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新微創源 産業資源「ネットワーク」を紡ぐ

2018年12月12日 侯樹文/王春(科技日報記者)

 モノのインターネット(IoT)や万物のインターネット(IoE)には、高精度のセンサーが絶対に必要だ。そんなセンサーに的を絞った国家専業メイカースペースサービス主体、新微創源インキュベーター(以下、新微創源)も、産業資源を相互につなげるIoTの構築を進めている。IoT技術と垣根を超えた分野の市場での応用をマッチングさせ、1つの技術成果を市場の需要と効率よくマッチングさせるIoT産業エコシステムが台頭している。このような専門的な運営が原動力となったIoTは、グローバル化しながら、多くの分野で加速しながら拡大している。

 どのように中国国内の最先端の技術成果を、さまざまな業界や分野に移行、転化すればいいのだろうか?いかに世界最先端技術・資源と中国国内のIoT市場を効率よくマッチングさせればいいのだろうか?技術研究開発と市場での応用という点から考えると、資源を統合し、生態を構築できる専門的なプラットフォームが必要で国家専業メイカースペースである新微創源はまさにそのような使命を背負っている。

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新微創源の研究者ら

イノベーションチェーン上の核心的要素を連結

 上海市嘉定区平城路双創街区にある新微創源は、中国科学院上海マイクロシステム・情報技術研究所(以下、マイクロシステム研究所)が立ち上げ、IoTと最先端のセンサーをめぐる成果の実用化を中心業務とするインキュベータープラットフォームであり、国家双創(大衆による起業および万人によるイノベーション)モデル拠点とセンサーを専門とする国家専業メイカースペースのサービス主体でもある。

 技術研究開発の国家チームは、新微創源の核心的リソースだ。「新微創源」の任佳・董事長兼総経理は、「中国国内の審査の仕組みの問題で、科学研究院所内の技術成果を実用化する原動力が弱い。技術研究開発から、テスト、実際の商品の量産に至るまで、テクノロジー成果の産業化のプロセスにおいて、技術、管理、市場、資本、政策などの一連のイノベーションチェーン上の核心的要素を繋げる総合サービス提供者が必要となる。新微創源は、そのようなニーズを満たすために立ち上げられたインキュベーションプラットフォームだ」と説明する。

 新微創源が取り組んで構築したIoT分野のイノベーション起業エコシステムを通して、源泉である研究成果と業界・市場のニーズをマッチングさせ、一連のイノベーションプロジェクトがインキュベーターの中で成長を加速させ、源泉となるイノベーションの技術移転によって製品の研究開発インキュベーションに到達し、さらに資本とテクノロジーサービスを加えた「三位一体」型のイノベーション体系を構築し、「マイクロシステム研究所」の一番の特徴である技術成果の実用化の象徴となっている。

 申能集団は、上海市の重大エネルギーインフラの投資建設主体であり、主要な電気、ガスなどのエネルギー製品のサプライヤーでもある。その傘下の子会社・上海燃気(集団)有限公司が2017年に供給した天然ガスは80億6000万立方メートルで、上海の市場シェアは90%以上に達している。上海燃気は、上海のガスメーターのスマート化、アップデートの過程で、数多くのIoT応用技術の成果を必要としている。「マイクロシステム研究所」は近年、スマート感知マイクロシステム、超伝導量子デバイス 、電気回路などのキーである科学、技術上の難関となる研究において、飛躍的で革新的な発展を実現した。新微創源はそれを積極的に活用し、申能集団の応用の面の需要を深く発掘し、双方の資源のマッチングを推進した。そして、両者は狭帯域IoT(NB-IoT)を活用したスマートガスメーターの研究開発や応用の面での提携を深化させている。

 マイクロシステム研究所の技術成果と中国国内のエネルギー、工業製造などの分野の大きな市場のニーズのマッチングを推進し、さらに多くの川上・川下企業と、IoT技術のマッチングを牽引するというのは、新微創源の専門的な運営の確実な第一歩目となっている。

産業エコシステムを開拓し企業に日光や雨露を提供

 インキュベーションサプライチェーン業界内のリーディング企業や産業の川上・川下企業のつなぎ役となり、イノベーションエコシステムを作り出し、イノベーションの要素の流動を促進している。「産業エコシステムは、メイカースペース運営にとって非常に重要だ。」任董事長兼総経理は、技術、人材、資本、市場、提携パートナーなど、イノベーション企業の成長において、最も必要なイノベーションの要素は、特定の産業メイカースペースにおいては日光、雨露であり、インキュベーターがスタートアップ企業のためのサポートを提供するという核心的価値であると考えている。

