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合肥工業大学スマート製造研究院の産業競争における優位性
―スマート製造と企業の高精度マッチングを目指して

2018年10月24日 呉長鋒(科技日報記者)

 安徽省の合肥工業大学スマート製造技術研究院(以下、「合工大スマート院」)はこのほど、中国工程院の瀋昌祥院士と北京で協力協定書を締結し、合工大スマート院・院 士ワーキングステーションを共同で設立することとした。その目的は、新エネルギー車やスマート工場等のシステムネットワークのセキュリティ体系における重要な技術的課題を解決し、院 士やそのイノベーションチームの成し遂げた技術的成果を安徽省で実用化・産業化させることにある。

 合工大スマート院は2014年に設立され、安徽省と教育部、工業・信息化部が共同設立主体となり、合肥市、合肥工業大学ならびに省内外の基幹企業が共同協力主体となっている。合 工大スマート院の設立主旨は「立足合肥、面向安徽、輻射全国」(合肥市に立脚し、安徽省をターゲットとし、全国に普及させる)ためのスマート製造技術イノベーションプラットフォーム、成 果の育成および実用化のためのプラットフォームを構築することにあり、中国国内をリードする世界一流の新興産業の研究機関となり、かつ、国 際的影響力のあるスマート製造成果の実用化基地や産業インキュベーション基地となることである。

精度の高いターゲティング:研究開発とプロジェクトの融合

 合工大スマート院は新型の研究開発機関として「産業競争におけるスマート製造の優位性向上」を主軸に、入居プロジェクトの選定や科学技術成果の実用化プロセスにおいて「高精度化」の路線を歩んでいる。 

 合工大スマート院に入居したばかりの合肥博澳国興能源技術公司は、新エネルギー・電池の研究開発・生産を行う企業である。同社トップの林銘祥氏は、設 営が完了したばかりの同社製品ブースで科技日報の記者に対し、北京市で最近、同 社の開発した大容量の全固体リチウムイオン電池を両輪に搭載した大型バスが航続距離800キロメートルの走行試験に成功した際の模様を興奮冷めやらぬ様子で語った。林氏によれば、「今回、わ れわれはいくつもの記録を塗り替えたことになる。現行の純電気小型車では航続距離300キロメートルでさえ珍しいのに、当社の動力電池を搭載すれば大型バスも航続距離800キロメートルが可能だ」。

 合工大スマート院科学研究サービス部部長の龔瑞氏が記者に語ったところによれば、新エネルギーは合工大スマート院が重点育成対象とするイノベーションプラットフォームであることから、か つて深圳にあった同社と意気投合し、新エネルギーによる動力電池とエネルギー貯蔵システムの共同開発を行うことを決めた。現在、合 肥博澳国興能源技術公司はすでに独自の知的財産権を持つ大容量全固体リチウムイオン電池システムの複数のモデルを生産しており、そ の製品は中国全体の多くの新エネルギー自動車メーカーの間で人気を集めているとのことである。

 また、龔氏によれば、「合工大スマート院は入居企業のすべてのプロジェクトについて相応の株式を保有」しており、その持分は実際には企業のプロジェクトに参加し、研 究開発に携わっている同校の教員や学生に代わって出資しているものだという。「学校の投入する研究開発能力が企業やプロジェクトの発展にふさわしいかどうかを見極めるには、すりあわせのプロセスが必要である。企 業が最も満足のいく研究開発チームと組み、呼吸が合ったと判断すれば、大学はインセンティブとしてその持分を研究チームに与える」と龔氏は続ける。合工大スマート院は運営体制上、単なる「又貸し」を して事を済ませるのではなく、同校の潤沢な研究開発能力を活用するとともに、市場メカニズムに則ってプロジェクトに深くかかわっている。このようにして「 合工大スマート院はプロジェクトを行う企業に融合しているのだ」と龔氏は語る。

インキュベーションに細心の注意を:資源に対する動的調整を実施

「当社は先日、国家ハイテク企業に認定されたばかりだ」と打ち明けるのは合肥禄正新能源科技有限公司(以下、「禄正新能源」)の総経理の王国君氏であり、「 それもひとえに合工大スマート院の知的生産に基づくバックアップと力強い保証能力のおかげだ」と続ける。禄 正新能源は新エネルギー自動車の不具合に関するリモートスマート管理システムのソリューションを主力事業とする。合工大スマート院への入居後はプロジェクト経費として80万元の資金援助を受けた上に、合 工大の科学研究チームを拠点として自動車の制御装置やスマート低圧配電盤等、独自の知的財産権を持つ主力ブランドとして5つの製品の開発に成功している。

 合工大スマート院の副院長、張暁安氏は、「当校は入居企業に対し、技術的・人的支援を途切れることなく提供するとともに、資本のマッチングやプロジェクト支援、製 品と技術のマッチング等のさまざまな面で企業を支援する」と話す。

 そして、張氏はさらに「これまでの産学官連携の多くは研究者による個々の横断研究プロジェクトを媒体としていたため、ターゲット性は高かったが長期的継続が難しかった。当 事者たちは技術開発や技術コンサル上の連携のみを拠り所としていたため、プロジェクトが終わると連携関係も基本的にひと段落してしまう」が、そ れに対して合工大スマート院という新型の研究開発機関のプラットフォームでは成果や技術、人材、資本等のさまざまな要素を効果的に集約し、イノベーションに向けて相乗効果を発揮することができると説明する。 

「入居プロジェクトに対する当校の資源導入は動的調整に基づいている。成熟した技術的成果と安定した研究人材、明確な科学研究計画を持つ研究チームを紹介し、新 技術を受け入れる能力と生産拡大のニーズがある企業と効果的なマッチングを行うことによって、ハイテク企業を共同で設立する」。張氏によれば、合工大スマート院は「共生」型 の連携モデルを模索することによってハイテク企業のインキュベーションを行い、研究成果の実用化によって産学官の相互支援、一致した目標、利益の共有を目指す。そして、「 当校は投入した研究開発資源について動的調整を行い、プロジェクト実施企業と当校の研究開発チームの双方にとって最適な状態に達するまで調整を行う」と張氏は続ける。

 合工大スマート院に設立された研究開発ならびに実用化サービス機関は現時点で20以上となっており、投入された研究開発資金は1億元を超える。中 国内外の数多くのスマート製造ハイテク人材が重点産業のボトルネックとなっている技術的課題に関する技術研究や二次開発、技術移転に従事しており、インキュベーションに成功したハイテク企業は70社以上にのぼる。 


※本稿は、科技日報「合工大智能院提昇産業競争優勢 譲智造和企業精准邂逅」(2018年10月11日第06版)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。


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