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海洋水中ロボット設備技術の分析

2018年11月16日 管浩儒(旅順中学)

概要

 中国は近年、産業ロボットやサービスロボット、ホームロボットなどの分野で大きなブレークスルーと発展を実現したが、水中ロボットの開発とそのスタートは外国に30年の後れを取っている。海洋水中ロボット設備技術の応用分野がますます拡大する中、中国の海洋水中ロボット設備技術業界は巨大なチャンスと試練に直面している。本稿はこの点を巡り、材料などの技術の難点の重点的な攻略、科学研究とプロジェクトとの相互の融合発展の強化、海洋水中ロボット設備応用市場の積極的な開発、海洋ロボット設備研究開発特別基金の設立、私的機関による投資の奨励などから提案を行う。

[キーワード]:海洋水中ロボット、設備技術、問題、対策

序言

 海洋水中ロボットは20世紀後半に誕生した。軍事や海洋プロジェクトのニーズの高まり、電子やコンピューター、材料などのハイテク技術の発展につれ、海洋水中ロボットの数量は急速に増え、ロボットはすでに、海洋石油や漁業、新エネルギー産業、研究・教育、船舶の水中点検、河川のしゅんせつなどの分野で幅広く応用されている[1]。国家海洋局の「中国海洋発展報告(2013)」は、国民経済に対する海洋経済の貢献率は依然として上昇を続けており、海洋関連の生産総額のGDP比は2020年には12%、2030年には15%を超えるとの予測を示した。海洋水中ロボットと関連の深い海洋石油・ガス業や海洋漁業、海洋砿業の三大業界の生産総額とGDP比は年々高まっており、新たな応用分野が開かれれば、海洋水中ロボットは巨大な市場を得ることになる。このため海洋水中ロボット設備技術の研究の加速は、中国の海洋経済と質の高い発展に力強い推進作用を及ぼす[2]

1 海洋水中ロボット設備技術の概要

 海洋水中ロボットには主に、各種の類型の水中ロボットとそれに搭載される水中センサーやツール(ロボットアーム)、ナビゲーション・測位センサー、水中音響通信/測位システム、水中ロボットシステムが含まれる。水中ロボットシステムには、工業や科学研究、軍事の用途があり、技術構成から言えば、設計技術、建造技術、設備技術に分かれ、材料、機械、電力、電気、ナビゲーション通信などの多くの分野にかかわる。

 海洋水中ロボット設備技術の発展は、材料やエネルギー、センサー、制御、通信、人工知能などと密接にかかわり、通常は、機械系統や電気系統、配電・推進系統などのメイン系統からなり、これがさらに本体構造系統、制御系統、油圧系統、生命維持系統、音響学系統、電力配電・推進系統、ロボットアーム・作業ツール系統などのサブ系統に分かれる。これらのサブ系統はいずれも、各種のコンポーネントからなり、それぞれのコンポーネントはさらに、各種の具体的な製品部品に分かれ、製品部品は研究開発設計や生産製造、メンテナンスにかかわる。具体的な構成は図1参照。

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図1 海洋水中ロボット設備技術関連技術要素のアーキテクチャー

 図1が示すように、材料部分は主に、浮力や耐圧、防腐などの海洋特殊用途材料の研究開発にかかわる。媒質としての海水との接触や高圧などの環境の特殊性から、低密度で高強度な材料や密封、防腐などが、海洋水中ロボット固有の技術要求となる。コンポーネント部分は主に、エネルギー・動力やセンサー、スマート制御、通信などの汎用部品・システムにかかわる。本体・統合部分は主に、総体構造の設計と組み立て技術、さらにさまざまな用途の外付け付帯設備の組み合わせ、設置、調整にかかわる。末端応用部分は主に、ロボットのメンテナンスや応用サービス、人員養成などにかかわる。

