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鄭州ハイテク産業開発区:特色あるインキュベーションで「中原のサイエンスバレー」を目指す

2018年12月19日 喬地(科技日報記者)

 一見すると普通のトラクターでも、地面を耕すと同時にその土壌の性質を識別でき、含有する微量元素を検出できるとしたら、読者はどう思われるだろうか。その秘密は、車体前方にある「ブラックボックス」、つまりセンサ機器にある。

 先日、鄭州で初めて開催されたセンサ関連の国際会議「First World Sensors Summit in 2018(世界伝感器大会)」では、車両ナンバーの自動認識や顔認識による支払いが可能なスマート給油機や、スムーズな応答が可能な窓掃除ロボットなどが相次いで発表された。鄭州ハイテク産業開発区の「スマート製造」から生まれた各種センサ製品は、生産や生活のさまざまな面で爆発的な普及を見せ始めている。

荒野におけるインキュベーション:零細企業の「逆襲」により業界トップに

 鄭州ハイテク産業開発区の建設は1988年に始まった。起工式で礼砲が放たれると、その音に驚いた野ウサギの群れが荒れ果てた草むらから震えながら出てきたという。

 そのような広大な荒野から鄭州ハイテク産業開発区の歴史は始まり、30年にわたり創業という厳しいいばらの道を切り拓いてきた。鄭州ハイテク産業開発区国務院の認可を受けた初の国家級ハイテク産業区群の一つとして、今では初の国家イノベーション型サイエンスパーク、鄭洛新国家自主イノベーションモデル地区の中核区、海外ハイレベル人材イノベーション・創業基地、初のサイエンスサービス業モデル地区として認可を受けており、全国先進的ハイテク地区として5回連続で表彰されている。また、最近は全国レベルの科学技術リソース支援型イノベーション・創業における特色ある媒体としても認定を受けた。

 こうした一つ一つの栄誉の背景には、堅実に発展してきた特色ある産業の存在がある。センサ産業はまさに、鄭州ハイテク産業開発区の魅力ある代名詞といえる。

 漢威電子公司では、24時間ごとに3万台以上のセンサが生産される。これらのセンサは130以上の規格に対応しており、数十種類の可燃性ガスや毒性ガス、その他のガスを検出できる。同社は18年前には名もない零細企業だったが、センサ分野に足場を定めて3回にわたる産業構造のアップグレードを経た結果、今や半導体や触媒燃焼、電気化学、赤外線光学に対応する4種類のガスセンサの生産が可能な中国唯一の企業となった。同社のガスセンサ事業の中国市場シェアは70%に達しており、センサやスマートシティ、スマートセキュリティ、スマート環境保護、スマートホームの分野でさまざまな業界向けのIoTエコシステムを構築している。これに関し、同社董事長の任紅軍氏は「初めは零細企業に過ぎなかった当社も一歩一歩の前進により上場を実現し、業界のトップに至ることができたことは、ハイテク産業開発区管理委員会が全力を傾けて作り上げたイノベーションの環境と切り離すことはできない。特に、企業内研究所や技術センター、開発センターの設立を支援することによって、企業レベルのプロジェクトが業界をリードする地位につけるようにしてくれたおかげである」と感慨深げに語る。

 そして、まさに同社が牽引役となったおかげで、鄭州ハイテク産業開発区のセンサ産業は無から有へ、小から大へと発展を遂げ、今や特殊装置企業10社、標準企業24社を擁する新型センサ、スマートセンサの産業クラスターが誕生した。また、北斗衛星測位システムを利用した報時体系や5G通信、ビッグデータ、人工知能、サイバーセキュリティ等の分野で重要リソースが集積している。センサ産業の科学技術リソースとしてのアドバンテージをさらに掘り起こし、センサ産業を発展させるために、鄭州ハイテク産業開発区は3~5平方キロメートル規模の土地に売上高1千億元レベルのスマートセンサの企業グループを創設し、「中国のスマートセンサ・バレー」を目指すことを決めた。

科学技術の潜在能力を掘り起こす:中小企業研究開発センターがすべてをカバー

 鄭州ハイテク産業開発区の30年間の発展を概観するための最も重要な手段の一つは、イノベーション・プラットフォームを構築し、科学技術リソースというアドバンテージを掘り起こすことによって、その潜在能力を充分に発揮させることである。

 鄭州ハイテク産業開発区管理委員会の主任で、中国共産党工作委員会の書記でもある王新亭氏によれば、現在、鄭州ハイテク産業開発区には国家級技術イノベーション・プラットフォームが17社、省級及びそれ以上の技術イノベーション・プラットフォームが100社あまり、院士作業ステーションが31社、市級及びそれ以上の研究開発機関が663社集まっており、科学技術型中小企業向けの研究開発センターは基本的に網羅されている。これらの技術イノベーション・プラットフォームをベースとして、さらに一連のイノベーション牽引型プラットフォームが育成されており、電子材料や電子機器、情報通信、ネットワークセキュリティ、シールドマシンなどの分野で産業発展のために有効なイノベーション支援を提供している。

