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包頭レアアースハイテク産業開発区:「土を掘り、土を売る」段階から「土を撒いて財を成す」時代へ

2018年11月21日 李宝楽、張景陽(科技日報記者)

 「中国は世界的なレアアース原料の生産大国であり、機能性材料の生産大国でもあるが、まだレアアースのハイエンド応用強国ではない。中国の強みは、レアアース原料とレアアース機能性材料を出発点とし、産業への活用につなげる」。最近開催された第10回中国包頭レアアース産業フォーラムでの席上で、こう強調したのは、中国レアアース業界協会の会長であり、中国科学院院士でもある張洪傑氏だ。

 レアアースという資源名を冠した中国唯一の国家級ハイテク産業開発区として、レアアースハイテク産業開発区は資源面での独自の強みと先進的な科学研究資源を基盤として、レアアース企業を2015年の79社から2018年には111社に増やし、永久磁石等の5つの分野で産業チェーンを創出し、生産高の年平均成長率は30%以上に達している。また、希土類磁石、研磨、水素吸蔵の3つの新材料の生産高はそれぞれ2.5万トン、2700トン、1.28トンに達し、レアアース研磨材料と水素吸蔵材料の生産高はいずれも国内第1位となっている。

独自のブレイクスルーと、改革開放で質の変化を実現

 1950年代、中国のレアアース鉱床の父と呼ばれる何作霖氏は、緻密な科学的考察と論証を経て、内モンゴル自治区包頭市白雲鄂博(バイヤンオボ)鉱区のレアアース貯蔵量は世界第1位であると断定した。

 改革開放の潮流がわき起こる前から「工業界の金」や「新材料の母」と呼ばれていたレアアースは、長らく原料として安価に輸出されていたため、レアアース大国としては、技術革命と産業構造の転換によってレアアースが格上げされることは切なる望みだった。1992年、改革開放の総指揮者であった鄧小平は、「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある。このため、レアアース関連問題を適切に扱わなければならない」と発言した。レアアース資源の保護と利用という使命を担った包頭国家レアアースハイテク産業開発区はこのような時運に乗り、まさにこの年に誕生したのである。

 レアアースハイテク産業開発区では数十年にわたり、また特に第18次全国代表大会以降、国や自治区、包頭市による一連の支援政策を充分に利用し、サプライサイド構造改革に沿った形で技術革新と応用関連市場に照準を合わせ、「中国磁谷」(中国の永久磁石産業基地)としての建設に全力を傾けてきたため、これが実を結んで中国北方地区の軽希土類産業は健全かつ良好な発展に支えられた新たな段階に突入した。2017年に内モンゴル自治区におけるレアアース新材料・応用産業の生産高が初めて採掘および製錬・分離産業のそれを超えたことは、内モンゴル自治区のレアアース産業が新たなブレイクスルーを実現したことを示すものだ。

 中国レアアース業界協会副秘書長の陳占恒氏は、「レアアースはハイエンド製造業の重要な基礎材料である。このため、レアアースの価値は、最終的には端末市場での応用によって体現されなければならない。レアアース産業の発展を真の意味で推進するには、新材料と端末製品を発展させる必要があった」ことを強調する。レアアース産業のレベルアップを加速し、永久磁石や水素吸蔵、研磨、触媒、合金の5つの産業チェーンの拡大に全力を尽くし、レアアース・スチールやレアアース・アルミニウム等の「レアアース+産業」と川下の高付加価値加工産業を全面的に発展させ、レアアース現地加工転化率を85%以上に、全市のレアアース産業に占めるレアアース機能性材料および応用産業の割合を51%に高める等、レアアースハイテク産業開発区による一連の優れた業績によって、レアアース産業は「土を掘り、土を売る」段階を経て「土を撒いて財を成す」という新たな時代に入った。

老子曰く「授人以魚 不如授人以漁」、川上・川下の産業チェーンを構築せよ

 レアアースの新材料加工基地において、包頭金山磁材有限公司の有する電気めっき5000トン級の生産ラインでは猛烈なスピードで生産が行われている。これは、ネオジム鉄ボロン合金の電気めっき材料の最後の一工程である。

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包頭レアアースハイテク産業開発区新材料基地の金山磁材の電気めっき作業ライン

 「レアアースハイテク産業開発区においてレアアース新材料基地の建設と新技術と応用が進むにつれて、レアアース後処理加工における諸問題もスムーズに解決したため、当社の今年上半期の売上高は前年同期比で約17%成長した」と同社董事長の靳樹森氏は語り、「当社の成長は、ハイテク産業開発区の発展を土台に飛躍させたものだ」と付け加える。

 レアアース産業の発展の鍵は、磁石材料と磁石応用分野で工夫を凝らせるかどうかにかかっている。しかしながら、かつて、永久磁石材料分野ではハイテク企業との関与や産業との連動性がなかったことがレアアースハイテク産業開発区の弱点となっていた。