2 典型的なスマート水中ロボットの紹介

2.1 ROV

 遠隔操作無人探査機(ROV)は、最も早期に開発・応用された無人探査機である。1975年にはじめての商業化されたROV「RCV-125」が登場してから半世紀近くの発展を経て、ROVはすでに、ROV工業という新たな産業を形成している。米国やロシア、日本、英国、フランスなどの海洋大国はいずれも、多くの種類のROVシステムを開発し、多様な任務やさまざまな作業深度でこれを用いてきた。中国科学院瀋陽自動化研究所(SIA)と上海交通大学は1970年代末からROVの研究開発の取り組みを始めた。上海交通大学の製品は、超小型の観察型ROVから重量数トンに及ぶ深水作業型ROVまで多くの機種をそろえ、潜行深度は数十メートルから数千メートルまでに達する。とりわけ「海竜Ⅱ型」作業ROVシステムは、技術性能で世界の先端水準に達し、中国のROV研究開発の最高水準を代表している。中国は既に、大深度ROVのカギとなる技術を全面的に把握し、自前での設計・製造能力を備えている。だが実際の応用は始まったばかりで、自らのブランドと産業はまだ形成されていない。

2.2 AUV

 スマート水中ロボット(AUV)は無人水中ロボット(UUV)の一種で、近海プロジェクトや軍事、学術などでいずれも巨大な市場の需要を持っている。AUVはすでに、研究と開発の段階から商業応用の時期へと入り始めている。世界の多くの企業と研究機関はすでに、商業用途のAUVを生産販売している。中国はこの分野でも大きな成果を上げている。主要な研究機関には、上海交通大学浙江大学、青島海洋化工研究院、青島海洋地質研究所、中船重工702研究所、哈爾浜(ハルビン)工程大学などが含まれる。1980年代中期から、「海竜二号」「海馬号」「海星号」「潜竜一号」などの無人探査機が相次いで開発された。

2.3 ARV

 自律型/遠隔操作水中ロボット(ARV)は、目下の潜水艇研究分野の焦点であり、主な応用分野には、深海の複雑な海域の探鉱・調査作業、海溝や深渊の調査や作業、極地の氷下調査などが含まれる。現在、中国の自律型/遠隔操作水中ロボットの多くはいずれも開発と研究の段階にあり、応用に投入されたサンプル機には限りがある。ARVの研究では、中国科学院瀋陽自動化研究所や中国船舶科学研究センターなどの機関が相次いで関連研究を展開している。中国船舶科学研究センターは、小型ARVサンプル機「海筝」を開発し、水中試験を展開した。このうち「海筝Ⅱ型」は湖上試験を展開している。

3 中国海洋水中ロボット設備技術に存在する問題と対策

 中国は、海洋水中スマート設備技術の分野で急速な発展を実現してきた。建造済み・建造中の潜水艇には、「蛟竜号」と1万メートル級有人潜水艇「彩虹魚号」、4500メートル級有人潜水艇、1万メートル級(全水深)有人潜水艇の4隻がある。基礎研究の分野での論文発表本数は米国に次いで多い。だが他国と比べると、中国は、乗員キャビンの材料や製造工法などの技術分野、応用分野、軍民融合、商業化市場開発などの面で依然として不足が存在する。(「海燕-10000」は最近、南太平洋海域で1万メートルの潜行を行った。)

3.1 材料などの技術面で不足あり

 専門家の調査によると、中国海洋水中ロボット設備技術は、機体材料や製造工法、浮力材料・成型工法、超高圧海水ポンプ技術などの面で、世界の先端水準と一定の差がある。水中ナビゲーション測位技術や水中照明・撮影技術、深海電気機械技術、水中作業技術など深海計器設備の面での差も大きい。

提案: 材料などの技術の難点を重点的に攻略する。海洋水中ロボット重大特別計画を立ち上げ、炭素維増強材料やセラミック耐圧材料、耐圧リチウム電池技術、水中ナビゲーション測位技術、水中照明・撮影技術、深海電気機械技術などのカギとなる技術分野をめぐって産学研(産業・大学・研究所)連携による難関のブレークスルーを実施する。産業化発展を左右するカギとなる基盤技術でブレークスルーを実現し、知的財産権の研究開発成果を取得し、中国海洋水中ロボットの技術革新能力を高め、水中ロボットの産業化発展を推進する。