 昨年10月11日に、河南省で初のノーベル賞作業ステーションである「ダニエル・シェヒトマン作業ステーション」が鄭州ハイテク産業開発区で正式にスタートした。この作業ステーションは2011年のノーベル化学賞受賞者であるダニエル・シェヒトマン教授と鄭州大学の協力により設立された。このイノベーション・プラットフォームを拠点として、鄭州大学の関連学科の筆頭者が海外の有名大学や研究機関に推薦されて研修を受けられるほか、学科レベルのプロジェクトに対してダニエル・シェヒトマン教授からの指導が行われ、最新の科学技術成果が鄭州ハイテク産業開発区や河南省で実用化される。

 また、これと前後して、鄭州ハイテク産業開発区では電子材料・システムに関する国際共同研究センターが建設されており、鄭州大学武漢大学、日本の筑波大学との共同建設による環境生態工学研究所の設置が推進され、多国間連携によるイノベーションが継続的に実施されている。さらに、スマート機器やスマートメータ、新材料、軌道交通、ブレージング溶接技術等の6つの産業技術イノベーション連盟が設立され、地域間イノベーションや提携が効果的に推進されている。これらのイノベーション・プラットフォームに関連し、鄭州ハイテク産業開発区には現在、院士が18人、市級以上のイノベーション・エリート人材が129人、高級技術職の職位を有する人材が6500人あまり集まっている。また同時に、イノベーション・プラットフォームのアップグレードも進んでおり、「マス・イノベーション空間―インキュベーター―アクセラレーター―産業パーク」というインキュベーション・サービスチェーンの整備が整いつつある。現在、国家級インキュベーター(マス・イノベーション空間)が14社、省級インキュベーター(マス・イノベーション空間)が23社設置されており、市級以上のマス・イノベーション空間数は全市の55%、全省の30%を占め、アクセラレーターと産業パークが6ヵ所設立されている。

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新天科技のSMT製造ラインでスマートメータの部品をチェックするエンジニア(王秀清撮影)

権限の拡大と能力付与を明確に:売上高1千億元級の一流パークを建設

 最近、鄭州市の王新偉市長の署名により、「鄭州ハイテク産業開発区暫定施行規定」(以下、「暫行規定」という)が公布された。この「暫行規定」は、河南省初の開発区レベルの法律規則として2019年1月1日から正式に施行される。その目的は、鄭州ハイテク産業開発区の法に基づいた管理と質の高い発展を保障・促進し、鄭州国家自主イノベーションモデル地区を構築し、自主イノベーションにおける牽引的役割を充分に発揮させることにある。

 また、権限の拡大と能力付与に関しては、鄭州ハイテク産業開発区では今後、管理委員会が比較的整備された県(市)区級政府の権限と一部の市級経済管理並びに関連の行政管理権限を行使し、かつ、省直轄の関連部門と連携することによって、一部の審査認可事項に関して省級のいわば直通列車の持つ利便性を享受できることが「暫行規定」に明記されている。管理委員会は、機構編制管理部門の定める機構総数以内であれば職能機構を自主的に設置し、その具体的な職責を確定することができる。また、人事・給与制度改革を深化させ、実情に見合う人選・人材使用制度や給与インセンティブ制度、人材交流制度を革新することも「暫行規定」に定められている。

 さらに、「暫行規定」によれば、鄭州市政府はイノベーション開放先導区、技術移転集積区、モデルチェンジ・グレードアップ主導区、イノベーション・創業エコシステム区、イノベーション・創業人材密集区、科学技術・金融イノベーション実験区、法治管理先進区、スマート社会先行区という8つの発展のためのポジショニングを鄭州ハイテク産業開発区に対して明確に付与し、鄭州ハイテク産業開発区においてこれらのポジショニングを構築することによって、国際競争力のある中原のイノベーション・創業センターを建設する。

 王新亭氏によれば、「暫行規定」の公布は、鄭州ハイテク産業開発区の設立後30年来で初の全面的かつ徹底的、系統的な権限付与である。鄭州ハイテク産業開発区は、産業チェーンをとりまく形で科学技術イノベーションチェーンを配置し、金融チェーンを整備し、政策チェーンを強化することによって、ハイテク産業と戦略的新興産業を重点的に発展させ、中国国内で重要な影響力を持つ先進的製造業や新世代情報技術、デジタルクリエイティブ産業やスマート産業クラスターを構築し、科学技術リソースのアドバンテージを全面的に喚起し、イノベーション・創業エコシステムを構築し、2025年までに売上高1千億元クラスの世界一流のハイテクパークである「中原のサイエンスバレー」の設立を目指す。


※本稿は、科技日報「鄭州高新区:以特色孵化造“中原科谷”」(2018年12月11日付7日面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。


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