 何を皮切りにするかを見極め、深く発掘しなければならない。マイクロシステム研究所は、申能集団との提携をベースにし、新微創源も、申能集団傘下の多くの業務のニーズとインキュベーターの中の企業のマッチングを展開している。IoT技術を、ガス輸送管の安全モニタリングに応用したのもその一つだ。

 ガス管のガス漏れを防ぐために、上海燃気は、地中に長年埋まっているガス管の検査を実施している。新微創源内に、スマート送電網を専門に技術の応用を提供している企業がある。同企業が発明した探知機は、地中に埋められたケーブルをたどることができる。マッチングを通して、この探知機を、ガス管のメンテナンスや修繕にもうまく応用することができる。2社がマッチングすることで、インキュベーター企業に市場をもたらし、ガス企業側にも問題の解決策をもたらした。

 市場のニーズは、技術イノベーションの源泉だ。新技術と自動車産業の融合促進は、新微創源が力を入れるもう一つの分野だ。新微創源がある上海嘉定汽車城には、整った自動車産業チェーンがあり、自動車関連のイノベーション型テクノロジー企業もたくさんある。昨年から、「新微創源」は、嘉定区安亭鎮のインテリジェントコネクテッドビークル・新エネルギー自動車インキュベーターや創源新城阿里巴巴イノベーションセンターと共同で、delta11倶楽部を立ち上げ、自動車の技術革新に焦点を合わせて、技術イノベーション企業数十社を集め、定期的に各種サロンやロードショー、技術と業界のセミナーなどを開催し、各企業同士が効果的に意思の疎通を図り、交流できるように取り組んでおり、著しい成果を挙げている。

 潜在力の調査や発掘、ポジションの把握などに取り組み、設立から4年も経たない間に、新微創源の運営チームは最初2人から14人にまで増え、マッチングサービスを提供した企業は、累計100社を超えた。

国外の技術と中国市場の連携

 IoT技術のエネルギー・環境、工業・製造などの分野への応用を深化させると同時に、世界の最先端技術の応用と中国国内の非常に大きな市場をマッチングさせるという点で、新微創源はここ1年、効果的に模索を行っている。

 2018年9月に、中国国務院が発表し「関于推動創新創業高質量発展打造“双創”昇級版的意見」(イノベーション・起業のクオリティの高い発展「双創」アップグレード版構築に関する意見)は、「世界と中国国内のイノベーション・起業資源の融合を深化させる」という目標を掲げている。新微創源はその目標に合わせるかのように、2年前からその試みと模索を行ってきた。

 任董事長兼総経理は、「新微創源がフィンランド発祥のスタートアップイベント・Slushと提携していることを特に強調している。Slushは当初、300人ほどのフィンランドのテクノロジーの分野の起業家が集まる小規模なイベントだったものの、今では欧州最大で、最高レベルの、世界に名を馳せるスタートアップイベントとなっている。そして、世界で最も影響力が大きいテクノロジー起業投資プラットフォームの一つにもなっている。

 3年前、Slushが中国に進出した。新微創源は、Slush中国チームと提携し、嘉定での「Slush Shanghai 2018」開催に携わり、それを成功させた。現在、新微創源とSlushは提携してグローバルアクセラレーターを立ち上げ、Slushで蓄積した優秀な起業プロジェクトが中国で実施されるように取り組んでいる。「フィンランドにはクリーンエネルギーや無線通信、フレキシブルエレクトロニクスなどの分野のハイクオリティな起業プロジェクトがたくさんある。そのようなプロジェクトは、中国市場に進出することを強く望んでいる」と任董事長兼総経理。

 その他、2017年、新微創源の働きかけのもと、新微科技集団は、フィンランド国立技術開発センター(VTT)、スイス電子工学・マイクロ技術研究センター(CSEM)と戦略的提携契約に調印した。今節、新微創源は、江西水利集団のスマート水利やスマート水務のために技術産業資源の開拓を実施している。そのために、任董事長兼総経理は、チームを引き連れ欧州へ足を運び、バルセロナで開催されたIoT技術展示会に参加したほか、欧州の水質モニタリング、センサー、テクノロジー関連の企業を訪問し、提携に向けた商談を行った。

 任董事長兼総経理は、「インキュベータープラットフォームはグローバル化、開放、提携、協力、融合が必須で、世界の最先端技術にしっかりと付いていくことが肝要だ。海外企業との提携を通して、世界の最先端技術・資源と、中国の大きな市場のニーズを、新微創源のプラットフォーム上でマッチングさせることができる。そして、IoT関連の最先端技術を、もっと深い分野に応用していくことができる。新微創源は、インキュベーター、イノベーションという道を、他と足並みを合わせてまっすぐ進んでいる」と言う。


※本稿は、科技日報「新微創源 織一張産業資源“互聯網”」(2018年12月3日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。 


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