3.2 応用分野で大きな後れ

 40年近くの発展と応用を経て、米国の有人潜水艇「Alvin号」は2000年以降、年間約200回の潜行を行っている。中国の「蛟竜」号は初の試験応用で21回の潜行を行った。現在、米国は一日ほぼ一回の潜行を実現しているのに対し、蛟竜号の潜行回数は平均で2日に一回で、その差は明らかだ。無人水中ロボットでも同様の問題がある。

提案:科学研究とプロジェクトとの相互の融合発展を強化する。モントレー湾水族館研究所の成功経験を手本とし、科学研究者とエンジニアとの間の平等な関係を重視し、科学研究と工学技術開発が相互に融合し発展するメカニズムを形成する。科学研究とプロジェクトとの相互の融合発展を強化することで、国家海洋実験室の世界レベルの海洋水中ロボット科学研究機関への発展を加速し、中国と米国との応用分野での巨大な差を縮めることができる。

3.3 商業化市場で開発待たれる

 中国の海洋水中ロボットの応用は現在、スタートしたばかりの段階にある。海洋水中ロボットの応用の研究は摸索段階にあり、水中ロボットの使用のメカニズムには改善が求められ、応用範囲は主に科学調査に限られている。このため中国の海洋水中ロボットの多くは、科学研究機関が研究開発を主導する工学実用サンプル機であり、それぞれが開発する非標準的な製品が多く、自主ブランドのシリーズ化された製品は少ない。成熟した市場化製品の形成への道のりはまだ長く、商業化市場応用の段階には入っていない。

提案: 海洋水中ロボット設備応用市場を積極的に開発する。国家海洋実験室の開放式総合サービスプラットフォームを十分に利用し、合同開放協力計画を制定し、中国内外の大学や科学研究機関、企業に向け、科学調査潜行の共有などのサービスを提供し、深海の調査・開発活動を共同展開する。海洋水中ロボット設備の応用範囲をさらに拡大し、海洋水中ロボットのユーザー群と商業化市場を積極的に開発し、水中スマート設備産業の持続可能発展を推進する[3]

3.4 企業参加度が足りない 資金源が単一的

 中国にはまだ、海洋水中ロボットの建造と直接関係する生産製造にかかわる企業はない。船舶と海洋工事設備にかかわる企業の製品の多くは、補助船や浅水域の海洋工事設備、中・低水準の生産プラットフォーム、掘削船などであり、深海・海洋工事設備の製造能力は始動段階にある。現在、海洋水中ロボットを研究する機関の多くは国有であり、科学研究経費は国家が投入しており、民間企業や私的機関の科学研究経費の投入は少ない[4]

提案: 海洋ロボット設備研究開発特別基金を設立する。海洋水中ロボットの開発は、高い投入を必要とする業界であり、大量の持続的な資金投入をして初めて、プロジェクトの順調な進行を確保できる。私的機関の投資を奨励し、私的な資金を注入することは、重要な経費源をつくることになる。1万メートル級有人潜水艇「彩虹魚」号の建造は、「国家支援+民間資金」のモデルを取って進められた。このため「政府誘導+民間投資」はわれわれが今後手本にして採用すべき運営モデルと言える。

参考文献:

[1] 陳厲仁.世界核工業機器人発展現状[J].機器人技術與応用,1994(6):6-21.

[2] 柳春輝,趙言正,王炎.爬壁機器人技術及応用[J].機器人技術與応用,1996(1):4-7.

[3] 劉会.工業自動化控制的現状和未来発展趨勢[J].硅谷,2010(2):51.

[4] 羅璟,趙克定,陶湘庁,等.工業機器人的控制策略探討[J].機床與液圧,2008,36(10):95-97.

※本稿は管浩儒「浅析海洋水下機器人装備技術」(『自動化応用』2018年第07期、pp.84-85)を『自動化応用』編集部の許可を得て日本語訳/転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司


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