第144号
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地熱資源の開発と応用の現状および趨勢

2018年9月28日 聞鑫(大慶油田第三採油廠規劃設計研究所)

摘要:

 地熱資源はグリーンで環境にやさしい新型エネルギーの一種であり、同資源をいかに効果的に開発利用していくかは、科学技術者が直面している重要な問題である。本稿では、地熱資源の開発・応用の現状を簡単に紹介するとともに、同資源の開発利用の見通しについて科学的に判断した。

キーワード:地熱資源;開発利用;発展の趨勢;分析

 地熱資源は環境にやさしい再生可能エネルギーの一種である。世界各国が現在、地熱資源の研究開発に力を入れ、石油・石炭などの資源への依存度を引き下げている。地熱資源をより良く利用することによって、温室効果ガスの排出量を削減し、気候の温暖化を緩和し、エネルギー構造を変化させ、省エネ・エネルギー消費削減を達成できる。地熱資源をいかにしてより良く開発利用していくかは、科学技術者が直面している難題である。

1 地熱資源の開発利用の現状

 中国における地熱資源の開発利用としては、主に発電と直接利用という2つの異なる分野が挙げられる。ある程度の高温に達した地熱資源は発電に利用することができ、地熱資源の温度が低~中水準でも、地熱資源を直接利用することができる。温度が25度以下の浅層地熱の場合、地上熱源ヒートポンプによる空調システムで建築物の暖房あるいは冷房を実現することが可能である。例えば河北地区では地熱を利用して建物の暖房をまかなっているほか、北京および南東の沿海地域では中深層の地熱資源を利用した療養や観光・レジャープログラムを提供している。現在、中国国内において中深層の地熱資源を利用した暖房を行っている面積は1億平方メートルを超える。一方、地熱発電の方はというと、国内では広東や湖南など7つの省と地域で中低温地熱資源を使った発電所が建設され、西蔵(チベット)自治区の羊八井では中高温地熱による発電所が建設された。しかし、地熱発電の効率および経済利益など様々な理由により、現在も引き続き発電が行われているのは広東省の豊順および西蔵の羊八井発電所のみとなっている。中国の地熱資源量は世界トップクラスであり、開発・利用の分野でも世界をリードしているが、同エネルギーを利用した発電の面では比較的立ち遅れていると言える。中国の地熱発電の総設備容量はわずか28メガワット前後で、世界ランキングでは18位につけている。この順位は、中国の豊富な地熱資源から見ると大いに不足を感じる。ここ最近、中国国内の地熱資源の開発利用状況はやや改善しており、地上熱源ヒートポンプの使用効率は57%を上回り、地熱資源による暖房供給の割合は20%以上、地熱資源を利用した温泉・入浴施設の割合はすでに18%を上回るなど、地熱資源の開発利用の優位性が徐々に発揮されつつある。

2 地熱資源の開発利用技術がますます成熟

 地熱資源を効果的に開発利用するには、資源の地質条件および資源量の調査・評価、掘削・坑井仕上げ技術、温度保持と熱交換技術、ヒートポンプ発電技術、使用済み熱水の再利用技術などを含む、様々な分野の科学技術を複合的に組み合わせる必要がある。現在、中国国内で地熱資源の開発利用関連技術を把握している主な機関には、国家地熱エネルギーセンター、中国科学院などの研究機関および、中国石油大学中国地質大学などの高等教育機関がある。上述の機関ではすでに地熱エネルギーの開発・研究が進められており、中国の地熱資源の実情に合わせた開発・応用のための技術体系が打ち立てられ、地熱資源のスムーズな開発・利用を保証している。地熱エネルギーの調査および評価技術は、資源の盲目的な大規模開発を防ぐことができる。掘削・坑井仕上げ技術は、様々な深度や地質構造、地層や岩石の特性を持つ地熱資源を開発するために必要な井戸の掘削・施工設計を可能にするほか、地熱井の坑内検層、物理検層および地層埋蔵量評価など複数の掘削補助手段をとることができる。使用済み熱水の再利用技術は、地熱エネルギーの持続的な開発利用を効果的に保証し、同エネルギーを効果的に保護すると同時に、大量のエネルギー浪費を防止し、地熱井の使用年数を伸ばすことができる。

