の発展を牽引し、世界においても一流の港湾、現代海洋産業システム、自然にやさしく持続可能な海洋生態環境の建設を加速させ、海洋強国建設に寄与している」と強調した。

海洋科学技術イノベーションの優位性を確保

 青島海洋科学・技術試験ポイント国家実験室ビルでは、バイオニック水中ドローン、無人運航船、海洋センサーなど、独自の知的財産権やコア技術を持つ海洋器具・設備を高速運行している。

 中国の海洋の分野の初の試験ポイントとして運営されている国家実験室は、「透明海洋」プロジェクトなどを実施し、さまざまな分野で、「仰ぎ見る」立場から、「対等の目線で見る」立場へ、追いかけ、並走する立場から、牽引する立場へと進歩している。

 中国科学院の会員で、同実験室の室長である呉立新氏は、「『透明海洋』科学技術イノベーションプロジェクトの実施が始まって以降、山東省は中国の二つの分野の空白を埋めた。1つは、海面から4000メートル深までの水温や塩分を自動的に計測するフロート(Argo)の研究開発に成功したことで、中国は世界の海洋の4000メートル深の継続観測能力が可能になり、プロファイリング循環フロート技術の分野の空白を埋めた。2つ目は、4000メートル深の海底電位差磁力計(OBEM)を研究開発し、海底電磁気データ収集試験を成功させて、中国の深海電磁気観測の分野の空白を埋めた。その結果、中国は、米国やドイツ、日本についで3000メートル深以上の海域の電磁場を測量、研究する国となった。

 さらに、山東省は海洋資源の優位性に立脚し、海洋経済発展のための新たな原動力を育成し、海洋テクノロジーの「新戦場」を開拓している。

 山東省科技庁の劉為民庁長によると、山東省は現在、「健康海洋」などの重大海洋科学技術イノベーションプロジェクトを実施して、「透明海洋」プロジェクトの内容が国家「科学技術イノベーション2030—重大プロジェクト」に溶け込むよう推進し、「海洋食糧庫科学技術イノベーションプロジェクト」など国家の重点研究開発計画にも参加している。また、毎年、ハイエンド海洋エンジニアリング設備や海洋薬品・バイオ製品関連の重大科学技術イノベーションプロジェクトを実施して、製薬産業発展を促進する重大コア技術のブレークスルーを実現している。2020年までに、山東省は、海洋科学技術イノベーション能力の大幅に向上させ、優位性を誇る海洋科学技術の分野の自主イノベーション能力を世界最先端のレベルに向上させ、テクノロジー進歩の海洋経済に対する寄与率を70%以上にしたい考えだ。

 海洋科学技術イノベーション資源が集まっているというのが、山東省が「海洋強省」を建設するうえでの自信の源となっている。統計によると、山東省の海洋科学技術関連人材は、中国全土の海洋科学技術関連人材の40%を占めており、国家重点基礎研究発展計画「973計画」、「963」計画の海洋関連の分野のプロジェクト約半数を担っている。そして、「蛟龍」、「海龍」、「潜龍」などの有人潜水艇や中国全土で最先端の科学調査船「向陽紅01」、「科学号」、「大洋一号」など、海洋科学技術設備が青島から世界に向けて出航している。

「中国の国の宝」が青島から世界に進出

 青島には、「海西湾」と呼ばれる場所があり世界から注目されている。40万トン級の超大型鉱砂船「天津号」、中国で最も吊り上げ能力が高いクレーン船「大橋海鷗」がそこから出航しているほか、中国が初めて自主設計・建造した液化天然ガス(LNG)プラントが、ロシア・ヤマルLNGプラントに向けてそこから輸送され、世界初、最大規模の半潜水式スマート海上養殖場「海洋漁場1号」、中国初の「深海漁場」、「深藍1号」などがそこで引き渡されるなど、中国の「国の宝」がそこから世界に進出している。

 統計によると、海洋国家実験室が自主研究開発した水中グライダー「海燕-10000」は、マリアナ海溝で、水深8213メートルに到達し、水中グライダーの到達深度で世界記録を更新した。水中グライダーの分野で、中国は初めて、世界中の深海洋環境情報を収集できる国となった。海洋国家実験室の常務副室長・王載毅氏は、「『海燕-10000』は、独自の知的財産権を有し、水深8213メートルまで潜れるということは、95%以上の海洋をカバーするということ」と説明する。