 そこで、2016年にレアアースハイテク産業開発区は、総額10億元を投じてレアアース企業向けに建築面積10万平方メートルに及ぶレアアース新材料基地をカスタムメードし、磁石材料の後処理加工プロジェクト27件を相次いで誘致し、磁石材料の後処理加工分野というボトルネックを解消した。レアアースハイテク産業開発区科技創業センター董事長の宣敦敦氏は科技日報の記者に対して、「当基地には金山磁材以外にも北方節能、天和磁材、英思特稀磁等の7社が現在、操業を開始しており、これに加えて標準生産ライン45本に入居の意向があることから、開発区内の希土類磁石材料産業は,すでにイノベーション・創業クラスターとしての発展態勢にある」と話した。

 さらに、宣敦敦氏は「老子のことばでは、『授人以魚、不如授人以漁』(魚を与えれば一日の飢えをしのげるが、魚の釣り方を教えれば一生の食を満たせる)というではないか」と話して将来への充分な自信をのぞかせながら、「ハイテク産業開発区では『包頭レアアースハイテク産業開発区のレアアース新材料加工基地サプライチェーン金融計画』を定めたことによって、ハイテク産業開発区内の企業の経済発展を牽引し、ハイテク産業開発区の企業における融資難とサプライチェーンの不均衡という問題を解決し、ハイテク産業開発区の企業と川下企業の長期的な戦略的提携関係の締結を促していく」と続けた。

開放とイノベーションで、製品が「ハイテク産業の模範」に

 レアアースの抽出分離・製造技術を抜きに語れば、「工業のビタミン」という形容も絵空事となってしまう。コア技術をラボから生産ラインに移すには、開放とイノベーションが最良の方法である。

 レアアースハイテク産業開発区ではその設立以降、中国科学院包頭レアアース研究開発センターによる「レアアース硫化物およびレアアース光源の院士作業所」や「中国・ヨーロッパ一帯一路連合ラボラトリー」等の技術移転・転化のためのプラットフォームを相次いで設置し、中国内外の最先端技術や人材とのマッチングを加速させ、レアアースや水素吸蔵、研磨材料において産業規模の集約効果が生じるよう支援してきた。また、中国科学院上海交通大学の2つの新たな研究所と包頭の現地レアアース企業との技術提携や研究開発センターの共同建設、コア技術関連課題の共同研究等の一連の措置を通じて、レアアースハイテク産業開発区における多数のレアアース企業が科学技術やイノベーションに牽引されて発展・拡大を遂げた。

 さらに、現在建設中の北京新空港プロジェクトにおいては、メインターミナルビルの鉄骨構造の約8割を占めるシームレス鋼管が包頭鋼鉄の製造によるものである。また、中国ではさらに現在建設中の青島空港、浦東空港、南京オリンピックスポーツセンター等のプロジェクトにも包頭鋼鉄の製品が使用されており、いずれも鉄鋼に「土」を加える応用面での成功事例といえる。

この神秘的な「土」は、鉄鋼の他になんと口紅にも

 中国科学院包頭レアアース研究開発センター主任の池建義氏が記者に語ったところによれば、「今年8月、世界初の10トン級のレアアース硫化物着色料の連続焼成用トンネル窯のパイロット生産ラインが正式に稼働したことは、中国最新の着色料製品が正式に生産段階に入ったことを示すものだ」。また、中国科学院長春応用化学研究所は温和条件下でのレアアース酸化物の脱酸素・加硫に関する重要課題を解決したことをベースとして、中国科学院包頭レアアース研究開発センターと協力し、世界初の毒性のないレアアース顔料を使用した口紅製品を生産し、レアアース硫化物着色料の化粧品分野での応用を実現した。

 レアアースハイテク産業開発区では、レアアースの応用範囲の拡大に伴って「注目に値する成果」がさらに多く生まれている。その例としては、金蒙匯磁、恒宇磁源等の企業の製品が同産業における市場シェア50%以上を実現したことや、稀宝医療が中国初の移動磁気共鳴(MRI撮影)診療車「馳影A30」を発売し、その車載の集積型MRIや「扁鵲飛救」遠隔救急システム等の多数の先進技術が世界初のものであること、さらには希捷環保のレアアースをもとにした排煙無毒化のための脱硝触媒や、レアアース研究院のPVCレアアース複合熱安定剤等のプロジェクトが中国における産業の空白を埋めていることがある。

 最後に、ハイテク産業開発区のレアアースハイテク産業局の張艶苹氏は「レアアース産業の長年の低迷を受け、われわれは長らくハイテク産業開発区内の政策環境の最適化を続け、レアアース企業の生産コストを下げ、新技術の転化・応用によって粗放式発展モデルを改め、大量のコア技術をよりどころに近代的レアアース産業へのモデルチェンジを推進してきた。これも、レアアースハイテク産業開発区の今後の発展のために避けては通れない道だ」と全体を総括している。


本稿は、科技日報「包頭稀土高新区:従挖鉱売土到“点土成金」(2018年11月6日第07版)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。


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