3 地熱資源の開発利用の趨勢

3.1 極めて高い発展の潜在力を秘める

 地熱資源の効果的な開発利用により、環境汚染の現状および気候変動が人類の生活にもたらす影響を緩和し、既存のエネルギー利用構造を改善・最適化することができる。中国は近年、グリーンエネルギーの開発利用に対する重視を深めており、地熱資源は歴史的な発展の時期を迎えている。中国のエネルギー管理部門は指導意見の中で、地熱エネルギーの開発利用を2020年までに石炭換算で5千万トンに引き上げるという目標を掲げている。このことからも、国内の地熱資源開発利用は、極めて高い発展の潜在力を秘めていると言える。

3.2 地熱資源の開発利用は、良好な見通しおよび開拓の余地を持つ

 中国の全体的なエネルギー開発利用から見ると、地熱資源の開発利用は極めて良好な見通しを持つと言える。中国の都市化の加速に伴い、都市部の建物総面積(延べ床面積)はすでに500億平方メートルを越え、暖房および冷房の供給が必要な面積も100億平方メートルを上回っている。一方で、現在地熱資源を利用した暖房あるいは冷房を実施している面積はわずか4億平方メートル前後であり、地熱エネルギーによる発電量もわずか3万キロワットであることから、将来的な応用の市場は極めて大きいと言える。

3.3 地熱資源および新エネルギー利用により一定程度の産業規模をすでに形成

 現在、中国国内の地熱資源の開発利用は、中国石油化工股份有限公司(シノペック)などの企業が主導するという構造がすでに明確化しており、地熱資源の専門的な開発能力を持ち、同資源の開発利用を手掛ける中国石化集団新星石油有限責任公司(新星公司)が設立された。同公司は海外エンジニアリングサービスを産業の支柱とし、地熱エネルギーの建設を主要ブランドとし、シノペックの中・下流業務の優位性を基盤とし、太陽エネルギーやバイオエネルギーなどの新エネルギーの総合的な開発建設を促進し、地熱資源および新エネルギー分野で、一定程度の産業規模を形成している。シノペックはこのほか、地熱資源、分散型太陽光発電および余熱資源を組み合わせ、一種の新しいエネルギーの複合開発の手段を形成している。

3.4 新エネルギーの利用計画が地熱資源の効果的な開発を促進

 シノペックを取り巻く外部環境の面から見ると、同社は国家電網公司のUHV(超高圧)送電線計画を利用して、新エネルギーの効果的な開発・建設を行うことができる。例えば、内モンゴルのシリンゴル盟から江蘇省南京市、内モンゴル西部から湖南省長沙市へのUHV電力網建設プロジェクトなどを利用することによって、地熱資源の利用を推進することが可能だ。地熱資源、風力エネルギー、太陽エネルギーなど様々な新エネルギーはいずれも、開発利用の良好な見通しを持つと言えるだろう。

4 結語

 地熱資源の開発利用は、中国の新エネルギー産業建設の要求と完全に合致すると同時に、クリーンで環境にやさしい発展の理念とも一致している。地熱資源のより良い利用を通じて、環境汚染および気候変動によるマイナスの影響を効果的に防ぎ、中国の既存のエネルギー構造を変え、経済成長の方式を転換させることができる。また、中国の新型都市化建設のたゆまぬ推進と、新型エネルギー発展利用計画のさらなる実施に伴い、地熱資源はより幅広い市場と、持続的で健全な発展の見通しを持つことができると言える。


参考文献

[1] 王聯兵. 西安市地熱資源開発利用現状分析及対策建議[J]. 西部資源,2016,(06):124-126.

[2] 張嵩月. 河北省三河市地熱地質研究輿地下熱水資源開発前景評価[D]. 中国地質大学(北京),2016.


※本稿は聞鑫「地熱資源開発応用現状及趨勢探討」(『化工管理』2018年第9月、p.109)を『化工管理』編集部の許可を得て日本語訳/転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司