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「海燕」水中グライダー

 港に停泊する中集来福士海洋工程有限公司の自己昇降式作業台船の上に立つと、そこでは作業員が忙しそうに作業をしていた。同社の責任者によると、同社は、世界の半潜水形作業台船の注文の4分の1を受けており、自主製造した大水深掘削リグ「藍鯨1号」は、中国初の天然ガスハイドレート採掘を実現し、世界で話題となった。約10年の間に、同社の海洋エンジニアリング設備のコア部品の国産化率は、10%未満から60%に上昇し、36の各種海洋エンジニアリング設備を納品してきた。

 海洋エンジニアリングと設備製造は、山東省の海洋をめぐる戦略の代名詞となっている。現在、青島、煙台、威海、東營を中心とする海洋エンジニアリング設備製造密集エリア4地域が現在急速に台頭している。ここ5年、中国国内で納品された半潜水形作業台船全体の80%が煙台で製造され、ノルウェー北海、メキシコ湾、バレンツ海などの海上油田作業に投入されている。中集集団、傑瑞石油、中柏京魯などの煙台の重点企業の海洋エンジニアリング設備・製品は、世界最先端のレベルに達しており、山東省の海洋経済発展に新たな原動力を注入している。

現代海洋産業システムの構築

 崂山のふもとで、青島海洋バイオ薬研究院が制定する「青島海洋バイオ薬聚集(310)開発計画」が実施され、「中国ブルー薬品庫」の開発の基礎が固められている。同研究院の院長で、中国工程院の会員である管華詩氏が率いるチームが研究開発した心血管・脳血管疾患の治療薬・Poly Saccharide Sulphateは、アジア初、中国で唯一の国際的に認められた革新的海洋医薬品だ。同研究院が研究開発した、中国初の抗認知症薬である、第一類新薬HS971も現在、第Ⅲ相臨床試験をクリアし、世界で14種類目の革新的海洋医薬品となる可能性が高い。

 中国全土の陸地海岸線の6分の1を占め、隣接海域が15万9500平方キロに達し、島が589島あり、海湾が200ヶ所以上ある山東省は現在、それら海洋の分野のメリットを生かして海洋経済を発展させている。

 数えきれない船が競い合って海上で疾走している。今年5月、山東省が発表した「山東海洋強省建設行動プラン」は、海洋科学技術イノベーション行動、海洋生態環境保護行動、世界一流の港建設行動、海洋新興産業の壮大な行動、海洋伝統産業高度化行動、スマート海洋ブレークスルー行動、軍と民間の融合を深化させる行動の「十大行動」を制定している。青島、煙台、威海、日照など、山東省の沿海都市は、豊富な海洋資源が集まる「宝の山」へと発展している。

 青島市は、「1045(10は10大海洋産業、4は4大分野の発展水準、5は5大サポートプロジェクトを指す)」行動を実施して、国際的に有名な海洋都市を建設している。計画によると、2022年までに、同市は海洋生産総額を5000億元にまで引き上げ、国内総生産(GDP)に占める割合を31%以上にし、形成生産額が1000億元以上の6つの海洋産業クラスターを形成したい考えだ。

 日照市は、「海に向かって発展する」というスローガンを掲げている。日照市党委員会の書記・斎家濱氏は、「当市は、全域発展の理念を樹立、強化し、港、海洋、生態の分野のメリットを十分に生かし、『日照市海に向かって経済を急速に発展させるための行動計画』を制定して、『海を見ている』だけではなく、『海を活用』し、『一区三級六圈』活力空間を構築し、『港・産業・都市・海』の融合発展を促進し、現代化海浜都市の建設を目指している」と説明する。

 山東という「巨大船」は波でハーモニーを奏でる大海原で風に帆をはらませて、海洋強省建設という素晴らしい新たな歴史の1ページを刻んでいる。


※本稿は、科技日報「山東:依海而興 向海図強」(2018年09月17日第07版)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。


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